機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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PHASE16 目覚めし牙

クルーゼ率いる艦隊が、アークエンジェルを出迎える地球軍第8軌道艦隊先遣隊と戦闘中であった。

ヴェサリウスや二隻のローラシア級よりイージスを含めた11機のジンの猛攻に、先遣隊のモビルアーマーのメビウスでは全く歯が立たず、無惨に次々に撃墜されていく。

ジンは重突撃機銃やM68キャットゥス 500mm無反動砲で、メビウスをまるで狩りに追い込むか弱い獲物を追い回しながら最後に撃破する。

モビルスーツであるジンにモビルアーマーのメビウスが勝てる要素など全くなく、最早一方的なまでの展開。

その中でもアスランが駆るイージスはその中でも多くのモビルアーマーを撃破している。

 

その中で戦域から離脱すべく撤退しようとするドレイク級のバーナードを見つけ、逃がすまいとイージスはMAである巡行形態に変形し、逃げるバーナードを追いかけて取り付き、クローでバーナードの船体の装甲に鷲掴んでから、船の動力源に向けてスキュラを発射する。

ゼロ距離よりの強力なビームを撃ち抜かれて、バーナードは無惨に撃沈されてしまう。

逃げる敵軍の者たちを追い回して容赦なく命を奪うというのは、戦場において非道とも言える。

しかしザフトの連中からすれば、血のバレンタインを引き起こした地球軍を狩りの獲物みたく殺しても何の罪悪感は抱かない。

それにアスランはあのユニウスセブンで母親を亡くしている、ナチュラルを滅ぼしたいという訳ではない――しかし未だ戦争を長引かせる地球軍には情けをかけるつもりはない。

 

「貴様らさえ居なければ!」

 

バーナードを撃沈されてメビウスのパイロットたちは敵討ちとイージスに向かって吶喊する。

だがイージスはそんなメビウスを難なく躱し、すれ違いざまにサーベルで切り裂き、ビームライフルで打ち落とす。

機体の数では先遣隊が上だが、しかし量があってもモビルスーツという圧倒的な質を相手では無意味である。

第8艦隊先遣隊のモントゴメリの艦長コープマン少佐と、フレイの父であるアルスター事務次官はこの状況に覚悟した。

そのモントゴメリに二機のジンが一斉にブリッジに向けて重突撃機銃の銃口を向ける。

最早これまで!――っとその時であった、遠くから二筋の大きな閃光が走り二機のジンに直撃、堪らず同時に爆沈する。

 

「な、なんだ?!いまのは!?」

 

「艦長!ポイント、マークαにモビルスーツ!!これは――」

 

そこにはアークエンジェルより出撃し、今回の戦闘のために換装したパワードイェーガーが、手持ちの武器である105mm高エネルギーロングレンジライフルで狙撃してくれていた。

その随伴にエールストライクも居り、更にその後方ではアークエンジェルが来ていた。

 

「アークエンジェルです!」

 

「おー!来てくれたか!!」

 

オペレーターからの報告にジョージ・アルスターは安堵し冷汗を袖で拭うが、しかし隣に座しているコープマンは自身が座る艦長席の肘掛けに八つ当たりするように乱暴に叩きながら一人言う。

 

「バカな!!何故きた!?」

 

アークエンジェルとストライクは地球連合にとって僅かな希望と言っても過言ではない、この戦闘には参加させず、戦域から遠く離れて単身でも本隊と合流して欲しかった。

しかしこの戦闘に巻き込まれアークエンジェルとストライクが失っては、今までの犠牲が本当にただの無駄になってしまう。

 

先に先行していたムウはガンバレルでの一斉攻撃でジンを一機撃破しながら、遠距離から二機同時に撃破したシンラの腕前に驚嘆していた。

 

「すっげなぁ!ほんと!俺も負けてられねぇなぁ!」

 

「キラ、モントゴメリを頼む!俺はザフトのモビルスーツ部隊を狩る」

 

「わかりました!」

 

キラに指示し、シンラは漆黒の宇宙にてパワードイェーガーを走らせる。パワードやパワードシュナイダーでは――処か、従来全てのモビルスーツでは有り得ない程の高加速にザフトのモビルスーツパイロットらは驚愕する。

 

「な!?なんだ!?」

 

「お、追いきれない!!」

 

「乗っているのナチュラルなのか!?」

 

度肝抜くザフトの連中に対し、パワードイェーガーは両肩部にはそれぞれのサイドバインダーの大型ビームバスター――150mmn二連装式超高インパルス砲を同時に斉射し、三機のジンを纏めて撃破する。

更にライフルを折りたたみ、腰にマウントし通常パワードと同じ大出力ビームサーベルを展開して、残りのジンに目掛けて襲いかかる。

 

ストライクもモントゴメリに急行し、攻めるジンに攻撃する。彼女は人を撃つことを、殺すことを未だに恐れ手が震えてしまうが、しかしそれではまたシンラに頼るだけになって負担をかけてしまう――そんなのはもっと嫌だと彼女は覚悟を決めて恐れを持ちながらも、トリガーを引いてジンを撃墜する。

 

「あれはストライク!!キラが――いま、撃った...?人を殺した...?あのキラが....?う、噓だ!!!」

 

その光景を目撃したアスランは驚愕し、信じたくないと目の前の現実を否定するように被りを振ってストライクに向かって飛ぶ。

 

「キラぁ!!」

 

「アスラン!!」

 

イージスはストライク両腕を掴み、接触状態でアスランが彼女に呼びかける。

 

「君はどうして!!どうして同じコーディネイターに手をかけるんだ!!そんなことはやめてくれっ!!」

 

「は、離して!」

 

「き、キラ!!」

 

彼女のストライクは強引にイージスのバイタルエリアに蹴りを食らわせ、ライフルの銃口をイージスに向ける。

 

「私は決めたの!!覚悟を決めて戦うって!!」

 

「そんなの!ナチュラルどもに強要されたんだろ!!?そうなんだろ!!!君はそんな子じゃない!!優しい君に銃は似合わない!!どうか俺と一緒に来てくれ!!一緒にプラントで暮らそう!!」

 

アスランはどうしても彼女をプラントに連れて行こうとしている。しかしキラは冷淡な顔でイージスにビームライフルを発砲する。

いきなりのことにイージスは躱すことが出来ず、肩装甲が撃ち抜かれてしまう。

唐突なことにアスランは驚愕する、まさかあの心優しいはずのキラに攻撃されるなんて思いもしなかった。

 

「私たちの、邪魔をしないで!!」

 

「キラ....」

 

 

_________________________

 

 

その間にシンラは、未だ残るジンと戦闘していたが、しかし戦闘とは言い難いものだった。

パワードイェーガーの並みのパイロットでは追いきれない高加速の機動力に、上手く対応できず次々にビームサーベルの餌食になっている。

一機はすれ違いざまに袈裟斬りにされ、一機は真っ正面から上段より一気に真っ二つにされ、一機は頭上より垂直にサーベルに貫かれ、そして最後の一機は四肢をバラされてからロングレンジライフルで撃たれ撃破される。

 

パワードが戦闘に参加してからまだ三分しか経っていないが、既にもうクルーゼが投入したモビルスーツ隊の殆どがシンラによって落とされてしまった。

残るジンは一機となり、パワードイェーガーの複眼がその最後の一機を捉える。

 

「ひぃいい!!こんなのきいてないぞ!!!」

 

抵抗する気もなくジンはパワードに背を向けて逃げ出すが、しかしシンラは逃がす気はない。

ロングレンジライフルを逃げるジンの背に向けてビームを放なたれ、背中よりその閃光を受けてジンは脆くも爆発を起こした。

 

「これで終わりか...あとは艦隊」

 

っとその時だった。パワードイェーガーに対し、攻撃がきた。

シンラはそれを直感で感知し、これを上手く回避した。

 

「今のは....」

 

《ほう?これを避けるか?さすがはグリマルディ戦線の死神だな》

 

「通信?......あれは」

 

彼が目にしたのは、胸部・肩部・前腕部に装甲が追加され、背部ウイングと脚部にスラスターが増設され、手にはバルルス改を持つシグーらしきモビルスーツがそこにいた。

 

「君とは以前、エンデミュオンクレーターで出会ってはいるが、しかしこうして言葉を交わすのは初めましてだな」

 

「貴様は?」

 

「私の名はラウ・ル・クルーゼ――君という存在に心を奪われた者さ」

 

「そうか――なら、死ね」

 

パワードイェーガーはロングレンジライフルからビームをシグーに向けて発射、しかしクルーゼはこれを難なく回避し代わりにバルルス改を放つ。

シンラもこれを意図も容易く避けて、両者ともに撃ち合いが行われる。その一糸乱れぬ射撃の応酬の中でクルーゼは嗤う。

 

「フフフッ、やはり凄まじいなぁ!流石は死神だ!これ程の強さ――ナチュラルなのかと疑うよ、君は果たして何者なのかね!!」

 

「なに?....俺が何者だろうと貴様には関係ない!」

 

「ハッ!!己の何なのか、言葉にできないか!!それでは君はただの人形だな!!」

 

 

その時、キラの言葉がフラッシュバックする。

 

 

それじゃあシンラさん、戦いに縛られた戦いの奴隷ですよ!!

 

 

「く!」

 

「どうしたかね!!己が何者かと示すこともできないとは、何とも惨めなものだな!!」

 

「黙れ!!」

 

ロングレンジライフルを数発連射してから、ビームサーベルを展開してクルーゼに襲いかかるが、クルーゼはこれを避ける。

 

「その程度、このシグーアサルト!そう易々とやられん!!」

 

「ちぃい!!」

 

 

 

両者の攻防は未だ続く。その一方でキラはアスランと対峙している最中である。

 

「戦う気がないなら、アスラン――ここから消えて」

 

「キラ!!なぜだ!!どうして分かってくれないんだ!!」

 

「私はザフトにはならないし、プラントにもいかない!!」

 

一向にアスランの想いは通じない、処かキラは間違いなく此方に敵意を向けてくる。

どうして?なぜ?キラはどうして幼馴染である自分にこうも拒絶し、敵として銃を向けるのか理解できなかった。

その時、二人のモニターにシンラのパワードイェーガーとクルーゼのシグーアサルトが攻防一体の激闘を繰り広げられているのを目撃する。

 

「隊長!!」

 

「シンラさん!!」

 

アスランはクルーゼを呼び、キラはシンラの名を呼んだ。その時、アスランは通信機に映る彼女の顔を見た――その顔はまるで愛しき人を案じる女性そのものだった。

それはこの今まで、再会して以降見ることはなかった彼女の女性らしい一面。

昔は沢山、自分に儚くも優しい笑みを浮かべてくれた彼女が自分以外の誰かに名を呼んで浮かべている。

しかも聞くかぎり、その名前は男のものだった――つまりキラは、自分以外の男の名を呼び嬉しそうに且つ憂いに満ちた顔をしている。

その時、クルーゼより通信がくる。

 

《アスラン!!二人で死神を仕留めるぞ!!》

 

クルーゼより対峙しているのは死神だというのが分かった。死神――ヘリオポリス崩壊の時や、アークエンジェルの追撃の際も自分がキラを連れ出そうとするも邪魔した存在。

その死神に彼女は自分には向けてはくれない表情を向けている――その時、アスランの心にある考えが浮かぶ。

 

――キラを地球軍に縛りつけているのはきっとあの死神だ、奴はきっとキラを手籠めして良いように利用しているに違いない、と。

そう思った瞬間、アスランの脳裏に美しい裸体姿のキラが背後より死神と思しき男に無理矢理抱き寄せられ、瞳を潤ませているという彼の都合の良い妄想が浮かんでいる。

 

「ぐぅ!!!しにがぁみぃいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」

 

アスランの乗るイージスは両手両足より内蔵式ビームサーベルを展開して、パワードイェーガーに襲いかかる。

 

「っ!イージスか!!」

 

「死神ぃいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!貴様さえ居なければぁ!!!」

 

イージスは目にも止まらない斬撃でパワードイェーガーに斬りかかるが、それを大出力ビームサーベルで悉くいなし、全ての攻撃を躱す。

 

「シンラさん!!」

 

キラのストライクもシンラを援護すべくビームライフルを構えるが、クルーゼのシグーアサルトが阻みバルルス改を発射する。

 

「ううっ!!」

 

辛うじてシールドで防御するも、上手くシンラの助けにいけない。その間にもイージスはパワードイェーガーに攻撃し続ける。

シンラは苛烈に攻めてくるイージスに苦虫を嚙み潰したように、厄介な奴と舌を巻く。

その時、ムウの操るメビウスゼロがイージスに向けてガンバレルを展開して発射する。

 

「大丈夫か!!シンラ!!」

 

「大尉!!」

 

「邪魔だぁ!!」

 

こうもナチュラルが憎いと思ってしまうアスラン。彼の中で大切なキラを守りたい、取り戻したいという感情が限界を超え、その時アスランの中でナニかが割れる。

彼の瞳のハイライトが消失し、すると同時にパワードイェーガーの素早すぎな動き一つ一つが知覚できるようになった。

 

「これならいける!!今度こそ!!ここで討つ!!」

 

イージスはまず邪魔したメビウスゼロに襲い掛かり、ビームサーベルでリニアガンとガンバレルを切り裂く。

 

「ぐあああ!!」

 

「大尉!!」

 

損傷が酷いメビウスゼロに尚も止めを刺そうとイージスは襲いかかろうとしたが、しかしそれを新たに阻む者が――それは先遣隊のモビルアーマー隊であった。

自分たちが出迎えるはずのアークエンジェル隊が命をかけているのを見て、このままただ助けられる訳にはいかないとイージスやシグーアサルトに仕掛ける。

 

「アークエンジェルの連中を守れ!!」

 

「おうよ!!このままただ守られるなんざ御免だ!!」

 

「彼らを守るんだ!!死ぬのはその後だ!!」

 

生き残っている全てのメビウスがイージスやシグーアサルトを攻撃する。

クルーゼのシグーアサルトは仕掛けてくるメビウスをバルルス改で撃破しつづけ、イージスもビームサーベルで切り裂いていく。

 

「邪魔だぁ!!俺の邪魔をするなぁ!!!」

 

すべての敵の動きが知覚化し、どう攻撃するかも分かっているかのようにメビウスをまるでハエを叩き落す要領でどんどん切り捨てていく。

 

「よせ!!!イージスに近づくな!!死ぬぞ!!」

 

シンラは通信でメビウスのパイロットたちに呼びかけ、逃げるように促す――っが、メビウスのパイロットらは通信で静かに安らいだ笑みを浮かべて敬礼をする。

彼らは自ら特攻することでシンラたちに逃げるように促しているのだ。その自ら死を選びイージスに吶喊する兵士たちの姿にアークエンジェルのブリッジでは言葉を無くしていた。

 

「これは....」

 

「そんな....」

 

マリューやナタルはやっと出せた声である。その時、ブリッジの出入口のドアが開き、フレイが入ってきた。

 

「パパの船は!?」

 

「フレイ!?」

 

「民間人は立ち入り禁止です!!」

 

突然フレイが入ってきて、皆驚愕する。しかし父親が乗る船の無事が気になる彼女は居ても立っても居られないのだ。

サイはCICの席から離れてマリューに問い掛けるフレイを諌める。

 

「フレイ!だめだ!!」

 

「サイ離して!!パパが、パパの船が!!」

 

「だめだ!!」

 

そんな時だった。アークエンジェルのモニターにモントゴメリの艦長のコープマンとジョージ・アルスターが映し出される。

 

「コープマン少佐!!」

 

《ラミアス大尉、もういい。貴艦らはよく戦ってくれた....本来迎えにきた我ら、なのに敵に追い込まれてるのを助けに来てくれた...感謝している。だがもういい...アークエンジェルは、モビルスーツら共々直ちに戦域より離脱するのだ!.....貴艦らの無事を祈る!》

 

コープマン少佐もそしてアルスター事務次官も、メビウスのパイロットらと同じ安らいだ笑みを浮かべている。

そしてジョージはモニターにフレイが居るのに気付き、優しい笑みで最後となる言葉を伝える。

 

《フレイ...すまない。迎えに来たのにこんなことになって...》

 

「パパっ!!」

 

《だがフレイ...どうか、私のことは忘れて元気に健やかに生きてくれ....パパからの最後の願いだ....》

 

「そんな!!パパぁ!!!」

 

ジョージは安らかな笑みを浮かべてそこで黙り、最後にコープマン少佐が口にする。

 

《これよりモントゴメリは、敵艦隊に特攻をかける!!貴艦はその隙に逃げろ!!》

 

「コープマン少佐!!」

 

コープマン少佐は何も言わず、敬礼のままそこで通信を終わらした。アークエンジェルとの通信を打ち切ったコープマン少佐はクルー全員に命令する。

 

「これより、本艦は敵艦隊に特攻を仕掛ける!!僚艦のローにも打電!本艦が特攻仕掛ける内に離脱せよと!」

 

「は!」

 

オペレーターにそう伝え、隣に座っているアルスター事務次官に退艦するようにと告げる。しかし彼は首を左右に振り、それを断った。

 

「自ら此処に来たんだ。最後まで見届ける義務がある」

 

「...事務次官――わかりました!これ以上何も言いません」

 

モントゴメリがヴェサリウスや二隻のローラシア級目掛けてメインエンジンを全開噴射、一気に特攻をかける。

それを見たクルーゼは、ヴェサリウスのアデスに告げる。

 

「アデス!敵艦がそっちに突撃するぞ!!奴らは特攻をかける気だ!!打ち落とせ!!!」

 

クルーゼの知らせによりヴェサリウスを始め、二隻のローラシア級は火力を展開し接近しつつあるモントゴメリに攻撃する。

ブリッジではアデスがクルーらに激昂しながら指示する。

 

「火線を敵艦に集中しろ!!僚艦二隻にもそう伝えろ!!」

 

三隻による一斉攻撃に晒されるモントゴメリ――そのブリッジにて通信がくる。

 

「なんだ!?」

 

「アークエンジェルのモビルスーツからです!!」

 

「なに!?」

 

通信してきたのはシンラであった、彼はモントゴメリに退くように告げに通信してきたのだ。

 

《モントゴメリ!離脱してください!!こんなのは無謀です!!》

 

「貴官は?」

 

《アークエンジェルのシンラ・ユーリ中尉です!早く離脱を!!》

 

「ユーリ中尉、貴官らはよく戦った...感謝している、我らはもう助からない、ならば最後に己の命をもって大天使の航海を守らん」

 

「っ」

 

コープマン少佐は決意に満ちた顔でシンラに言う。シンラは彼の決意にこれ以上水を差すような言葉を吐くことが出来ず、ただ苦虫を嚙み潰した顔を浮かべる。

その彼にジョージは頼みこむ。

 

「私から頼む、ユーリ中尉――娘を守ってほしい。娘だけじゃないアークエンジェルもだ、あの船は我らにとっての希望なのだ....頼む!」

 

《...》

 

「どうした!!ユーリ中尉!!事務次官殿の言葉を復唱せよ!!」

 

コープマン少佐は軍人らしく毅然とシンラに軍人として務めをせよと促す。これにもシンラは止められないと覚悟を決めて復唱する。

 

《...必ず、アークエンジェルや事務次官のご息女を守ります...約束いたし、ますっ》

 

シンラは通信越しで歯を食いしばっている、しかしそんな彼に対しコープマン少佐は安らかな笑みで敬礼する。

 

「中尉、貴官の力で若者たちのことを守ってくれ....さらばだ!!!」

 

 

「っ!!モントゴメリ!!!」

 

シンラが叫んだ瞬間、ヴェサリウスや二隻のローラシア級からの一斉砲撃によってモントゴメリは敢え無く撃沈してしまい、この漆黒の宇宙の塵と消えた。

その光景はアークエンジェルでも確認でき、見ていたフレイは泣きながらに叫んだ。

 

「パパぁ!!!いやぁああああー!!」

 

目の前で父親が死んだという事実に彼女は止まぬ哀しみの慟哭を叫ぶ。

モントゴメリが沈む姿はキラやムウも見ており、自分たちがもっと早ければと後悔する。

そんな中、生き残っている先遣隊の護衛艦ローが戦域を離脱しようとしていた――っがしかし、それをザフトは許さんとヴェサリウスの砲撃が捉え、逃げる背を向けるローを撃沈してみせた。

 

「っ!!....なぜだ....すでに戦意はなかった!!!なぜぇ!!!!!」

 

叫ぶシンラ――その彼に嘲笑うようにクルーゼが言う。

 

「ハッ!!何を今更!!これが戦争なのは君も理解しているだろう?ならばこれは必然なのだよ」

 

彼の言い分に操縦桿を握る力が増す――確かにこれは戦争だ、そこに明確なルールや線引きなどない。

しかしシンラの中でその言葉が不快だった、不愉快だった、確かに自分も似たようなこともしたこともある。

しかし今の彼の心情にそのような理屈が入る余地がなかった...そして。

 

 

「確かにこれは戦争だ、俺も人のことは言えない......だがなぁ」

 

その時、鬼神の如き強さでメビウス隊を斬り伏せたイージスが「今度こそ」とパワードイェーガーに迫りつつある。

 

「死神ぃいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

 

 

「シンラさん!!」

 

「シンラ!!」

 

シンラの名を叫ぶキラとムウ、それにアークエンジェルでも――

 

「シンラくん!!!」

 

マリューが人目に憚れることも気にせずに彼の名を叫び、艦内の部屋にいるラクスがハロを抱いて――

 

「シンラ様...」

 

アークエンジェルの面々が彼を案じる中、格納庫よりモニターで戦闘を見ていたマードックや整備員ら、そしてカンパニーのスタッフらが釘付けになる中で一人――ドクターエイダは呟いた。

 

 

 

 

 

「さぁ目覚めなさい、シンラ――見せてあげるのよ、古い種どもに、フフッ」

 

 

そして――シンラの感情が頂点に突破する。

 

 

 

「それを!!貴様が!!!......嗤うなぁああああああああああああああああああ――――――ッ!!!!!

 

その時、パワードイェーガーにイージスが斬りかかる。

 

「これでおちろぉ!!!!」

 

降ろされたビームサーベル――しかし瞬間、イージスのサーベルは一向にパワードに当たることはなかった。

どういうことか、アスランは振り下したはずの腕に眼を向けるといつもの間にか、腕がもう切り落とされていた。

 

「なに!?どういう!!」

 

っがその言葉より先にイージスの頭部がパワードイェーガーによって一気に切られた。しかしその連撃は続き、イージスの腕、両足をも切り裂かれ敢え無く無惨にダルマとなってしまい、そのままパワードはサッカーボールを蹴るイメージでクルーゼのシグーアサルト目掛けて蹴り飛ばす。

胴体のみとなったイージスは面白いようにシグーアサルトに直撃し、クルーゼの機体は思わぬ攻撃に大きく仰け反るのであった。

 

「ぐうっ!!これは...!!」

 

余りに尋常ではないパワードの様子にキラたちは啞然としていた。

 

 

「し、シンラ....さん?」

 

 

 

その時、パワードのコクピット内のシンラの眼――あの黒い瞳が、白くなり目の周りに黒い線が浮かび上がっていた。

そして彼の顔から感情が消えたように、人形のように無表情になってしまった....。

 




次回予告


虚空に去った者たち

そして、消えた命

取り戻せない物はどれか?

目覚めし己の衝動に悩むシンラ、そして彼の力となりたいのになれないキラ

今の自分に課せられた使命を知る時、突き抜け放たれた物は?

次回、機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD『捨てられぬ力』
駆け抜ける宇宙に、何を生むのか!ガンダム!
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