光刃閃く青春の都   作:イダイ

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 鉄火場における近接武器の必要性。

 拳銃やショットガンなどの接近戦なら未だしも、アサルトライフルやマシンガンなどが主役となる場では近接武器は護身以上の意味を持たない。

 しかし、もし仮に()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はい、先生。あんまり前に出過ぎないでくださいね」

 

「え、えぇ………」

 

 先生の前に立ち、掃射される弾幕を光刃で切り払う空継。

 彼の扱う光刃は物理的な切断力を持つ一方で、物質的な質量を持たない。故に、その扱いは通常の刀剣類と違って独特の癖があった。

 強みは、刀身の重さが無い分の取り回しの速さ。ヘッドスピードは、実体剣の比ではない。

 これに加えて、空継の持ち合わせている特殊な感覚網が合わさる事により飛んでくる弾丸を知覚。正確に光刃を合わせて切り落とし、切り払う。

 

 先生を中心としたそれぞれ所属の違う即席部隊は、シャーレの部室がある外郭地区へと向かっていた。

 

「いったァ~~~~!?あーもう!何で、私たちが不良と戦わなくちゃいけない訳!?というか、あいつらいったい何の弾使って……って、JHP弾じゃない!違法よ!違法!」

 

「元気だな、ミレニアムの会計殿は。それにしても、ホローポイント弾の違法なんて話は、初めて聞いたな」

 

「恐らく、ミレニアムの校則の話でしょう。それよりも、閻野君はそのまま先生の護衛を御願いします。外から来られたという事ですから」

 

「そうですね。私たちと違い、弾丸一つでも致命傷ですから」

 

 談笑する少年少女たち。因みに、それぞれの自己紹介は既に済ませている。

 彼ら彼女らにとってみれば、鉄火場は実に身近。危険である事は確かだが、その一方で命の危機感というものを抱く事は余りなかった。

 もっとも、命の危険が少ないというのは()()()()()()()()()()()()()なのだが。

 

「皆凄いんだねぇ。それに、凄く慣れてるみたい」

 

「あまり認めたくはありませんが、このキヴォトスでは銃撃戦が珍しくありませんから」

 

「そっか……」

 

 戦闘能力皆無の先生は見ている事しかできない。

 だが、一応の安全圏からだからこそ分かる事もあった。

 

「……ねぇ、ハスミ」

 

「何でしょうか?」

 

「皆はそれぞれ別の学校同士で組んだりすることは無いんだよね?」

 

「そうですね……学園はそれぞれに独自の裁量と自治を行っていますから。今の私たちのような状況は本当に特殊です。強いて挙げれば、閻野君が学区に縛られず行動している位でしょうか」

 

「成程……よしっ」

 

 キリッと目を見開き、先生は顔を上げた。

 

「これから少し指示を出させてもらうよ、皆」

 

「!先生は、指揮の御経験が?」

 

「指揮と言えるほどシッカリしたものじゃないけど、後ろから見ているからこそ分かる事もあるからね。ハスミ」

 

「はい」

 

「君の狙撃は正確だからね。だからこそ、狙う的を絞るよ。あの、ヘルメットの色が違う子を狙える?」

 

「…可能です」

 

「それじゃあ、彼女を無力化。今この場の指示役の一人、前線指揮官みたいな立ち位置みたいだから。スズミ」

 

「何ですか、先生?」

 

「ハスミの狙撃で相手が崩れたら、そこに閃光弾。目が眩んだら、各個撃破を御願い」

 

「分かりました!」

 

「ユウカ」

 

「は、はい!」

 

「その青い壁は、直ぐに使える?」

 

「ええ、勿論。計算も終わらせてますから。ただ、持続時間が三十秒程度です」

 

「十分だよ。スズミの援護に回りつつ、壁の効果が切れるタイミングで後退。ハスミの射線を空けて」

 

「了解、直ぐに向かいます!」

 

「チナツ」

 

「は、はい」

 

「指示を出している子たちが居るよね?その子たちを、あっちの方に回せる?」

 

「あっち……はい、可能です」

 

「それじゃあ、お願い。押し留めるのは、私たちが通過するまで。通過し終えればすぐに撤退してもらって良いからね」

 

「はい!」

 

「空継」

 

「俺もですか?」

 

「うん。というか、空継もその頭の上のモノが無いよね?」

 

「ヘイローですね。コレがあるからこそ、私たちは力を振るえるんです」

 

 先生の疑問にリロード中のハスミが答える。

 閻野空継は、ヘイローを持たない。それはつまり、先生と同じく弾丸を喰らえば致命傷に陥るという事でもある。

 だが、

 

「彼の場合は、そこまで心配する事は無いかと」

 

 ハスミはそう言葉を続けた。

 彼女は、傭兵“鉄火屋”の実力を知っている。確かにヘイローは無い。だからといって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という事を知っている。

 

「閻野君の実力は、私が保証します。彼を相手にするのなら、一個軍団は必要です」

 

「はっはっは、照れますね」

 

 わざとらしい笑いと共に、空継は()()()()()弾丸を切り払った。

 彼の場合、狙撃の類はあまり意味を成さない。殺そうと思うのなら、対応できない程の飽和攻撃をもって物量に因る押し潰し位か。それにしたって、一人を殺すだけであまりにも費用が嵩み過ぎるというものだが。

 この少年も例に漏れず実力者。その認識を新たにしつつ、先生は彼の得物を見やる。

 

「空継のその、光の剣?って切れ味はどんなものなの?」

 

「え?……まあ、戦艦の合金装甲板程度ならスパッと斬れますよ」

 

「……人も?」

 

「ああ、成程。その心配なら要りませんよ。この剣は加減できます。対人用なら、相手を痺れさせて昏倒させる程度にまで威力を落とせます」

 

 空継はそう言うと、その証明とでも言わんばかりに一つ断りを入れて前へと飛び出した。

 姿勢を低くしながら駆ける彼は、自分に迫る弾丸のみを切り払いながら瞬きの間にスケバンたちへと接敵。

 そして何の躊躇もなく、光刃を振るっていた。

 一瞬の間を挟み、少女たちは崩れ落ちる。その体は愚か、衣類にも一切の傷痕は無く、ただ気絶したという証明としてヘイローだけが消えている。

 そのまま数人を沈めて、彼は先生の下へと戻ってきた。

 

「まあ、ざっとこんなものですね」

 

「おおう……空継もスーパーキヴォトス人なんだね」

 

「何です、それ」

 

「ううん!……と、とりあえず空継は――――」

 

 待機、と言おうとした先生の視界が急激に動く。同時に、腹部に感じる軽い圧迫感。

 何が起きたのか。それは、先の連邦生徒会でも話題となった不良たちの持ち出した巡航戦車に理由があった。

 この戦車からの砲撃に対して最初に察知したのが、空継。反射的に先生を左の小脇に抱えると飛んできた砲弾を跳躍して光刃で切断。その衝撃を利用して後退し、距離を取っていた。

 アクション映画さながらの動きをサラリと熟す彼。因みに周りの生徒たちを助けなかったのは優先度と、()()()()()()()()()()()()()()()という一つの信頼から。

 案の定、と言うべきか彼女らも遮蔽物などを利用して砲撃を躱している。しかし、埒が明かないのもまた事実。

 

「……仕方ない。羽川さん、先生頼みます」

 

 近くに居たハスミへと先生を預けて、再び空継は前へと駆け出す。

 当然ながら、戦車の砲塔が彼へと向けられた。同時に、火を噴き放たれる砲弾。

 駆け込みながら、空継は右手に光刃を持って振り被り逆袈裟の軌道で切り払う。

 ぶった切られて爆発する砲弾。その爆風を突っ切り、空継は戦車へと肉薄。

 

「ふっ……!」

 

 軽い動作で跳躍すると同時に、縦真っ二つに砲身を切断。更に戦車の上に着地すると、すぐさま戦車後方へと前宙がえりをするように飛び降りた。

 そして着地と同時に、右腕を一閃。戦車後背部の大きく切り裂き、両側面の履帯を切断。

 一瞬で、走行能力と砲撃能力の二つを喪失した戦車は、後は備え付けの機関砲に因る射撃しかできる事も無く。こちらはユウカの電磁シールドによって阻まれ、続くハスミの狙撃によって給弾部を狙撃、大破した。

 全員ではないが、そもそも戦車の一台、キヴォトスにおける戦闘力上位層には何の障害にもなりはしない。

 彼らを止めるには、相応の実力者に徒党を組ませるか、或いは苦手な相手をぶつける他ない。

 

「彼が、居るのですか……厄介ですね」

 

 その誰かは、ビルの上より戦場を俯瞰する。

 場に求めるのは、混沌と闘争。

 

 “災厄の狐”は未だ動かず。

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