機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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遅くなり申し訳ありませんでした!!


PHASE24 燃える砂塵

夜中、砂漠の真ん中で鎮座するアークエンジェル。それを離れた距離より見張る者たちがいた。

 

「どうかなぁ?噂の大天使の様子は?」

 

そう口にするのは砂漠の虎と異名持つ男、アンドリュー・バルトフェルド。

彼はコーヒーが入ったコップを片手に、副官であるマーチン・ダコスタに現状を問いかける。

 

「は!依然なんの動きもありません」

ダコスタは真面目に上官であるバルトフェルドに、対象の様子に変わりないと報告するのであった。

 

「地上はNジャマーの影響で、電波状況が滅茶苦茶だからなぁ。彼女は未だスヤスヤとおやすみか。ん!?」

 

「うっ!何か?」

自分がバルトフェルドに目がいった隙に敵艦に動きが!っとナイトビジョン仕様のゴーグルを構え直して、アークエンジェルを見る。

だがバルトフェルドが反応したのは、アークエンジェルではなく………

 

「いや、今回はモカマタリを5%減らしてみたんだがね…こりゃぁいいなぁ」

 

「はぁ……」

珈琲のことであった。一気に脱力してしまうダコスタだが、バルトフェルドは直ぐに動き近くに待機中の自分の部下たちの元へと向かう。

ダコスタもそれに追随するようにして追いかける。その道中、バルトフェルドは珈琲を一気に飲み干して空コップを上手く後ろから追いかけるダコスタに振り向かず、背を見せたまま後ろへと投げる。

 

「あ!あぁっ…」

ダコスタが上手くコップを受け取ると、バルトフェルドは自分に対して整列が完了している部下たちに告げる。

 

「ではこれより、地球軍新造艦、アークエンジェルに対する作戦を開始する。目的は、敵艦、及び搭載モビルスーツの、戦力評価である」

 

「倒してはいけないのでありますか?(笑)」

 

「「「「「はっはっは!」」」」」

1人のザフトのジョークが飛ぶと他の兵士たちも笑いが浮かぶ。

新造戦艦といっても相手は所詮ナチュラル、自分たちの敵になどまともに務まるはずがないと高を括っている。

そんな部下たちに困った奴らだと苦笑しつつも、バルトフェルドは話を続ける。

 

「ん~その時はその時だが…あれは遂にクルーゼ隊が仕留められず、ハルバートンの第8艦隊がその身を犠牲にしてまで地上に降ろした艦だぞ?それを忘れるな。一応な」

バルトフェルドは「あ~それと」っと付け足すように話を続けた。

 

「クルーゼ隊からの報告じゃ、あの新造戦艦には嘗てグリマルディ戦線や新星攻防戦で我がザフト宇宙軍に甚大な損害を与えたあの死神もいるらしいぞぉ」

彼からのその話に皆青筋を立て、先ほどまでの笑いが一瞬にして消え失せ静寂と化した。

ここに居る何人かのベテラン勢はバルトフェルド隊にくるまでは、ザフト宇宙軍でグリマルディ戦線や新星……宇宙要塞ボアズと名を変える前の戦いで、その死神の戦いぶりを見ている。

だが別の何人かのバルトフェルド隊に入ってきた新米たちは、嘲笑うようにしていた。

 

「隊長、そんなのきっとプロパガンダですよ」

 

「そうですよ、ナチュラルどものデマカセです!」

 

「ま、ことの真偽はこの後明らかになるさ。では、諸君の無事と、健闘を祈る!」

 

「総員、搭乗!」

ダコスタの指示により、各員それぞれの機体に乗り込む。

彼らが乗り込むのは、TMF/A-802•バクゥ……ザフトの陸上部隊において主力機となる4足歩行MS。

バルトフェルドも、ダコスタが運転するジープに乗り込む。

 

「ん~コーヒーが旨いと気分がいい。さ、戦争をしに行くぞ!」

 

 

 

その時、アークエンジェルでも自分たちの近くに敵が迫って入ることに気づく。

 

「本艦、レーザー照射されています!照合!測的?照準と確認!」

 

チャンドラの報告にマリューやブリッジにいる者たちは驚く。

彼女は急ぎ命令する。

 

「第二戦闘配備発令!」

 

マリューの指示のもと、チャンドラが艦内アナウンスで全乗組員に発令する。

 

「第二戦闘配備発令!繰り返す!第二戦争配備発令!」

 

 

「!くっそー!」

格納庫でスカイグラスパーの調整をしていたムウは、タイミングの悪さに毒づく。

一方、エイダもまた格納庫に戻ってきたばかりでのこのタイミングに苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。

 

「……ちっ、タイミングが最悪ね」

 

「フレイ!ごめん!話はまた今度!」

 

「うん、サイ。気をつけてね」

軍に志願し、アークエンジェルに残ると決めたフレイはブリッジクルーとしての役目があるサイを見送る。

彼女の顔はとても不安で暗い影が残る。

 

 

ここ医務室では床に男女の軍服が下着など含めて散乱しており、ベッドの上には裸の男女が静かに互いに密着しつつ眠っていた。

だが鳴り響く警報に遅れて反応し、シンラとキラは飛び起きた。

 

「シンラ」

 

「ああ、敵、だ」

ザフトが襲来ことに一瞬動揺したが、すぐに鋭い目つきに変わるシンラ。

急いで軍服を着なおす彼に続くように、キラも自分の軍服を着る。

着終わったシンラは1人呟く。

 

「俺はもう誰も奴らに奪わせない…!死なせるものか…!」

 

「シンラ……」

そんな彼の生き急ぐような姿にキラはソッと彼の頬に触れる。

彼女は躊躇いなく彼にキスをする。彼女からのキスにシンラは驚くことなくそれを素直に受け入れ、舌と舌まで絡ませる深い唇の交わりをする。

行為が終わるとキラは頬を赤くしつつも、嬉しそうにする。

 

「大丈夫、シンラは私が守るから……ね?」

 

「キラ………」

彼女は自分に優しくも慈愛に満ちた笑みを浮かべて見せてくれた。

シンラはこの笑みを浮かべる彼女が、もしザフトの連中に瀆されると思うと彼の心中は今嵐の如く荒れる。

 

「行こう」

 

「うん」

二人は艦内を走ってパイロットロッカー室へ向かう。

 

 

そんな中、アークエンジェルは今戦闘中である。敵がこの艦に向けてミサイル攻撃を敢行してきたのだ。

 

「状況は?」

 

「第一波、ミサイル攻撃6発!イーゲルシュテルンにて迎撃!」

 

「砂丘の影からの攻撃で、発射位置、特定できません!」

チャンドラとカズイの報告にマリューは渋い表情を浮かべる。

 

「第一戦闘配備発令!機関始動!フラガ少佐、ヤマト少尉は、搭乗機にてスタンバイ!」

マリューはここで号令を下す。シンラの名前を出さないのは彼がまだ出せる状況じゃないと判断したからである。

 

「フラガ少佐は出られるか?」

そのムウは今マードックと言い合いをしている、理由は自分の新しい乗機であるスカイグラスパーのことである。

 

「とにかく飛べるようにしてくれって…」

 

「それが無茶だって言ってんでしょうが!弾薬の積み込みも間に合わねぇし…」

スカイグラスパーはまだ調整が終わっておらず、しかも弾薬の積み込みも終わってすらいないのだ。

そんな状態じゃ戦闘など不可能である、マードックはそれを言って断固として反対するのであった。

その間にパイロットスーツを身に纏ったシンラがキラが格納庫にやってきて、それぞれの機体に向かう。

シンラがパワードに乗り込もうとした際、エイダが呼び掛ける。

 

「シンラ、待ちなさい。これからパワードにはウェア換装を……」

 

「このままいきます」

そう鋭い目付きエイダを肩越しから睨むシンラ。それを見てエイダは不敵に笑みを浮かべて了承する。

 

「いいわ。なら存分に行きなさい」

 

「そのつもりです」

彼はそのままパワードのコクピットへと乗り込む。2機のモビルスーツはそれぞれカタパルト位置へと移動する。

それを見届けたエイダは自分の部下に命令する。

 

「ブリッジのラミアス艦長に繋いで!」

 

 

 

「え?あ、はい」

ブリッジではミリアリアがエイダからの通信を受け取り、困り顔になる。

それに気づいたマリューが問いかける。

 

「どうしたの?」

 

「艦長、格納庫にいるエイダさんからの通信です」

 

「なんだ!この忙しい時に!」

ナタルはこの状況下において一体何のようだと憤るが、その当の本人がマリューの通信機に映り込む。

 

《艦長、このままストライクとパワードを出させるわ》

 

「エイダさん!貴女、何をいきなり!!」

マリューにしてみればいきなりそんなこと勝手に決めるなという思いであり、何よりシンラは出せる状態ではない。

にも関わらず、彼女はパワードまで出すと言う。

その彼女とのやり取りに割って入るように、シンラが通信機に映り込む。

 

《艦長、自分ならやれます》

 

「シンラくん!?だめよ!!貴方はまだ休んでなきゃ!!」

 

《いけます。それにこのままではアークエンジェルは的にされて沈みますよ》

彼の言うとおりではある。しかし先ほどまで精神状態が不安定だった彼を出すのは躊躇うし、寧ろ心配なのだ。

だがシンラは………

 

《大丈夫です。マリューさん、アークエンジェルに近づく敵は全て皆殺しにしますから、安心してください》

 

「シンラくん………」

 

《じゃあ、これで……》

 

「シンラくん!まっ………」

そう言って彼は通信を一方的に切る。先ほどのシンラ、様子が変だった。まるで殺意が彼を動かしているようにも見えて益々心配でならない。

っとエイダが不敵に勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

《じゃあ、艦長、よろしいでしょうか?》

 

「……貴女の言い様は気に入らないけど、出てもらうほかないわね。艦の方では小回りが効かないわ。ストライクとパワード発進させて!」

マリューが指示を出すと、ナタルが指示に従って号令する。

「ハッチ開放。ストライク、並びにパワード発進!敵戦闘ヘリを排除せよ!重力に気を付けろよ!」

 

 

ハッチが開放され、ストライクとパワードが出撃。勢いよく出た両機は重力によって地表に雪崩れ込むように着地した。

 

「くぅっ…!」

 

《シンラ!大丈夫!?》

着地した際、バランス悪くよろけて膝をついたパワードにキラは通信機から声をかけた。

今まで宇宙でモビルスーツを動かしていた為、重力下での運用は今回が初である。

キラのストライクもかろうじて砂地に立っている状態であり、パワード同様に危うい。

2機が現れたのを、バルトフェルドと副官のダコスタは視認した。

 

「出てきました…。あれがX-105ストライクですね。そしてあのもう一機が………」

 

「ああ。例の死神が乗っているとされる未確認の新型だ。バクゥも出せ!反応を見たい」

 

砂丘の先からザフト軍戦闘ヘリが現れ、ミサイルを撃ってくる。

咄嗟に迎撃態勢を取ろうするが、砂に足を取られ体勢を崩して、立ち上がるのも大変である。

次々と周囲からの攻撃が着弾してしまう。

キラはフェイズシフト装甲を展開して事なき得て、アグニを構えて戦闘ヘリを狙う。

しかし戦闘ヘリは素早く砂丘の影に消え、撃つことができなかった。

パワードも87mm大出力エネルギービームライフルを構え、そして発射するが如何せん砂に足を取られ、狙いが外れて掠りもしない。

するとコックピットに警告音が鳴り響き、同時に砂丘の向こう側から何かが現れた。

 

「なにっ…こいつは!?」

 

現れたるはザフト四足歩行型モビルスーツ•バクゥである。

四肢で砂地の地表を進み、砂地をものともせずに疾走するバクゥに、ストライクとパワードは取り囲まれた。

2機を取り囲むバクゥのパイロットたちは、コクピットのモニターに映るストライクとパワードに対して口を並べる。

 

「宇宙じゃどうだったか知らないがな!」

 

「ここじゃ、このバクゥが王者だ!」

 

その時、通信機よりミリアリアが呼び掛けてきた。

 

《キラ!ユーリ中尉!こちらからミサイル攻撃で援護します!避けて!》

その直後、アークエンジェルからミサイルが放たれる。ミサイルの狙いは当然バクゥではあるが、しかしその狙いは当たらず、そのバクゥ特有の地上滑走する機動力で回避運動をとり躱される。

次々とミサイルが周囲の地表に着弾する中、数発はストライクとパワードにも当たり、コクピットの二人に衝撃が襲う。

 

 

「きゃあ!!」

 

「キラ!!……ぐぅっ!!!」

衝撃で倒れた機体を起こすが、バクゥがミサイルを撃ってくる。

キラはアグニをバクゥに向かって撃つが回避されて当たらない。

シンラも87mm大出力エネルギービームライフルで応戦するが、砂に足を取られ再びバランスを崩して外してしまう。

その結果、バクゥのミサイル攻撃がパワードに命中する。

トランスフェイズ装甲である為、実体攻撃は無力だが衝撃は襲ってくる。

 

「ぐう!!」

 

「シンラ!!」

 

目の前でシンラが攻撃を受けたのを目撃したキラは、声を荒げる。

その時彼女は…いい加減に、と苛立ちながら機体を跳躍させた瞬間……キーボードを取り出し、攻撃の合間にプログラムを書き換えようと行う。

 

「接地圧が逃げるなら、合わせればいいんでしょ!!逃げる圧力を想定して、摩擦係数は砂の粒状性をマイナス20に設定!」

跳躍中にOS設定を地上用に最適化するキラ。飛び上がったバクゥがストライクに向かって迫る。

咄嗟にガンランチャーで応戦するが、その時、下方より素早い何かが飛びバクゥを真っ二つにした。

それはパワードのビームブーメランであった。砂に足を取られ満足にバランスを保つのもやっとの状態で、寸分違わず撃破するのは凄いとしか言えない。

 

「シンラ……凄い」

着地を狙って別のバクゥが飛びかかって襲いかかる。

再び砂に足を取られ、バランスを崩すかと思われたストライク………っが、しっかりと着地して砂地をものともせず立っていた。

そして襲いかかるバクゥに身を屈めて回避し、膝蹴りで機体を飛ばした。

 

「うおぉぉ!」

蹴飛ばされた機体はひっくり返り、その上にストライクが足を乗せてアグニで狙いを定めて撃った。

 

「このぉぉ…!」

 

「う、うわぁぁぁ!!」

至近距離からのアグニを諸に食らい、バクゥは瞬で撃破される。

バクゥの爆発により、月明かりだけの暗い砂漠が赤く照らされた。

ストライクのコクピットの中、息を荒く呼吸するキラは瞬きをして再度目を開ける。

そこにはいつもの優しい女の子ではない、敵に一切の躊躇いのない鋭い目付きで深く暗い瞳をした戦う者の眼をしていた。

「はぁ、はぁ、はぁ…。アークエンジェルも、そして!シンラも、やらせない…!」

 

 

一方シンラは、砂地に足を取られていた機体の体勢を立て直そうとする。

ストライクよりも図体がデカイパワードの足は、さらさらとした砂地に埋もれてしまうのだった。

 

「くっ!」

 

飛びかかってくる敵機、シールドで殴りつけ叩き飛ばした。

1機退くと別方向よりミサイルが接近、即座に回避運動をとろうとするが、如何せん機体が思うように動かない。

パワードの動きを見て、これはカモだと認識するバクゥのパイロットたち。

 

「ヤツから先にやるぞ!!」

 

3機のバクゥよりのミサイル攻撃が間断なく降り注ぐ。戦闘ヘリからもバクゥを援護するようにして、パワードを攻撃する。

その光景を離れた所より見てるバルトフェルドは呟いた。

 

「どうやら奴さん。地球での戦闘は不慣れのようだな?だが…」

視線をストライクに移す。

 

「この短時間で、運動プログラムを砂地に対応させた…あれが本当にナチュラルか…」

甚だ疑問を抱くバルトフェルド、ストライクにはナチュラルが乗っているとは思えなかった。

まさか乗っているのが同じコーディネーターとは思わないだろう。

 

「レセップスに打電だ。敵艦を主砲で攻撃させろ!」

バルトフェルドの命令より、ダコスタは通信で陸上戦艦レセップスにアークエンジェルに対しての艦砲攻撃を行うよう打電する。

レセップスの艦橋下両舷格納の40cm連装砲塔×3門から砲弾が発射される。

 

「南西より熱源接近!砲撃です!」

敵の砲撃に気付き焦りながらも報告するチャンドラ。

その内容にCIC指揮管制のナタルは「あっ!!」っと声を漏らす、マリューは焦りつつも指揮する。

 

「離床!緊急回避!」

敵の艦砲攻撃はアークエンジェルに辛くも当たりはしなかったが、すぐ傍の地表に直撃しその衝撃はアークエンジェルにも伝わる。

 

「あぁあ!」

マリューを含め、ブリッジにいる乗組員の皆、敵の艦砲攻撃の衝撃に声をあげる。

 

「少佐のスカイグラスパーは!!まだ出られないの!!」

艦長席の通信機より格納庫へ怒鳴るように問いただすマリュー。

 

「今出すわ!!」

格納庫でもエイダが指示飛ばして、ムウのスカイグラスパーを全力で出すよう自分のスタッフらや、マードックたちまでも従わせて作業に入ってる。

 

「なんで俺まで、あの姐ちゃんに指図されてんだ…」

自分までもこうして指揮られてることに1人愚痴るマードックだが…

 

「そこ!!文句言わず働く!!死にたいの!!アンタっ!!!」

 

「は、はいぃい!!」

エイダから鋭く睨まれながら怒鳴なられ、即座に背筋をピンっとさせて返事するマードック。

そんなやり取りを余所に、スカイグラスパーに乗り込むムウ。

 

「俺が行って、レーザーデジネーター照射する。それを目標に、ミサイルを撃ち込め!」

コクピットからブリッジに通信するムウに、ナタルが反論する。

 

「今から索敵しても間に合いません」

 

「やらなきゃならんだろうが!それまでは当たるなよ!」

 

《フラガ機スタンバイ。進路クリア。システム、オールグリーン!》

 

アークエンジェルよりスカイグラスパーが発進。だがその直後にレセップスからの第二の砲撃が発射される。

ストライクは他のバクゥと未だ戦闘中で、パワードは未だ機体が重力で満足反応できず防戦一方。

 

「こ、このままじゃ、アークエンジェルが………」

その時シンラのコクピットモニターに、レセップスからの砲撃が、アークエンジェルに向かって飛んでいくのを見た。

このままではアークエンジェルが沈む。自分の目の前で、あの時シャトルが大気圏でデュエルに沈められた時のように。

 

「……そんなことは、俺が、許さないぃいい!!」

その時、シンラの頭の中で光の欠片のような物が、まるで惑星爆発したかみたく凄まじく爆ぜて、その直後彼の黒い瞳が、白くなり目の周りに黒い線が浮かび上がっていた。

格納庫ではシンラのバイタル状況を見ていたスタッフの1人が、エイダを呼び出しそれを見せた。

 

「これを!」

 

「これは……いいわ、シンラ。見せなさい貴方の力を」

 

コクピット内ではシンラが、キーボードを取り出しキラとは比べようがない位の凄まじい速度のタイピングを行い、OSを書き換えている。

 

「……地面接地圧を現在数値よりプラス15、並びに重力下での関節稼働速度プラス2.5に設定」

その時、3機のバクゥが一斉にパワードに飛びかかってきた。それをキラは思わず声を荒げる。

 

「っ!!!シンラぁっ!!!!」

 

だが瞬間、パワードは素早く乱れぬ動きで迫り来るバクゥを2機、左右の腰に備えたビーム刃と実体の刃を合わせ持っている二刀流の剣•デュアルセイバーを抜刀、そのまま横凪ぎに切り裂いた。

そして背後より迫る3機目の首を鷲掴み、そのまま真っ二つに切り裂こうとしたその時、レセップスより再びの艦砲攻撃が飛んでくる。

それを見たシンラはすぐさまパワードを操り、首を掴んでいるバクゥをレセップスの主砲の弾目掛けて投げ飛ばした。

アークエンジェル目掛けて飛翔する弾は合計で5、その内の一つに今投げ飛ばされたバクゥが直撃爆散した。

残り砲弾はあと4、それにたいしてのAnswerはデュアルセイバーと一体化した鞘を射撃形態にした武器・99mm高出力エネルギーバスターライフルで、残り砲撃全てを寸分違わず纏めて撃ち落とした。

 

「これは!素晴らしいわ!」

 

格納庫でそれをモニタリングしてたエイダは嬉々として、悦に入っていた。

 

「し、シンラ、くん……」

 

ブリッジでも先ほどまで地球の重力によって苦戦していた筈の彼の機体が、突如動きが変わり一瞬にしてバクゥ3機とアークエンジェルに迫っていた敵艦砲撃を諸とも一蹴した光景に唖然とするしかなかった。

 

更にはそれを離れた所より観測していたバルトフェルドも、これに言葉がなかった。

先ほどまでに苦戦し立ち往生していたあのモビルスーツが、まるで人が変わったかみたく火の粉を払うが如くそれらを蹴散らしたのに対し、驚きを隠せない。

 

「何なんだあれは………ナチュラルなのか?あれは……」

 

 

 

「シンラ……」

 

キラもまたシンラの驚異的戦闘力に驚きを隠せなかった。

宇宙でも凄まじかったが、先ほどの動きも重力下でありながら素早く一切乱れぬ動きで敵の追撃を一蹴した。

その時、敵機の接近にコックピット内で警告音が鳴り響く。キラは切り替えて目の前の戦闘に集中し、目の前の敵に目を向ける。

アグニで砲撃するキラ。しかしコックピットに警告音が鳴り響きモニターを見、エネルギーゲージのバッテリー残量が危険域に入っていることに気づいた。

しかしザフトの戦闘ヘリがまだ居り、敵モビルスーツ•バクゥもまだ数機残っている。

焦りから隙を生んでしまい、それを1機のバクゥが見逃さず襲いかかる。

 

「しまった!!……きゃあ!!」

 

倒れるランチャーストライクに覆い被さるようにバクゥがマウントを取る。

 

「こいつ!!沈め!!」

 

ストライクを仕留めようと食らいつくザフト兵のバクゥ……っがしかし、それを一瞬でパワードがデュアルセイバーで一刀両断にして上段より真っ二つになる。

 

「シンラ……ありがとう」

 

「……キラ、気をつけろ」

 

「え、う、うん……」

 

出撃前と比べてまるで氷のように冷たい声音のシンラにキラは戸惑う。

だがそんな中、ザフトの戦闘ヘリが攻撃しようとその時突如、敵戦闘ヘリにミサイルが着弾ーー爆発を起こし、火ダルマとなり落下していく。

 

「な、なに!?なんなの!?」

 

動揺するキラを余所に、残骸となったヘリの向こう側から何かがやってくる。

それは軍用ジープであった。数台の車両が敵モビルスーツや戦闘ヘリにロケットランチャーを撃ちながらこちらに向かってくる。

そのうちの1台の車両がストライクとパワードに近づいてくる。

助手席に乗っていた人物が、ワイヤーをストライクとパワードに向けてそれぞれ発射する。

 

《そこのモビルスーツのパイロットたち!死にたくなければ、こちらの指示に従え!》

 

ワイヤーを経由して通信してきた彼等にキラは息を飲む。

それと同時にデータも送られてきた。

その内容がモニターに映し出される。ここ周辺一帯の地図であり、赤く点滅している部分があった。

 

《そのポイントにトラップがある!そこまでバクゥを誘き寄せるんだ!》

 

それだけ一方的に伝えて通信は切れ、ジープは離れていく。

キラは、敵なのか、味方なのかわからない謎の集団に従うべきか迷う。

っが突如機体が大きく揺らいだ。

 

「な、なに?し、シンラ!?」

 

それはストライクの片腕を掴んだままパワードが飛翔したのだ。

戸惑うキラを無視して、シンラはそのままストライクを牽引しながらパワードを先ほどの通信で指定されたポイントに向かう。

目標地点に降り立ったパワードとストライク、それを逃すまいと追いかけてきたバクゥが、目的地で立ち止まる2機のモビルスーツに襲いかかってきた。

そのタイミングを逃さずシンラは、無言且つ冷静操縦し一気にストライクを引っ張りつつその場から飛び退いた。

2機のいた地表に複数のバクゥが降り立った瞬間、地面が爆発。

バクゥらを取り囲むように爆発した地表は陥没。

そこはもう簡単に抜け出すことはできない蟻地獄と化した。

しかしそう時間をやるつもりはないぞと言わんばかりに、けたたましい轟音鳴り響く爆発が起こる、凄まじい爆炎に飲み込まれて、バクゥはその乗り手たち共に炎をあげて辺りを照らしその命を散らす。

それを見ていたキラは、これが地上での戦いだと改めて実感しつつモニターに写るパワードの姿を、不安げに眼を向けるのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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