明日も、奴隷として働かされる。
物心ついてから、一度も外の光を見たことがない。
友達なんて、できたこともない。
今よりももっとずっと幼いころに読み聞かされた絵本を何度も夢に見る。
青い空と白い雲の下で、暖かい緑の平原で動物と日々を過ごす。
綺麗な川の流れと、豪華でなくても美味しい食事。
そんな贅沢なもの、ここでは望むこともできないのだろう。
生きているのが精一杯だ。質素で味気ない。栄養のない食事。
ほとんど床で寝ているのと変わらないような簡素なベッドと、ぼろきれ。
狭い部屋で独り、外の世界へ思いを馳せる。
今日はもう既に労働時間は終わっている。
明日も私は、奴隷として働く。
きっと、そうだ。
そうして、私は目を閉じた。
強い衝撃が全身に走り、目を覚ました。
辺りの壁は崩れ、炎に包まれている。
「飛竜だ...ッ!」
「くそッ...!!どうしてこんな場所に..!!!」
そんな声も聞こえる。
"飛竜"が何なのかも、そもそもこの惨状に飛竜とやらが関係あるのかもわからなかった。
衛兵が走る足音が過ぎ去ると、私のすぐ隣に何か巨大なモノが降ってきた。
爪だ。
とても巨大な爪が私の2mほど隣に振り下ろされた。
崩れた壁からは"飛竜"の頭部が見えた。
炎を纏った深紅の巨大な体躯に、黄金色の瞳を持ったトカゲのような姿。そして、その体と同じ位のサイズの翼。
恐怖に竦んで動くことができなかった。
しかし、幸い相手はこちらに気づいていないようだった。
動かない身体に鞭を打って、錠の欠けた扉から出る。
そして、廊下の右側に扉が見えたので、そちらの方向に全速力で走る。
20秒ほど走り、木製のドアを半ば体当たりの姿勢で突き破ると、そこは中心に何か大きな機械がある円柱状の部屋だった。
壁にはいくつもの配管が通っていて、計器がある一定の数値を前後していた。
両隣に扉が見えたが、それは無視してどこか他の場所へ繋がる道を探す。
他の部屋へ続くであろう扉を見つけたが、こちらに向かって走ってくる足音が聞こえたので、その扉は無視して私が入ってきた右側の扉へ駆け込む。
駆け込んだ先は石材で作られた小部屋で、幾つか機械の部品が散乱していた。
壁や床、天井は崩れ、いつでも外へ出られる状態だった。
ただ、そこが地上から遥か遠く離れていたことを除けば。
ここを飛び降りれば確実に死んでしまうだろう。
しかし、この部屋を出てまた他の道を探すという事は、衛兵と出会う可能性も上がる。
近くに散乱している部品を見て、閃く。
数十分。あるいはより多くの時間を費やして、機械の部品と壁の石材の破片を用いて短剣を作った。
幸い、衛兵は鎧を着こんでいる訳でもないはずなので、これで多少の抵抗はできるはずだ。
私は部屋から出て、先ほど衛兵の足音が聞こえた部屋の扉を開けた。
・オズマ(幼)
ボロボロの汚れたローブを着用した奴隷の少女。11歳。
金木犀色の短い髪と、緋色の瞳を持つ。性奴隷的なものではない。
・オズマの作った短剣
カトラスのような短剣。欠けた歯車のガード、銅製パイプのグリップ。欠けた石材を鋭く研いだ刃。