これからもどうかよろしくお願いいたします。
原作準拠の方はブラウザバック推奨します。
第8軌道艦隊先遣隊がザフトの攻撃に晒され、アークエンジェルはその救援に駆けつける。
その戦闘の最中、キラを目撃するアスランは何としてもと説得するがやはり拒否される。
キラが地球軍に固執するのは、死神ーーシンラが彼女を縛っていると歪んだ形で解釈する。
パワードに牙を剥くイージスーーその中で、アスランは尋常ではない能力「SEED」を発現し、パワードに迫る。
対するシンラは先遣隊の者たちが次々に死にゆく様と、嘲笑うクルーゼに感情が爆発する。
「それを!!貴様が!!!......嗤うなぁああああああああああああああああああ――――――ッ!!!!!
その時、パワードイェーガーにイージスが斬りかかる。
「これでおちろぉ!!!!」
降ろされたビームサーベル――しかし瞬間、イージスのサーベルは一向にパワードに当たることはなかった。
どういうことか、アスランは振り下したはずの腕に眼を向けるといつもの間にか、腕がもう切り落とされていた。
「なに!?どういう!!」
っがその言葉より先にイージスの頭部がパワードイェーガーによって一気に切られた。しかしその連撃は続き、イージスの腕、両足をも切り裂かれ敢え無く無惨にダルマとなってしまい、そのままパワードはサッカーボールを蹴るイメージでクルーゼのシグーアサルト目掛けて蹴り飛ばす。
胴体のみとなったイージスは面白いようにシグーアサルトに直撃し、クルーゼの機体は思わぬ攻撃に大きく仰け反るのであった。
「ぐうっ!!これは...!!」
余りに尋常ではないパワードの様子にキラたちは啞然としていた。
「し、シンラ....さん?」
その時、パワードのコクピット内のシンラの眼――あの黒い瞳が、白くなり目の周りに黒い線が浮かび上がっていた。
そして彼の顔から感情が消えたように、人形のように無表情になってしまった....。
「一体何だと言うのだ!!しかし!!」
クルーゼのシグーアサルトが重斬刀を抜いて、パワードイェーガーに迫る。
「いくら叫ぼうが今さらぁ!!!」
降りおろされる重斬刀ーーしかし、それが当たる前よりも先にパワードが右半身をずらしたことで回避した。
その直後にパワードは直ぐ様回し蹴りをシグーアサルトの頭部に喰らわす。
更にバイタルエリアにも蹴りを喰らわし、吹き飛ばす。
「ぐぅ!!なんだ!!奴のあの反応速度は!!!」
パワードイェーガーは突如、ザフト艦隊に振り向きーーすると機体全体が変形する。
「変形した!?」
驚き口にしたムウを余所に、変形したパワードイェーガーの姿ーー機体の先端が左右に分かれたデザインが特徴で、機体の左右にそれぞれ三枚づつ分かれた逆さ羽の主翼、X字状の4基のブースターユニットは尾翼部分に配されている。
その姿、歪ではあるが間違いなく大型の戦闘機だった。
まさかイージス以外で変形機構をやるなど、誰も思わなかった。
戦闘機形態となったパワードイェーガーは、メインエンジンを全力噴射してザフト艦隊に吶喊する。
自分たちの方に敵が迫っていることに察知したザフト艦隊はアデスの指示の下、迎撃態勢を取る。
「くそ!こちらのモビルスーツは殆どやられたというに!!全艦、てぇーーーっ!!!!」
ヴェサリウスを始め、二隻のローラシア級による一斉砲撃ーーしかし、ザフト艦隊から放たれた全ての砲撃は戦闘機形態となったパワードに掠めることなく漆黒の宇宙の闇の果てへと消えていく。
「ダメです!!敵機!!尚も接近!!!こちらの全ての攻撃を回避してる模様!!!」
「………バカな」
「艦長!ポイントマークβ、距離1000にガモフが来ています!!」
「っ!!………ガモフに打電!戦闘には参加せず、クルーゼ隊長とアスランの回収し、そのまま戦域離脱せよと!!」
「りょ、了解!!」
アデスは覚悟を決めたような顔でオペレーターにそう指示する。
クルー全員固唾を呑み、ここはもう覚悟の決め時なのだと理解する。
しかしアデスはーー
「総員退艦せよ!」
だが誰も彼の指示に従わず席から離れず無言で返す。
「そうか………なら何も言わん!!敵機を沈めろ!!てぇーーーっ!!!!」
アデスの命令の下、三隻のザフト艦は尚も激しい猛攻を迫るパワードに繰り出す。
だが一向に全て当たることはなく、パワードのコクピット内のシンラは口を開いた。
「無線誘導式…スレイブ展開」
生気のないまるで人形のように無表情、しかも両眼は雪のように真っ白になっており気味悪さが際立つ。
っと、戦闘機形態のパワードイェーガーの尾翼部分に配されたX字状の4基のブースターユニットが突如機体本体から分離し、まるでUFO飛行のような縦横無尽且つ変幻自在な動きでザフト艦隊に迫る。
「敵機!何かを射出!!」
「なんだ!!?」
その四機ブースターユニットーー無線式誘導兵器「スレイブ」──これは、汎用試作型MAメビウス・ゼロの有線誘導式攻撃端末【ガンバレル】を参考に、無線式に変え量子通信で操作する兵器である。
だがメビウスゼロよりも遥かに高い空間認識能力が長けた者でなければ動かすことは不可能。
その兵器を同時に制御し、オールレンジ攻撃を行う兵装からランチャーストライクのメイン武装であるアグニと同質のエネルギービームを、四機全て四方八方から一斉に発射。
その強力なオールレンジ攻撃に二隻のローラシア級は瞬く間に撃沈され、ヴェサリウスも武装や機関部が全て破壊されてしまった。
艦内至るところで爆発し、ブリッジでも火の手が上がっており、アデス以外全員死亡してしまった。
「ぐう!!………ふ、ふふっ………確かに、あれは死神、だな………ハハハハ……」
吐血しながらも乾いた笑い声を口にするアデス、そんな彼がいるブリッジ目の前でパワードイェーガーはモビルスーツ形態に変形し、至近距離でロングレンジライフルを彼がいるブリッジに向ける。
そのパワード相手にアデスはーーただ嘲笑し、そのままライフルから放たれた巨大な閃光によって肉片残らず消失して死んだ。
ブリッジを攻撃されたヴェサリウスは、敢えなく撃沈された。
その光景をアークエンジェルでも確認したブリッジクルー全員は、言葉を無くしていた。
「…………」
中でもシンラの名を叫んだマリューは目の前で起きたことに、口を手で覆いながら信じられないという顔を浮かべていた。
戦場からシンラの怒涛の戦いぶりを見ていたムウ、そしてキラも言葉が見つからなかった。
「どうなってんだ……おい」
「シンラ、さん……」
彼らがそんな中、隙をつくようにクルーゼは胴体のみとなったイージスを運び、自身のコクピット内のレーダーにて確認したガモフへと向かう。
その中でクルーゼは呟く。
「君という存在、益々興味が湧いたぞ……死神。それにあのストライク、あれに彼女がいるのか……フフフ」
っと、敗退したというのにクルーゼは1人嗤う。
とにもかくにもアークエンジェルは、第8艦隊先遣隊の犠牲を払いつつもザフト艦隊の撃破というとんでもない戦果を叩き出した。
___________________________________
アークエンジェルに帰還したストライク、中破したメビウスゼロ、そしてパワードイェーガーの三機。
メビウスゼロは酷い様だが、パイロットのムウはケガもなく無事であった。
ストライクも損傷はなく、キラも無事でコクピットから出てきた。
だが彼女の表情は戦いから生き延びたことへの歓喜などなく、焦燥と誰かを案じ心配するというモノだった。
彼女は無重力下の格納庫を飛び、パワードイェーガーのコクピットにたどり着いた。
「シンラさん!!シンラさんっ!!コクピットハッチを開けて!!シンラさん!お願い!!」
「どいて、今開けるから」
叫ぶキラを押し退け、ドクターエイダがハッチ外面に備え付けられている端末を操作、即座にコクピットハッチが解放された。
彼女は直ぐ様中を覗くと、そこにはーーただ顔を俯かせてジッと座ったままのシンラが、其処にいた。
「シンラさんっ!!」
彼女はコクピット内に入り、彼に飛び付き抱きついた。
彼が無事であることを確かめるように、キラは彼の温もりを感じ確かめる。
だが直ぐに違和感に気付く、彼の顔を見ると呼吸してる素振りがないのだ。
「シンラさんが!息をしていません!!」
「分かったわ。誰か!担架を!医務室へ!早く!!」
ドクターエイダの指示により、いち早く彼女のスタッフらが早急に動き、シンラを医務室へと運んでいく。
キラも着いていこうとしたが、そこへエイダが阻む。
「悪いけど、医務室への同行はやめてくれるかしら」
「どうしてですか!?」
当然納得出来るわけもなく、キラはそれに憤る。
しかしエイダは冷静に話す。
「貴方が今着いて行っても意味はないわ。なら、彼が回復してから来るべきよ」
「で、でも……」
しかしキラは未だ渋る、シンラの傍に出来るだけ居たいのが彼女の本心である。
だがエイダが言うように、確かに自分が居ても何の役には立たないのは分かっている。
傍に居ても何も出来ないのも知っているーーでも理屈ではない、彼女はシンラの傍に居たいのだ。
しかし目の前のドクターエイダは、鋭い目付きで「勝手は許さん」と語っているかみたくキラを見つめている。
その目に彼女は萎縮してしまいーー
「……わかり、ました……」
キラは頷くしかなくそこで断念させられた。そんな彼女にエイダは苦笑しながらに言って聞かせる。
「仕方ないわね、彼が目覚めたら貴方に一番に知らせるわーーそれでいい?」
「は、はい!!」
そしてシンラが医務室に運ばれたことは艦内中に知れ渡る。そんな中で艦内を通るエイダの後ろから呼びかける者がーー
「エイダさん!」
「ん?」
振り向くとそこにはマリューが居た。彼女は真剣な顔でエイダに近づく。
「どうしたの?ラミアス艦長」
「貴方に聞きたいことがあるの」
「なに?」
マリューはエイダのすぐ傍らまで近づき、問いかける。
「シンラくん……彼は何者なの?」
「………言ってる意味が分からないわ」
「貴方は!彼が幼い頃から知ってる!なら!!彼がナチュラルか、コーディネイターなのか調べたはずよ!」
マリューの問いかけにエイダは若干鬱陶しさを感じる。まさかシンラは自分のことを話したのかと、しかし彼は記憶がないことしか知らないーーだから大したことを話すことも出来ない。
しかし目の前のマリューは真実を知ろうと、こうして自分に噛みついて来ている。
「パワードの性能、確かに凄いわ……でも、さっきのあれーー私にはどうしてもモビルスーツの性能だけで、あそこまで出来るとは思えないわ!」
「………知ってどうするの?」
「え……?」
「貴女がそれを知って一体何になるのかしら?ただの興味本位?それとも厄介な化け物として脅威に感じた?」
等と飄々とした態度でマリューを煽るエイダ。これにマリューは苛立ちを募りながらも、エイダの言う通りではないと言う。
「ふざけないでっ!!」
艦内通路にマリューの声がけたたましく響く。しかし彼女はそんなの気にせずに語る。
「シンラくんが言ってくれたのよ!!
私が冷血になりきれない代わりに自分がなる……キラさんや皆を守る死神として。
当然私のことも、全力で守りますって!……俺のこの手、多くの人間の血で染まったこの手でーー俺はその為に存在しているんですからって!!
その彼が、突然意識を失ったって知って居ても立っても居られなかったのよ!もしまた同じことが起きたら…………」
「ストップ!ーー安心して、二度も同じように意識を失うことはないわ」
「どうしてそう言えるの?なにを根拠に!」
エイダの根拠もないくせに自信に満ちた様子にマリューはまた苛立つ。
だがエイダには確信めいたモノがあった。
「あれはーーそうね、一種の試運転で起きた反動って奴ね。でも安心して。医務室にいる私のスタッフたちが尽力したくれたから、二度は起きないわ」
「…………本当、なのね?」
「えぇ、是非とも信じて欲しいの。それよりも考えてみて?本来逃げているはずの我々が、ザフトの艦隊を撃破したというその功績を…………寧ろこれは称賛されて然るべきことよ?」
「………」
マリューは眉間に皺を寄せてエイダを見つめる。
「ラミアス艦長、今度上手いお酒でも一緒に如何かしら?」
「………遠慮しとくわ」
マリューは踵を返してその場から立ち去るのだった。その後ろ姿を見ながらエイダは呟く。
「あら、残念ね」
不敵な笑みを浮かべていた。
その頃、キラはラクスがいる部屋にいた。
「キラ……大丈夫ですか?」
「ミトメタクナイ!ミトメタクナイ!」
ハロがピョンピョンと跳び跳ねる中、キラは神妙な顔をしていた。
「うん………私は、ね?でもーー」
「シンラ様が……ですね」
「うん………シンラさん、本当なら一緒に傍に居てあげたい……」
「キラ………」
涙溢れるキラをラクスは愛おしそうに、そして優しく抱きしめる。
その暖かい温もりの中で、キラは涙を流して呟く。
「私にもっと………っ……力があれば…………」
「キラ………力だけあっても、決して全てを救えるわけではありません」
「でも!それでも!!私はっ…………わ、たしは…………」
「キラ………」
そしてそのままラクスの胸の中でキラは大いに悲しみの涙を流し鳴いた。
暫くしてキラは漸く落ち着きを取り戻し、ラクスに抱かれながら礼を口にする。
「ありがとう、ラクス……」
「キラの心が、少しでも休まるのであれば幾らでも胸をお貸ししますわ」
「うん……」
「でも、私も心配です……シンラ様……」
「うん……」
_______________________________
その頃、医務室ではシンラが漸くその重い瞼を開けて眼を覚ました。
「こ、ここは………」
「目が覚めたようね?」
「ドクター?俺は……一体………」
徐に身体を起こすシンラ、しかしその時突然頭痛が彼を襲う。
「ぐぅ!!」
「無理はしないほうがいいわ。貴方はパワードイェーガーの無線式誘導兵器スレイブを使ったんだもの、そりゃ負担がくるわ」
「し、しかしシミュレーションでは何ともなかった。それにあの時俺はもっと別の何かに………」
「シンラ」
その時エイダの声音がとても低くなったのを、シンラはすぐに感じた。
「貴方はカンパニーが強化した最高の生体CPUーーそれ以上でもそれ以下でもないの。
貴方は私の自慢よ、それを誇りになさい」
「………は、はい」
情けなく返事するシンラ、そんな彼にドクターは鋭い目付きで尋問するかのように問い詰める。
「シンラ、貴方ーーアークエンジェルに乗ってから、やけに感情的になったわね?」
「………いけませんか?」
「貴方は"最高にして最上位の存在"なの。貴方の価値は貴方が思っている以上に遥かなモノなの。
たかが1人の小娘ごときに心掻き乱されて、情けない」
「キラは関係ない!彼女は………っ!!」
その時、シンラの頬に鋭い痛みが襲う。その理由は、目の前まで近づいたドクターによって叩かれたからだ。
ドクターはシンラに言う。
「では言うけど、貴方が全力を出していればイージスや、あのシグーに手こずらなければ、先遣隊も全滅することはなかったのよ?」
「っ!!……そ、それは」
「貴方、ラミアス艦長に言ったそうね?艦長が冷血になりきれない代わりに自分がなる……キラちゃんや皆を守る死神として。
艦長のことも、全力で守りますとか……あと、俺のこの手、多くの人間の血で染まったこの手でーー俺はその為に存在しているんですからって……で?実際どうなった?貴方のその安っぽい決意で、先の戦いで何を守れたのかしら?」
「…………」
ドクターの言葉にシンラは何も言えず、ただ静かに項垂れるしかなかった。
自分は何も守れなかった、救えもできなかった、先遣隊の将兵や挙句の果てにはフレイの父親すら見殺しにしてしまった。
自分がもっと強ければこんなことにはと、自責の念に絶えなかった。
だがドクターの氷のような辛辣な言葉は止まない。
「シンラ、一体何をしているの?」
「お、俺は……」
「少なくとも、敵艦隊を無慈悲に殲滅した時の貴方の方がまだマシだわ。
己の中の自分をもっと解放しなさい、シンラ。
その力、捨てることは絶対に許されないのよ!」
「………」
「じゃあ、私はこれで失礼するわね」
そう言い残し、彼女は医務室から出ていき、残されたシンラは立ち上がり、洗面所までたどり着いて鏡に映るを自分を見つめーー
「っ!!」
バリンッ!!っと医務室内に響く位に、鏡を拳で叩き割ったのだった………。
次回予告
慣れていかねばならなかった、立ち向かわねばならなかった、自分達の明日のために
が、振り返れば残してきた足跡は重く、それは消えぬ過去となってそれぞれの胸を刺す
知らぬ自分に戻れぬ今、新たに彼らが選ぶ未来は?
次回、機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD『少女たちの選択』
また新たな戦場に立つのか!ガンダム!