機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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PHASE26 ペイバック

夕方──砂漠地帯は気温が低くなり、日中とは比較ならないほどに寒くなり始めた夜であった。

マリューたちはレジスタンスの拠点にて暖を取り、休息に入っていた。

しかし突然騒ぎが起こり、それ処ではなくなくる。

1人のレジスタンスの兵士がサイーブたちの居る場所に、息を切らして慌てて入ってきた。

 

「サイーブ!空が燃えてるっ!タッシルの方向だ!」

 

「なにぃ!?」

 

レジスタンスらは急ぎ装備を整え、弾薬をジープに積んで発進していく。

置いてかれたマリューは、ムウに問いかける。

 

「どう思います?」

 

「んー…。砂漠の虎は残虐非道、なんて話は聞かないけどなぁ。でも、俺も彼とは知り合いじゃないしね。

どうする?俺達も、行くか?」

 

などとこのような状況にも関わらず、ムウはいつもの軽い口調で宣う。

そんな彼に聞いた自分が情けないと思ったか、マリューはため息をついた。

その後自分の考えを言う。

 

「アークエンジェルは動かない方がいいでしょう。確かに、別働隊の心配もあります。少佐、行っていただきます?」

 

「あ?俺?」

 

ムウはまさか自分が名指しされるとは思わなかったのであろう、眼を丸くして自分の指で自身に指した。

他人事を抜かす彼に、マリューはニコリと笑う。

 

「スカイグラスパー、速いでしょ?」

 

「だわねぇ。んじゃ、行って来るわ」

 

「出来るのはあくまで救援です!バギーでも、医師と誰かを行かせますから!」

 

マリューの言葉を受けて、ムウはそのまま走っていく。

 

「総員!直ちに帰投!警戒態勢を取る!」

 

残るマリューは、周囲に向かって命令する。

 

 

───────────────────

 

 

その頃、タッシルでは───

 

「隊長!」

 

「終わったか?双方の人的被害は?」

 

「はぁ?あるわけないですよ。戦闘したわけじゃないですから」

 

バルトフェルドたちはレジスタンスたちの故郷の町であるタッシルに対して、攻撃を仕掛けた。

しかし攻撃と言っても無差別な虐殺や蹂躙と言ったものではなく、まず手始めにタッシルに到着したバルトフェルドはタッシルに現住する女子供、老人などに町を焼き払う為警告をして追い出す。

その後誰も居なくなった無人の町を焼き払った──この結果、双方ともに人的被害は皆無である。

 

「では、引き上げる。グズグズしてると、旦那方が帰ってくるぞ?」

 

「それを待って討つんじゃないんですか?!」

 

これだけのことをしておいてまさかの撤退命令に、ダコスタは驚いた表情をする。

しかしバルトフェルドは苦笑しつつ言い返す。

 

「おいおい、そりゃ卑怯だろ?誘き出そうと思って街を焼いわけじゃないぞ」

 

「は、はぁ…」

 

「ここでの戦闘目的は達した。帰投する!」

 

バルトフェルドたちは直ぐに撤退を開始する。

それからしてレジスタンスたちが乗るジープの集団が、タッシルに到着した。

 

「街が…」

 

もはや廃墟となったタッシルの町、しかし住民は皆無事であった。

バルトフェルドの警告を聞き入れ、住民たちは急いで町から出た。

しかし皆生きていても町や、食料全てを失いこれから先の事など全くもって見えず自暴自棄になる者は少なくなかった。

バルトフェルドは本気でレジスタンスを相手取ってはいない、これが本気で来たのであれば最初に警告などせず、住民諸ともタッシルの町を焼き滅ぼすことなど造作もなかったはずなのだから。

だが幾ら家族が無事であったとしても、生まれ育った大切な故郷が焼かれてこの先をどう生きていくかなど絶望しかない。

サイーブを除くレジスタンスの者たちは一同にして、砂漠の虎に対して報復を行うと行動を開始する。

 

「奴等、街を出てそう経ってない。今なら追い付ける!」

 

「街を襲った後の今なら、連中の弾薬も底を突いてるはずだ!」

 

「俺達は追うぞ!こんな目に遭わされて黙っていられるか!」

 

おー!っと皆怒りに冷静さを忘れ、銃器を手にして次々にジープに乗り込もうとする。

それをサイーブが止める。

 

「バカなことを言うな!そんな暇があったら、怪我人の手当をしろ!女房や子供に付いててやれ!そっちが先だ!」

 

「それでどうなるっていうんだ!見ろ!タッシルはもう終わりさ!家も食料も全て焼かれて、女房や子供と一緒に泣いてろとでもいうのか!」

 

「まさか、俺達に虎の飼い犬になれって言うんじゃないだろうな。サイーブ!」

 

「うっ…」

 

リーダとして冷静になって、今は怪我人の手当てしたり家族たちの傍にいてやることもまた大切なことだ。

生きていればもしかすればまたやり直しが利くのだ、死んではそれすらできないのだ。

にもかかわらず、仲間たちはそれを理解せずただ復讐に向かうことしかない。

確かに自分とて故郷を焼かれて悔しいし、砂漠の虎に復讐したいとも思う。

しかし憎しみで眼を曇らしてはいけない、それを気づかなければ手痛い処では済まされない酷い結果になる。

それでも仲間たちはそんなことなどどうでもいいと、まだ追い付けると砂漠の虎の跡を追う。

サイーブもこのまま見過ごすなど出きるわけもなく、自分も弾薬を積んでジープに単身乗り込む。

 

 

 

───────────────────

 

「なんですって!?」

 

事態の内容をムウから通信で聞かされたマリューは当然これに驚く。

 

「追ってったなんて…なんてバカなことを…何故止めなかったんです、少佐!」

 

マリューは現場にいた筈なのにそれを引き止めることを出来なかったのか、ムウを咎める。

 

「止めたら…こっちと戦争になりそうな勢いでねぇ…。それより…こっちも怪我人は多いし、飯や、何より水の問題もある。どうする…?」

 

申し訳なさそうにそう弁明し、次の此方の出方はどうするか尋ねるムウ。

マリューはこのままレジスタンスを見捨てる選択は頭になかった。

 

「ユーリ大尉とヤマト少尉に行ってもらいます。見殺しには出来ません…。残っている車両で、そちらにも水や医薬品を送らせます。ハウ二等兵!パワードとストライクの発進を!」

 

「はい!シンラ大尉!キラ!パワード、ストライク、発進願います!」

 

その言葉を合図にラクスの部屋にいたシンラは急ぎ向かおうとする。 

 

「じゃあ俺はいく」

 

「はい、お気をつけて……」

 

彼女は儚げにシンラにそう伝え見送る。シンラは急ぎ格納庫へ向かう。

 

キラは既にストライク乗り込み発進、パワードはウェア換装の為遅れる。

キラは直ぐに現場に急行するが既にもうレジスタンスがザフトのバクゥに攻撃を仕掛けている最中であった。

ジープとモビルスーツではアリがゾウに挑むようなもので、勝ち目などあろうはずがない。

それを見たキラは顔を険しくする。

 

「一方的なことを……!」

 

到着していきなりキラは、ジープ1台に迫りつつあるバクゥ1機に対してビームライフルを放つ。

 

「逸れる?そうか、砂漠の熱対流で…。」

 

ビームが砂漠の熱による対流のせいで思うように敵に当たらないのに気づく。

前回は夜だった為、そのようなことは気にしなくて良かったが今は日中、それすら気をつけなければならない。

 

「ほう」

 

ストライクの登場にバルトフェルドは眼を細める。

しかし彼が眼を引いたのは、ストライクが一発目と比べて直ぐに砂漠の熱環境に適合したのか二発目からしっかりとバクゥの足元に当たり爆発。

だが地面に当たっただけで、バクゥには大したダメージが入っていない模様。

その時、ストライクのモニターにレジスタンスの戦闘車両が写り込みそこにはカガリが乗っていた。

 

「カガリ!…っち!」

 

このまま三発目を発射すれば、間違いなくバクゥの爆発に巻き込まれて彼女は死ぬ。

キラは一度戦闘空域を離れる、それを逃すまいと3機のバクゥはレジスタンスなど捨て置いてストライクを追撃する。

バクゥに追われるキラだが、通信にミリアリアの声が響く。

 

《キラ!もうすぐでシンラ大尉のパワードがウェア換装終えてそっちに向かうわ!》

 

「………シンラばかりに負担は負わせられない!!わたし1人で!!」

 

シンラは自分が守るから……その意志が強くなるキラ、このままただ守られてるだけなんて駄目だ───彼の傍にこれからも居続けるには、自分ももっと強くならないといけない。

決意する彼女、そんなの知らぬバクゥに乗るザフト兵士たちは痺れ切らし仕掛ける。

3機の内1機が450mm2連装レールガンで目の前を逃げるストライクを攻撃。

それをいち早く気付き回避し、仕掛けた1機目を蹴り飛ばした。

次に2機目が400mm13連装ミサイルポッドを叩き込む。

これは流石に避けきれず着弾する──フェイズシフトであるので撃破にはならずに済んだが、だが被弾回数に応じて機体の稼働時間も短縮され、エネルギー切れでメタリックグレーのディアクティブモードに戻ってしまう。

そうなればバクゥの実弾武器を諸に喰らえば命がない。

 

すると先ほどキラによって蹴り飛ばされたバクゥがゆっくりと立ち上がる。

 

「ぃっよし、まだ行ける!」

 

乗っているザフト兵は自身の機体がまだ戦闘可能であることに喜ぶ。

っとそこへバルトフェルドから通信。

 

「カーグット!」

 

「は!」

 

「バクゥを私と替われ!」

 

「はぁ?!隊長!!」

 

突然のバルトフェルドのこの命令に、パイロットだけでなく副官のダコスタも驚く。

だがバルトフェルドはそんなの気にしないで話す。

 

「撃ち合ってみないと分からないこともあるんでねぇ」

 

そうして部下と入れ替わり、バルトフェルドがバクゥに搭乗する。

彼の手で動き出すバクゥがキラに襲いかかる。

 

 

「うっ!3機目!?まだ動けたの!」

 

 

「フォーメーションデルタだ!ポジションをとれ!」

 

「「了解」」

 

ストライクに対してフォーメーション攻撃を行う。

間断ない執拗な追撃に防戦一方なキラ。

 

「くっ!」

 

体制を立て直すべく飛び上がるも、そこを読んでいたのかバクゥが飛びかかりストライクを地面に叩きつける。

 

「っ……こ、こんなことで……終わりたく、ないっ」

 

シンラの為にここでやられるなんて駄目と、彼女は奮い上がる。

 

 

そう全ては───

 

 

「シンラの為に!!!」

 

 

その時、彼女の頭の中で植物の種子のようなものが砕け散るようなイメージが起き、キラの瞳のハイライトが消失する。

彼女はペダルを踏み入れ、エールストライクは飛翔する。

そこへバルトフェルド操るバクゥがミサイル攻撃を行う。

確実に目標であるストライクを捉え、命中するかと思いきやスラスターを空中で停止、ミサイルはストライクを追い越して同士討ちみたくぶつかり爆発する。

キラは反転し、バクゥを横切る際にシールドを手放した。

それがバクゥにぶつかり、編隊を崩す。

次々と放たれたミサイルに対してストライクは砂を巻き上げ、回避した。

 

「うわぁ!!」

 

爆煙が上がったところを避けようと飛び越えるバクゥを、待っていたようにタイミング良く低空飛行して下から撃つ。

放たれたビームは吸い込まれるようにコックピットを貫いて、バクゥは爆発した。

 

「なに!?」

 

突如としてストライクの戦い方が一変したことに驚くバルトフェルド。

しかしこのままやられる訳には行かないとして次の命令を下す。

 

「各個に当たれ!奴を攪乱しろ!」

 

っとその時であった。もう一機のバクゥ目掛け別方向からビームが発射され、それが直撃し爆発する。

 

「なんだと?!」

 

モニターで確認するとそこには、パワードの高機動戦闘特化型形態であるパワードイェーガーがいた。

背部にはX字状の4基のブースターユニットはなく、扁平形のウイングユニットを装備している。

これはパワードイェーガーの重力下での高機動装備である。

 

「新手のモビルスーツ!?いや、たしかクルーゼ隊の報告では、死神が乗る機体も換装できるとの内容だったな」

 

バルトフェルドのバクゥを視認したのかパワードイェーガーは、エールストライクよりも遥かに越えた機動力で瞬時に彼のバクゥにビームサーベルで襲いかかる。

 

「なんてヤツだ!クルーゼが苦戦するわけだ───だが、久々におもしろい…」

 

相手の恐るべき機動性に苦虫を噛み潰したようにバルトフェルド、だが直ぐに笑みに変わる。

そんな彼のバクゥと対しながらパワードイェーガーは、ストライクを守るようにして地上に立つ。

 

「……ふっ、まるで姫を守るため駆けつけたナイトじゃないか──後退する!ダコスタ!」

 

「ぁあ…はい!」

 

バルトフェルドはミサイルを乱射し、煙幕みたく利用してその場より残存部隊を引き連れ撤退するのであった。

 

 

──────────

 

「シンラ!!」

 

戦闘が終わり、シンラは機体から降りるとキラが走って抱きついてきた。

 

「キラ、遅れてすまない。パワードイェーガーの地上用装備換装で遅れた…大丈夫か?どこかケガは」

 

「ううん!大丈夫!!──でも」

 

「でも?なんだ?」

 

「今は、こうしていたい…」

 

彼女はシンラの背中に手を回し、彼の感触を感じようと密着する。

シンラもそんな彼女を受け入れ、しっかりと抱き締める。

その時──

 

 

「アフメド!!」

 

カガリの悲鳴にも似た声がその場に響き、抱き合っていた2人は何事かと振り向く。

そこにはレジスタンスの少年アフメドが、先ほど戦闘でバクゥによって車ごと吹き飛ばされて息をしていなかった。

カガリの声に反応し、返ってくることはなかった。

彼だけではない、数人の遺体が横たえられていた。

するとキラは、シンラから離れてカガリたちのもとまで近寄ると一言。

 

「死にたいんですか?」

 

「なんだと!?」

 

「こんなところで…なんの意味もないじゃないですか…」

 

「なんだと…貴様!見ろ!

みんな必死で戦った…戦ってるんだ!大事な人や大事なものを守るために必死でな!」

 

守りたいから戦う、それはキラも分かる。

だがこれだけの被害が出ているのでは何の意味はない。

それに対してキラは苛立ち、遂にはカガリの頬を叩いた。

 

「気持ちだけで…一体何が守れるっていうの!!」

 

彼女の叫びに周りが凍りつき、頬を叩かれたカガリも目を見開き、キラを見るしかなかった……。

 

 

 

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