機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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PHASE01 偽りの平和

ヘリオポリス...L3宙域に存在するオーブの資源衛星コロニー。オーブ連邦首長国にとって宇宙における生産拠点である。

その広大なコロニーではオーブの、他国を侵略しない、他国の侵略を許さない、他国の争いに介入しないという理念の名の下、中立に存在している。

そこではナチュラル、コーディネイター問わず皆誰もが平和に暮らしている。

 

そのヘリオポリスにある工業カレッジ、所謂ハイスクールである場所の一角に一人の少女がいた。

茶髪でロングヘアの彼女は手元にある端末を操作しながら、バックグラウンドで配信されている地球での戦況に関するニュースを聞いている。

彼女の名はキラ・ヤマト、このヘリオポリスに暮らすごく一般の少女である。

 

その彼女に話しかける人物たちがやってきた。

 

「よっ、キラ」

 

「キラおはよう♪何見てるの?」

 

やって来たのはトール・ケーニヒ、キラの友人でヘリオポリスに住む彼女の同級生。

共にいるのはミリアリア・ハウ、同じ女性であるキラの友人であり、共にいるトールの恋人でもある。

2人はキラに話しかけながら傍までやってきた。

その友人カップルにキラは教えてあげることにした。

 

「うん、地球の戦況ニュース、カオシュンだって」

 

キラの端末の映像を覗き込むトール、その内容は地球にある地球軍所有のマスドライバー基地であるカオシュンにザフト軍が攻撃するものだった。

 

「ひぇ~、先週でこれじゃあもう落ちてんじゃねぇの?カオシュン」

 

まるで他人事みたく、テレビにあるアニメや映画のようなものを見たかの如く珍しそうにそう呟いた。

そのトールとは違って不安そうにミリアリアが口にする。

 

「カオシュンなんて結構近いわね。大丈夫かな本土」

 

「あ~そりゃ心配ないでしょ。近いたってうちは中立だぜ?オーブが戦場になるなんてまずない」

 

「そう?ならいいけど....」

 

2人がそう話す中、キラは自分の手元にいる鳥型のペットロボット「トリィ」が視界に入ると、彼女にとって幼馴染である男の子との記憶が思い浮かぶ。

幼き頃に月のコペルニクスに幼年学校で共に過ごし、彼が引っ越すことになった際には別れ際にそのトリィを貰った、それ以来彼女はトリィを大切にしている。

 

その大切な思い出を思い出しながらつい笑みを浮かべるキラ。

 

「どうした?キラ」

 

「な、なんでもないよ!」

 

キラが女子だというのに、お構いなしに身を乗り出して顔を近づけたトール。その恋人に呆れるようにミリアリアが耳を引っ張ってキラから離れさせる。

 

「いててっ!」

 

「キラも女の子なのよ!ほんとデリカシーないんだから!」

 

「わ、わたしは大丈夫だよ、ミリィ」

 

恋人を咎めるミリアリアに苦笑いを浮かべるキラ。

 

「だめよぉ!キラは気づいてないから言うけど、カレッジの男子たちからは凄い人気なんだからね!」

 

「そ、そうなの?」

 

鬼気迫るぐらいにキラに言うミリアリアに啞然としながら、トールに目線を送る。トールも「なんだよ気づいてなかったのか?」っと口にする。

 

「ああ。この前なんか、知り合いにキラを紹介してくれぇ!!なんてしつこくしてくるのがいたんだぜ?ま、そん時ミリィ、すんごい剣幕でキラにちょっかい掛けたらコロスってぐらいの殺気をぶつけてたな」

 

「あんなのに!私の大切なキラを穢されたくないもの!!」

 

「わ、私のって....」

 

呆れるトール、誤解されかねない発言をするミリアリアにタジタジとなり苦笑交じりに若干引いているキラ。

そんなおバカなやり取りをする間柄ではあるが、キラとしてはそれが素直に心地よいと思える。今の時代が戦争状態になっているなんて思えないぐらいに....。

 

「ま、とりあえずさっさといこうぜ?」

 

「うん。キラ、いこ」

 

「うん」

 

 

___________________________

 

ヘリオポリス宇宙港

 

ヘリオポリスの宇宙港に一隻の船が入港していた。円筒を上下に少し押しつぶした様な艦体が特徴の旧式輸送艦、船名マルセイユIII世級。

この輸送艦、実はある理由でこの中立資源衛生コロニーに来ていた地球軍の偽装船である。

 

その艦橋にいる艦長が軍帽を取り、一息ついた。

 

「これでこの船の最後の任務が完了した。貴様も護衛の任、ご苦労だったな?フラガ大尉」

 

「いえ、航路何もなく、幸いでありました」

 

彼はムウ・ラ・フラガ、地球連合軍第7機動艦隊に所属するエースパイロット。

開戦初期にモビルアーマー・メビウス・ゼロに搭乗し、月面エンデュミオン・クレーター上でのグリマルディ戦線において、ザフト軍のジン5機を撃墜するという地球軍にとって見事な功績を納めた。

そのムウ・ラ・フラガは現在この輸送艦の護衛任務を帯びている。

 

「艦長、周辺にザフト艦は?」

 

「二隻トレースしているが...なぁに港に入ってしまえば、ザフトも迂闊には手出しできんよ」

 

「フッ、中立国でありますか?聞いて呆れますが...」

 

っと皮肉めいたように苦笑いを浮かべるムウに、艦長は豪快な笑いを上げる。

 

「ハハハハハ!だがそのおかげで計画がここまでこれたんだ。オーブとて地球の一国ということさ」

 

「では、艦長」

 

「ん?」

 

艦長に対し、五人の作業服姿の若者たちが敬礼を見せる。そのままブリッジから退出していく彼らを見てムウは艦長に問う。

 

「本当に、上陸は彼らだけでよろしいので?」

 

「あれでもGのパイロットに選ばれたトップガンたちだ。それに貴様などがちょろちょろしてると目立つぞ」

 

艦長にそう言われてムウは苦笑して会話を終わらす。だが物事は彼らの思惑通りにいくとは行かなかった、ヘリオポリスの周辺宙域にある小惑星の裏側に二隻の艦艇が潜んでいる。

その艦艇は、ザフト軍の宇宙用のモビルスーツ搭載型高速駆逐艦のナスカ級ヴェサリウスとモビルスーツの運用を目的としたフリゲート艦ローラシア級ガモフが停滞していた。

 

その二隻の内、ナスカ級ヴェサリウスのブリッジにて、一人は母艦ヴェサリウスの艦長を務め、艦長クラスや部隊の副官クラスの黒服を身に纏うフレデリック・アデス。

そしてもう一人は、ザフト軍においてエリート指揮官の証である白服を纏い、仮面で素顔を隠している謎多き男...ラウ・ル・クルーゼ。

 

「そう難しい顔をするな、アデス」

 

「あ、いやしかし!評議会の返答を待ってからで遅くはないのでは...」

 

「遅いな。私の勘がそう告げている」

 

クルーゼは手にした画像データを納めたタブレットをアデスに見せる。

 

「ここで見ず過ごさばその代価、いずれ我らの命で支払われることになるぞ」

 

「は、は!」

 

アデスはたじろぐが、クルーゼはそのまま気にせず口にする。

 

「地球軍の新型機動兵器、あそこから持ち出される前に....奪取する」

 

 

_____________________________

 

 

その頃、キラはトールとミリアリアと共に恩師であるカトー教授がいる、モルゲンレーテ敷地内の研究室へと向かっていた。

 

「ほら早くいこうぜ、カトー教授に怒られるぞぉ」

「もぉ!トール急ぎすぎよ!」

 

急かすトールにミリアリアは口を尖らせながら苦情を呈する。その二人の後を追うようにキラも走っている。

 

「ちょっと、待ってよ!2人ともぉ」

 

っとその時だった。道の脇からいきなり青年が現れ....。

 

「え!?きゃあ!」

 

「キラ!」

 

ミリアリアが彼女の名を叫ぶが、青年にぶつかった彼女はそのまま仰向けに倒れる...っと思われたが。

 

「....っ....あれ?」

 

転倒の痛みに眼を瞑る彼女はゆっくりと瞼を開けると、銀髪で、眼の色が真っ黒の青年が彼女を抱きかかえて転ぶのを防いだのだ。

 

「あ、あの...」

 

「....大丈夫か?」

 

「え...?」

 

「大丈夫かと聞いた」

 

「は、はい!」

 

「そうか。じゃあな」

 

青年はそのまま何事も無かったように彼女から離れ、そのまま車へと乗り込む。

キラはただずっと青年が居なくなるまでずっと見つめるだけであった。

これが彼女、キラ・ヤマトと....青年、シンラ・ユーリの初めての邂逅ではあったが、しかしこの時2人はまだ何も気づいていない。

そんなキラにミリアリアが揶揄うように声を掛ける。

 

「なぁに?キラぁ~。ああいうクール系が好みだったの?」

「え?ち、ちがっっ!!」

 

突然のミリアリアからの発言にキラの顔が真っ赤になる。一方のシンラは車の運転中、携帯を取り出して何処かへと連絡する。

 

「ドクター、自分です。いまから戻ります」

 

《えぇ、戻ったら例の機体のシステム調整をお願いね?あれは貴方専用なんだから》

 

「了解」

 

シンラはそのまま車を地球軍の極秘工廠へと走らせていくのであった。

工廠に戻ったシンラは、彼の上司とも言うべき女性・ドクターと合流、自分の機体となるモビルスーツの調整作業が始まる。

シンラとドクター、“カンパニー”から複数のスタッフが五機のG兵器その全開発データを元に更なる高い性能を持つであろう機体に仕上げるべく尽力している。

彼らが作業している区画の隣のエリアには五機のG兵器がそれぞれ安置され、そちらも調整が行われている。

このヘリオポリスにて行われている地球軍の新型機動兵器の開発、中立国の資源衛生でのこの計画に彼らはこれからの戦況を覆すと確信している。

 

その彼らを嘲笑うように二隻のザフト艦より、密かに潜入したパイロットスーツの姿のザフト兵士らが地球軍の警備網を難なく潜り抜け工作活動を行う。

そのザフトの暗躍に気づいたのかように、シンラの眼つきが鋭くなった。

 

「どうしたの?シンラ」

 

「敵」

 

「え?」

 

 

その言葉がまるで合図みたくヴェサリウスにいるクルーゼがゴーサインをだした。

 

「時間だ」

 

「抜錨!!ヴェサリウス、発進する!!」

 

アデスの号令によりヴェサリウスとガモフの二隻のザフト艦は、メインエンジンを噴射しヘリオポリスへと前進する。

それはムウが乗ってきた輸送艦だけでなく、ヘリオポリスの管制室でも確認できた。戦艦がコロニーに何のコンタクトもなく接近している所為で管制室内部では、けたたましく警告アラームが鳴り響いている。

 

「こちら、ヘリオポリス。接近中のザフト艦応答願います」

 

だが通信からザフトからの返答は一切来ない。何度も何度も呼びかけるがそれでも向こうからの応答は一つもない。

 

「管制長!ダメです!一切反応がありません!依然、ヘリオポリスに接近中です!」

 

「慌てるな!...っ!アラームを止めんか!ええい!」

 

管制長はインカムを耳につけてザフト戦艦に呼びかける。

 

「接近中のザフト艦に通告する!貴艦らの航行は、我が国の領海を著しく違反するものである!直ちに停船されたし!....ザフト艦!直ちに停船されたし!!!」

 

しかし依然、ザフト側はこれを無視。そのままヘリオポリスに向けて前進している。

更に事はそれだけじゃない、管制室の全ての通信システムに異常が見られ始めた。

 

「管制長!強力な電波干渉!ザフト艦より発信されています!!これは明らかな戦闘行為です!」

 

「バカな....」

 

戦闘行為...それはつまりザフトがこの中立のコロニーであるヘリオポリスに向けて、牙を剝いたという事に他ならない。

そしてクルーゼは不敵な笑みを浮かべて手を翳すと共に、ヴェサリウスよりモビルスーツを5機発進される。

出撃したのはザフト軍主力量産モビルスーツ・ジンである。

 

それを対応のため、ムウが乗艦しているマルセイユIII世級が出港準備に取り掛かる。対応と言ってもこの船に真面な攻撃装備など存在しておらず、気休め程度に対空装備しかない。

指揮する艦長にムウが状況を尋ねる。

 

「敵は!」

 

「二隻だ。ナスカ及びローラシア級、電波妨害直後にモビルスーツの発進も確認した」

 

「チっ!ルークとゲイルはメビウスにて出撃!!俺もゼロで出る!!」

 

迎撃として、輸送艦と共にムウが操縦するモビルアーマーメビウス・ゼロと随伴機にメビウスが二機緊急発進。

更に地球軍がメビウス完成前に普及していた主力量産型モビルアーマー・ミストラルも10機、この迎撃に投入する。

接近してきた5機のジンと滔々戦闘に突入する。

複数のミストラルは一斉攻撃として機関砲で攻撃、しかしその豆鉄砲など当たるものかとジンはその高い機動力で躱し逆に反撃をする。

 

地球軍側の攻撃など物ともせず、5機の内3機がヘリオポリスに侵入。

 

 

それと同時にであった、ヘリオポリスの地球軍極秘工廠各地にて爆発が起きてしまった。

 

「これは!?きゃあ!」

 

「ドクター!大丈夫ですか?」

 

大きな爆発による衝撃によって皆動揺する。ドクターも倒れそうになるが、シンラが受け止める。

 

「え、えぇ...これは一体...」

 

「敵です」

 

「まさかザフトが...!」

 

「はい」

 

 

 

彼の言葉通り、ザフトの襲撃の為に至急機密ドックにある地球軍新造戦艦【アークエンジェル】に搬送する作業に入っていた。

その指揮を執っていたのは地球軍の技術士官であるマリュー・ラミアス大尉。

 

「至急アークエンジェルへ!」

 

っが直後、上空より先ほどコロニーに侵入したジン三機襲撃する。彼女は部下たち共に身体を伏せて事無きを得るが、周囲の施設や移動用乗り物など破壊されてしまう。

 

「ザフトの!!X105とX303を起動させて!!とにかく工区から出すわ!!」

 

ジンの強襲に搬送中だった輸送隊が立ち往生してしまい、餌食となる。

襲撃し三機のG兵器を載せた搬送用大型トレーラーの周囲を囲むように、三機のジンが陣取っている。

そのタイミングで推進装置ランドムーバーを、纏ったパイロットスーツの姿のザフト兵士たちがトレーラーに近づいていた。

 

「運べない部品と工場施設は全て破壊だ」

 

先頭を飛ぶイザーク・ジュールが作戦メンバーに指示。彼の視界に映る三機のG兵器を近づき、未だトレーラーの周りにいる地球軍の守備兵らを次々に排除する。

そうして滔々、守備兵士たちを全て排除したイザークらは三機のGに乗り込む。

 

「ほう?凄いな。そっちはどうだ?ディアッカ」

 

「オーケー!アップデーター起動、ナーブリンク再構築、キャリブレート完了、動ける!」

 

「ニコル?」

 

「待ってください!もう少し!」

 

トレーラーから三機のG...デュエル、バスター、ブリッツが起動して、立ち上がった。

 

「アスランとラスティ?遅いな」

 

「奴なら大丈夫さ。ともかくこの三機、先に持ち帰る。クルーゼ隊長にお渡しするまで壊すなよ」

 

そうしてイザークたちザフト兵士たちが乗り込んでしまった三機のGはそのまま飛翔し、ヘリオポリスの出入口に向かって去っていく。

 

一方、残りのG兵器がある工廠区ではマリューと生き残っている地球軍兵士たちで、襲撃してきたザフトの奪取部隊との激しい白兵戦が繰り広げられている。

 

「く!このままじゃ!...っ!?民間人の子!」

 

彼女の視界に映るのは、カトー教授の研究室に向かっていたキラ・ヤマトである。

彼女は避難する最中、逃げ遅れた少女を追ってこの工廠内部に迷い込み、未だ強奪されていないG兵器のモビルスーツを発見した。

それを目撃した少女は「お父様の裏切り者!!」と叫ぶが、キラは少女を宥め工廠外に脱出させるも彼女自身行く当てがなくなってしまった。

 

「そこの貴女!こっちよ!!」

 

「え?は、はい!!」

 

行き場を無くして窮地となってしまったキラを、彼女を見つけたマリューは残された二機のG兵器の内の一機であるストライクに彼女を案内しようとする。

ストライクでこの場から抜け出そうとマリューは画策していた。

 

しかしキラと共にストライクに乗り込もうとしたその直後、銃声が鳴り響く。

銃弾はキラに当たることはなかったが、しかしマリューは肩に当たってしまって負傷してしまう。

 

「大丈夫ですか!?」

 

キラはマリューに駆け寄りながら、銃弾が飛んできた方角に向くと其処には赤いパイロットスーツのザフト兵が彼女たちに銃口を向けている。

もう一度マリューに銃は発射しようとするが、しかしリロード中にジャムりザフト兵はナイフを取り出し、2人に襲いかかるべく向かってくる。

キラはマリューを庇おうとザフト兵士の壁となって立ちはだかる。

 

っがその時、偶然にも彼女はその兵士の顔が明らかになった直後、衝撃を受ける。

 

 

「え?....アス...ラン...?」

 

「っ!!...まさか、キラ...!」

 

 

キラとマリューに襲いかかるザフト兵士...それは嘗て彼女とは幼い頃に良く一緒に遊んだ仲の良かった幼馴染アスラン・ザラであった。

そんな衝撃的な再会を果たした2人だが、それを割って入るようにマリューが苦悶の表情でアスランに目掛け発砲する。

だがアスランは当たることなく突然の幼馴染との再会で動揺しつつも、ストライクから離れてもう一機のX303・イージスに乗り込み、工廠から離脱する。

マリューはキラをストライクのコクピットに放り込み、自身も乗り込む。

2人を乗せたGAT-X105が炎の中、ゆっくりと立ち上がったのだった....。

 

 

 

一方、イージスのコクピットの中、アスランは未だ彼女...キラを思い心の中がグチャグチャになっていたが、通信でもう一人の赤服のザフト兵ラスティ・マッケンジーに呼びかける。

彼はこの工廠エリアに入った際、気になる区画を発見して自分のチームと共に其処に向かったっきり連絡がない。

 

「ラスティ..どうしたんだ?」

 

 

 

 

 

その区画では横たわっている死体の数々、死屍累々の言葉に相応しい惨状であった。

横たわり血を流して屍を晒すのはザフト兵士たち、そしてその中で虫の息で未だ生きているのはクルーゼ隊所属で、アスランたちと同じ赤服のザフト兵ラスティ・マッケンジーであった。

 

「ハァ....ハァ.....っくそ!何なん.....だよ」

 

彼の状態は余りにも酷く、ヘルメットのバイザーは砕け、顔には血が流れてしまっている。

激痛によるもう身体を動かす事が出来ない、その苦悶の表情で彼は顔を上げて愚痴る。

 

目の前には仲間たちを皆殺しにし、そしてザフトのエリートである赤服のラスティをこうまで痛めつけた張本人が居た。

その張本人、銀髪で目が真っ黒の男は無表情で彼を見つめる。

ラスティは最初、この工廠に来て極秘の区画があると知り自分のチームを引き連れた。

其処には技術者らしき人間らが銃で応戦してきた、しかしクルーゼ隊の兵士たちならば技術者程度の相手ならば簡単に制圧できる、そう高を括っていた....そう、その筈だった。

しかし目の前の銀髪の男――シンラによってチームの仲間は早々とナイフ一本で無惨に惨殺されてしまった。

ラスティは何とかして抵抗したが、ものの数秒で両腕を折られ、両足も切られてもう何も出来なくなって後はもう目の前の彼に恨みを込めて睨むしかなかった。

 

「この..!!」

 

目の前の男はきっとコーディネイターだ、ナチュラルがコーディネイターである自分たちを易々と一蹴出来る筈がないと死を目前にして推理した。

恨み募るラスティにシンラは氷のように無表情で冷酷に銃口を向け....

 

 

「.....死ね」

 

放たれた弾丸はラスティの頭部を撃ち抜き、ラスティが背にした壁には彼が撒き散らした血と死肉が飛び散ってしまう。

 

ザフト兵士らを全て駆逐したシンラ、その彼にドクターが近づく。

 

「シンラ、お疲れ様」

 

「はい」

 

「申し訳ないのだけど、貴方はこれから機体に乗ってヘリオポリスに侵入した敵を撃破して」

 

「了解」

 

「私たちは別のルートより脱出するわ。じゃあ頼むわね」

 

ドクターはカンパニーのスタッフたちと共に避難していく。そしてシンラは後ろを振り向く、其処には自分の機体となるスタンダードなヒーローイメージのトリコロールカラーながら、赤・青の明るさを抑え気味にして派手過ぎない印象のモビルスーツが聳え立っている。

 

重厚且つ密度を高めたメカディテールで各所鋭角的なエッジが掛かって、末端肥大気味(マッシブ)な手足を持ち、隅々までシャープな仕上りで何処か禍々しさが窺える。

背中の特徴的な大きなウィングユニットは5枚のブレードに分かれて展開できるようになっている。

頭部は前頭部に4本のV字型のブレードアンテナに、頭頂部には赤いモヒカン状のセンサーが目を惹く、スパルタの兵士の様なデザイン。

ストライクと同じ顔の作りになっている。

この機体こそカンパニーがデュエル、バスター、ブリッツ、イージス、そしてストライクの全開発データを素にして作り上げた機体、名はGAT-X00・パワード。

 

シンラは作業服のままパワードのコクピットに乗り込み、機体スイッチをONにする。

すると起動画面に....

 

 

・General

 

・Unilateral

 

・Neurolink

 

・Dispersive

 

・Autonomic

 

・Maneuver

 

というOSの文字が表示される。その文字の頭の部分だけをシンラは繋げて読んだ。

 

 

「GUNDAM.....ガンダム、か。気に入った」

 

 

そしてコクピット内部に備え付けのキーボードによる操作を開始した。

そのタイピング入力は人間ができるレベルの速度ではなく、あっという間にOSの構築を終わらした。

 

「トランスフェイズシフト装甲、異常なし。行くか」

 

そしてパワードのツインアイが光り....。

 

「シンラ・ユーリ、出る」

 

後ろのウイングユニットを大きく広げ、パワードは爆発によって壊れ空が露出した天井へと飛翔するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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