ザフトの苛烈な追撃に遭いながらも、中立国オーブのオノゴロ島に入港したアークエンジェル。その艦内の食堂にてサイ、トール、カズイ、ミリアリアは、やっと自分たちの故郷に辿り着いたにも関わらず複雑な表情を浮かべていた。
「こんなふうにオーブに来るなんてなぁ」
ヘリオポリスではただの学生としていたが、今はアークエンジェルのクルー...地球軍の一員となっている。
その所為か、いまこうして故郷に帰ってきたのに何とも言えない気持ちで呟くトール。
そのトールとは反対に、カズイはオーブへの帰還に何処か期待をしているようでソワソワしている。
「ね、さ。こういう場合どうなんの?やっぱ降りたり、って出来ないのかな?」
「降りるって…」
それを聞いたサイは訝しげにカズイに問いかける。
「いや、作戦行動中は除隊できないってのは知ってるよ。けどさぁ、休暇とか…」
カズイとしてはオーブに居るという状況、彼にとって居ても立っても居られないのだろう。
もしアークエンジェルから降りれるのであれば、オーブに居るだろう家族に会いたいと考えている。
「可能性ゼロ。とは言わないがね。どのみち、船を修理する時間も必要だし」
彼らの話を聞いていたノイマンがもしかしたらと言う話を述べる。だがこうしてオーブに入国させてくれただけでも、結構驚きものだ。しかし結局はオーブ側次第。そしてそれはマリュー達が戻らないと分からない。
「あ!そうだ!」
っと突然サイが何かを思い出し、席を外す。その彼にトールが問いかける。
「サイ、どうしたんだ?」
「フレイだよ。部屋にいるから、飲み物でも持っていこうとさ」
サイはそのまま食堂からでていく。その足でフレイが居る部屋に向かう。
「フレイ、飲み物を....フレイ?」
だがそこにフレイは居なかった。
____________________________________
その頃、会談の為にマリューやナタル、ムウ、そしてエイダがオーブ国防総省に招かれた。軍服の三人と違ってエイダはスーツ姿で会談に臨む。
その彼らと対面するように席に着いている男...ウズミ・ナラ・アスハが口を開いた。
「御承知の通り、我がオーブは中立だ。公式には貴艦は我が軍に追われ、領海から離脱したということになっておる」
「はい」
ウズミの話にマリューは頷く。ウズミはヘリオポリスの件、巻き込まれ、志願兵となったというこの国の子供達。聞き及ぶ戦場でのXナンバーの活躍。これらを聞いて彼らの人命のみ救い、アークエンジェルとモビルスーツは、海に沈めてしまった方が良いのではないかと大分迷ったそうだ。今でも彼らを救ったことを良かったものなのか分からない様子。
「申し訳ありません。ヘリオポリスや子供達のこと、私などが申し上げる言葉ではありませんが、一個人としては、本当に申し訳なく思っております」
ウズミに対してマリューは心痛な面持ちで、彼に謝罪の言葉を述べる。
「よい。あれはこちらにも非のあること。国の内部の問題でもあるのでな。我等が中立を保つのは、ナチュラル、コーディネイター、どちらも敵としたくないからだ。ま、力無くば、その意志を押し通すことも出来ない。だからといって力を持てば、それもまた狙われる。軍人である君等には、要らぬ話だろうがな」
「ウズミ様のお言葉も分かります。ですが、我々は...」
ウズミの話を聞いて理解できないわけではない。しかし現状、ザフトと地球軍は戦争中であり、敵は次々に新たなモビルスーツを作り猛威を振るっている。
力を持たねばただ蹂躙されていく未来しかいない、それをただ黙って許容できない。
皆彼のように理想を口にする余裕はないのだ。
そのウズミがいよいよ本題を話し始める。
「ともあれ、こちらも貴艦を沈めなかった最大の訳のお話せねばならん。ストライクの、これまでの戦闘データと、パイロットであるコーディネイター、キラ・ヤマトの、モルゲンレーテへの技術協力を我が国は希望している」
「「ぁぁ…」」
マリューとナタルは啞然となる。ウズミの申し出、いやそれはもう立派な要求である。我々がお前たちを匿い、更にはアークエンジェルの修理や補給をしてやる代わりに、お前たちの技術を寄越せと言っているのだ。
「叶えば、こちらもかなりの便宜を、貴艦に図れることとなろう」
「ウズミ様!それは…」
動揺し椅子から立ち上がるマリュー。だがウズミは冷静で無言で今度はエイダに目を向ける。
「いかがされました?ウズミ様」
淡々とウズミに対してそう尋ねるエイダ。するとドアが開き、部下の男が急ぎ入りウズミに一礼、すると耳打ちする。
「調べました所.....やはり彼女が....例の組織の」
「そうか....下がってよい」
部下を下がらせてから、ウズミは一呼吸をする。そしてエイダを見据える。
「なにか?」
「...貴女のことは調べさせてもらった、ドクターエイダ。あの“カンパニー”の人間だと言うことを」
「.....」
ウズミの言葉に目を細めるエイダ。だが一体何の話か分からずマリューたち三人は目を泳がせる。
「あの...カンパニー、とは?」
ナタルが恐る恐る問いかける。するとウズミが....
「カンパニーとは...あらゆる分野で高い技術を有し、そのレベルはプラントと、我らオーブの技術力を遥かに超えるとされる秘密結社だ。そして彼女は、その組織のリーダーだ」
「え!?」
「マジかよ...」
ウズミの話にムウとナタルは驚き顔になり、マリューも同じ表情になり隣りに座る彼女を見つめる。
「エイダさん...貴女」
「...流石はオーブの獅子、ですわね」
当の本人はフッと笑いを浮かべ、痛くも痒くもないと余裕の表情を見せる。だがウズミはエイダに対し話し続ける。
「貴女はあのブルーコスモスにも属している。それだけの貴重な技術を持ちながら何故、あのブルーコスモスにいるのだね」
「居てはダメなのですか?彼らは大事なスポンサーなんです」
「それがより今を歪めてることになってるとしても、かね?」
「あら、ウズミ様は先ほど...力無くば、その意志を押し通すことも出来ないと仰っておりました。
私も私の意思を押し通す為、必要な力を用いているだけです」
エイダの返しにウズミは眉間に皺を寄せる、どうやら機嫌を損ねてしまったようである。
しかしウズミは心を落ち着かせ、エイダに言う。
「出来れば貴女方カンパニーも提供して貰いたい」
「っと言いますと?」
「ストライクと共にアークエンジェルにある機体...GAT-X00・パワード、あの機体に関しては戦闘データ並びに、機体の開発データも提供して貰いたい。そしてパイロットにも協力願う...そして貴女にも」
「.....」
マリューたちが固唾を飲む中、彼の要求にエイダは一切表情を崩さず、ただ淡々と彼を見つめるのである。
____________________________________
明朝...霧が立ち込めている車道を進む1台の車走り、その後に2機のモビルスーツ...パワードとストライクが続くようにして歩行している。行き着く先は崖に偽装した巨大なゲートが開く。
中に入り、機密格納用の大型エレベーターに移動した二機を乗せ、地下深くへと潜る。新たなゲートに進入し、オーブ側の作業員の所定の指示により、機体をそこへ安置する。
ラダーでコクピットから降りるシンラとキラは、そこで一人の女性が2人に近づく。
「初めまして。私はエリカ・シモンズ、ここの責任者よ。よろしくね」
優しく微笑んで二人にそう言うエリカ。
「キラ・ヤマトです。よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくお願い....で、貴方が」
「シンラ・ユーリ大尉です」
「よろしく。では案内するわ、こっちよ」
彼女の案内で二人は奥へと歩く。その道中、エリカはシンラに問いかける。
「因みにだけど、貴方はあの機体...パワードのメンテや調整とかは?」
「できますが」
「優秀ね♪パイロットなのにすごいわ」
そして奥へ案内された先....そこにあったのは、モビルスーツが複数もハンガーに納められていた。
その光景にキラは驚きを見せる。彼女にフフッと笑みを浮かべるエリカ。
「....」
一方、シンラは目の前のモビルスーツ達を見つめ、睨むように見ていた。