機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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イメージOP:Line of sight(ガンダムアーセナルベース主題歌)

イメージED:SOLDIER-哀しみの詩-(ガンダムEVOLVE ep8主題歌)


PHASE13 宇宙の傷跡

アルテミスからの脱出に成功したアークエンジェルは月へ向けて航行中である。

 

「再度確認しました。周辺にザフト艦の反応なし、完全にこちらをロストした模様」

 

索敵していたトノムラの報告に艦長であるマリューは安堵の溜息を吐き、自分が座っている席に頬杖をつく。

その彼女に副操舵主の席に着くムウが話しかけてきた。

 

「アルテミスが、上手く敵の眼を暗ましてくれたってことかな?それだけは感謝だな」

 

「しかし...」

 

そのムウの言葉にナタルは全て同意できないような複雑な顔をする。それはマリューも同様である。

 

「えぇ――ローラシア級がロストしてくれたのは幸いだけど...こちらの問題はまだ解決してないもの」

 

アークエンジェルの問題――それは補給。ドクターエイダたちカンパニーの者たちが用意してくれた物資はまだあるが、しかしそれも無限ではない。

更に問題というのがあった、水の不足し始めたのだ。

このアークエンジェルには軍人である彼らだけでなく、ヘリオポリスの避難民もいる。

クルーの軍人らよりも比較的に避難民の数が多く、しかも水の不足は彼らの過剰な使用率が原因だったりする。

ドクターエイダたちが持ってきた水も余り過剰にあるわけではない。しかしこれがアークエンジェルの現状である。

何とかして補給も必要だが、アークエンジェルはそれでも懸命に月軌道への進路をとりながら、ザフトに気づかれずに進む航路を調べている。

 

「他にないのか!」

 

ナタルの強い声音がブリッジに響く。だがノイマンはそれに対して冷静に答え返す。

 

「無理ですよ。あまり地球軌道に寄せるとデブリ帯に入ってしまいます」

 

宙域図を表示し、コースの選定を行う。そんなノイマンにマリューがどうにかしてデブリ帯を抜けられないかを問いかける。

 

「突破は、無理よね?」

 

「デブリ帯をですか?!無理ですよ!この速度で向かったら、この船がデブリの仲間入りです」

 

っと彼女に危険であると教える。そうノイマンが話す中、ムウが一人言で「デブリ……待てよ、デブリ帯、か」っと何か閃いたのか、彼はニコリと笑みを溢す。

それに対してナタルがムウのその自信に満ちた様子に首を傾げる。

 

「え?」

 

「不可能を可能にする男かな?……俺は」

 

 

________________________________

 

 

その頃、プラント本国へと帰還したアスランは隊長のクルーゼと共にプラント首都•アプリリウスの最高評議会の議場へと向かっている。

その最中、エレベーターに備え付けられたモニターにニュースが流れており、そこにはプラント最高議長であるシーゲル•クラインや他の議員、そしてシーゲルの後ろにはピンク色の髪をした美少女が立っている。

 

「そういえばアスラン、彼女ーーラクス•クラインが、君の婚約者だったな?」

 

「は、はい!」

 

「ラクス嬢は今回の追悼慰霊団の代表を務めるそうじゃないか。素晴らしいことだな?」

 

「は、はい…」

 

「ザラ国防委員長とクライン最高議長の血を継ぐ君らの結びつきーー期待しているよ、アスラン」

 

「はい、ありがとうございます」

 

アスランの表情は変わりは無かったが、しかしその心中は違った。

確かにラクス•クラインは、同い年でありながら誰もが羨む美しさを誇る素晴らしい女性ではあるーーあるが、アスランの心中には彼女ではない別の女性の顔がハッキリと映っている。

だがそれをアスランは口には出来ない、その女性への想いはずっと直隠しにしていたのだから……。

だが彼女とヘリオポリスで再会したことが切っ掛けで、彼の彼女への想いは強くなった。

 

「(キラ……)」

 

________________________________

 

 

その一方、アークエンジェルではムウが在ることを閃き、シンラやキラ、キラの友人たち、そしてドクターエイダを呼び集めて話を行っていた。

 

「補給を?受けられるんですか?!」

 

まずサイが思わずムウに問いかける。それにムウは何とも複雑そうな顔で返答した。

 

「受けられるというか、まぁ勝手に補給をすると言うかーー」

 

ムウの話にマリューもまた複雑な面持ちであったが、ナタルが代わりに答える。

 

「私たちはデブリベルトに向かっている」

 

「デブリベルト?」

 

トールやミリアリアは聞き慣れない言葉に互いの顔を見合せ、カズイは不思議がり、フレイも同じく何のことか分からすにいる。

キラはずっとシンラの傍らで彼の軍服の袖をそっと掴んでいる。

ドクターはデブリベルトと聞いて「まさか………」っと呟き、学生でありながら聡いサイも「もしや!!」っと声をあげる。

そしてどういうことか直ぐに分かったシンラが、未だに分からないキラたちに教える。

 

「デブリベルトにはーーあらゆるモノが漂流してきた宇宙のごみ捨て場、または墓場だ。そこには当然戦闘で破壊された戦艦などもある」

 

っと無表情で冷徹にそう口にする彼の話に、キラたちヘリオポリスの学生らは一瞬寒気のようなモノを感じた。

トールはそこでまさか補給を行うのかとムウに問いかける。

 

「まさかそこで補給をしようってんじゃーー」

 

「仕方ないだろ?でないとこっちが持たないんだから…」

 

「貴方たちには、その際にポッドでの船外活動を手伝って貰いたいの…」

 

申し訳なく罪悪感が募っているような顔でマリューが、サイやトールたちにお願いする。

キラたちは不安げにし、ドクターとシンラは無表情となっている。

尚もマリューは彼らに言う。

 

「失った者たちを漁ろうという訳じゃないの………ただ、私たちが必要なものを分けて貰おうというだけ……生きる為に」

 

「……」

 

シンラはマリューの姿に思うーー彼女はきっとこの方法に難色を示して、反対していたんだと。

だがアークエンジェルの内情を思うと、強く徹することは出来なかったんだろうとも。

そこへドクターがそんなマリューに助け船と口を開いた。

 

「艦長、私やスタッフも作業に当たりましょう」

 

「エイダさん……いいのですか?」

 

「えぇ、子供たちにやらせて、大人の私たちは船に籠るなんて情けないでしょ?それに多い方が作業も早く終わりますよ」

 

「ありがとう……エイダさん」

 

彼女の言葉が救いだったのだろう、マリューは安堵するように笑みを浮かべる。

エイダも笑みを見せて、スタッフたちに指示を出すべく一足先にブリッジを退出する。

 

「作業の護衛に、ストライクとパワードも出てもらいます。

キラさん、シンラ中尉、お願いします」

 

「は、はい!」

 

「了解」

 

そしてデブリ帯へ物質となるモノの回収作業のために、シンラたちはアークエンジェルより出撃する。

アークエンジェルに搭載されている作業用のミストラルには、サイやトール、ミリアリア、カズイ、更にドクターエイダとカンパニーのスタッフらも搭乗している。

その護衛としてエールストライクとパワードが出ている。

彼らはデブリ帯へと到着するーーっが、彼らはそのデブリ帯に赴いて驚愕した。

何故ならばそこには嘗て地球軍が放った核ミサイルによって、その多くの命が失われたコロニー………ユニウスセブンが、その巨大な残骸が宇宙の墓場を漂っていた。

 

「シンラさん……ここって」

 

「ああ……ユニウスセブンだ」

 

ユニウスセブン……嘗て血のバレンタインと呼ばれた事件によって、破壊されたコロニー。

プラントの有力都市のユニウス市に所属する農業用プラントであり、ブルーコスモス派の将校が用意したとされる核ミサイルを搭載したメビウスがザフトの警戒網を突破してユニウスセブンに発射、住人24万3721名全員が死亡する大惨事を引き起こした悲劇の地である。

 

ザフトはその報復として地球に向けてニュートロンジャマ-を投入し、地球人口の1割である10億人が被害を受けた“エイプリル・フール・クライシス”と並び両軍の対立を決定付けた。

 

そのユニウスセブンを発見した一行は、どうすべきか悩み一先ず一度アークエンジェルに帰還して、マリューの決断を仰ぐ。

 

彼処には二億トン程の氷塊があり、コロニーの維持に必要な物資も損傷が軽く未だ使えるモノもあった。

これに対してマリューはやはり、悲劇の地となった場所も相まって難色を示してしまうーーっが。

 

「回収作業をしましょう、ラミアス艦長」

 

「エイダさん……」

 

一番最初に口を開いたのは、ドクターエイダであった。

彼女は飽くまでも現実的に考える人物であり、今自分たちが生きる為には今あるモノを利用すべきと進言する。

ナタルも、そしてムウも彼女の発言に支持する形でこの議論はユニウスセブンから物質回収を行う事となった。

 

キラたちはもう一度回収作業に赴く前に、避難民の幼い女の子と一緒にユニウスセブンへの慰問の為に、折り紙で折り鶴を折ることとなった。

 

「こうするの?」

 

「うん!」

 

キラは優しい笑みで小さな女の子に聞きながら、ミリアリアとフレイと共に折り鶴を折っていた。

その様子をシンラは見守るように見ていたその矢先、マリューが彼の元にやってきた。

 

「貴方たちには辛いことばかりをお願いして、ごめんなさい……」

 

「艦長……」

 

マリューは悲しげに女の子と共に折り鶴を折るキラたちを見つめる。

 

「あの子たちにやりたくもないことをさせてるわね……。ーー情けなくて、頼りない艦長よね」

 

「そんなことは……」

 

自虐的に話すマリューにシンラは否定するが、彼女は首を左右に振るう。

 

「いいの……私は甘過ぎる。昔上官には何度も言われたわ」

 

「………」

 

そう語る彼女をシンラは静かに見つめる。彼女は軍人としては確かに甘いのだろう……的確に且つ冷静にそして冷徹な判断が軍人に、そして指揮官にはそれが求められる。

だがそれでもと、シンラはーー

 

「でも自分は、ラミアス艦長がこの船の艦長で良かったと思ってます」

 

「え……?」

 

シンラの不意の発言に眼を丸くしてしまう。

 

「艦長はそのまま、その優しさを捨てないでください。その甘さもーー」

 

「中尉……」

 

「艦長がその優しさを捨てず、冷血になりきれない代わりに自分がなります……それもキラや皆を守る死神として。

当然ラミアス艦長のことも、全力で守ります……俺のこの手、多くの人間の血で染まったこの手でーー俺はその為に存在しているんですから」

 

「シンラくん……」

 

無表情ではあるが、その言葉が本心からであると察するマリュー。暖かく感じるも、だが同時に彼は自分が戦いの為だけに存在していると言っているようで悲しくも思った。

 

「ありがとう、シンラくん…」

 

彼女は潤んだ瞳で彼にそう感謝を述べるのだった。

 

 

________________________________

 

ユニウスセブンにもう一度赴いたシンラたち。

作業を入る前にストライクから降りたパイロットスーツ姿のキラが、胸に抱いていた皆で折った折り鶴を宇宙空間に漂うユニウスセブンに傾けと慰問の意味を込めて放り放つ。

皆誰もが亡くなった者たちへ祈るように眼を閉じる。

誰しも悲劇の場所に、深い悲しみと哀れみの念を以て黙祷を捧げるのだった。

 

そしていよいよ、ユニウスセブンでの物質回収が始まった。

その中でマリューはエイダに作業状況を確認する。

 

「エイダさん、作業はあとどれくらい?」

 

「そうね、あと四時間ってとこかしらね。弾薬の方はあと一往復で終わりよ」

 

キラのストライクとシンラのパワードが周囲を警戒していた時であった、彼女が何かを発見する。

 

「シンラさん!あれ!」

 

「ん?………あれは、民間船?」

 

「撃沈されたんですかね?」

 

「おそらくはな………ん?」

 

その時であった、船の影よりモビルスーツが現れる。

形状はザフト軍の量産モビルスーツであるジンであるが、装備が異なっている。

機体の両肩にレドームが装備されて、狙撃用ロングライフルも持っている。

 

「あれって!?ザフト軍!シンラさん!」

 

「強行偵察型ジンだ……不味いぞ、奴の索敵能力ならすぐにアークエンジェルも捕捉してしまう」

 

「し、シンラさん……」

 

「お前はドクターたちの元にいけ」

 

「シンラさんは?!」

 

「俺は……奴を片付ける」

 

そう言いつつパワードの大出力ビームライフルが、偵察型ジンに向けられる。

キラは察するーーシンラは間違いなくあの偵察型ジンを撃破、それはつまりあれのパイロットをーー殺すと。

またシンラばかりにとキラは己の不甲斐なさを噛みしめる。

そして彼女は意を決し、エールストライクをパワードの前に出してビームライフルを偵察型ジンに向けて構える。

いきなりのことにシンラは驚き、彼女に問いつめる。

 

「なにしてるんだ!キラ!」

 

「わ、私が、やります!」

 

「よせ!!お前は……っ!!」

 

っが、状況はそうは言ってられなかった。トールとミリアリアが乗る作業用ミストラルが偵察型ジンに気付かれてしまった。

奴は長距離狙撃用の装備であるスナイパーライフルで、二人が乗る作業用ミストラルに攻撃する。

偵察型の攻撃をトールは操縦して辛くも避けるが、このままでは間違いなく二人は死んでしまう。

ジンが狙いを定め、二人が乗るミストラルを撃とうとしたその時ーーキラは震える手でトリガーを引いた。

 

ストライクから放たれたビームは、初弾で偵察型ジンのコクピットを撃ち抜き、爆発した。

 

「あ、ああ………っ………わ、わたし……」

 

「キラ……」

 

「し、シンラ、さん………わ、わたし!や、やりました……!やった………」

 

彼女の身体全身が止まらぬ震えに襲われるーーこの時、彼女は初めて敵兵をーー人を殺したのだ。

その事実が変えられることはなく、ただ結果として残り、彼女にのし掛かる。

シンラはそんな通信越しに聞こえる、彼女の必死に声を押し殺すすすり泣き声を聞いて握る拳に力が入る。

もっと早く自分が偵察型を撃っていれば、彼女にこんなことをさせずに済んだ、と。

その時だった、パワードのレーダーに反応があり、モニターで確認するとそこには一隻の1人用の救命ポッドが漂っていた。

 

「救命ポッド?」

 

「え……?」

 

泣いていたキラもそれに反応する。そして救命ポッドを見つけ、シンラはそれを回収してアークエンジェルへと帰還する。

アークエンジェルの格納庫にマリューやナタル、マードックやドクターエイダ、そしてシンラとキラが回収した救命ポッドの前に集まっていた。

 

「つくづく、中尉は落とし物を拾うのがお好きなようですね?」

 

っとナタルの皮肉を言われるシンラだが、ポッドの端末にアクセスしているドクターエイダがドアを開けると告げる。

 

「開けるわよ?」

 

警備兵らが警戒し銃を構える中、ポッドからーー

 

〈ハロ、ハロー。ハロ、ラクス、ハロ〉

 

ポッドから桃色のボール状の小型自律ロボットが出てきた。

だがそれだけではなくーー

 

 

 

「ありがとう。ご苦労様です」

 

それは美しい桃色の髪と、透明感のある水色の瞳が印象的な少女だった。

柔らかで綺麗な髪を靡かせ、救命ポッドから出てきた彼女は笑顔を浮かべていた。

唖然とするシンラは、ハッと我に戻って宙を浮かび通り過ぎゆこうとする彼女の手を掴んで上手く引き止めた。

 

「ありがとうございます」

 

彼女はシンラに対して笑みを浮かべ、礼を口にするのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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