機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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※原作準拠の方、オリジナル要素、オリジナルモビルスーツ、オリ主主体などに抵抗ある方はブラウザバック推奨します。



PHASE37 紅に燃える海

前回、紅海手前にあるザフト基地を奇襲撃破し、ようやくアークエンジェルは砂漠を抜けようとしていた。

 

「海へ出ます。紅海です」

操舵主のノイマンが艦の操縦を行いながら、嬉しそうに報告する。

 

「あーぁ!」

「わあ!」

ブリッジクルーであるトールとカズイは、地球の海を見て感激の声を漏らす。ヘリオポリス学生組の彼らにマリューは微笑みつつも、嬉しい許可を送られる。

 

「少しの時間ならデッキに出ることを許可します。艦内にもそう伝えて」

 

「やった!」

「あはっうふ…」

マリューからの計らいにトールとミリアリアの嬉々とした声がでる。サイやカズイも素直にこれを喜んでいる。

 

「マードック曹長!ソナーの準備はどうなっているか?」

その間にナタルがインカムより格納庫にいるマードックに報告を求めた。

 

「今やってまさぁー。エイダの姐さんたちや、嬢ちゃんや大尉さんが最後の調整中です。もう少し待って下さい」

マードックが笑みを浮かべながら、作業風景を見渡している。そこにはエイダたち、そしてキラとシンラが端末でアークエンジェルのソナー機能の構築をしている最中である。

ザフト用のソナーをアークエンジェルで使用可能に改造する為のものである。

 

「急げよ。それと、自分より上の階級の者を嬢ちゃんと呼ぶのはどうかと。規律の乱れる元だ。注意しろ!」

ナタルの指摘に痛い所を突かれたとばかりに、マードックは頭を掻いて「不味い」といった顔になった。

格納庫にいるフラガやトノムラやチャンドラもこれには笑い、エイダの部下たちも釣られて笑う。

だが....

 

「確かにバジル―ル中尉の言う通りね?マードック曹長さん」

「あ、いや...その、へ、へへ」

そこへ額に青筋を立てつつ、怒りが混じったような笑みを浮かべてマードックの背後にエイダが立っていた。

マードックはナタルよりもおっかない人を怒らせてしまったと萎縮するが、エイダから「さっさと自分も仕事しろっ!!」と怒鳴られてしまう姿に大いに皆の笑いを誘う。

 

「ハハハ!....ん?」

ムウも面白可笑しく笑っていたが、ある二人に視線を向けると自身の笑いが直ぐに消え、怪訝な顔に変わる。

その二人というのは、キラとシンラであった。二人とも無言で端末作業している。

 

「あ...ぁ...その..ぅぅ...」

しかしその作業中、キラは寂しげな表情でチラチラとシンラに視線を向ける。

キラの隣でカタカタとタイピングする無表情のシンラ。キラは何とかして声をかけようとするが、できず唇を噛みながら顔を俯かせてしまう。

 

「....はぁ、どうしちまったんだ。まったく...」

見ていてヤキモキしながら後ろ髪を掻くムウであった。

そして仕事がとうとう終わった二人。直後、

 

 

 

____________________________________

 

 

 

マリューから許可より甲板に出たトールたちは故郷でも見ていた海の光景を楽しんでいた。

 

「あーーー!気持ちいいぃ!」

「地球の海ぃ!すんげー久しぶりー!」

「でもやっぱ、なんか変な感じ」

嬉々として海の風景と塩の香りを満喫するトールとミリアリアの隣で、カズイが改めて直に見る海に少し冷めた言葉を口にする。

 

「そっか、カズイは海初めてか」

「うん」

「ヘリオポリス生まれだったもんなぁ」

「砂漠にも驚いたけどさぁ、何かこっちのが怖いなぁ。深いとこは凄く深いんだろ?」

「ああ」

「怪獣が居るかもよぉ?」

二人の会話にミリアリアは悪戯っぽく笑みを浮かべて割って入る。小心者のカズイは「えぇっ!?」っとビビり、ミリアリアはそれに余計に面白く笑う。

 

「何言ってんだよ、ミリィ」

苦笑交じりに呆れるようにツッコむトール。

 

「ふふふ。あ、そういえばサイは?」

「フレイの傍にいるよ。ずっと心配なんだよ」

「そっか...」

此処に居ない友人であるサイは許嫁でもあるフレイの所にいるらしい。彼女は父親が宇宙にて無惨に命を奪われて、しかも彼女はその後地球軍に志願した。それ以降からの彼女は何処か危ういとサイが時間を見つけては一緒にいるらしい。

彼女のことを考えるとここで素直に喜んでいいのかと考えるミリアリアとトールとカズイ。その直後、甲板にキラが入ってきた。

暑いので制服の上着を脱いで、Tシャツ姿にスカートという姿である。甲板にいるトールやカズイ以外の男性クルーらが彼女を見て、顔を赤くしてしまう。

彼らの様子に気づいてキラに気付くミリアリア。

 

「あ!キラぁ!」

「え?あ、ミリィ」

「こっち!....ん?」

この時ミリアリアはもう一つ気付く。トールとカズイも他の男性クルーらと同様に顔を赤くしている、その理由は...キラである。

Tシャツとスカートという格好、だが彼らが見ているのはその彼女の16歳の少女というには余りに発育したボディである。

その上半身がTシャツからだと浮き彫りになっているせいで、彼らは顔赤くしているのだ。

しかもその中に自分の恋人が混じってるのが許せないのか、ミリアリアは即トールの頬を抓った。

 

「いででっ!!ミ、ミリィ!!や、やめ!いでぇ!!やめでぇえええ!!」

「なぁにキラに変な目で見てんのよ!!ごぉらぁああっ!!」

「ひぃいいい!!」

痛みと恐怖で叫ぶトール。その様子を間近に見ていたカズイは、ミリアリアの鬼の形相に悲鳴を上げてビビってしまった。

その様子に周りの男たちもビビッていそいそと甲板からでていく。

 

「ミ、ミリィ!お、落ち着いて!ね?トールが可哀想だから...カズイだって怯えてるし」

「...わかった」

キラは苦笑しつつミリアリアを止めて宥め、事なきを得た。だがミリアリアは今度はキラに怒る。

 

「キラも!!その格好はダメ!!女の子なんだから!!」

「う、うん....」

キラにそう言った時、ミリアリアは彼女の様子に違和感を感じる。

 

「キラ...ちょっと」

「え?なに?」

ミリアリアの顔が真剣なものになり話かける。

 

「どうしたの?キラ」

「え?な、なにが?」

「元気ないよ?どうしちゃったの?キラ」

ミリアリアに問いかけられるキラ、彼女はそれに顔を俯かせてしまう。

 

 

 

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一方、シンラは艦内通路を歩いていた。そこを見かけたムウが呼びかける。

 

「おーい!シンラ!」

「はい?なんです?少佐」

自身を呼びかけるムウに鋭い目つきで振り向くシンラ、その彼にムウは怯むことなく話かける。

 

「お前...どうした?」

「はい?なにがです?」

「だってよお前、キラに冷めた態度を取ってるじゃないか」

二人の空気感というか、シンラのキラに対する態度が宇宙の時と地上に降りたばかりの時に比べ、現状の彼女に対しての様子が変わってることに気付かないムウではない。

だがシンラはそんなの知らんとばかりに、冷たい態度をする。

 

「別に俺と彼女は恋人じゃないですよ。俺だって兵士の職務があるんですから」

「……お前なぁ」

彼のこの態度にムウはイラッと来てしまった。だがシンラはそんなムウの感情など知ったことかと、背を向けて再び歩き出す。

だがそれをムウは良しとは思わない。そこで彼は……

 

 

 

「あの時、ザフトに艦が侵入された時………お前、何処にいた?」

「……敵の睡眠ガスのせいで意識失ってましたよ」

彼の返答にムウの勘が閃く。目付きが鋭くなったムウは言う。

 

「へぇ…俺は覚えてるぜ。お前の背丈そっくりのザフト兵士をさぁ…」

「…………」

「お前……どうしてあんなことを…」

二人の間に暗い空気が漂う。

 

 

─────────────────

 

その頃、ザフト地上軍カーペンタリア基地より一隻の艦が水中を移動していた。

それはNジャマーの影響下での運用を目的に建造された大型潜水母艦・ボズゴロフ級クストーである。

その船の隊長室にて1人の男がある通信を見ていた。男の名はマルコ・モラシム、カーペンタリア基地所属で、インド洋周辺を制圧下に置くモラシム隊の隊長。

「紅海の鯱(シャチ)」の異名をもつ、ザフト軍のベテランパイロットである。

 

《バルトフェルド隊の報に、私も大変驚いております。地球に足つきを降ろしてしまったのは、元より私の失態。複雑な思いです》

 

「ふん!」

通信映像に映ってるのはラウ・ル・クルーゼ。モラシムはクルーゼからの通信を受け取り、その内容を確認していた。

だがクルーゼの話にモラシムは忌々しそうに機嫌悪くしている。

 

《オペレーション・スピットブレイクで、私も近いうちに地球へ落ります。その折りにはどうか、モラシム隊長にも、いろいろとお力をお貸しいただきたく思っております》

 

「ふんっ!はん!クルーゼめ。こんな通信を送ってくること自体が、下手な挑発だぞ。

まぁーよかろう。乗ってやろうじゃないか。その足つきとやら、インド洋に沈めてやる。ふふ」

通信が終わるとモラシムは手にしていた空のコーヒーカップを乱暴に置きながら、クルーゼに対して悪態を吐く。

だがすぐに不敵な笑みを浮かべて自分の縄張り入り込む者たちを、どう仕留めてくれようかと楽しみ考えていた。

 

 

────────────────

 

 

 

その頃、キラはトールたちにシンラと話しづらいことになってることを話す。

するのカズイが口を開いた。

 

「あの人さぁ、正直言って普通じゃないよね」

「おい!カズイ!!」

トールが諌めようと声を荒げるが、カズイはやめない。

 

「だってさぁ、いままで地球軍を追い詰めてたザフトの連中を、ここまで簡単に倒してきたんだぜ?同じナチュラルとは思えないって」

カズイとしてはシンラの異質さにずっと不安視して、できるだけ関わらないようにしていた。

その姿勢にトールとミリアリアは異を唱える。

 

「でも!ユーリ大尉はここまで懸命に戦って!」

「そうだぞ!カズイ!」

「けどさぁ、あの人が乗るモビルスーツ……あれ、どう考えても普通の人間が乗れるもんじゃないってマードック曹長たちが言ってたよ」

カズイはそう口にしながら嫌な顔をしている。まるで理解出来ないもの、得たいの知れないものに恐がるような態度をする。

更にカズイは前回の戦闘の件にも触れた。

 

「それに前の戦闘…ザフトの基地を1人で壊滅させるなんて、ナチュラルは当然無理だろ?じゃああの人は……」

「コーディネーター…って言いたいの?カズイは」

そこでキラは低い声でカズイに問いかける。それに対しカズイは少し戸惑いながら誤魔化す。

 

「べ、べつに...ただそう思っただけで、コーディネーターだからって敵だって言いたいわけじゃ…な、ないよっ」

「じゃあなんでそんな言い方したの?私もコーディネーターだよ?」

此処まで誰よりも戦っているシンラに対しての侮辱とも言える言葉に、キラは友達の1人であるカズイに苛立ちを抱いた。

いつの間にか、彼女の目付きが鋭くなりカズイを睨んでいた。

睨まれてる本人はおろか、トールとミリアリアもこれに驚き隠せなかった。

だが睨んでいたキラは突然顔を俯かせた。

 

「ごめんね、皆。……私、部屋に戻るね」

「あ、キラ!」

 

キラは落ち込むようにその場を後にする。その時である、艦に鳴り響く警報が敵の出現を知らせる。

 

《総員、第二戦闘配備!繰り返す!第二戦闘配備!》

 

「っ!敵!」

 

キラはそのまま走る。

 

それは通路で睨み合うシンラとムウもそれに気づいた。

 

「あ!おい!シンラ!!」

 

いきなりの警報と共にシンラは突然走り出した。ムウは彼を呼び止めるが、シンラは淡々と口を開いた。

 

「敵ですよ、少佐」

「……ったく!」

 

これが終わったら必ず問いただしてやると固く決めつつ、ムウは急ぎシンラの後を追いかける。

 

 

─────────────────

 

ブリッジでは敵に対しての戦闘態勢に入ろうとしていた。

 

「総員、第二戦闘配備!機種特定急いで!」

「ザフト軍、大気圏内用モビルスーツ、ディンと思われます!」

 

アークエンジェルに迫るザフトのモビルスーツ、シグーの設計をもとにザフトが開発した大気圏内空中戦用量産型モビルスーツ・ディンである。

アークエンジェルを捕捉した10機のディンの内1機にはモラシムが乗っている。

 

「総員、第一戦闘配備!フラガ少佐、ユーリ大尉、ヤマト少尉は搭乗機へ!」

「ディン接近!10時、4時の方向です!」

「ミサイル発射管、7番から10番、ウォンバット装填!てぇ!イーゲルシュテルン起動!」

 

ブリッジが騒ぐ中、格納庫でも同じく皆急いでいた。

 

「各種装備用意!!急いで!!敵は待ってくれないわよ!!」

「「「「「はい!!」」」」」

エイダが格納庫全体の陣頭指揮を行い、各人員は効率よく動いていた。

 

「……なんで素直に俺の部下も、あの姐ちゃんの言うこときいてんだよほんと」

もう自分が整備班長であることすら忘れられているのではと、落ち込むがそこをエイダが渇をいれてきた。

 

「落ち込む余裕すらないわよ!!ほら動きなさい!!」

「ひぃいい!は、はぃいい!」

 

そこへシンラがパイロットスーツでやってきた。彼を確認したエイダは助言する。

 

「相手は大気圏内用モビルスーツディンよ。耐弾性は非常に低いし、空力特性に適しているとは言えないし音速飛行は行えないからパワードイェーガーの機動力にはついていけないから、それで翻弄して仕留めなさい」

「了解」

 

《スカイグラスパー1号、発進位置へ。スカイグラスパー、フラガ機。進路クリアー。発進どうぞ!》

 

「よっしゃぁ!出るぞ!」

ムウがいち早くスカイグラスパーで発進していった。前回出撃がなかった為か、今回は気合いが溜まっている。

スカイグラスパーが出た後、エイダは皆パワードを出すよう知らせる。

今回パワードには、周りが海しかなく且つ相手が空中飛行が主なモビルスーツのため同じく大気圏内でも高機動による飛行能力を持つパワードイェーガーで出て貰うことになった。

そのままパワードイェーガーは出撃する。そこへキラが同じくパイロットスーツで格納庫へ入ってきた。

 

「おい!嬢ちゃん!ストライクは!」

「いけます!エールで」

エールストライクには機動性が高く大気圏内でも短時間の飛行が可能ではあるが、ザフトのディンように長時間飛行することは無理である。

マードックはそんな状況の戦闘に貴重なストライクと、ここまで戦ってくれているキラを行かせるなど整備士として許せない。

 

 

「むりだ!」

「でも!」

「行かせなさい」

2人が言い合う中、エイダが割って入る。彼女はマードックの肩を掴み下がらせてキラに目を向ける。

 

「エールストライカー滞空時間を以前より伸ばしてあるわ。従来に比べて精々15分が限界よ。ヤバくなったらアークエンジェルに引き返して、いいわね?」

「は、はい!!」

キラは嬉しいと顔が綻びつつも、すぐにストライクに乗りすぐさま発進した。

エールストライクも戦列に入り、ムウが通信で呼び掛けてきた。

 

「やれるのか!」

「いけます!」

「そうか!……ってことだぞ!シンラ!」

「……………了解」

通信から聞こえてきたシンラの声は、無機質で冷めたような声音であった。

キラはそれを聞いて悲しげになる。だがそんな感傷など浸れる余裕はない。

ムウの「来るぞ!!」っという声にキラは振り絞る。

その時パワードイェーガーが先制とばかりに、105mm高エネルギーロングレンジライフルで一気に3発連射し、10機の内3機が面白いように命中爆散する。

 

「なんだと!!」

目の前で部下が乗るディンが無惨に散る姿に驚くモラシム。纏まっていては不味いとモラシムは直ぐに散開するよう命じ、散らばりパワードとストライク、スカイグラスパーの周りを飛び回る。

だがパワードイエーガーは扁平形のウイングユニットのスラスターを吹かし、高速機動力で散らばったディン追いかける。

ムウも自分も指をくわえてる場合じゃないと、スカイグラスパー胴体部両側面に計2門の中口径キャノン砲でディンを二機撃破した。

 

「ちょろいもんよ!」

 

「私も!!」

キラのエールストライクもビームライフルでディンを1機を撃墜させ、近くにいたもう1機をイーゲルシュテルンで牽制、動きを鈍らせてからビームサーベルで一刀両断にした。

シンラもパワードイエーガーの腰左右に装備されているレールガンをもって1機撃破する。

 

「くっ!!撤退する!!」

 

モラシムは自分含めて二機しか残らなくなって悔しさからか、歯を食いしばってこうも簡単に退けた敵に対して激しい怒りを抱くのであった。

 

 

 

 

 

戦闘が終わりシンラたちは無事に戻ってきた。機体から降りて艦内通路を歩いて更衣室に向かうシンラではあったが....。

 

「おいシンラ」

「....なんです?」

「話の続きが終わってないぞ。お前....砂漠でザフト兵の格好してまでアークエンジェルを襲ったのは、あのお姫様(ラクス)を外に出すためだったのか...?」

「.....」

沈黙は肯定、まさにその通りとシンラは無言であった。その様子に当たりだと察し、後ろ髪を掻きながら「ハァ~」っとため息を吐いてしまう。

 

「お前....ほんとに不器用な奴だな。でもな」

「なんです?」

「そんな生き方してたら、いつかお前....お前自身が壊れてしまうぞ」

 

「......っ!!!」

それだけ言い残してムウは去っていく、残されたシンラは苛立ち壁を思いっきり叩き殴った。そんなシンラをキラは悲しげに遠くから見つめるしかなかった....。

 

「シンラ.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

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