機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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中編です。


PHASE 20 宇宙に降る星 中編

衛星軌道上にて、地球軍第8艦隊とアークエンジェルが臨戦態勢に入っていた。

地球軍艦隊から次々にモビルアーマー・メビウスが出撃していく。

その艦隊旗艦であるアガメムノン級戦艦・メネラオスのブリッジにて、ハルバートン提督の命令が飛ぶ。

 

「全艦、密集陣形にて迎撃態勢!アークエンジェルはそのまま動くな!そのまま本艦につけ!」

「ワルキューレ1!ワルキューレ2!発進!!Nジャマー展開!!アンチビーム爆雷用意!!」

副官を務めるホフマン大佐も各所に命令を通達している。戦闘態勢が整いつつある地球軍第8艦隊、月基地より出動していた補給艦らは戦闘が始まる前に離脱する。

アークエンジェルでも戦闘態勢に移っている、副長のナタルがCICで戦闘指揮を執る。

 

「イーゲルシュテルン、起動!コリントス、装填!ゴットフリート、ローエングリーン、発射準備!」

彼女の指揮の中、トノムラが「くそっ!」と呟いた。漸く地球軍艦隊と合流し安心できたと思った矢先でザフト軍の襲来、いまだしつこい敵にトノムラは愚痴ったのだ。

 

「すみません、遅れました!」

ブリッジ内に声が響く。マリューは「え!?」っと驚いて振り返ると、そこにはトールたち学生達が各自自分の席へとつく。

 

「あ、貴方達…!?」

マリューは驚いて呟いた。どうして彼らが此処に戻ってきたのか――除隊してシャトルに向かっていったものと思っていた。

 

「志願兵です。ホフマン大佐が受領し、私が承認いたしました」

ナタルがそんなマリューの疑問に答えるように口にする。それを聞いてマリューは信じられぬという顔になる。

アークエンジェル内では、ラクスを部屋まで送ったシンラとキラは、彼女から無事を祈られる。

 

「どうか...お二人とも、ご無事で.....」

「うん、必ず戻るね!ラクス」

キラはラクスの両手を優しく包み込みながら微笑む。二人の美少女が互いに頬を赤くし見つめ合う姿は百合百合しい。

そしてラクスはシンラに顔を向けて――

 

「シンラも...どうか、お気を付けて...」

「はい、約束します...ラクス」

「はい、では....」

ラクスはそのまま部屋に入り、扉が閉まる。見届けたシンラとキラは顔を見合わせる。

 

「行くぞ、キラ」

「はい、シンラさん」

2人はそのまま出撃の為にパイロットの更衣室へと向かっていく。シンラは男性用の更衣室に入っていき、キラも女性更衣室へ入る。

するとそこに――

 

「え?フレイ...?」

「え...あ、キラ...」

そこにはキラのパイロットスーツの前にフレイが立っていた。

 

「どうしたの?フレイ...そこで」

「私...」

「まさか....」

彼女が何をしようとしていたのか察したキラは、ゆっくりと近づく。

 

「フレイ...まさか」

「.....」

キラが何を問いかけたいのかフレイは理解しているのか、彼女はゆっくりと頷く。キラは「そう、なんだ...」と口にする。

フレイはキラがこの艦から降りるものと思っていたようで、だから自分がストライクに乗ろうとしていたのだ....父親の仇を討とうと。

しかしそれをキラはそれを止めるように諭す。

 

「フレイ....私も残ることにしたの。この船とみんなを守るために....だからフレイが戦いにいく必要はないの」

「キラ....」

「だからお願い....私に行かせて」

「.....うん」

フレイは諦めるように彼女にパイロットスーツを渡す。受け取ったキラは手早く着替えるのだった。

 

 

 

 

__________________________

 

 

その頃、衛星軌道上では激しい戦火が散る。地球軍のモビルアーマー・メビウスがザフト軍のモビルスーツ・ジンと戦闘中であった。

幾つものメビウスが対装甲リニアガンや有線誘導式対艦ミサイルでジンに攻撃するが、これを難なく避けてMMI-M8A3 76mm重突撃機銃やM68キャットゥス 500mm無反動砲で反撃し撃墜させる。

戦火渦巻く戦場である宇宙空間を疾駆する三機のモビルスーツ、デュエル、バスターとブリッツが他のザフト軍モビルスーツとは違って圧倒的な性能で大量のメビウスを撃墜していた。

その中でもイザーク・ジュール操るデュエルは、今回姿が変わっていた。

その姿のデュエル...デュエル・アサルトシュラウド。それはザフトが開発していた、第1世代MS用強化パーツである「アサルトシュラウド」をデュエル用に再設計し、本作戦の為に換装されたのだ。

 

その新たな力を伴って現れたデュエルはアサルトシュラウド右肩部装甲に設置されたレールガン・115mmレールガン シヴァと左肩部装甲内に格納されたミサイルポッド・220mm径5連装ミサイルポッドを併用して、地球軍のモビルアーマーや艦艇を沈める。

 

「このアサルトシュラウドであれば、死神など、今度こそっ!」

 

バスターも負けじと350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフル同時に斉射して、次々に敵機を撃破し、ブリッツはミラージュコロイドを展開して駆逐艦に接近し、目の前まで近づくと解除して攻盾システム「トリケロス」に内蔵されている50mm高エネルギービームライフルで艦橋を撃ち貫く。

更には別の艦に左腕に装備された有線式ロケットアンカー・グレイプニールを射出し撃沈させた。

その光景をメネラオスのブリッジからハルバートンが苦々しく見ていた。

 

「ええいっ…!ブリッツ、バスター、デュエルか…!」

「確かに、見事なモビルスーツですな。が、敵では厄介なだけだ」

「....っ」

副官であるホフマン大佐が冷ややかな眼で皮肉と嫌味を込めてそう口にする。ハルバートンは忌々し気にホフマンを睨む。

 

「あの3機、なんとしても落とせよ!」

しかしホフマンは何処吹く風と言わんばかりに、飄々として部下たちに指示を飛ばす。

その間にも激しい戦闘は繰り広げられる、それをガモフのブリッジから眺めているクルーゼは口を開いた。

 

「ハルバートンは、どうあってもあれを地球に降ろす気だな。大事に奥にしまい込んで、何もさせんとは...」

「こちらは楽ですが....ストライクと例の機体も出てきませんし」

クルーゼの話を聞いていたぜルマン艦長がそこへ話しかける。

 

「戦艦とモビルアーマーでは最早我らに勝てぬと知っている。良い将だよ――あれを作らせたのも、彼だということだしな。ならばその自説、その身で味わってもらおう」

 

「セレコウス、被弾!戦闘不能!」

「カサンドロス、沈黙!」

「アンティゴノス、プトレマイオス、撃沈!」

オペレーターから報告にハルバートンは苦虫を嚙み潰したようになっており、次々と撃沈されていく艦隊にホフマンが愕然とする。

 

「なんだと!?戦闘開始たった6分で、4隻をか!?」

開戦から劣勢となった第8艦隊、しかし敵は尚も追撃をかけてくる。

 

「ローラシア級接近!!」

「セレコウス、カサンドロスに突撃照準!」

ガモフと他のローラシア級による砲撃によって、損傷激しく離脱中であった二隻の地球軍艦艇がものの見事に爆沈し、宇宙の塵へと消える。

その光景を見ていたハルバートンは憤りを見せる。

 

「離脱中の艦をっ!!おのれクルーゼっ!!」

 

 

 

__________________________

 

 

その模様をアークエンジェルでも見ていた。圧倒的な劣勢、モビルアーマーではモビルスーツに真面な相手は不可能であった。

そんな最中、マリューの席に直接通信が入り彼女は受話器を取った。

 

《おい!なんで俺は発進待機なんだよ!第8艦隊だって、イージスが居なくても、残りのあの3機相手じゃヤバいぞ!》

ムウからの怒号にも似た通話だった。アークエンジェルは地球圏への降下態勢の為に戦闘には参加できない、当然艦載機の出撃も禁じられている。

だが外の光景をリアルタイムで見ていたムウは、居ても立っても居られないと憤慨している。

 

「フラガ大尉.....本艦への出撃指示は、まだありません」

《しかし!》

そこでマリューは一方的に通信を切る。彼女もムウの気持ちは痛いほど分かっている、いま目の前で味方が次々にやられていく様を見て何とも思わないはずがない。

マリューは、悩んだ末――そして決断した。

 

「メネラオスへ繋いで!」

 

 

 

__________________________

 

 

「アークエンジェルより、リアルタイム回線!」

「なんだ!?」

モニターに映し出されたマリューの姿にハルバートンは語気を強くする。

 

《本艦は艦隊を離脱し、直ちに降下シークエンスに入りたいと思います。許可を!》

「なんだと!?」

マリューの思いもよらない言葉にハルバートンは驚愕し、副官のホフマンが割り込んで叫ぶ。

「自分たちだけ逃げ出そうという気か!?」

《敵の狙いは本艦です!本艦が離れなければ、このままでは艦隊は全滅します!》

 

ハルバートンは顔を歪ませ、苦悶の表情を浮かべる。艦隊戦力としては此方が上であるのにたった6隻と数十機のモビルスーツにこうも徹底的に追い詰められている。

 

《アラスカは無理ですが、この位置なら地球軍制空権内へ降りられます!突入限界点まで持ち堪えさえすれば、ジンとザフト艦は振りきれます!――閣下!》

マリューの懸命な説得する中、ハルバートンは悩みつつ外の光景を見る。沈んでゆく戦艦、撃墜されていくモビルアーマー、このままでは艦隊は全滅なのは必至。

ハルバートンは悩んだ末にふっと苦笑する。

 

「相変わらず無茶なやつだな――マリュー・ラミアス」

《…部下は、上官に習うものですから》

ハルバートンに対してマリューは微笑みを浮かべる。彼女の熱意に応えるようにハルバートンは不敵な笑みを浮かべる。

 

「良かろう!アークエンジェルは直ちに降下準備に入れ!限界点まではきっちり送ってやる。送り狼は1機も通さんぞ!」

《は!》

回線を切り、オペレーターに全艦隊に通達するように指示した。

 

 

__________________________

 

 

その最中、アークエンジェルは大気圏突入への準備に取り掛かるのであった。

 

≪総員、大気圏突入準備作業を開始せよ!繰り返す、総員、大気圏突入準備作業を開始せよ!≫

 

「降りるぅ?!!この状況でか!?」

 

格納庫内に響く艦内アナウンスにムウは声をあげた。ブリッジではマリューの指示の下、降下態勢へ移行する。

 

「降下シークエンス再確認。融除剤ジェル噴出口テスト」

 

アークエンジェルの艦底部を気化性のジェルが覆われる。これを覆うことによって艦体の温度上昇を防ぐ。

船が大気圏突入準備に入る中、ムウはマードックに食ってかかるが、マードックは後頭部を手で掻きながら言った。

 

「俺に怒鳴って、しゃあねぇでしょう!…まぁ、このまんまズルズルよりかはいいんじゃねぇんですかい?」

「いや…しかし…」

 

その時だった。

 

「何してるんです?」

「え!?」

「シンラ!それに嬢ちゃん!!」

そこにはパイロットスーツ姿のシンラとキラがいた。声をかけたシンラは無表情でムウとマードックを見届けた後、無重力状態の格納庫を飛ぶ。

その最中にキラに言う。

 

「キラ、大気圏突入へ入る中、出撃するかもしれない。何があっても船の傍から離れるな」

「はい!」

そう言うと健気に笑みを浮かべるキラは、ストライクのコックピット内に入っていった。

閉じられたハッチにシンラは後ろ向きに離れる途中、ムウの呟きが聞こえた。

「あんま若い頃から戦場とか戦争なんかに浮かされちまうとあとの人生きついぜ...」

ムウの声が、いつもの調子ではなく悲しげだった。だがその彼にシンラが――

 

「彼女は俺が必ず守ります」

「ん?」

ムウはシンラに向くと、彼がムウに対して睨むようにそう告げる。

 

「彼女やアークエンジェルに迫る敵は、全て俺が殺す」

「シンラ...お前」

シンラはムウの返事など聞くつもりはないようで、そのままパワードのコクピットまで向かっていく。その彼の後ろ姿を見つめムウは悲しいことを言う。

 

「....それじゃあお前、いつか必ず壊れちまうぞ?それでいいのか?シンラ」

 

 

 

__________________________

 

 

 

《メネオラスより、各艦コントロール――ハルバートンだ。本艦隊はこれより大気圏突入限界点までのアークエンジェル援護防衛戦に移行する!厳しい戦闘ではあると思うが、かの艦は明日の戦局の為に決して失ってはならぬ艦である。陣形を立て直せ!第8艦隊の意地に懸けて、1機たりとも我らの後ろに敵を通すな!地球軍の底力を見せてやれ!》

ハルバートンの鼓舞は第8艦隊の地球軍将兵らに届き、劣勢であるというのに士気向上しザフト軍に果敢に挑む。

 

「アークエンジェルが動く?!ちぃ!ハルバートンめ!第8艦隊を犠牲にしてでも足つきを地球に降ろすつもりか!追い込め!!降下するまえに何としても仕留めるんだ!」

ガモフのブリッジ内でクルーゼの怒号が響く。ザフト軍もここで獲物を逃すつもりなど到底全くなく、特にデュエル、バスターとブリッツは鬼気迫る勢いで、メネラオス麾下の艦艇が展開している中央に迫る。

それをチャンドラがレーダーで察知した。

 

「デュエル、バスター、先陣隊列を突破!メネラオスが応戦中!」

 

「ええい!!落ちろ!」

イザークの怒りと共にアサルトシュラウドの砲が火を噴く。バスターもそれに続き、攻撃する。

このままではアークエンジェルに迫られるのは確実である。キラはヤキモキしたように、シンラに声をかける。

 

「シンラさん!」

「落ち着けキラ....フラガ大尉」

「待て!――艦長!!」

ムウはブリッジのマリューへ回線を開く。

 

《艦長!ぎりぎりまで俺たちも出せ!何分ある?>

「はぁ!?何言ってるのよ!......え?”俺たち”?」

ムウの言う俺たちという言葉に頭を傾げるマリュー。そこへキラが通信に割り込む。

 

《カタログスペックでは、パワードとストライクは単体でも降下可能です!》

「キラさん!?どうして!?」

狼狽えるマリュー。まさか降りると思っていたはずの彼女がパイロットスーツ姿で、こうしてストライクのコクピットから通信しているのだ。そんなマリューに対してキラは強く言い放つ。

 

《このままじゃ、メネラオスも危ないんですよ!艦長!》

キラの言う通りである。このままでは間違いなく艦隊は全滅し、このアークエンジェルも地球に降りる前に落ちてしまう。

しかしまた子供である彼女にまた戦いを強いるのは躊躇う。そこへシンラが通信に割って入る。

 

《艦長、自分からもお願いします》

「シンラくん!?あなた!!まだ体は!!」

《もう大丈夫です。それよりも出撃させてください、大気圏突入前には戻ります》

「でも!!」

また彼に無理をさせてしまうと深く躊躇うマリュー。だがそこへナタルが.....

 

「わかりました!ただし、フェイズスリーまでに戻ってください!スペック上は大丈夫でも、やった人間はいません。中がどうなるかは知りません!高度とタイムは常に注意を!ユーリ中尉」

《了解――キラもいいな?》

《はい!》

彼等の返答に通信は切れた。マリューは憤りを露にし、思わず立ち上がってナタルを睨み怒鳴りつけた。

 

「バジル―ル少尉!!」

「ここで本艦が落ちたら!第8艦隊の犠牲の全てが無駄になります!」

マリューの激怒を真っ向から受け止めるナタルは険しい顔で、マリューと睨み合う。

アークエンジェルのカタパルトハッチが開き、ムウのメビウスゼロが出撃する。

それに続くようにキラのストライクも、リニアカタパルトに固定し出撃に入る。そのコクピットの中、キラは己を落ち着かせるよう深呼吸をする。

 

「すぅー....はぁー....大丈夫、シンラさんがいる。私には、シンラさんが...」

《ストライク!発進どうぞ!!》

「キラ・ヤマト!ストライク!いきます!!」

エールストライカーパックを換装したストライクは、アークエンジェルより出撃する。そして最後にパワード....

 

《シンラ、申し訳ないけど――イエーガーの装備に若干の不具合が出たわ、悪いけど通常形態であるゼロウェアで行って頂戴》

「了解です」

《大丈夫よ、イエーガー程ではないにせよ。ゼロパワードでも可変は出来るわ、開発者の私が保障する。思う存分にやりなさい》

「はい」

ドクターエイダからミリアリアへと通信が変わり、彼女から発進合図が伝えられる。

 

《パワード発進!どうぞ!!》

「了解。シンラ・ユーリ、パワード、でる!」

 

未だ定かではない衛星軌道上での激闘、その結果如何なものになるのか....。

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