イメージED:SOLDIER-哀しみの詩-(ガンダムEVOLVE ep8主題歌)
シンラがデュエル、バスター、ブリッツと戦闘している頃、キラのストライクはアスランのイージスと接敵していた。
両者は互いにビームサーベルを抜き、真っ直ぐ向かい合う。
その時、接触回線にてアスランが呼び掛けてきた。
《やめろ!キラ!!僕達は敵じゃない――そうだろ?何故、僕達が戦わなくちゃならない?」
「――アスラン!」
彼女は思わず戦闘中であるのにアスランからの通信に反応してしまう。
キラ自身、本当は戦いたくはないのだ。ましては幼い頃からの幼なじみであるアスランとは――。
それを察したのか、キラも自分と同じ気持ちなんだと、アスランはこの状況でありながらも、つい喜びを噛み締めてしまう。
ならば何としても彼女を説得しなければと、アスランはキラに対しての試みを行う。
「止めろ!キラ!君に争いや戦争なんて似合わない!!君にはあの時みたく、優しく笑っていて欲しいんだ!!
だから俺と来てくれ!!一緒にプラントへ!!そ、そして!お、俺と……い、一緒に!」
「それは…………ダメ!」
「っ!!!?」
彼女からの返答は拒否だった。俄に信じられなかった、昔から一緒だった女の子が自分の誘いを断り、ナチュラルの戦艦に留まるなんて正気すら疑った。
彼女からの拒絶にアスランの瞳に若干の潤みが生じるが、だが彼は懸命に説得を行う。
「君が何故地球軍に居る?!何故ナチュラルの味方をするんだ!?」
「私だって地球軍じゃない!――けどあの船には大切な人や――友達が乗ってるの!!貴方こそ!なんでザフトになんか!?なんで戦争したりするの!!」
「――!」
彼女にとってアスランも大事な幼なじみでーー"友人"ではあるが、アークエンジェルにも大切な友人たちがいるし、それに彼女にとって今心の中でもっとも気になって、無くてはならない人物となる人が居るーーそれなのに自分だけ、その人たちを置いて居なくなるなど考えられないのだ。
彼女はありのままに其れをアスランに伝え、想いをぶつける。それを聞いたアスランは言葉に詰まり、言い返せない。
「戦争なんか嫌だって、貴方だって言ってたじゃない!!その貴方がどうしてヘリオポリスを――!」
「……状況も分からぬナチュラル共が――こんなものを造るから……」
「ヘリオポリスは中立だったんだよ!私だって!……なのに!」
昔から優しかったアスランが戦争なんかに参加しない人間だと信じてした。
だが今はどうか?彼はザフトの兵士として此処にいる。
彼女は内心裏切られた!っと感じていた。
アスランは詰まりながらも、自分なりに言葉を紡ぐ。しかしキラには言い訳にしか聞こえず、全く耳を傾けることはなかった。
その頃アークエンジェルでは、チャンドラが焦った声を出した。
「前方のナスカ級より、レーザー照射感あり!本艦に照準ッ!ロックされていますッ!」
「艦長!!」
ナタルはマリューに対して声をあげ、すぐさま迎撃体制の指示する。
しかしながら、マリューはそれに中止を呼びかけた。
「待って!大尉のゼロが接近中です!回避運動を!」
「危険です!撃たなければ撃たれる!」
実は現在ムウは作戦のために潜行中なのである。彼のメビウスゼロが前方のナスカ級に奇襲を掛け、その直後アークエンジェルによる追撃でこれを撃破、または撃退してアルテミスへ直行するというのが彼の案だ。
そのムウがようやく敵旗艦を捉え、捉えこれに仕掛ける。
「うおおりゃああー!!」
ムウが操るメビウスゼロがヴェサリウスに見事な奇襲を仕掛けていたのだ。
宇宙に浮かぶ残骸に上手く紛れながらにヴェサリウスに近づき、そして懐に入った直後、メビウスゼロのガンバレルとリニアガンによる一斉攻撃で、ヴェサリウスの機関部に甚大な損傷を与えることに成功した。
ヴェサリウスでは突然の奇襲により混迷を極めている。
オペレーターらの度重なる艦の状態報告に艦長であるアデスは激昂し冷静さを失い、隊長であるクルーゼは忌々しく苦虫を噛み潰しめて指示を下す。
「(ムウめ…!)離脱する!!アデス!!ガモフに打電!!」
奇襲成功の一報はアークエンジェルに届く。
その電文をジャッキー•トノムラが読み上げた。
「フラガ大尉より入電!作戦成功!これより帰投する!」
皆が安堵し、マリューも「ほっ」と、息を吐くとすぐさま命令の声を出した。
「機を逃さず、前方ナスカ級を討ちます!フラガ大尉に空域離脱を打電!ストライクにも射線上から離れるように言って!」
「ローエングリン!1番2番、斉射用意!」
ナタルはマリューの命令により、アークエンジェルの最大の武器であるアークエンジェルの両艦首に1門ずつ装備された陽電子破城砲「ローエングリン」が展開し、砲身にチャージが行われる。
その時、ミリアリアが声を上げた――。
「っ!ーーストライクが!」
キラはアークエンジェルを守るという意思のもと、覚悟を決めてイージスにビームライフルを連射して、戦っていたーーしかし戦うのも真面に出来ておらず、早くもストライクのエネルギーが危険域へと突入し、遂にはエネルギーが切れフェイズシフトがダウンし、メタルグレーに戻る。
それを好機と見たアスランはイージスをモビルアーマー形態へ変形させ、ストライクを対称の形状となった両手脚のクローで見事に捕獲してみせた。
「アスラン!?何を!?」
「……このままガモフに連行する」
「ふざけないでっ!私はザフトの船になんか行かない!」
「君はコーディネイターだ!僕達の仲間なんだ!」
「違う!私はザフトなんかじゃ――」
「いい加減にしろ、キラ!このまま来るんだ!でないと俺は、君を討たなきゃならなくなるんだぞ!」
「……アスラン」
アスランからの重々しく聞こえる声音に、キラは息を呑む。
っが、その時ーー
《キラ!!》
「っ!!ーーシンラさん!!」
通信からシンラの声が割り込んできた。彼の声を聞き、彼女は心より嬉しさが込み上がり声を挙げる。
「シンラさん!助けて!!」
《待ってろ!!キラ!!今行く!!》
その時、ストライクを保持するMA形態のイージスの上に乗るようにパワードが現れた。
突然のパワードの登場にアスランは驚きを見せた。
「あの機体は!?死神!!!」
「キラにーー触れるなっ!!!」
パワードの大出力ビームサーベルを展開させ、ストライクを掴んでいるクローの一本に向かって振り下ろし切り裂いた。
アームが切り裂かれたと共に爆発を起こし、ストライクが踠くように脱出することができた。
「キラ、早く船にもどれ!」
「――えっ、はい!で、でも――」
「いいから早く戻るんだ!」
「は、はいっ!」
シンラに言われた通り、キラは全速力でアークエンジェルへと向かった。
イージスが再びストライクを追うように動き出すが、パワードが大出力ビームライフルをイージスに向けて発射し牽制する。
イージスはMS形態へと変形し、何とか回避して再度ストライクを追おうとする。
「イージスはキラを落とす気が無い?――だが」
しかしこれ以上キラに近寄らせる訳にはいかないとーーシンラは殺気を強くする。
「彼女に触れる敵はーー全て、コロス!!!」
パワードは大出力ビームサーベルでイージスに斬りかかる。
イージスも両腕のクローを発振源とする内蔵型ビームサーベルを展開させて鍔迫り会う、しかしやはりサーベルの出力の差と元々機体性能、そしてパイロットの実力差が表面上に出てくる。
「何なんだ!!こいつ!!!異常だ!!!本当にナチュラルなのか!!?何だ!?撤退信号!?」
ヴェサリウスからの撤退信号にアスランは驚愕する、だが現状機体の損傷もあり、このままではストライク追撃処か自分すら危うい。
アスランはイージスをモビルアーマー形態に変形させて、その場から撤退する。
その時パワードのモニターに、アークエンジェルから閃光弾が打ち出されるのを確認する。
「後退信号か!」
光を確認すると、パワードのバーニアを噴射して戦域を離脱していった。
パワードとストライクが後退したのを確認し、アークエンジェルのブリッジにマリューの声が響く。
「ローエングリン、発射!」
彼女の号令と共に、カタパルトデッキ下の発射口よりーー陽電子破城砲「ローエングリン」から光の奔流をヴェサリウスに向け発射する。
「っ!!ーー熱源接近!方位000!!着弾まで3秒!」
「右舷スラスター最大!躱せっ!」
ヴェサリウスのオペレーターが慌てるように声を上げ、クルーゼは直ぐ様に荒げた声音で命令を出すが、ヴェサリウスの反応が遅く、左舷部分が光の帯に当たり装甲が破壊され激しい揺れが襲う。
「くっ!――ええい!!!モビルスーツの帰還はまだか!?何をしている!!!後退するぞっ!!!」
クルーゼの怒号がヴェサリウスのブリッジに響き渡った。
一方、アスランはイージスのコクピット内で大切な彼女が敵と言う絶望に、彼の心の中に沸いてくる。
アスランの両目からは涙がこぼれ、悲しげに口元より声が漏れる。
「っーーキラ……」
______________________________________
その頃、激戦を切り抜けたアークエンジェルの格納庫では帰還してくる機体の収容作業でごった返しとなっていた。
その中で、キラだけがコックピットから降りてくる事がなく、業を煮やしたマードックが、降りてこない彼女に怒鳴る。
「おーい!こら嬢ちゃん!」
その様子をドクターエイダも見ていた、そこへシンラがやってきた。
「どうしたんです?」
「彼女がコクピットから出てこないのよ」
「え…?」
シンラは無重力下の格納庫の中を飛び、急ぐようにストライクのコクピットまで駆け寄る。
コックピットカバーの強制開放スイッチを押し、ハッチが開けた。
「キラ!!!」
ハッチの開いたストライクのコックピットを覗くと、キラが今も操縦桿を握り固まっていた。
シンラはコックピットに体を滑り込ませて、操縦桿を握るキラの指を声をかけながら、一本一本優しく触れて外してあげた。
「ーーキラ、もういい。もう、戦闘は終わった……だからもういいんだ」
「し、んら………さん?」
濛々とし目から光が消えていた彼女ーーしかしシンラの姿を見かけると、瞳に光が蘇り直ぐに決壊したダムの如く、大粒の涙を流しながらヘルメットを無理やり外して彼に抱きついた。
「シンラさん!しん、らっ!!さん!!しん、らぁっーー!!!ああっ!!あああああああああっ!!!ううっ!!うぇええ!うああっ!!」
「キラ……」
抱き止めるシンラはそんな彼女を悲しげに見守るように見つめてやるしかできず、コクピットの外ではムウやマードックらも空気を読んだようで何も言わず、只々二人を見守っていた。
悲しむキラの慟哭が格納庫に響く中、アークエンジェルは目的地であるアルテミスへと近づきつつあった………。