機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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※原作準拠の方、オリジナル要素、オリジナルモビルスーツ、オリ主主体などに抵抗ある方はブラウザバック推奨します。


PHASE34 シンラの決心

シンラがバルトフェルドと話をしていた頃、アークエンジェルの外では、カガリがマリューに詰め寄っていた。

 

「だから私を連れて行けと言っている!あんた達よりは情勢に詳しいし、補給の問題やら何やらあった時には、力になってやれるしな」

 

「…でも…」

 

いきなりアークエンジェルに乗せろなどと言われて「はいいいですよ」と了解するなど、到底出来るわけがない。

にも関わらずこの少女は、それが当たり前に通ると思ってるのか話を続ける。

 

「無論、アラスカまで行こうってんじゃないし、地球軍に入るつもりもないが、今は必要だろ?」

 

「君が、かい?」

 

「ぁいや…だからその…いろんな助けがだ!」

 

「何を勝手に、戦艦は遊び場じゃないぞ!」

 

ムウに問われて、口ごもりつつも押しきろうとするカガリの身勝手さにナタルは怒る。

その様子を少し離れた場所より見ているエイダの傍に、レジスタンスに扮した彼女の部下二人がマリューたちに気づかれずに現れる。

 

「ドクター、例の件でご報告が」

 

「聞くわ」

 

「ドクターの睨んだ通り、あの少女は、アスハの…………」

 

彼らからの報告に顔を顰めるエイダ。

 

「やっぱり...じゃあ一緒にいるランボーみたいな男は?」

 

「彼に関しても、オーブ軍の....」

 

「分かったわ。ありがとう」

 

部下の二人に礼を言いつつ、マリューと話すカガリに目を向ける。そのカガリは尚もマリューに自分をアークエンジェルに乗せろ宣っている。

 

「んー…ともかく、私はアークエンジェルと共に行くぞ!もう決めたからな!」

 

「一体何様で言っているの?お嬢ちゃん」

 

「なにを!!」

 

腕組みしながらエイダが鋭い目つきでカガリを見下すように見つめる。カガリはまたもお嬢ちゃん呼ばわりされ、憤りを見せるがエイダからすればその様子は、ただ子犬が人間に可愛いだけの威嚇を向けているにしか見えなかった。

 

「またお前か!人のことを子供扱いして!!これでも場数が...!」

 

「何が場数よ。世間知らずのガキの場数なんてたかが知れてるわそんなもの」

 

「言ったな!!この!!」

 

「よせ!!カガリ!!」

 

「.....アスハ」

 

「っ!」

 

キサカの制止も聞かずにカガリはエイダに殴りかかる。だが微動だにしないエイダが一言口にした途端、カガリは動きを止める。

それを聞いていたキサカもまた危機感を抱いたのか、カガリの元へ走ろうとしたがエイダの部下二人に阻まれてしまう。

 

「やめたほうがいいわよ。彼ら二人、諜報も長けてるけど、戦いも強い戦闘用コーディネーターだから」

 

「エイダさん....貴女一体」

 

マリューの啞然とした言葉を無視して、エイダはカガリに目を向ける。

 

「彼女の名前、カガリ・ユラ...確かに偽名ではないけど、ファミリーネームを名乗ってないわよね」

 

「彼女の名前はカガリ・ユラだろ?」

 

首をかしげるムウがそう尋ねるが、エイダは否定するように首を左右に振る。

 

「ユラはミドルネームよ。彼女のファミリーネームは....アスハ」

 

「アスハ....え?それって...」

 

マリューやナタル、ムウはその名前に覚えがあった。カガリは「やめろ!」と口にするが、しかしそんな制止の声などエイダには何の意味もなく、無情にもその先の言葉が紡がれる。

 

 

「彼女のフルネームは、カガリ・ユラ・アスハ....中立国オーブ連合首長国、その代表ウズミ・ナラ・アスハの一人娘よ」

 

 

 

 

____________________________________

 

 

 

その頃、シンラは一人艦内を歩いていた。その最中、彼は先のバルトフェルドに言われた言葉を思い出していた。

 

 

 

君はそう判断しているが、それが彼女の思いを踏みにじることになりかねないぞ?

 

残酷なことに繋がりかねない....肝に銘じておいた方がいい

 

 

「......」

 

目を伏せがちに下を向いて歩くシンラ、すると横から楽しそうな声が聞こえる。

 

「それほんと?凄い!」

 

「ええ、プラントでは...フフフ」

 

声がするのはラクスがいる部屋だった。中ではキラとラクスが2人っきりで仲良く楽しく女子同士話の花を咲かせている。

 

「プラントではそういうファッションが流行ってるんだ」

 

「えぇ、ただ...わたくし、まだそういうのを一人で行ったことがないのです」

 

「そうなんだ…ラクスと行ってみたいなぁ」

 

「それは素晴らしいですわ!キラと、そうですわ!シンラと一緒に三人で行きたいですわね!」

 

ラクスは今時の女の子らしくファッションしたり、同性の友達と買い物したこともない。

同い年のキラとこうして話していると、プラントにいる時よりも楽しげになる。

 

「いいね!それ!シンラと三人で、私たち二人の服を見てもらおう!」

 

「そうですわね!……あ、でも」

 

それは名案だと喜ぶんで束の間、ラクスは顔を俯かせる。

 

「どうしたの?」

 

「その、キラはご迷惑では?」

 

「どうして?」

 

首を傾げてラクスが言う迷惑が気になり問いかける。

だがラクスは"知っている"、キラがもうシンラと親密な関係になっていることを。

それがとても羨ましく、自分もキラのようにと思い描いたりしてしまう。

すると自分の手をキラが両手で包み込むにして触れる。

 

「キラ?」

 

「あのね?わたし、ラクスとシンラと三人で!って言うのも良いなぁって思うの」

 

「それって…」

 

キラは頬を赤めながらモジモジしつつ何かを伝えようとする。

 

「うん…あのね、ラクスとだったらいいよ。二人一緒にシンラに想いを伝えて、それで幸せになるのもいいって思ってるの」

 

「キラ……」

 

ラクスは嬉しそうに瞳を潤ませ、キラも同様の様子を見せる。

 

「ハロ! ラクス! てやんでぃ! ミトメタクナーイ!」

 

「ピンクちゃん?どうしましたの?」

 

突然ハロが騒ぎだし、ドアのロックを開ける。扉が開き廊下にいたシンラの姿が垣間見える。

 

「あ!シンラぁ!」

 

「あら!今お仕事は大丈夫ですか?」

 

二人は嬉しそうにして彼の傍へと駆け寄る。

シンラを左右から挟むように密着してくる、その際に彼女らの発育した身体──特に胸が彼の腕に当たっている。

普通なら大抵の男子は喜ぶか照れて焦るかだが、シンラの反応は違った。

 

「シンラ?」

 

「どうかなさいましたの?」

 

「…………」

 

彼は顔をしかめて全く反応がなかった。だが…

 

「………なんでも、無いんだ」

 

「本当に?」

 

「ああ…」

 

「ご無理はしてませんか?」

 

「無理なんてしてない」

 

二人は心配そうに彼を見つめる。そんな彼女らに気づかれまいと平静を装う。

だが…

 

「ら、ラクス……?」

 

突然ラクスが彼の顔を両手で優しく包み込む。いきなりだったので思うように反応できなかった。

 

「お、おい、ラクス……そのいきなり、なにを…」

 

「……シンラは、怖いのですか?」

 

「え?」

 

何を言っているのかシンラは間の抜けた声を漏らす。しかし自分の顔を両手で挟んで離さないラクスの眼は、此方少しも逸らすことなく悲しげにジッと見つめてくる。

 

「シンラは……ずっと一人、孤独にいたのですね…たった一人……」

 

「……な、なにを…」

 

「一人はとても辛いと思います、悲しいと思います。どうかその辛さを、悲しみを、わたくしとキラにお分けください。少しでも貴方を癒したいのです、ね?キラ」

 

「ラクス……うん、そうだね」

 

キラもシンラの手を両手で大切に包み込みながら、揺るがぬ思いで彼を見る。

 

「わたしもシンラの為に傍にいるから、だからシンラももっとわたしたちの傍にいて...ね?」

 

「…………」

 

二人の言葉に心が傾きそうではあるが、しかしシンラは眉間に皺を寄せつつ口を開いた。

 

「ラクスは、プラントに帰りたいとは思わないのか?」

 

「どうしてそのような話を?...確かにプラントが心細いというのはありますわ。でもそれよりも、わたくしはシンラの傍に居たいのです」

 

「家族だって、君の父親だって心配してるはずだ。それに心配してくれるのは嬉しいが、俺は地球軍の軍人だ…つまり敵なんだ」

 

そう。結局自分はプラントと戦争している地球軍の軍人であることは変わりない。

それに沢山の彼女らと同じコーディネーターを殺している、もしかしたら何れその矛先が彼女の故郷に向けられるかもしれない。

そんないつ毒牙を向けてくるかも分からない相手の心配など、普通はしないのだ。

だがラクスは尚も悲しい顔をする。

 

「どうしてそのようなことを言うのですか?地球軍であろうとシンラはシンラですわ。わたくしは貴方の傍に居たいのです」

 

「わたしも。シンラが辛いならずっと一緒にいたい…だから」

 

「ラクス、キラ……それがなにを言ってるのか、分かってるのか!!」

 

そこでシンラは彼女らの手をはね除け、彼は自分でも気づきもせず声を荒げる。

 

「ラクスは分かってるのか!!このままアラスカの地球軍本部にいけばどうなるか!!プラント最高指導者の一人娘を、本部の高官どもが矛先を向けないはずがない!!」

 

「シンラ……」

 

「キラもだ!!俺とこのままずっとと言うことは、戦争から逃げだすことは出来ないんだぞ!!やりたくもない殺しまでずっと続けることになるんだ!!」

 

「で、でも……」

 

彼はそのまま二人から離れていく。

 

「……すまない。でもこれは二人のためなんだ…わかってくれ」

 

その言葉を残して、彼は二人の前から去っていく。残されたキラとラクスはただ茫然と眼が潤み、悲しみの表情を浮かべているのは間違いなかった。

 

 

────────────────

 

アークエンジェルの展望エリアでシンラは一人、顔を俯かせていた。

 

「シンラくん」

 

「あ...マリュー、さん…」

 

そこへマリューがやってきた。彼女は優しく笑みを浮かべてシンラの隣に並ぶ。

 

「一緒にいいかしら?」

 

「構いませんよ」

 

「ありがとう……出航は多分明後日になるわ」

 

「…そうですか」

 

ぎこちない雰囲気、マリューはシンラの横顔をチラッと覗く。

彼の横顔は暗く自分を責めているような、そんな様子である。

 

「ええ。……あと、レジスタンスのカガリさん、彼女も同行することになったわ」

 

「……どうして」

 

あの後、エイダが彼女の素性を暴露した為に場の収拾が困難となった。

カガリは「余計なことを話してくれたな!」とエイダにかみつくが、だがそれを一蹴してカガリを己の腕力で制止させる。

これを彼女の護衛であるオーブ連合首長国陸軍・第21特殊空挺部隊に所属のレドニル・キサカが止めようとするが、エイダの部下二人が阻み一触即発となる。

しかしそれをマリューは咄嗟にカガリの同行を許し、その場では事なきを得ることに。

 

 

「カガリさん…彼女は中立国オーブの代表の娘だそうよ。連れの男はその護衛、わたしたちが彼らを受け入れる名目としてはオーブの重要人物の保護と言う所ね。

護衛の男性──オーブの陸軍所属のレドニル・キサカ一佐が、もしもオーブ領海に入ることになったら自分が仲介すると約束してくれたわ」

 

「…そうですか」

 

「シンラくん………その、キラさんたちから聞いたわ」

 

「…………」

 

マリューの言葉にシンラの表情が強ばる。だが彼女は真剣な表情でシンラと向き合う。

 

「シンラくん、貴方が彼女たちを救いたいと言う気持ち分かるわ。でも、彼女たちは貴方が心配なの…それは私も………。最近のシンラくんは、何処と無く自分が生きていると言う事をどうでもいいみたいに感じるわ…とても見ていられないの…」

 

「…………」

 

そう語るマリューはキラやラクスのように悲しげである。

それだけマリューから見るシンラはそう見えてしまうのだ。

今まで戦場に居ると自分の命を軽んじたり、自分の命をどうでもいいとすてるような生き方をする者は珍しくはない。

それでもマリューとしては、シンラにそんな風になってほしくはない。

何より戦闘中のログを確認させて貰った時、彼が無機質になって敵を殺す所なんかも見ていて辛いとすら感じた。

 

「………シンラくん…お願い。もうこれ以上…」

 

「………………………マリューさん、すみません。少し用件を思い出したので、これで失礼します」

 

「え………?シンラくん…?」

 

間の抜けた声を漏らすマリューを置いて、シンラ早々と歩き去る。

その足取りは早歩きで一直線に彼は目的の場所へと向かう。

 

「………」

 

彼の顔は異常に険しかった。だがその胸中では彼に一つ決心が芽生えていた。

 

 

──────────────────────────

 

 

「砂漠を越えると言うと、次の航路は紅海ですね」

 

「海かー、バカンスで行きたかったわねぇ」

 

「ホントだよな」

 

格納庫のエイダたちカンパニーの面々が宛がわれた作業ブースで、メンバーの皆が談笑していた。

パワードパンツァーの初陣で砂漠の虎の撃破という功績の影響か、少し浮き足だっているのかもしれない。

そんな中、エイダは険しい顔を浮かべてる。

 

「………」

 

「ドクター、いかがしました?」

 

「大丈夫、何でもないわ。ごめんなさい、心配させて」

 

エイダの補佐を務める女性メンバーが彼女を気遣う。エイダがこんな顔になってるのには理由がある。

カガリの一件、マリューが咄嗟に彼女を庇う形で同行を許したことにエイダは異議ありと訴え、二人はいつもの険悪な雰囲気に。

ムウとナタルが割って入り、そしてキサカがオーブ領海に入る際の仲介をするという約束もあってこれ以上は酷くならなかった。

 

「まぁた、ラミアス艦長と揉めたんですか?」

 

「いつものことよ。気にしないで」

 

「はい」

 

「それと、皆浮かれてるわね。紅海に入る前に問題があるわ」

 

メンバーの皆が「え?」と口々にする中、エイダは地図を広げアークエンジェルが紅海へと向かう進路の途中、砂漠地帯の終盤辺りに指を指した。

 

「ここ、ザフトの補給基地よ。ここを抜けない限りは無理だわ」

 

彼女の言葉に皆残念がる。

 

「でもそれ、レジスタンスの人たちは気づかなかったんですか?」

 

「連中は砂漠の虎に熱中だったから知らないわ」

 

「艦長たちには?」

 

「明日言うつもりよ…………ん?シンラ?」

 

エイダが眼を向けた先に、シンラが真剣な表情で立っていた。

 

「どうしたのシンラ。珍しいじゃない何でもないような時に貴方が来るなんて…」

 

「……ドクター、お願いがあります」

 

彼から発せられるただならぬ雰囲気を感じ、エイダは慎重に問いかけることにした。

 

「……どうしたの?言ってみなさい」

 

 

 

 

「それは…………」

 

 

 

「なんですって…………貴方、本気なの?……それ」

 

彼から聞かされた内容に、エイダは眼を大きく開かせ驚愕するのだった………。

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