機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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今回から地上編です。原作準拠の方はブラウザバック推奨します。


PHASE 22 地上に落ちた者たち

話はここアークエンジェルの医務室から始まる。

 

「シンラさん!」

「シンラ...」

 

「ハァ....ハァ.....ハァ」

ベッドに寝かされたまま激しく息苦しい様相を見せるシンラ。そんな彼の傍らにずっと寄り添うように、片時も離れまいとキラとラクスが彼の手を一緒に握りしめている。

その様子をミリアリアやフレイも心配そうに見つめていた。

 

「凄い汗...」

「熱下がらないみたい...」

尚も苦しむシンラ。見かねるミリアリアは「先生を呼んでくる」っと急ぎ足で部屋から出ていく。

フレイは心配そうに寝込むシンラを見守り、その間にもキラとラクスはずっと泣きそうに彼の看病を続けるのであった。

 

「どうか...しっかりなさってくださいませ、シンラ」

「お願い...シンラさん...」

 

「うっ...あ..はぁ...あ」

彼はどうしてこうなったのか、それは大気圏突入した際のことであった。パワードのコクピットの中、放心状態であったシンラは何とかしてこの状況を打破すべく機体本体を、地球に無事降ろすべく降下姿勢に入る。

しかし...

 

「本艦とパワード、突入角に差異!このままでは降下地点が大きくズレます!」

「え!?」

オペレーターのロメロからの報告にマリューは驚く。このままいけばパワードのみがアークエンジェルから離れて別の降下場所へと向かってしまう。

そこへ格納庫にいるエイダから通信が入る。

 

《艦長!アークエンジェルをパワードに向けて!!》

「エイダさん...」

「何をバカな!!それでは本艦の降下ルートが大きくずれる!!」

エイダからの話を割って入るように、ナタルが反対する。確かにエイダの言う通りにすればパワードは助かる、だがそれをすれば地球軍勢力圏から遠く離れてしまうことになる。

 

《あの子をザフト側に奪われる訳にはいかないのよ!!お願い!艦長!!》

「....艦をパワードに寄せて!!」

「艦長!!」

「それでは艦の降下地点が!!」

ナタルが声を上げる中、ノイマンが難色を示す。だがマリューに躊躇いは全くなかった。

 

「彼は私たちにとっても大事よ!!早く!!」

「りょ、了解!」

アークエンジェルはスラスターを吹かし、パワードの下に着いた。巨大な壁として大気圏の摩擦熱から庇い守ってくれるアークエンジェルの甲板に着艦することができた。

しかしシンラの意識はそこで失ったのだった。その後地上に降り立った直後、急いで彼を医務室へと搬送し、今に至るのであった。

キラとラクスがシンラの身を想い看病している最中、艦長室ではマリューとエイダ、ムウの三人が話していた。

 

 

「ここがアラスカ。そしてここが現在地。嫌なとこに降りちまった....見事にザフトの勢力圏だ」

三人はモニターに映し出される地図を見て、ブリーフィングを行っている。ムウが苦笑交じりに指さすアークエンジェルの現在位置――アフリカ北部、見事にザフト勢力圏。これは頭を抱えるのには十分であった。

 

「仕方ありません。あの時パワードと離れるわけにいかなかったので....」

「艦長...ありがとう」

「え?」

「ん?!」

腕を組んで壁に凭れ掛かっていたエイダが神妙な顔で礼を口にする。それに対してマリューはキョトンとし、ムウは何か意外なものを見るかのように驚く。

エイダは2人の反応に気にせずに話す。

 

「あの時、私の頼みを聞いてくれて....」

「エイダさん...」

マリューは神妙な顔で彼女を見つめる中、ムウが問いかける。

 

「珍しいねぇ。お宅がそんな畏まってさぁ....」

「あの場でパワードを失う訳にはいかなかったのよ」

「パワードだけか?失ってこまるのは?」

「.....」

ムウの問いとマリューの視線にエイダは静かに言う。

 

「あの子は私たちにとって無くてはならない存在よ。この戦争において勝利するためのね」

「生き残るためじゃなく?」

マリューが険しい顔で問いかける。それにエイダも応えるように顰めた顔でマリューに言い返す。

 

「勝てば生き残れるでしょ?同じだわ」

「いいえ!違うわ!結果がどうあっても、命を失うことはあってはならないのよ!!」

「軍人の癖に、軍人には似つかない台詞ね?」

「貴女は時折...シンラくんをパーツか何かにしか見ていない所があるわ...」

「あの子は私が大切に育ててきたのよ、なのに道具扱いしてるなんて心外だわ」

2人の女性の激しい言い争い、それは見ていて迫力あるものであった。尋常じゃない威圧的雰囲気を放つマリューとエイダ、このままでは今後良くないことになる。

それに地球に降り立ったはいいが、ここはザフト側支配圏であるからしてまず自分たちがやるべき事は、ここで言い争いをしているわけではない。

だがマリューは更に深掘りするようにエイダに追求する。

 

「エイダさん...貴女、私たちに隠し事がある筈よね?」

「隠し事?なにかしら?」

睨むマリューに対してエイダは素知らぬふりを決め込んだ。だがマリューはそれを許さない。

 

「貴女、モルゲンレーテ社の人間ではないわね?ハルバートン提督が教えてくださったわ」

「.....」

マリューの追及にエイダは黙るが、しかし彼女の問い詰めは終わらない。

 

「貴女は、アズラエル財団の人間で、更にあのデイナ・ザールラント准将とも懇意にしていることも分かっているわ」

「.......そうね」

「否定はしないのね?」

否定的な態度はせず、意外そうな反応を見せる。

 

「否定する理由がないからよ。同じザフトと敵対する立場なのだから....味方じゃない?結局は」

「ならもう一つ、コーディネイターを蔑視するブルーコスモスの盟主の財団に、なぜコーディネイターである貴女は在籍しているの?」

「あら、そこまで知っているのね?」

マリューの問い詰めに痛くも痒くもないという顔でマリューに嘲り、エイダは強気に語る。

 

「確かにコーディネイターだわ。でもだからといって、あのブルーコスモスにも少数だけどコーディネイターは在籍しているし、アズラエル財団でもコーディネイターは多数働いているわ。でも理由を貴女に話すことではないわ」

「.....」

エイダの言い様に険しい顔になるマリュー。その彼女とエイダの睨み合いにムウが割って入る。

 

「まぁまぁお二人さん。今はそれよりも、この状況を何とかしようや」

「「....はぁ」」

マリューとエイダ、2人の美女は互いに溜息を吐いた後冷静になった。

 

「フラガ大尉...いえ、少佐の言う通りね。ね?ラミアス少佐」

「....そうね」

「じゃ、俺は格納庫にいってそれからシンラの様子を見に行くよ」

「私も格納庫に行かないと。ヘリオポリスから持ち運んできたパワードの各種装備の点検やっておかないといけない」

「そうか。あ、艦長、あんたは?」

ムウの問いかけにマリューは少し考えてから答える。

 

「私は、少ししてからシンラくんの様子を見ていくわ」

「そうか。じゃ」

「私も失礼するわ」

2人は出ていった後、マリューは一人医務室へと足を運ぶ。ドアが開き、恐る恐る入るとそこにはミリアリアやトール、サイやカズイ、フレイなどが医務官に囲っていた。因みにこの医務官はエイダの直属の部下ではなく、アークエンジェルの乗組員の方である。

 

「あら、みんな...」

「艦長...」

ミリアリアが最初に気付き声を上げる。マリューは医務室全体を見渡すとキラとラクスが、シンラの手を一緒に握りしめていた。

 

「みんな、シンラくんの見舞いに?」

「はい...でも様子が良くなかったので、先生を連れて来たんです」

「そう...キラさんとラクスさんも、看病ありがとうね?」

 

「シンラさんが、心配なので...」

「わたくしも、彼のことが....」

ラクスが此処にいることに対して何も問わないマリューは、ただただ優しく微笑む。

キラとラクスは悲しげに返答する。そんな中、アークエンジェルの専属医師がマリューに話しかける。

 

「艦長、ちょっとよろしいでしょうか?」

「え?いいわよ。ちょっと失礼するわね」

マリューは医師と共に医務室の外へと出る。すると医師は何か複雑な表情をしていた。

 

「どうしたの?」

「はい...それが、いままでユーリ中尉のことはあのエイダという人の部下が見ていて、私はいままで何も分からなかったのですが...」

「それで?」

首を傾げるマリュー、しかし医師は尚も話しを続ける。

 

「しかし今回、偶然にもあちらが手が空いてなかったようなので、私が念のため検査などしたのですが...信じられぬことが」

「なにか、あったの?」

「.....それが彼の血中酸素濃度が通常の人間の10倍なのです」

「え?」

驚きの表情を浮かべるマリュー。そんな生き物は有り得ない、通常人間の血中濃度は93~99%が通常である。コーディネイターでも同じである。

しかしシンラはその十倍の数値を叩き出した。

 

「ねぇ、検査したのなら彼が遺伝子調整受けたとかは....」

「わたしも気になりまして、調べましたが....彼が遺伝子調整を受けた形跡はありませんでした」

「え....?」

 

彼女が更に驚く、信じられぬことであった。彼が遺伝子調整を受けたのでないのなら、ナチュラルだと言うのか...彼に対して謎が深まる。

その時だった。医務室では寝込んでいたシンラが、目を覚ます。

 

「あ...こ、ここは....」

 

 

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