逃げ足だけが取り柄のアブノーマル 作:紅蓮来てくれ……
荒廃した世界をただひたすら走る。
崩れた建物の瓦礫に足を取られながら、それでもただ足だけを動かす。
足の速さだけが取り柄の自分に出来るのはそれだけだ。
息切れが始まろうとも関係ない。
足がちぎれそうになろうともお構い無し。
ただひたすらに走る。
走って走って走るだけ。
なぜこんなに走ってるのかって?
それは──
「………」チラッ
『『『────ッ!!』』』
「うひいぃぃぃ…!」
後から迫る機械仕掛けの化け物から逃げているからだ。
阻むものなど関係なくただ壊して進んでくるソレら。
時折飛んでくるビームのような攻撃に当たらないように祈りながらひたすらに駆け抜ける。
足も限界に近く、化け物たちとの距離も縮まってきたその時、俺は息切れで痛む肺を酷使して声を張り上げた。
「紅蓮さーんッ!?そろそろお願いできませんかねーッ!?」
そうして、足を取られてバランスを崩す俺。
チラリと後ろを見ればすぐそこまで迫る化け物。
今まさにソレの足がこちらの体を潰そうと上から迫るその刹那。
空気を切り裂く音と金属音がその場に一瞬だけ響いた。
土煙が舞い化け物たちを覆い隠す。と、同時に地面へ倒れ込む俺。変な声が口からこぼれ擦り傷を作りながら地面を転がった。
痛む体を起こし、体に着いたホコリを払いながら土煙へ目を向ける。地面へ倒れ込むいくつもの影。それらの上に立つひとりの人物。
特徴的な三度笠を身につけ、手に持つ1本の棒。
やがて土煙が晴れるとそこにいる人物は親しげな声でこちらへ話しかけてきた。
「怪我はないかね?」
「見れば分かるでしょうよ。怪我だらけじゃい」
「転んだ拍子のものだろう?ラプチャーから攻撃は貰わなかったか?」
「貰いそうだったけど貰っとりませんよって……てか、助けるの遅くないですかね?」
「ピンチそうなら助けに行くつもりだったさ」
にこやかに、穏やかに。
助けて貰ったのは事実だが、やはりいくばくかの不満はある。
そうやって口をとがらせる俺に彼女はやれやれと首を振った。
「いい酒が手に入った。今回はそれで勘弁してくれないかね」
「……俺未成年ぞ?」
「そう言って、毎度飲んでるじゃないか」
「……まあいいや、それで」
こんな壊れた世界に法なんてものは無い。
故に未成年で酒を飲んでも両手に手錠をつける輩はいない。
いや確かに、話に聞いた地下の都市にはそれなりの法はあるらしいがこの地上には無いのだ。
「畑のきゅうりもつけてくれよ」
「ふむ……そういえば収穫時期か。キミの作った"ミソ"をつけて食べると美味しいから、私も少し楽しみだな」
「あー……まあ足りるか。……そういやあっちの方もそろそろできてる頃か?確認しとかないと」
そんな会話をしつつ、紅蓮が近づいてくる。
ヒールの高い特殊な靴を履いているからか身長が自分より少し高い。
「……どれ、まずは帰ろうか。怪我してるならおんぶでもしてやろうか?」
「いいよ別に。俺から離れないで化け物から護ってくれるだけでいいよ」
「俺から離れるな、か。……愛の告白のようだな」
「ばっか。そうやってすぐからかうなよ」
そんな言葉に笑う彼女。
そうして俺たちは二人並んで荒廃した世界を悠々と歩き出した。
これで紅蓮が来てくれるはず。
絶対……恐らく……きっと……多分……。
これを読んだあなたの元にも紅蓮が来てくれる、かも…?
好評だったら続く、のかなあ…(遠い目)