前回のザフト艦隊襲撃に会い、先遣隊全滅を引き換えにしながらもアークエンジェルは敵艦隊を撃破することに成功する。
しかしその直後、シンラが意識を失うということが起きた。
話は彼が意識を取り戻した際に入る。
けたたましく響く医務室、洗面所の場所には其処ら中に鏡のガラス片が散乱しており、鏡が配置されてた箇所は破片によって傷だらけで幾つか破片が刺さったシンラの拳がそこに突き立てられている。
本人は鏡を殴り割った痛みなどモノともせず、ただずっとだんまりと歯を食いしばる。
1人俯くシンラーー彼がそうしてる頃、エイダがキラがいるラクスの部屋に来ていた。
「あら?」
「え、エイダさん!!」
彼女が入って目にしたのは、ラクスによって優しく抱かれているキラであった。
彼女はエイダが入ってきて、思わず慌てふためきラクスから離れる。
ラクスはキラが自分から離れたことに若干頬を膨らましてしまう。
そんな二人の様子に面白いと笑みを浮かべるエイダだが、シンラが眼を覚ましたことをキラに告げる。
「シンラが眼を覚ましたから、伝えにきたわ」
「ホントですか!!」
「えぇ、見舞いに行きたいなら行きなさい」
「は、はい!!」
キラが嬉しそうにするのをラクスは羨望の視線を向けている。
それをエイダは見逃さなかった。
「貴女も行きたい?」
「え……?よろしいのですか?」
「えぇ、艦長には黙っておくから、責任は私が持つわ」
ラクスの顔がパアッと明るくなり、キラが手を指し伸ばしてくれ――二人は勢いよく部屋を出て医務室へと向かう。
その後ろ姿をエイダは見つめながら呟いた。
「シンラがあそこまで固執するなんてね、貴女を少し知るべきかしらね?――ね、キラちゃん」
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その頃、医務室ではスタッフによって治療を済まし、手に包帯が巻かれたシンラは1人ベッドに座ったまま何かを考えこむのであった。
「あれは、一体何だ?俺は……」
先の戦闘で自分自身に起きたあの現象に理解出来ないでいるシンラ――その時、医務室のドアが開かれ、キラとラクスが手を繋いで入ってきた。
「シンラさん!」
「シンラ様!」
「ふ、二人とも!どうして!」
「シンラさん!」
動転してしまうシンラとは違って、キラはいの一番に彼に抱きついた。
彼女はシンラの温もりをじっくりと堪能するように、彼の胸の中で顔を埋める。
そうしているとキラは涙を流してしまった。
「シンラさん………良かった、本当に………良かった……」
「キラ………すまない」
彼女はずっと自分を心配していたようである。それに何だか悪いと感じ、罪悪感すら抱いてしまう。
だがシンラが気にするのはキラだけでなく、何故か部屋に軟禁同然の扱いになっているはずのラクスまで此処に居ることにも驚きを隠せない。
「でも、何故ラクス嬢までが此処に?どうして?」
「私も貴方が心配で来ましたの。ご迷惑、でしたか?」
「いや、迷惑ではないですが………艦長から部屋から出てよいと許可が出たのですか?」
「いいえ。あの、エイダさんと呼ばれている方が行ってよいと仰ってくださったので……」
「ドクターが?」
何故?と疑問が浮かんでしまうが、しかしそんなシンラの疑問を抱く隙などないと言うかのように、ラクスがシンラの手にそっと触れる。
「本当に、良かった……」
「ラクス嬢……」
「ラクスと呼んでください……私もその、シンラとお呼びしてよいですか?」
「え?構いま、せんが……」
「良かったぁ……」
そう安心したような笑みを浮かべていたラクス、キラも未だシンラの暖かい温もりをジッと感じ、安堵した笑みを浮かべている。
彼らがそんな中、アークエンジェルはとうとう第8艦隊本隊と合流を果たすことが出来き、アークエンジェルの面々は安堵するように表情が明るくなった。
地球連合軍第8艦隊の数十ある艦が密集してアークエンジェルを迎え入れ、マリューの指示のもと艦を姿勢変更を行う。
「180度回頭、減速。更に20%、相対速度合わせ」
地球軍の最大級戦艦アガメムノン級にして、第8艦隊旗艦であるメネラオスの真横に連なる。
操舵主であるノイマンが冗談交じりに口にする。
「しかし、いいんですかねぇ?メネラオスの横っ面になんかつけて…」
「ハルバートン提督が艦をよくご覧になりたいんでしょう。後程、自らこちらへおいでになるということだし……閣下こそ、この艦とGの開発計画の一番の推進者ですからね」
マリューは微笑みながら言う。デュエイン•ハルバートン提督ーー彼は、マリューにとって尊敬する上官にあたる人物であり、G計画の推進者であり発案者でもある。
マリューは少しお願いね、と席を立つと艦橋を出る。
「艦長!」
後を追うようにナタルが艦橋を出てきた。
「ストライクのこと、どうされるおつもりですか?」
「…どうって、どういうこと?」
いぶかしむマリューにナタルは言う。
「先の戦いでキラ•ヤマトは中々の能力を見せました!彼女だからこそ、やれたことです!」
「………」
マリューはナタルの意図を察したーー確かにキラもキラで、ヘリオポリスの一件よりに比べ、パイロットとしての能力が上がっている。
シンラほどではないが、しかし着実にそれはデータでも浮き彫りになっている。
ナタルはそんな彼女を、ストライクから降ろすことを良きとは思っていないようである。
「…貴方の言いたいことは分かるわ、ナタル。でも、キラさんは軍の人間ではないわ」
「ですが、彼女の力は貴重です!それをみすみす…!」
「力があろうと、私達は彼女に志願を強制することはできないでしょう?」
「………っ」
彼女の目を見てそう問いかけると、ナタルは黙ってしまうのだった。
そしてマリューは話を切ってその場を去る、その場に立ち止まって不満気な表情のナタルを残して。
そんなナタルを置いて、マリューが向かう場所ーーそれはシンラがいる医務室であった。
彼女は任務中にシンラの意識が回復したとの報告を受け、いまこうして向かっているのだ。
逸る気持ちを抑えつつも、しかしどうしても彼女の身体はその思いとは裏腹に逸ってしまっている。
そして滔々、シンラの居る医務室へとたどり着く。
逸る気持ちを抑え、息を整えて彼女は室内へと入る。
そこにはーー
「あら……」
「え?」
キラに抱きつかれ、ラクスに手を握られて両手に花状態のシンラがそこにいた。
何故ラクスが居るのか問いかけるとーー
「ドクターが許してくれたらしいんです」
「………そう。分かったわ、ならラクスさんが医務室にいることを許可します」
「ありがとうございますわ、艦長さん」
ラクスどうして医務室に居るより、キラとラクス、二人の美少女に囲まれるシンラを見た瞬間、何だかイラッとした気持ちが一瞬沸いてしまう。
マリューはそれを表に出すことはせずシンラの回復を喜ぶ。
「良かったわ、シンラくんーー回復したのね」
「はい、艦長ーーその、ご迷惑をおかけしました」
「気にしないでーー寧ろ申し訳ないのは私の方よ。
貴方やキラさんに頼ってばかり、本当に情けない艦長よね」
そんなことはないとシンラは否定するが、しかしマリューは首を左右に降って苦笑を浮かべるのだった。
「でも本当に感謝してるわ。本当にありがとう」
マリューの心からの感謝の言葉にシンラとキラは何とも痒く感じる。
そんな彼らにマリューがあることを教える。
「このあと第8艦隊司令・ハルバートン提督がお見えになるわ」
「ハルバートン提督....確かG計画の責任者...」
「えぇ。でもシンラくんは此処で休んでいて――まだ意識が戻ったばかりなのだから」
「え、いやしかし....」
「大丈夫、ね」
「は、はい」
マリューにウィンクされつつ言いくるめられ、鵜吞みにすることになった。
すると今度はマリューがキラに対してーー
「キラさん、貴女の今後だけど」
「え?あ、はい」
「第8艦隊と合流できた今、もうストライクに乗って戦う必要はなくなるわ」
「……え………?」
マリューからの言葉にキラは間の抜けた声を漏らしてキョトンと呆気になる。
シンラは「本当ですか!」と驚きながらも問いかけると、マリューは笑みを浮かべて頷く。
「えぇ。キラさんにはホント無理を強いて本当にごめんなさい....でも貴女が協力してくれて本当に助けられたわ、ありがとうキラさん。
でも地球に降りたら、貴女はもう一般人よ。
…こんな状況だから、地球に降りても大変かと思うけど……頑張って」
「艦長...」
「良かったな、キラ」
シンラは自分のことように嬉々としてキラに笑みを浮かべる。ラクスもキラが無理に戦いに赴くのが無くなったと思い、安堵する。
だがキラ本人は...何故か顔を俯かせてその表情も暗く落としている。
その心中を誰も気づきもしないまま....
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そして第8艦隊旗艦メネラオスより一隻のスペースランチが、アークエンジェルに入ってきた。
皆、格納庫に着陸したランチに向かって敬礼をする中、中から一人の軍服を纏い軍帽を被る壮年の男性――彼こそ第8艦隊司令官であり、G計画の推進者にして責任者であるデュエイン・ハルバートン提督である。
彼は自分の視界に映るマリューを見つけ、彼女に近づく。
「ヘリオポリス崩壊の知らせを聞いた時は、もうダメかと思ったぞ。それがここで、君たちと会えるとは...」
嬉しそうにそう語るハルバートンに、マリューも同じく嬉々として口にする。
「ありがとうございます――お久しぶりです、閣下」
「ナタル・バジル―ル少尉であります」
「ムウ・ラ・フラガ大尉であります」
「うむ――で、彼らが!」
「はい、彼らが艦の仕事に手伝ってくれております、ヘリオポリスの学生たちです」
「そうか!」
ハルバートン提督はトールたち学生らに近づき、彼らにあることを告げた。
「君たちのご家族の消息を確認したぞ、皆さんご無事だ!良かったな」
っと自分のことのように笑みを浮かべて彼らに、彼らの家族の安否を告げるハルバートンであった。トールたちは自分らの両親が無事を知らされ嬉しそうに喜ぶのであった。
目の前のハルバートン提督という人物に、自分たちが知る軍人とは思えないぐらいに温厚で実に紳士的な人物だという印象を抱いた。
そしてハルバートン提督は、マリュー、ナタル、ムウの三人を伴って艦内の艦長室へと向かっていく。
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その頃、ザフト軍クルーゼ隊はというとガモフのブリッジにこれからの作戦を練っていた。
「クルーゼ隊長、ツウィーグラと合流できました」
「そうか」
艦長のぜルマンからそう報告を受けたクルーゼは、先の戦いにて自身の船であるヴェサリウスを失い、右腕といえるアデス艦長をも失ったにも関わらず至って冷静にいる。
その様子に恐れを抱きつつもぜルマンは言葉を紡ぐ。
「それでですが、あと残りの艦艇と合流するにあと四時間はかかると思われます」
「四時間、か....間に合うかもな」
「合流出来れば、6隻の艦隊、モビルスーツが24機になるでしょう」
「そうか。恐らく足つきは月基地には行かないだろう」
「では....」
ぜルマンにクルーゼは首を縦に振りつつ宙域図を見て確信する。
「艦隊は地球の衛生軌道上を停滞していることから、足つきはそのまま地球に降ろすのだろう――ならば」
クルーゼは不敵に嗤い――
「知将ハルバートン――ここらで退場してもらおう」
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その一方、アークエンジェルの艦長室ではマリューが座るべき椅子には、ハルバートンが座っておりマリューらは向かい合うように毅然と立っている。
そのハルバートンの傍らに立つ小太り男――ハルバートンの副官であるホフマン大佐が口を開いた。
「しかし、この艦と残されたG一機のためにヘリオポリスを崩壊させしかもアルテミスまで壊滅させるとはな」
辛辣にも聞こえる彼からの苦言にマリューは申し訳ないと眼を伏せる。だがそれをハルバートンは手を翳し制止しつつ彼女をフォローをいれる。
「しかし彼女らがこの艦と、ストライクを守ったことはやがて地球軍の利となる」
「アラスカは――そうは思っていないようですが?」
「ふん!ジョシュアのモグラどもに、宇宙での戦いの何が分かる!!」
ホフマンの問いに忌々しそうに地球のアラスカ本部の官僚を罵る。彼は言う無駄に予算を使い、意味もなく貴重な人的資源を、費やして無駄に戦争を長引かせる上層部に嫌気すらハルバートンは抱いている。
それに宇宙ではモビルアーマー、地上では戦闘機や戦車なで現状の戦況をどうにかしようなどという発想自体が正気とは思っていない。
最早兵器の転換がもう訪れている、モビルスーツという新たな戦争の概念がこうして存在しているのだ。
いつまでも旧世代の兵器でこの戦争を終わらすなど無理であり、処かこのままでは地球の人の命がザフトの一方的な攻撃で、いずれ新たなエイプリルフールクライシスが起こり兼ねないと危惧すらしている。
更にホフマンは更なる話題を持ちかける、キラのことであった。
「このコーディネイターの少女は?…これも不問ですかな?」
嫌味っぽく言うホフマン、だがマリューは懸命な気持ちにてハルバートンに伝える。
「キラ・ヤマトは、友人達を守りたいーーただその一心でストライクに乗ってくれたのです。
…ですが成り行きとはいえ、自分の同胞達と戦わねばならなくなったことに非常に苦しんでいました…」
「ふむ」
真摯にキラの気持ちを代弁しているつもりのマリュー。
ハルバートンもそれを真剣に聞いている。
「誠実で優しい子です。彼女には、信頼で応えるべき、と私は考えます。」
「しかしだな……そんな者を逃すなど」
ホフマンとしてはコーディネイターのパイロットという貴重な存在をみすみす野放しには出来ないと、そう思っていた。
それはナタルも同じのようでーー
「僭越ですがーー私もホフマン大佐と同じ思いです。
彼女の能力には目を見張るものはあります。Gの機密を知り尽くした彼女をこのまま降ろしては…」
「ふん!既にザフトに4機渡っているのだ、今更機密もない」
などと言うハルバートンにナタルは焦燥しつつも反論する。
「し、しかし!彼女の力は貴重です!出来れば、このまま我が軍の力とすべきだと、私は…!」
「だが、ラミアス大尉の話だと本人にその意志はなさそうだが?」
「彼女の両親はナチュラルでへリオポリス崩壊後に脱出し、今は地球にいます。それを軍が保護すれば…!」
その言葉にマリューは耳を疑った。それはつまり彼女の両親を人質にして彼女を戦いに強制するということだ。
軍人がそのような非道をナタルから聞かされるなど、マリューは思いもしなかった。
だがハルバートンはそれを聞いて憤り、不快に思い怒る。
「ふざけた事を言うなっ!そんな兵がなんの役に立つ!」
彼はデスクに拳を激しく叩きつけると、その気迫にナタルは謝罪をして引き下がる。
「っ!!…も、申し訳ありません!」
激怒した後、ハルバートンはマリューたちに現状人員のまま、月基地ではなく地球アラスカの地球軍本部へと向かって欲しいとのことだった。
戸惑いを見せるマリューらに、ハルバートンはーー
「あれの開発を軌道に乗せねばならん!ザフトは次々と新しい機体を投入してくるのだぞ?だと言うのに利権絡みで役に立たんことばかりに予算を注ぎ込むバカな連中は、戦場でどれほどの兵が死んでいるか、数字でしか知らん!」
この彼の言葉にマリューは、先の戦いでの先遣隊の戦艦やモビルアーマーが、何もできずにただ墜とされていった記憶が甦る。彼女はその想いを受け取り、覚悟を決めた。
「分かりました。閣下のお心、しかとアラスカへ届けます!」
「アーマー乗りの生き残りとしては、お断りできませんな」
吹っ切れたような表情で敬礼するマリュー、横目で見ていたムウは彼女の姿に感化されたようで、同じように敬礼していつもの素で言った。
ナタルも無言ではあるが、二人に習い敬礼する。
ハルバートンは三人を見つめて頭を下げたのだった。
「頼む…!」
すると今度はホフマンがまたあることを尋ねる。
「時に、ラミアス大尉。この艦にはストライクの他にもう一機モビルスーツがあるようだな」
「え?えぇ、はいあります。パワードのことですね」
「パワード...それが名前か」
「はい、GAT-X00という型式ナンバーの機体で、モルゲンレーテのエイダという女性とそのスタッフらが極秘裏にG五機の全開発データを素にして開発した最新鋭機体のようで....」
っとその瞬間、ハルバートンの眉間に皺が寄り、怒りを抱いたかのような顔になった。
「エイダ?まさか....ドクターエイダと呼ばれている、あのエイダか!!」
「え?は、はいそうですが....」
訝しげにマリューはそう答えると、ホフマンが――
「ラミアス大尉、モルゲンレーテ社にエイダという女性は在籍していない。彼女はある人物の組織麾下に属する者だ」
その話にマリュー、ムウ、ナタルは啞然となる。まさかモルゲンレーテの人間と信じていた彼女が偽りを言っていたなど、驚きを隠せなかった。
するとハルバートンが――
「そのドクターエイダ....彼女は遺伝子工学、生物学、機械学などあらゆる分野に精通しているかなり優秀なコーディネイターだ!!そして彼女が属しているのは、あのムルタ・アズラエルが所有するアズラエル財団に所属しているというのが分かっている!!」
余りの話にマリューらは言葉を無くしていた。ムルタ・アズラエル...反コーディネイターを掲げる政治団体「ブルーコスモス」の盟主であり、古くから反プラント運動に最大の出資をしてきたアズラエル財閥の御曹司でもある。
また、国防産業連合理事の任にあり、デトロイトに本拠を置く大手軍需産業の経営者でもある。大西洋連邦政府及び同国軍に対して強い発言力を持ち、現場指揮官に直接命令を下すことすらある。
そのような人物の下にいるコーディネイター女性が居るなどまたも驚いた。
だがマリューはよくよく考え、ある事を思い出す。
それは以前にシンラが身の上話をしてくれた時に、彼がさり気なくエイダがアズラエル財団に属していると聞いたのを思い出した。
更にホフマンは自分が調べたのはそれだけではない。
「更に彼女は、ムルタ・アズラエルの右腕といえるある女性将校とも懇意にしている」
「ある将校?」
「君たちも名ぐらいは聞いていおう....デイナ・ザールラントを」
「「「っ!!」」」
ハルバートンよりその名を聞き、マリューらは絶句する。その中で漸く口を開いたのはムウであった。
「デイナって....あの謀略家と呼ばれている...」
ムウのその恐る恐る聞く姿勢にハルバートンは同情したような憐れむような眼で言う。
「そうか....貴官は、あの“エンデミュオンクレーター”での戦いに居たのだったな?」
「は、はい....」
エンデミュオン・クレーターの戦いとは....「グリマルディ戦線」にて、中でも激戦となった連合の重要な資源供給基地であった攻防戦のことである。
連合軍は第3艦隊壊滅の憂き目を見るが、鉱床・施設破壊を兼ねてレアメタルの混ざった氷を融解するための設備「サイクロプス」を暴走させ、ZAFT軍を撃破した。
更にシンラ操る改造型の高機動型ジンの活躍もあり、この戦闘はザフトの事実上の敗退となった。
しかしサイクロプスの暴走により、地球軍側にも多大な被害が出ており、その中にムウが率いていたメビウスゼロ部隊の仲間たちも敢え無くその犠牲の仲間入りとなり、ムウだけが生き残って上層部の意向により彼に「エンデミュオンの鷹」などと異名を付けられプロパガンダに使われた。
そのエンデミュオンクレーターの攻防戦の指揮を執っていたのが、デイナ・ザールラントであった。
サイクロプスの暴走も実は彼女の指示の下、意図的にだったのでは?という噂が実しやか囁かれている。
「彼女が指揮を執る戦場は、地球軍側に必ずザフトに手痛い一撃を与えると言われてはいるが、だが同時に自身にとって邪魔となるならどんな手を使おうと必ず排除すると言われている。
現に彼女が就いている役職、最高司令部統合作戦室所属という職だがその前任者であるウィリアム・サザーランド大佐がその餌食となって死んだとも言われているが、真実は定かではない。
その私兵同然の兵士がこの艦にいるとも聞いている」
「そ、それは!!」
マリューはシンラのことをまるで腫れ物みたく言われて、不快に感じつい口を開いた。
しかしハルバートンはそんな彼女の声には耳を傾けずに言う。
「デイナ・ザールラントが設立した部隊、第13独立機動遊撃群「オルカ」....それはいかなる残酷な任務でも受け持ち、非道な手段も厭わない部隊であるからだ!」
「そんな......」
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その頃、艦内の居住ブロックではキラの友人であるサイ・アーガイルが自身の許嫁であるフレイの傍に居り、彼女に寄り添っていた。
「フレイ?大丈夫?何か飲み物とかは?」
しかし彼女は一言も発さず、ただ首を縦に振る。サイは「分かった」と飲み物を取りに行く。
一人残されたフレイ、顔を俯く彼女はずっと父親の遺言とも言える言葉を思い出す。
フレイ...どうか、私のことは忘れて元気に健やかに生きてくれ....パパからの最後の願いだ....
「.....」
フレイはその瞬間、口を開いた。
「無理よ、パパ....私、パパが殺されたのを黙っているなんて...私はコーディネイター全てが憎い訳じゃない、でも....」
彼女は意を決したような顔を浮かべ始める。宇宙の漆黒の闇に消えた父親の命、フレイはそれを素直に忘れるなど無理であった。
父が死んだのは紛れもなくザフトの連中の所為である、その明確にハッキリしている仇の存在が未だ居る――彼女の握る拳に力が籠る。
その時、サイが戻ってきたが、それと同時にカズイがサイを呼びにきた。
「サイ、此処にいたんだ」
「どうした?カズイ」
「バジルール少尉が俺たちに集まってくれだってさ」
「分かった」
飲み物を置いてサイは後ろ髪を引かれるが、カズイと共に行く。
ナタルに呼び止められたトールたちは、一枚の紙が配られる、題名には「除隊許可証」と記載がされている。
「…除隊許可証?なんです、これ?」
疑問を浮かべる学生らにナタルの隣にいるホフマン大佐が、彼等に向かって説明する。
「例え非常事態でも民間人が戦闘行為を行えば、それは犯罪となる。それを回避するための措置として日付を遡り、君たちはあの日以前に志願兵として入隊したこととしたのだ。なくすなよ」
彼の言葉に、自分たちは軍人として在籍していたのかと驚き口にする。
「私達、軍人だったの?」
「第8艦隊、アークエンジェル所属…」
「なお、軍務中に知り得た情報は、たとえ除隊後といえ、どこかに洩らすなよ」
ナタルがそう口にしたその時だった、フレイがやってきた。
その顔は何かを決意したかのような、強い意志が固まったようなそんなものになっている。
「フレイ•アルスター、どうした?」
ナタルの問いかけに彼女は一切眼を反らさずーー
「私ーー軍に志願します」
「ふ、フレイ!?」
彼女の決意に満ちた顔は決して揺るぐことはなかった。
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そしてそれは彼女も………。
シンラが居る医務室では彼と、ラクス、キラが居る。
ラクスがキラに言う。
「良かったですわね、キラ。これでもう……」
「………」
もう戦場に立つことはないと聞かされたキラに、ラクスが嬉しそうに言う。
しかし当の本人は何故か嬉しいという感情ではなく、とても暗く俯いている。
彼女の様子にシンラは問いかける。
「どうした?キラ」
「………シンラ、さん」
「ん?」
漸く重い口を開いたキラ、すると彼女はーー
「シンラさん…………私、私!この船を降りたくありません!!ストライクからも降りません!!
「き、キラ……!?」
唐突な言葉にシンラは余りのことに唖然としてしまうのであった。
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その間にクルーゼが乗るガモフを中心としたローラシア級6隻が集結した。
「クルーゼ隊長、艦隊無事集結完了しました。ご命令を」
「ああーーこれより!衛星軌道上の地球軍艦隊に強襲する!!全艦!発進せよ!!」
クルーゼの号令のもと、ザフト艦隊がアークエンジェルと第8艦隊に牙を剥こうとしていた………。
次回予告
宇宙に散っていく多くの命ーーそれは、美しく流れる星となって、見上げる人々の目には映るのか?
再び強襲するクルーゼ隊の前に立つシンラとキラにできるのは守る事か、それとも憎む事なのか
向き合う敵の想いは計れず、砲火は再び悲劇と悪夢を呼ぶ
次回、機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD『宇宙に降る星』
切り裂く大気を、突き抜けろ!ガンダム!