今回無理矢理だったり、文章が見にくいと感じる部分があると思われるのでご注意ください。
翌日、アークエンジェル内部では明日の出航に備えて皆其々の作業に従事している。
艦長室ではマリューを始め、ムウ、ナタル、それにシンラとエイダが居る。
彼らは此れから向かう紅海に向けて会議をしていた。コーヒーカップ片手にムウは地図を見つめる。
「ここが現在地、そしてここから北上すれば紅海…やっとこの砂漠から解放される…………だったんだが」
ムウがマリューに振り向くと、彼女は難しい顔で頷く。
「えぇ。エイダさんからの情報では紅海の手前に、ザフトの補給基地があるわ。戦力は?」
「部下の報告では…ビートリー級が10隻、モビルスーツが45機」
「やっとこの砂漠を抜け出せると言うのに……」
ナタルは苦虫を噛み潰したように顔を歪ませる。ムウやマリューも頭を抱えこの問題をどうすべきかを考える。
余りにも前回のバルトフェルド隊との比ではない、これではまともに戦える訳がないと嘆く三人に、そこへエイダが提案する。
「私の提案があるのだけど、いいかしら?」
「なんだい?そいつは?」
ムウが問いかけると、エイダは発言する。
「パワードに敵基地を奇襲してもらうの」
「「「っ!?」」」
マリューたち三人は驚愕する。目の前の彼女はいきなり何を言っているのか。
敵は何倍もの戦力に対してパワード一機で奇襲など正気の沙汰じゃない。
マリューはデスクから立ち上がり、凄い剣幕で怒鳴る。
「何をバカな事を言っているの!?パワード一機なんて無理だわ!!」
「そうでもないわ。この基地は入り組んだ地帯に無理やり建設してるせいで、敵に入り込まれたら大所帯は機能しない」
エイダの話にマリューは頭を抱える。代わりにナタルが冷静に問いかける。
「ですが、どうやって近づくんです?すぐに発見されます」
「大丈夫よ。こんな地形ならパワードの近接形態であるシュナイダーでやれるわ。
しかもアレには、GAT-X207 ブリッツの装備である視覚的にも電子的にも外部からの探知を不可能にするミラージュコロイド・ステルスシステムがあるの」
「なんですって!!」
「なんだと!!」
いきなりのことにマリューとナタルは同時に驚く。ミラージュコロイドは、可視光線を偏向する特性を持ち、マイクロ・プリズムに類似した働きをする物質であり、様々な帯域の電磁波に干渉または変更する性質を持つ、これを使えば敵陣深くへの電撃侵攻できる。
「おいおい、どんだけ懐が多いんだよほんと」
ムウはその内容にため息を吐いた。
「ブリッツのミラージュコロイドは連続使用時間が80分が限界だけど、パワードシュナイダーなら連続使用時間が150分まで可能よ」
「いやでもな……おいシンラ」
ムウはシンラに問いかけて、彼自身の声も聞いておきたいようだ。
「はい、何です?」
「何です?じゃなくて、お前自身どうなんだ?ドクターの案」
マリューは誰よりも人一倍シンラをジッと見つめる。ムウの問いにシンラは横目を向け、無表情で2~3秒黙ってから口を開いた。
「....ドクターは俺の上司なので、それに従事するだけです」
「お前なぁ...」
何とも思わないとただ答える彼にムウは、そう言うことじゃないだろと髪を搔く。彼の自分の事なのにどうでもいいと言うような態度にムカッとしてしまうのであった。
マリューもムウと同じくこんな事を納得できる訳じゃない、それどころか落ち着いてはいられない。
「私もシンラく...ユーリ大尉一人にそんな危険なことはさせられません!何よりリスクがありすぎます!もし行くならストライクと....」
「その点に関して、ストライクを同行させるのは無し。パワードのもう一つの“新機能”を使う際に邪魔になるわ」
「新機能?何ですか?それは」
「バジル―ル中尉!そこではありません!!今はシンラくんの負担が大きいことを話してるの!!」
ナタルがそこに食いつくが、マリューがナタルを怒鳴り黙らせる。彼女にとってはシンラが気掛かりで仕方ない、何としてもシンラ一人で行かせるのは止めたい。
だが当の本人は無表情で首を横に振る。
「アークエンジェルが一刻も早くアラスカ本部に向かうためには、これがベストです」
「でも!!」
「じゃあ艦長には、これ以外での方法がありますか?ここはザフトの支配域だということを忘れてはないですよね?」
その言葉でマリューの言葉が詰まる。未だ自分たちはザフト支配圏にいることを忘れて、シンラのことで頭が一杯だったことに恥ずかしく顔を俯いてしまう。
このままでは此処アフリカからもでることも出来ない、しかもバルトフェルドの部隊を撃破しているのでそう遠くない内にザフトが別の部隊を差し向ける可能性もある。
早いうちにこの土地から抜ける必要があるのは彼女も分かっている。
「艦長...その、ここはドクターの提案を了承してください」
「おいおい、バジル―ル中尉」
ムウが呆れるようにつっこむ。ナタルとしてもリスクがあるのは分かっている筈、しかしそうは言っても現状を何とかしつつ次の航路へと向かわなければならない。
だがこのまま手をこまねいて居ては、衛星軌道上でその命を散らして逝ったハルバートン提督とその将兵らの死が無意味になる。
それはマリューも分かっていることだ。しかし指揮官として私情を捨てることは彼女には難しい。
「.......っ」
未だ渋る彼女にシンラが――
「....大丈夫です、マリューさん」
「え....?」
「俺は皆をアラスカ本部への道を切り開くために戦うんです」
「シンラくん....」
シンラはマリューに言い聞かせるように告げる。顔を俯いてから、直ぐに上げて意を決した。
「分かりました。では、パワードの単独による奇襲作戦を承認します」
「ありがとうございます」
シンラが笑みを浮かべると、マリューは悲しげになる。
「では私らはこれで、いくわよシンラ」
「はい。じゃあ艦長これで失礼します」
「えぇ」
二人は艦長室から出ていく。居なくなってムウが「はぁ..」っとため息を吐いてしまうのであった。
ムウの気持ちもマリューは理解している、こんなもの作戦とは言い難い。
自分だってもっと真面で艦長としてしっかりとしていれば、彼にここまでの負担をかけるような真似はさせないのにと俯いてしまう。
「あいつ....今日はなんだか変だったな」
「.....え?」
考えこんでいたマリューであったが、ムウのその一言に顔を上げる。
「変、とは?」
ナタルも気になっているようで、ムウに問いかける。
「なんかアイツ、切羽詰まってるのか...ハッキリとは言えないけど、自分でなんか背負ってそうな....ううん!!わからん!!」
自分でも何を伝えたいのかハッキリせず腹が立ち髪を掻くムウ。マリューはシンラが居なくなった扉へ目を向け、不安げに見つめる。
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そのシンラはエイダと共に艦内通路を歩いていた。周りに人が居ないことを確認し、話を始めた。
「何とか承諾して貰えたわね」
「はい。ドクターの望みとしては“あの新機能”を試せる絶好のシチュエーションですからね」
「えぇ。貴方は私の手助けして艦長を黙らしてくれたわ。ありがとう」
そう言いエイダは笑みを浮かべる。彼女としてはここまで険悪になっているマリューに自分のプランを通させ、顔を歪ませる姿を見れただけでも嬉しいのだろう。
ここまでくるとエイダとマリューは、犬猿の仲といっても過言ではないのかもしれない。
「....」
「...シンラ?貴方、今失礼なことを考えてなかった?」
「い、いえ」
見透かされたのかと内心焦るが、何とかバレなかった。ジト目で此方を睨んでいるエイダではあるが、ため息を吐いてから後ろ髪を搔きつつ気を取り直す。
「はぁ....まぁいいわ。........さて、私の要件は終わったわ。次は....貴方の要件ね」
「.....はい」
「もう一度言っておくけど、今回バレでもしたら私や貴方も危ういってことは忘れないで。折角私はアズラエル財団、貴方は地球軍での築いたものが消えるわ」
「覚悟してます」
二人は互いに鋭い目つきで見つめ合う。周りの空気も張り詰めるが、先に折れるようにエイダが深いため息を吐いた。
「まぁ、貴方の頼みを拒まなかった私もまだまだね。ま、貴方が子供の頃から育てるのだから、これは弱みね」
感慨深く苦笑交じりに語るエイダ、すると彼女は話を進める。
「決行は今夜。変装の為に一式全部用意してある。諜報の為に動いているあの二人にも協力してもらうわ」
「ありがとうございます。その前に無力化させる際には睡眠ガスを...」
「それも分かっているわ。ここの連中を傷なんて付けるわけにはいかないもの」
何やら物騒な話をする二人――そこでエイダがフッと笑う。
「それにしても、あのクラインのお姫様がそこまで貴方にゾッコンとはね」
「....やめてください、ドクター」
揶揄され若干眉を寄せつつやめるよう訴えるシンラ。しかしエイダはそんなの気にもせずに彼を弄る、その姿は息子の異性との浮ついた話を揶揄う母親にも似ている。
やめろなどと言うシンラだが、ラクスの思いには何となく気づいてはいた――いたが、しかし彼女はプラントの歌姫であり、プラント最高議長の娘でもある。
いつまでも此処に居ては彼女が不幸になるだけである、だからこそ彼は――
「それにしても、とんでもないことを考えるわね」
「.....とりあえず、やりましょう」
「決行時間は深夜、0100、いいわね?」
「はい」
シンラはそこでエイダと別れる。彼女は静かに真剣な眼差しでシンラの背中を見なくなるまで見つめる。
「....ほんと、とんでもないことを考えるわ――あの子」
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「なんですって…………貴方、本気なの?……それ」
彼から聞かされた内容に、エイダは眼を大きく開かせ驚愕するのだった。
「はい」
対してのシンラはこれが冗談じゃないと真顔で返答する。しかし彼女はこれに納得など出来よう筈もなく、鋭い目付きで彼を睨みつつ口を出す。
「バカなこと言うものじゃないわ。あり得ないわよ。
─────ラクス・クラインと砂漠の虎をこの艦から出すなんて正気を疑うのは当たり前だわ」
そう。シンラの頼みとは──ラクスとバルトフェルドたちをアークエンジェルからこっそりと脱出させ、ザフトに返すと言うものであった。
俄に信じられない内容に、エイダは呆れるようにため息を吐く。
だがシンラの顔を見ると正気を失ったとか、そんなものではなく到って冷静であった。
「確かにそう言われるのは当然ですね。しかし自分は本気です」
「彼女に関してはアラスカ本部で決めるべきよ。何も取って食うなんてことはないわ」
「それは、自分が所属するオルカ指揮官であるザールラント准将の派閥はでしょ?アラスカ本部の連中は、そうではない。
過激派が未だ根強く居るではないですか」
「それに関しても"近いうちに掃除する"と、彼女も言っていたわ。貴方のそれはただの杞憂なのよ」
「杞憂程度で終わりますか?今の本部の高官たちが、ただでさえ過激派が多数居るのに」
そう。現在アラスカの地球軍本部には反コーディネーター組織ブルーコスモスを信奉する軍の高官たちが多数居る。
その中にはプラントに核を撃ち込み、この戦争の引き金を引いたウィリアム・サザーランドもいた。
コーディネーターをこの世から一人残らず根絶しようと言う連中の巣窟に、ラクスを連れて行けばどうなるかなど火を見るより明らかと言える。
「はぁ…シンラ、分かってるの?こんなことをすれば間違いなく終わるわ。
それすら覚悟していると言うの?貴方は」
「はい…覚悟の上です、彼女は此処に居てはいけない。彼女は安全で安らかな場所で歌を歌ってる方がいいんです。
それに、彼女がこの艦に居る羽目になったのは、彼女が乗っていた船が破壊され、乗組員が全員殺されたからですよ。
武器もない一般人、それを無慈悲に殺したのは俺と同じ地球軍です。
コーディネーターであろうと、非戦闘員を手にかけるなどあってはならない」
「…………」
シンラの訴える姿をエイダは黙って見ていた。ここまで彼が感情的になるなど、この艦に乗るまで全くなかった。
やはり彼がここまで変わったのは、アークエンジェルに乗ってから──いや、キラと会ってからだろう。
しかし彼女と深く関わったお陰で、シンラは高い戦果をもたらしたのは事実でもある。
そして今度はラクスとも関わって、彼女のために自分を犠牲にしかねない行動を取ろうとしている。
これを止めるべきなのだろうが、だがシンラの真剣な眼差しを見、エイダは一度ため息を吐いた。
参ったと呆れるように苦笑し、降参と両手を上げた。
「ドクター…?」
「……分かったわシンラ。協力してあげる」
「ほんとですか!?」
まさかの了承にシンラは驚くが、エイダは切り替えるように此れからのことをどうすべきかを尋ねる。
「で?此れからの算段は?シンラ」
「外にいる諜報員二人にも協力して貰いたいので、呼んでくれませんか?そこで正確にすり合わせしたいので」
「分かったわ」
アークエンジェルの外にいるカンパニーの諜報員二人を呼び出し、そこで漸くシンラたちのラクスとバルトフェルドの脱出させる為の計画を立てるのであった。
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「……」
その時のことを思いだし、エイダは1人口を開く。
「……まぁ、今はあの子の望み通りさせましょう。それにどうせ、彼女たちとは此れから先ずっと居られる訳にはいかないのだから...」
そう言い残し、彼女は歩き去っていくのであった。
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その頃、キラとラクスは共に同じ部屋で身を寄せ合うようにして悲しげに暗い表情を浮かべていた。
「キラ…」
「…………っ」
彼女らはあの時シンラに言われた事で、深く悲しんでいる。
キラもだ!!俺とこのままずっとと言うことは、戦争から逃げだすことは出来ないんだぞ!!やりたくもない殺しまでずっと続けることになるんだ!!
すまない。でもこれは二人のためなんだ…わかってくれ
「…………」
彼からの言葉──それは拒絶に近く、自分やラクスを遠ざけるものであった。
まだ彼に跳ね除けられた感覚が自身の手に残っているのを、キラは感じていた。
それが現実と分かると…
「っ!?、キラ!!」
ラクスが驚き、咄嗟にキラを抱き締める。どうしたのかとラクスを見ると彼女は心配そうに此方を見ていた。
「どう…したの…?……ラクス……?」
「キラ、今は休みましょう。心を休めるのも大切ですわ」
「どうして……?」
「キラが涙を流してるからです。とても見ていられませんわ」
そう彼女が言うとキラの顔を拭うように優しく触れた。
キラもそれに釣られ、自分で自身の顔を触れると指が濡れていた。
「あ...ぁ………っ…ぅ…………、っ…」
止めどとなく涙が溢れているのを気づいたキラ、ここまで涙が溢れてしまうのに理由が彼女には分かっていた。
「わ……私………っ…ぅ………っ」
「キラ…」
「こ、このままじゃ、私……シンラに…………捨てられちゃう…………シンラに………いらないって言われ…………っ………いや………………ぅ…、い…っ…や………ぃ…やぁ………ぅ」
彼女は涙が止まらず、ラクスに抱きつき泣き声を漏らす。
ラクスもまたキラを抱き締めつつも、自分も泣いて涙を流してしまっている。
二人の少女らは互いに身を寄せ合い、悲しみに暮れる。
─────────────────
そんな時間は流れていき、アークエンジェルでは各々殆どその日の作業を終わらせ自室に戻っていく。
そして時刻が午前1時に差し掛かった頃……。
「………」
エイダが自分の腕時計を時刻を確認する。
「………状況スタート」
その一言はある無線機を通して伝わる。アークエンジェルの外にいるカンパニー諜報員二人に伝えられ、二人はある装置を起動させる。
「ジャマー起動」
「了解、これより艦のセキュリティに攻撃を行う」
一人がレーダーやセンサーなどの感知システムを停止させるシステムを起動させ、もう一人が艦のセキュリティにアクセスしハッキングを行う。
そして艦内のシステムに入り込むと、ブリッジにて当直に就いていたチャンドラがこれに気づく。
「っ!?艦内のシステムにハッキングされています!」
「なんだと?!」
同じく当直に就いていたノイマンが急ぎアラート鳴らす為に警報スイッチを押すが反応しない。
「っ!?警報が鳴らない!!」
「そんな!!」
トノムラが驚愕し、ブリッジの外に出ようとするがドアが開かない。
「ドアが開かないっ!!」
「なに?!」
ノイマンもトノムラと一緒にドアを手動で開けようとするが、びくともしない。
二人共に呼吸合わせて押し開こうとするが、しかしそれでも開くことはなかった。
力を使ってヘトヘトになり、地面に崩れる。
次の瞬間、艦内の電気が消えてしまう。この異変は艦内にいる殆どが察知した。
「なんだ!?」
「何事か?!」
ムウとナタルは共に簡易式の休憩室にいたが、艦内の明かりが消えてドアが開かなくなったことに驚き何とかして出ようと奮闘する。
「だめだこりゃ…」
「どうして、こんな…あっ!」
その時足を躓き、ナタルは前のめりに倒れる。
「危ない!!」
しかし寸前でムウが抱き止めたお陰で事なきを得る。
「っ!?///」
「おっと!悪い!!大丈夫か!!」
助ける為とは言え、女性の身体を触れたのだ申し訳ないことをしたと恥じるムウとは対照的に、ナタルは頬をほんのり赤く染めていた。
「なに?!これは」
艦内を歩いていたマリューはこの異常事態に戸惑うが、ブリッジに行くべきと考え向かう。
この時、外に続く扉が開く。そこから武装しガスマスクを着けた体格が良いザフト兵の二人が入ってきた。
一人がアタッシュケースを床に置き、開けると小型の蜘蛛みたいな形をしたドローンが3機現れる。
ドローンたちが自動で動き艦内を走り回り、それぞれ所定の位置に到着するとボディから白い煙を噴出。
「なんじゃ……こ…りゃ………」
マードックや艦の主だった人間は殆どこの煙で眠ってしまう。
「っ!………い、いし……き…が……」
ブリッジに向かうマリューも耐えられず、その場で意識を失った。
同じくムウとナタルもその被害に遭う。
「ぐっ!!これは!!」
「もしかして睡眠ガス!?フラガ少佐!これは!!」
「まさかザフトか!?おいおい!!」
ムウは何とかしてドアを抉じ開けようと、備え付けられていた消火器で何度もドアに叩きつける。
煙によって意識が朦朧としながら、何とか壊し脱出に成功する。
「出れたぞ!バジルール中尉!!ほら!!」
「はい!!」
二人は警戒し腕で鼻と口を覆い、煙を吸わないよう行動する。
「まて!…あれを」
通路の角に隠れ、ムウがナタルにだけ聞こえるよう声を発し、指を指し示す。
そこには武装しガスマスクを付けたザフト兵が二人。
一人は体格が良いが、もう一人は女性のような体格をしている。
先ほど侵入した者たちとは別のようである。
「準備いいわね?」
「はい」
女性が男に命令しているようである。相手は二人で武装している、対してムウは空の消火器が手元にしかない。
オマケに今にも意識無くしそうである自分の他に、ナタルを引き連れてる。
だがこのまま此処にいても意味がない。ムウは出たとこ勝負にでた。
「うおおおおおー!!」
「っ!?少佐!!」
ナタルが叫ぶ中、ムウが二人の兵に突撃する。
男の方に襲いかかるが、それが悪手だった。
一瞬でムウの攻撃を躱し、ライフルの銃床で彼の後頭部を殴り倒してしまった。
ムウは意識をそこで失い倒れ、ナタルもガスの影響でもう限界だったのだろう地面に伏して眠りにつく。
「………」
倒れるムウを見つめる男、だが女性が肩を軽く叩き干渉に浸る余裕はないぞと眼で訴える。
彼女に従うように頷き、目的の方へと走り向かう。
代わって此処営倉にて、先ほど侵入した兵士たちがバルトフェルドとアイシャがいる独房にたどり着く。
「バルトフェルド隊長ですね?」
「君たちは?」
「救出に来ました。今牢を開けます」
バルトフェルドとアイシャは、この二人の兵に訝しむように見るがそんなこんなしてると牢の扉が解放される。
二人は怪しみつつもゆっくりと独房から出る。
「礼を言う。所属は何処かね?」
「…今は一刻を争うので、至急脱出を。別チームがもう一人の脱出対象者も逃がさないといけないので」
「そのもう一人って?」
アイシャがそれを尋ねる。それに対しての返答は…………
「クライン最高議長の一人娘、ラクス・クライン嬢です」
───────────────────
その頃、ラクスがいる部屋に先ほどムウが出くわした男女2人組のザフト兵が入ってきた。
「あ、貴方たちは……」
「ラクス!」
だがそこにラクスだけじゃなく、キラも一緒にいた。
それを見て女性の方が男に尋ねる。
「どうするの?彼女もいるけど」
「…………」
男は重苦しい様子を見せる。それに対して女性はタメ息を吐きつつもラクスに語りかける。
「私たちは貴女を此処から逃がす為にきました、ラクス・クライン。さぁ…こちらへ」
女性が手を指し伸ばす。しかしラクスは眼を必死そうに眼を伏せ、首を左右に振る。
「私たちは貴女を救出に来たんですよ。ワガママ言わず、さぁ!プラントに帰れるのですから」
「………いやです」
「…………は?」
ラクスからの返答に女性は間の抜けた声を漏らす。だがラクスは毅然として彼女に向かっていい放つ。
「貴女、……………………エイダさんですよね?」
「え!?」
「……………」
ラクスに言い当てられ黙るザフト兵に扮したエイダ。
キラは目の前にいるザフト兵の人物がエイダだと驚く、だがラクスはゆっくりと歩いてエイダの横を通りすぎ、エイダに同行しているザフト兵の姿をした男のヘルメットとガスマスクを取る。
「…………え?……しん、ら…?」
「………」
「どう、して…?なんで?」
キラは目の前にいるザフト兵の姿をした彼に、目を丸くして目の前の現実が理解できないと言った顔を見せる。
どうして?と口にする彼女に、シンラは何とも言えない顔を浮かべゆっくりと口を開いた。
「………彼女をプラントに帰す。此処に居てはいけないんだ」
「そんな………」
それを聞いてキラは手をギュッと握りしめ、身体を打ち震わしながら涙目で彼をキッと睨み付けた。
「そんなの!!勝手だよ!!」
「…勝手なのは分かってる。でももう決めたことだ………だから」
「っ!!」
シンラは素早くキラの傍まで近寄り、そのまま睡眠ガスが入ったスプレーを吹っ掛ける。
これにキラは堪らず意識を失いかけ、今にも眠りにつきそうである。
「シン…ラ……おね、がい………や……め、て………」
床に倒れかける所をシンラが抱き止める。彼女の閉じた瞼から一筋の涙が溢れるのを、シンラは指で拭ってあげた。
「………すまない、キラ」
「キラ!!」
目の前で意識を失ったキラに叫ぶラクス。シンラの腕の中で眠るキラの傍に駆け寄り、無事だと安堵する。
だがシンラが彼女に………
「……悪いが、君を此処から連れ出す。プラントに帰す」
「………っ」
顔を上げて彼に見せた彼女の顔は、とても悲しいものだった。
そこへエイダが優しく彼女を立たせ、共に部屋から出ていこうとする前にラクスが………
「シンラは、どうして人の気持ちをわかってくださらないのですかっ…………」
「…………」
エイダによって連れられるラクス、その後ろをシンラが続く。
艦の外に出るとシンラたちと同じくザフトの武装兵の姿に扮したエイダの部下2人が、バルトフェルドとアイシャと共に待っていた。
ラクスを姿を見てバルトフェルドは驚いていた。
「これは……クライン嬢がこの艦に本当に乗っていたとは。生存はもう絶望的とも言われていただけに驚きですな」
「お噂は予々伺っておりますわ。バルトフェルド隊長」
「無駄話はいい。早く乗ってくれ」
シンラの顔を見てバルトフェルドは「そう言うことかね」っと笑みを溢す。
彼は全てを察したのだ、なので敢えて素直に従いアイシャとラクスと一緒にジープに乗り込む。
その道中、バルトフェルドはシンラと向かい合いながら話かけてきた。
「聞いてもいいかね?」
「………断る」
「っと言っても一方的に僕が話すんだがねぇ。何故僕らを逃がすのかね?しかもラクス嬢までも」
「………」
バルトフェルドの話になど聞く気がないと無視を決め込むシンラ。
だがそれでもバルトフェルドは敢えて話を続ける。
「地球軍にとって最高のカードだと思うのだがね。プラント最高議長の一人娘を人質に出きるのに、それをやらないなんて」
「………何が言いたい」
「君は優しい男だと言うことさ。とても不器用な程にね」
「でもラクス様は、悲しそうね?」
アイシャの言うとおり、ラクスはシンラの隣に座り悲しげに俯いていた。
シンラが彼女に眼を向けると、ラクスは悲しげに此方を見つめてくる。
その瞳に見つめられ、居たたまれない気持ちになりシンラは眼を背けた。
そして目的地に着き、皆ジープから降りる。エイダの部下たちは荷台より少し大きめの機材を用意。
「何をするつもりかね?」
バルトフェルドがエイダに問いかける。
「いまからバナディーヤにいるザフト部隊に通信を入れるわ。此処に来て貰う為にね」
「なるほど...…ところでだが」
「何かしら?」
バルトフェルドがエイダに問いかける。
「彼──一体何者なのかね?戦って分かったが………此方の動きを、まるで、先を…いや、
「…………」
「彼はナチュラルか、コーディネーターなのか………もしかして」
その言葉に対してエイダは冷たく鋭く、そして殺気と殺意が入り交じった眼をして銃口をバルトフェルドに向ける。
「………何か気に障ったかな?」
「…無事に帰りたいなら、無駄口は控えなさい」
バルトフェルドはそこで苦笑しつつ了解し黙った。その間、ラクスはずっとシンラの隣から離れようとはしなかった。
「………シンラ」
「………」
しかし呼ばれてもシンラは何も返事はしなかった。そんなこんなしていると、エイダの部下たちがザフトからの通信を受信する。
「ドクター、繋がりました」
「ええ。………じゃあバルトフェルド隊長さん。通信に出て、救助を呼びなさい」
「はいはい」
通信機を受け取りバルトフェルドは口を開いた。
「あー…此方アンドリュー・バルトフェルドだ」
《隊長!!ご無事でしたか!!》
「ダコスタくん、心配をかけたな。今から言う座標に救助に来てくれ」
《了解しました!》
バルトフェルドが通信で今いる場所を伝えている中、ラクスはシンラに悲しそうに問いかける。
「シンラは、いつまで戦うのですか……?」
「………戦争が終わるまでだ」
「では戦争が終わったらどうしますか…?」
「その後は知らない。その時になってみないと…」
本当は戦争が終わった後などどうでもいいと思うシンラ。それまで自分が生きているのかさえ、自分では興味がないと思っている。
ただ戦う為にいる兵士として、ただ戦場を駆け敵を殺すのみ──それが彼の本来の自分。
ラクスは未だ悲しげに彼を見つめ、そしてシンラの手を握る。
「それが…………それが!!シンラの望む未来なのですか!!」
「ラクス………」
悲痛に叫ぶラクス。そんな時、1機のヘリが近づいてきた。
ヘリの後部ドアが開き、中からダコスタが姿を見せる。
「隊長ぉ!」
「おー、よくきてくれた」
ヘリよりバルトフェルドとアイシャの姿を確認したダコスタは、パイロットに着地するよう命令する。
地表に降りるヘリを見てエイダが、シンラにアークエンジェルに戻るよう告げる。
「さぁ、私たちは行きましょ」
「はい」
彼はラクスに振り向き、別れの言葉を贈る。
「……お別れだ、ラクス」
「シンラ………」
ラクスは未だ彼と離れるのが嫌で、手を離そうとはしない。
だがそれを彼はソッと彼女の手を引き離し、ゆっくりと離れる。
彼を追いかけようとするが、アイシャが彼女の両肩に手を乗せてそれを止める。
シンラはバルトフェルドに振り向き言う。
「ラクスを頼む。戦争や死、そんな残酷なこととは絶対無縁な、優しく温かい世界へ彼女を返してやってくれ」
「……」
バルトフェルドは真剣な眼でシンラを見つめ、改めて彼は矛盾した人間だと思う。
するとバルトフェルドは問う。
「君は、自分の幸せを考えたことはあるのかね?」
「………ない」
「シンラ!!」
ヘリに向かってアイシャに連れられながら、悲痛に彼の名を呼ぶラクス。
その彼女を見ながらシンラはバルトフェルドに答えた。
「俺に幸せは要らない。俺は……死神だ。俺はただ敵を狩り、殺す…災厄の存在であればいい」
「………」
「だから俺に、幸せは………要らない」
それだけ言って彼はジープに乗り込む。エイダたちも彼を追うように行く。
ヘリから見るラクスはただずっと涙を流しながら、彼が乗るジープが見えなくなるまで見つめていたのだった………。
その道中、ジープの中ではシンラはすっと無言だった。
私の作品は期待できるものは、正直ないのでそれはご注意ください。