機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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※原作準拠の方、オリジナル要素、オリジナルモビルスーツ、オリ主主体などに抵抗ある方はブラウザバック推奨します。


PHASE45 定めの出会い

トリィを追いかけるも、キラは思わず足を止めて驚く。

 

「え…?!(あ、アスラン…?!)」

 

「(キラ!?それに後ろの男は誰だ!?)」

 

柵の向かい側に立つのは、トリィを指に乗せているアスランであった。

トリィを追いかけるキラの後に駆けつけたシンラは、不思議そうに見ていた。

 

「(キラの知り合いか?オーブは故郷だから、知り合いはいるか…)」

 

キラと向かい合うアスランは戸惑いながらも、自分の指に乗せているトリィをそのまま差し出す。

 

「これ……」

 

「え…あ、うん…。ありが…とう…」

 

キラは神妙な顔でトリィを受けとる。対してアスランはキラから礼を言われて、少し嬉しそうな表情を浮かべる。

だがシンラが彼女の傍らに近づくと、アスランの顔がしかめた。

 

「キラ、彼は知り合いか?」

 

「え?う、うん。その……"知り合い"の男の子…」

 

シンラに聞かれて、キラはそう返した。

 

「っ!?」

 

だがそれはアスランにとって信じられない言葉であった。幾ら敵同士となってしまっているが、アスランの心中では彼女は大切な女の子。

その女の子からただの「知り合い」扱いされて、彼としてはショックを受けざるを得ない。

アスランは信じられないといった顔を浮かべて、キラを見つめる。

だがキラは複雑な表情をしながら、シンラに身を寄せる。

キラとしてはアスランの事は大切な幼馴染みで、異性の友人という認識である。

しかしそれでも大事な友人であるのは事実、正直また争うのは辛い部分がある。

キラはアスランの心中など気付かずに、トリィを大事そうにしながら喋る。

 

「大事な友達に貰った、大事な物なの…」

 

「っ!そ、そう…!」

 

トリィはアスランが作り、キラにあげたロボット鳥。それを大切にしてくれたという事実に、先ほど知り合い扱いされたショックを忘れさせるのに十分だった。

そのアスランに「いくぞ!」と仲間からの呼び掛けによって、そのまま振り返って去っていく。

その間キラは気まずそうにしていたが、シンラが彼女を抱き寄せながら「大丈夫か?」と尋ねる。

 

「うん、平気だから…」

 

「そうか……ん?」

 

ふと視線感じ、先ほどのアスランが居た方角へ視線を向ける。

 

「っ!?」

 

離れた位置より、アスランが自分に向けているであろう目付きが、それは憎悪からのものであった。

シンラはどうしてあのような眼で睨まれなければならないのか、全く理解できないでいた。

だがアスランは仲間が運転する車に乗り込んでも、ずっとシンラを睨んでいた。

 

「何なんだ…?彼は」

 

「シンラ……行こう」

 

「ん?あ、ああ」

 

キラに促され、彼女と横並びに歩く。その時二人の手が互いに離れまいと、ゆっくりと絡み合いながら確りと繋ぎ合うのであった。

その間キラは顔を俯かせ、アスランに申し訳ないと言う気持ちになった。

 

 

 

 

アークエンジェルに戻った後、シンラはパワードのメンテナンスをしていた。

端末を操作しつつ機体各種のステータスチェックに勤しんでいる。

 

「精が出るわね、シンラくん」

 

「ん?あ、マリューさん」

 

「フフ」

 

マリューがコクピットの外より顔を覗かせ、シンラに声をかけてきた。

 

「どうかしました?なにか…」

 

「あー、違うの。ただちょっと時間できたから、シンラくんと話がしたくてね……今、大丈夫かしら?」

 

「大丈夫ですよ、今もう終わるので……」

 

シンラの返答にマリューは嬉々とした表情を浮かべる。彼はコクピットから出ていき、マリューの隣に立つ。

 

「お疲れ様、シンラくん」

 

「いえ。パイロットとして機体のメンテナンスは必須ですから」

 

「フフ」

 

マリューは不意に笑みを溢す。相変わらず真面目だなと感心しながらも、同時に真面目過ぎて困ったものだとも思う。

 

「ところで、キラさんがご両親に会いにいったそうね」

 

「はい、俺が行くべきだと促しました。折角オーブに来たのですから、会える内に会うべきだと…」

 

「そう…」

 

あの後、シンラはキラに両親に会ってないことを問いかけた。答えはやはりイエスで、会うことが怖いと言っていた。会えばどうして自分をコーディネーターにしたのかと問い詰めてしまいそうで嫌だと、そして自分が今親たちに会えば心の中で決めている覚悟が鈍るとも言っていた。

しかしシンラはそれでも大事な両親に会わないのは良くないと、この時世で会いたくても会えない者もいる。

たとえ怖くても両親と向き合って欲しいと、シンラは心より願った。

キラもそれを無碍には出きるわけがなく、彼の想いに応えて自ら両親がいる軍本部に向かった。

きっと今頃、両親とゆっくりと話し合ってるだろう。

 

「シンラくんは、その……ご両親のことは」

 

「記憶がほとんどないので………」

 

「そう、だったわね…ごめんなさい」

 

シンラ自身、幼い頃の記憶が殆どない。故に親との記憶も思い出せない。

マリューは申し訳ないと罪悪感を抱く。

 

「気にしないでください。俺にはドクターが親代わりとして居てくれたので問題はありませんでした」

 

「……エイダさんが...」

 

複雑そうな顔をするマリュー。あのエイダが何をもってシンラの親代わりをしているのか、正直不審を抱く。

 

「エイダさんは、シンラくんにとってそこまでの人なの?」

 

「はい。厳しすぎる所はありますが、それでも俺のことを気遣ってくれる人ですから」

 

そう語るシンラの顔は、母親を誇らしく思う息子のそれである。

マリューはこれ以上何も言えなかった。

 

そこへナタルがやってきた。

 

「艦長…あぁ、やはりユーリ大尉は此方ですか」

 

「あら、ナタル。どうかしたの?」

 

「はい、先ほどオーブから連絡で、ユーリ大尉に是非軍本部に来て欲しいと」

 

ナタルからの報告にマリューとシンラは首をかしげる。何かあるのだろうかとシンラは此れに従い、軍本部に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

その頃、キラは両親と抱き合い共に涙を流し合っていた。

 

「キラ、キラぁ!あぁ!本当に無事で!!」

 

「無事で本当に良かった」

 

「お母さん、お父さん…心配かけてごめんね?」

 

「いいのよ!!」と母カリダは、愛する娘をもう離さないと強く抱き締め、父ハルマはそんな妻と娘を包むように抱き締める。

キラも両親からの愛情に照れくさくしながらも、嬉々としていた。

そんな家族の団欒の様子を、微笑ましくウズミは見守っていた。

そこへ秘書が部屋に入って、ウズミに耳元で話しかけてきた。

 

「アークエンジェルのシンラ・ユーリ大尉をお連れしました」

 

「通してやってくれ」

 

「わかりました」

 

秘書は扉を開けると、シンラがゆっくりと部屋に入室してきた。

 

「失礼します」

 

「え?シンラ?!」

 

「「っ!!」」

 

彼が来たことにキラは驚き振り返る。キラの両親もシンラの姿を見て驚愕していた。

 

「彼は私が呼んだのだよ。──初めましてだな、ウズミ・ナラ・アスハだ」

 

「御初にお目にかかります。地球軍大西洋連邦所属、シンラ・ユーリ大尉であります」

 

シンラは敬礼の姿勢を取り、ウズミに自己紹介する。対してウズミは優しい笑みを浮かべて首を左右にゆっくり振るう。

 

「敬礼はせずともよい。ここに君を呼んだのは、私個人のワガママだ」

 

「は、はぁ…」

 

理解できないシンラはそう相槌するしかなかった。そんなシンラを見て、キラの両親はどうしてか彼を見て驚きながらも悲しげな表情で彼を見つめていた。

するとカリダが恐る恐るシンラに近づいてきた。

 

「あ、あの…」

 

「はい?」

 

「貴方、もう一度お名前をお聞きしてもいいかしら…」

 

「は、はい、シンラ───シンラ・ユーリです」

 

「っ!!─────あぁ…あぁぁぁ…!!」

 

その名を聞いてカリダは両手で口を覆いながら涙を流す。

シンラはどうしたことかと困惑し、キラも理解できないでいたが、母の尋常じゃない様子に心配になり抱き止める。

 

「お母さん…!」

 

「大丈夫、大丈夫よキラ。ありがとう」

 

「あの…」

 

未だ理解不能なシンラに、ハルマが彼に近づいてきた。

 

「妻が失礼した。ただ悪気はないんだ、君を見て安堵したんだよ」

 

「あの…キラのご両親の方々ですよね?」

 

「ああそうだ。私はハルマ・ヤマトだ、彼女はカリダ。私たちの大切な娘を守ってくれてありがとう」

 

「いえ、娘さんを巻き込んでしまい申し訳ありません…」

 

ハルマは謝罪するシンラに首を左右にゆっくり振り、謝らないで欲しい願った。

だが代わりに──

 

「できれば、良く顔を見せてくれないか?」

 

「自分のですか?」

 

「そうだ。駄目かな?」

 

戸惑うシンラ、しかし彼はそれを嫌だと思わなかった。

彼はハルマの要求を素直に受け入れ、自身の顔を見えるようにと近づける。

するとハルマは───

 

 

 

「───本当に、良く似ている」

 

「え?」

 

「お父さん。シンラが誰かに似ているの?」

 

呆気に取られるシンラに代わり、キラがハルマに問いかける。

ハルマはゆっくり首を縦に振り、口を開く。

 

「ああ。"彼の父親"にね…」

 

「えぇ。それに眼の色は、彼のお母さんにそっくりよ」

 

その言葉にシンラは驚愕する。自分には家族の記憶が殆どない、だがそれを知る人物が目の前に居た。

しかもキラの父親がである、シンラは聞かずにはいられなかった。

 

「あの、ヤマトさんは、俺の親のことをご存知なのですか?」

 

「知っているとも、君の父親はナチュラルでありながら、コーディネーターよりも優秀な科学者だった。そして私の友人でもあったよ」

 

「科学者……」

 

シンラは驚愕し動揺していた。

 

「君の父親の名は、"ユウマ・ユーリ"」

 

「ユウマ…ユーリ…」

 

自分の父親の名前を呟くシンラ。今まで自分には家族の記憶など何もなかった。

それがここにきて、自分を知る人間が現れてはどうしてか押さえきれなかった。

 

「あ、あの!できればもう少し教えてくれませんか?」

 

シンラはハルマに尋ねるが、彼やカリダは複雑な表情を浮かべる。

 

「これ以上は何も………私たち以上に、君のお父さんのことを知っている人間が君の身近にいる」

 

「え?それは一体……」

 

「──エイダさんよ」

 

ハルマはこれ以上教えるのは難しいとシンラの頼みを断るが、代わりにカリダが自分の親のことを知っている人間の名──エイダの名を告げる。

 

「ドクターが……?」

 

どうしてエイダの名を知っているのかと驚くシンラにカリダは近づき、彼の頬に触れながら悲しげな顔をする。

 

「貴方にはこれからきっと、辛いことが沢山あると思う。だけどどうか、それでも強く生きて…」

 

「あの…」

 

「そしてどうか………お願い...この子を守ってあげて....」

 

「っ!!」

 

 

 

 

 

お願い...いつかこの子を守ってあげて....

 

頭の中にふと思い浮かんだこの言葉。ヘリオポリスにてキラと初めて会った時にも浮かんだ見覚えのない記憶が現れる。

 

 

「っ!ぐぅ!!」

 

「シンラ!!」

 

またもこの記憶が現れ、しかも以前と違い頭痛を引き起こす。キラは思わずシンラに駆け寄り、彼を心配するように抱き止める。

ヤマト夫妻やウズミは、複雑な顔を見せる。

 

「お母さんたちは何を知っているの!?」

 

キラは両親に振り向きながら問いただすが、カリダは神妙な面持ちでそれを答えられないと首を左右に振る。

 

「……ごめんなさいキラ。それは言えないの……」

 

「どうして!?」

 

「それが彼の為なんだ。それに………」

 

「それに……なに?お父さん」

 

ハルマは何かを言おうとしたが、カリダがそれだけは駄目と眼で訴えた為口を噤んだ。

 

「そろそろ船に戻られよ。部下に送らせよう」

 

キラに支えられ、シンラは重い足取りで部屋を出ていく。

その直後、ハルマが──

 

 

「シンラくん、君が全てを知った時、どうか……ご両親を恨まないでくれ」

 

 

 

 

 

 

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