機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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遅くなり申し訳ありませんでした。


PHASE46 出航

キラの両親との会ったシンラであったが、突如として激しい頭痛に襲われた。

キラの介抱を受けながら、ウズミが手配した車でアークエンジェルに戻っている。

その車内でキラはずっと片時もシンラから離れず、彼の傍でその手を確りと握りしめて按じていた。

 

「大丈夫?シンラ」

「…………あ、ああ…」

 

だがその声音は大丈夫とは言い難い力無いものだった。

心配でキラは悲しげに見つめている。あの時、彼女の両親はシンラを知っていた。

しかも彼の父親と思しき人物の名まで口にもしていた。

 

「(どうしてお父さんたちは、シンラの親のことを知っていたの…?もしかして、シンラの過去まで知っていたんじゃ…)」

 

謎が深まるばかりで、一切答えが分からないキラ。

 

「(………ドクターに、問いかけてみるしかないのか…)」

 

シンラもまた自分の過去について知っている筈のエイダに、問うのかそれを悩んでいた。

 

 

_________________________

 

 

その頃、アークエンジェルの艦橋内では、オーブ軍の軍服を纏って髪を綺麗に整えたキサカとマリューたちは話し合っていた。

 

「目下の情勢の最大の不安材料は、パナマだ。ザフトに大規模作戦有りという噂のおかげで、カーペンタリアの動きは、かなり慌ただしい」

アフリカにいた時とは風貌が異なり、髭も剃り厳つさを漂わせながら理知的な雰囲気を醸し出しながら話すキサカ。

 

 

「どの程度まで分かっているのですか?」

オーブの情報収集力に驚くマリューが問いかけると、キサカは苦笑しつつ肩を竦め、誤魔化すようにする。

 

「さぁな。オーブも難しい立場にある。情報は欲しいが、薮蛇はごめんでね。だが、アラスカに向かおうという君等には、かえって好都合だろう」

目的地である地球軍総司令部であるアラスカ、そこにたどり着く為にこれからも困難な事態が待ち受けているであろう。

苦労は未だに終わらないことにマリューはため息を吐かざる得ない。

 

「万一追撃があったとしても、北回帰線を超えれば、すぐにアラスカの防空圏ですからね。奴等もそこまでは、深追いしてこないでしょう」

ノイマンは明るく楽観的に言うが、マリューとしては先行きに不安を拭いきれない。

何せここまで自分たちを追撃してる、例の4機のGタイプモビルスーツ部隊の動向が気になる。

 

「我々を追ってきていた例の部隊の動向は?」

 

「一昨日から、オーブ近海に艦影はない」

 

「引き揚げた、と?」

 

へリオポリスより此処まで執拗に追撃してきた奴らが、オーブ政府より既にもう居ないという公表内容に対して、鵜呑みにして引き上げるなど信じられるだろうか。

 

「また外交筋では、かなりのやり取りがあったようだからな。そう思いたいところだが」

 

キサカ自身も一緒にアークエンジェルに乗っていた身である。

敵の執拗さを体感してる手前、まさか居なくなったなど信じられる訳がないと思っている。

っと、突然ナタルが口を開きキサカへ問い掛ける。

 

「アスハ前代表は当時、この艦とモビルスーツのことはご存知なかったという噂は、…本当ですか?」

 

「っ!?バジルール中尉!!…ぁ…」

 

その問い掛けにマリューは諌めようとしたが、キサカから手を上げて遮り、その問いに冷ややかながらもそれに確りと答えた。

 

「確かに、前代表の知らなかったことさ。一部の閣僚が大西洋連邦の圧力に屈して、独断で行ったことだ。モルゲンレーテとの癒着も発覚した。オーブの陣営を明らかにするべき、と言う者達の言い分も分かるのだがな、そうして巻き込まれれば、火の粉を被るのは国民だ。ヘリオポリスの様にな」

 

「あ………」

 

自分達が関わったコロニーの名前を出されてしまえばマリュー達は口ごもり、そしてナタルも思わず目を伏せてしまう。

 

「それだけはしたくないと、ウズミ様は無茶を承知で今も踏ん張っておられるのさ。君等の目には、甘く見えるかもしれんがな」

 

「いえ…」

 

マリューは首を横に振る。国の最高指導者であれば敵を作りすぎないことは優先事項だ。穏やかに、平和にこそこの時代に生きる者であればそう考えるのは悪いことではない。

だが”戦わない”という選択肢は、思った以上に取る方ことはかなり難しいのだ。

 

「修理の状況は?」

 

「明日中には、と連絡を受けております」

 

「あと少しだな。頑張れよ」

 

っとキサカは励ましのつもりで、マリューの肩をポンと手を乗せてそう言葉を送り、艦橋から出ていこうした。

 

「キサカ一佐!本当にいろいろと、ありがとうございました」

 

「いや、こちらも助けてもらった。既に家族はないが、私はタッシルの生まれでね」

 

「あ………」

 

「一時の勝利に意味はない。とは分かってはいても、見てしまえば見過ごすことも出来なくてな。暴れん坊の家出娘を、ようやく連れ帰ることも出来た。こちらこそ、礼を言うよ」

 

そう言ってキサカはアークエンジェルの艦橋から踵を返して立ち去っていった。

 

 

________________________

 

 

「ったく、どういうつもりなんだか」

 

「マジだよねぇ。ほんとに補給まで受けちゃってさぁ」

 

オーブ近海の小島の入り江付近、そこに停泊するザフト潜水艦・クストーの艦内でイザークとディアッカがぼやいていた。

オーブ潜入の際、イザークたちはアークエンジェルが潜伏しているという証拠を見つけられなかった。

だがアスランが母艦へ帰るや否や「足つきはオーブに隠れている。間違いない」と言い放ち、なんとカーペンタリアへ補給依頼を出してこの場に留まっているのだ。

 

「ぅぅぅ…これでもうここに二日だ!違ってたら足つきはもう遙か彼方だぞ!」

 

だがその決定にイザークは不満を持っている。ただ「オーブに必ずいる」「居るんだ」とそればかりの答えに、不満を抱かない者はいないだろう。

 

「ノシちゃう気なら手貸すよぉ?」

 

「う!?」

 

冗談からなのかいつもの飄々とした態度で提案してくるディアッカに、一緒息を呑むイザークだが少し冷静になり「やめとく!」と椅子にふんずりかえる。

 

「残念ながら、それほど単純な頭でもないんでね。くっ…」

 

イザークは忌々しそうに吐き捨てた。

 

 

________________________

 

 

そのイザークが怒る対象であるアスランは、いまクストーの甲板の上で海を見つめていた。

 

 

「…………」

 

 

 

大事な友達に貰った、大事な物なの

 

 

 

 

 

「(だが君はフェンスの向こう側だ………)」

 

そのアスランの脳裏には自分が焦がれる女性が、知らない男と一緒にいてしかも如何にも親しそうな距離感だったのを忘れてはいなかった。

 

「(それも、あんな知らない男と、俺、以外の男と………どうしてだ………)」

 

顔が険しくなり、怒りが募るアスラン。彼の頭の中では女性として美しい裸姿のキラがあの時会った男と抱き合い激しくキスをし合う光景が浮かんでしまう。

いつの間にか拳から血がしたたり、顔がより一層険しくなる。

そして妄想の中でキラは男と激しく愛し合いながら、肌と肌を重ねようとする光景に堪らず叫んだ。

 

 

「やめろキラ!やめてくれぇ!!!」

 

だがそこで現実に戻ったアスラン、そんな彼に呼び掛ける声が。

 

「おーい!アスラーン!こんな所に居たんですか、アスラン」

 

「………ニコル」

 

「どうしましたか?なんか叫んでいたようですが……」

 

「え?……あ、ああ、なんでもない」

 

「あ!そうだ!!あっちにトビウオが跳ねていたんですよ!信じられます?」

 

子供のように無邪気な笑みを見せるニコルに、アスランは先程までの怒りが消え失せ微笑ましい気分になる。

彼には地球に降りてからというものかなり助けられていた。

 

「見に行きませんか?」

 

「いや、遠慮しとく」

 

やんわりとニコルの提案を断るアスラン。だがニコルは彼の表情が何処か固いことに気がついていた。

そして心配するような顔つきに変わる。

 

「心配、ですか?」

 

「え?」

 

「大丈夫です!ボクはアスラン…ううん、”隊長”を信じていますから!」

 

「ニコル……」

 

ニコルの純粋な姿にアスランはフッと笑みを溢してみせる。

ふとアスランは、不意に疑問に思ったことを口に出してニコルに聞いてみた。

 

「ニコルはどうして軍に志願したんだ?」

 

「戦わなきゃいけないな僕も、って思ったんです。ユニウスセブンのニュースを見て。アスランは?」

 

「俺も同じだよ。ユニウスセブンで俺の母は命を落とした、だからさ」

 

「アスラン………」

 

ニコルの表情が悲しいものに変わったが、アスランは違った。

その為にこの戦いを終わらせないといけない、そして必ずキラを自分のもとに取り戻すと激しくも強い決意が満ちる。

 

 

________________________

 

 

その頃アークエンジェルに戻ったシンラとキラ、二人は自然とドクターエイダを探しに格納庫まで来ていた。

だがその格納庫では何やら騒がしかった。その中心にはムウやマードック、ミリアリアとトール、そしてドクターエイダが何かを話し込んでいたのだ。

 

「こいつが2機出られりゃ、確かに助かるでしょうがねぇ。地上だとストライクはきついから」

 

「そうね。バジルール中尉からはお願いされてるからウチで作業しておくわ」

 

「いいんですかい?」

 

「構わないわ」

 

何のことか分からずキラはミリアリアに問いかけた。

 

「ミリィ、何があったの?」

 

「キラ、その、トールが……」

 

「トールがどうしたの?」

 

「スカイグラスパー二号機に乗るって…」

 

「え!?そんな、トール!」

ミリアリアから語られた内容にキラは驚く。まさか友人であるトールがスカイグラスパーに乗るなど聞かされればそうなる。

機体に乗るということは、戦場に出ると言うことである。

 

「大丈夫だって!ストライクとパワードの支援と上空監視だけだよ!俺だって!」

 

「バジルール中尉の命令か?」

 

シンラがトールに対し、ナタルから強制されたのかと問いかけたがトールはそれを強く否定して反論する。

 

「志願したんですよ!」

 

「だが戦場にでるんだぞ、止めておいた方が………」

 

「支援だけだぞ」

 

そこへムウがシンラを遮り、トールの出撃を許した。

止めることが出来ないと判断したからだろう。

エイダは呆れつつ機体の整備に入り、マードックも幾度も修理するスカイグラスパー二号機を預けることに躊躇っていたが、そんな危惧する視線にも気がつかずトールは、機体を任せられたと喜んでいる。

 

「トール…その、やっぱり危な……」

 

「大丈夫!心配要らないって!キラもユーリ大尉もフラガ少佐もがんばってるんだ!俺だってやんなきゃ!!」

 

「トール…」

 

キラとミリアリアが不安そうに見つめる中、シンラも複雑な顔を浮かべるしかなかった。

そこへエイダが呼び掛けてきた。

 

「シンラ、ちょっとこっちに来なさい」

 

「え?あ、はい」

 

エイダに呼ばれてついていくと、彼女は険しい顔をしていた。

 

「軍本部でキラちゃんの両親と会ったの?シンラ」

 

「え?あ、はい…そうです」

 

「そう」

 

シンラは思いきって問いただすことにした。

 

「ドクター」

 

「なに?」

 

「あの………ユウマ・ユーリという人物を知っていますか?」

 

「…………………」

 

だが返ってきたのは鋭い視線と………。

 

「シンラ」

 

「は、はい」

 

「……貴方にそれを教えるのは、まだ先よ」

 

「え?ですが…」

 

「わかったわね」

 

「は、はい」

 

有無も言わさずの言葉に従わざるえなかったシンラ。エイダはそのまま何事もなかったかのようにその場から立ち去るのだった。

 

 

 

_____________________

 

 

「注水始め!」

 

「注水始めー!」

 

「注水始めー!!」

 

技師たちの号令が上がり、地下ドックに警報がけたたましく鳴り響く。

アークエンジェルの両脇から凄まじい勢いで大量の水が吹き出し、壁に叩きつける音がドック内に激しく響き渡る。

 

その時、カガリは父ウズミに呼び止められていた。

 

「カガリ」

 

「お父様……」

 

「あの船と共に行くつもりか?」

 

「違います!戦いたいわけではない!」

 

「ではなんだ」

 

カガリはアークエンジェルに再び乗り込み、キラたちを手助けしたいと考えていた。

だがそれをウズミが許す訳もなく、こうして阻まれている。だがウズミが娘の行く手を邪魔するのは国の代表としてではない、一人の親として我が子を行かせたくないと言う思いもある。

しかしカガリもまた頑固なのか、ウズミに反発する。

 

「彼らを助けたいのです!そして、早く終わらせたい!こんな戦争は!」

 

「お前が戦えば終わるのか?」

 

「ぇ!?それは……」

 

断言できるものではない。戦争がそんな簡単には終わらないのは子供であるカガリも分かってはいる。

しかし理屈ではなく彼女自身、この中立を貫き平和に過ごす国に居ても何も出来ないと憤っている。

自分には何か出来ることはある、だから行きたいのだ。

だがウズミは尚も諭す。

 

「お前が誰かの夫を討てば、その妻はお前を恨むだろう。お前が誰かの息子を討てば、その母はお前を憎むだろう。そしてお前が誰かに討たれれば、私はそいつを憎むだろう。こんな簡単な連鎖が何故解らん!」

 

「解っています!しかし…この国で自分だけのうのうと…」

 

「そんな安っぽい、独り善がりな正義感で何が出来るか!!」

 

「お父様……」

 

「銃を執るばかりが戦いではない。戦争の根を学べ、カガリ。討ち合っていては、何も終わらん」

 

「…………………」

 

カガリは父に諭されアークエンジェルと共に行くことを断念した。その代わりカガリは意を決して最後に見送りに向かうべく走る。

一方アークエンジェルでは出発にむけての着々と進められる中、艦橋内で通信士のパルが不審な表情でマリューに報告する。

 

「艦長。ドック内にアスハ前代表がお見えです。それと...」

 

「どうしたの?」

 

「ヤマト少尉並びユーリ大尉を上部デッキに上げて欲しい、と言われていますがどうしますか?」

 

「そう…ヤマト少尉とユーリ大尉に通達してちょうだい」

 

「はい」

 

通達は直ぐにカタパルトデッキに居たシンラとキラにも伝わり、キラは分からずにシンラの腕を抱きつきながら上部デッキに向かう。シンラも何故自分もなのか分からなかった。

二人は言われた通りに上部甲板に出ると、桟橋からこちらへ懸命に駆けてくるカガリの姿が見えた。

 

「キラーッ!!」

 

「カガリ?」

 

普段のタンクトップとズボンというラフな姿ではなく、軍服であった。

彼女はキラに思いっきり抱きつく。

 

「どうしたの?カガリ」

 

「どうしたって別れ言いに来たに決まってるだろ!」

 

怒り気味のカガリに困ったような笑みを浮かべるキラ。

だがカガリは堪らなくなって彼女を再び抱き締め引き寄せた。

キラも悪い感じはなく笑みを浮かべて、カガリを抱きしめ返す。

シンラはただ二人の少女のそんな抱きしめ合う場面を、見守るようにして見つめていた。

するとキラから離れてカガリがシンラに向き直る。

 

「その、お前に、お願いがある」

 

「なんだ?」

 

彼女は意を決して伝える。

 

「キラを守ってくれ…」

 

「カガリ…」

 

「……」

 

カガリがそれを伝える理由を言う。

 

「ほら!こいつ、抜けてる感じあるだろ!だから……」

 

「……わかった。必ずだ」

 

「絶対だぞ!」

 

「ああ」

 

シンラとキラは艦内に戻り、カガリが離れた直後アークエンジェルのメインエンジンが稼働する。

 

「メインエンジン起動、そのまま微速前進。アークエンジェル発進!」

 

 

マリューの指示でアークエンジェルはオーブから旅立っていく。

 

_______________________

 

 

 

 

「オーブ軍より通達。周辺に艦影なし。発進は定刻通り」

 

「了解したと伝えて」

パルの報告にマリューが返答し、その内容にサイが疑問を抱きトノムラに問い掛けた。

 

「護衛艦が出てくれるんですか?」

 

「隠れ蓑になってくれようってんだろ?艦数が多い方が特定しにくいし、データなら後でいくらでも誤魔化しが効くからな」

 

ドック側の管制室よりキラやサイたちの両親が、子どもたちを乗せたアークエンジェルの出航を見守るように見ている。

その中でキラの母・カリダが呟いた。

 

「お願い…キラを、あの子を守って…シンラくん」

 

「大丈夫さ」

 

夫ハルマがそう元気づけながら共にアークエンジェルを見守るのであった。

 

 

 

その頃、オーブ近海にて網を張っているボスゴロフ級潜水艦クストーでは、オーブ軍艦隊を察知していた。

 

「演習ですか?」

 

「スケジュールにはないがな。北東へ向かっている。艦の特定まだか!」

 

アスランが艦長に尋ねると今までこの時期による演習はなかった筈と返ってきた。

艦長はすぐさまオペレーターに艦隊の特定を急がした。

おそらくアークエンジェルがオーブ艦隊に紛れながら、チャンスを見計らってアラスカへと向かうのだと察知したのだろう。

 

「間もなく領海線です」

 

「周辺に敵影なし」

 

「警戒は厳に!艦隊離脱後、離水、最大戦速!」

 

マリューの言葉で艦橋内の人員の顔が引き締まる。その時パルからオーブ艦隊からの通信が届き読み上げた。

 

「艦隊旗艦より入電。我是ヨリ帰投セリ。貴官ノ健闘ヲ祈ル」

 

「エスコートを感謝する、と返信を」

 

__________________________

 

 

格納庫ではキラが既にパイロットスーツを着こんで、すたすたとストライクに向かっている。

まだ出撃でもないのに早いなとマードックは声をかけた。

 

「なんだぁ?未だ警報は出てねぇぞ?嬢ちゃん」

 

「領海を出れば、ザフトの攻撃が始まります」

 

「そうか。ははっ!心配性だな嬢ちゃん!」

 

マードックは笑いながらも作業に入る中、キラはコクピットに入りながら考え込む。

 

「(アスラン……来るの?この船を沈めに...)」

 

 

 

一方、艦内通路ではシンラがパイロットスーツ姿で格納庫へと向かっていた。

その道中……。

 

「どうしてトールがスカイグラスパーに乗るんですか?!私だってシミュレーターをこなしてきたのに!!」

 

「ん?」

 

大きな声が聞こえ、シンラはそこに目を向けるとフレイとエイダが話し込んでいた。

フレイは何やら興奮気味でエイダに食って掛かっていたが、エイダは優しく諭すように言う。

 

「フレイ、貴女がやってきたシミュレーターはモビルスーツ用よ。戦闘機とは別なの」

 

「でも!スコアではトールより上です!私に乗らせてください!私だって!!」

 

「確かにそうね。でも貴女にはまだ努力してほしいの。そしてそれが報いる時は今じゃない」

 

「けど……」

 

悔し涙を流すフレイに、エイダは苦笑しながらまるで我が子を優しく抱き締めるようにして彼女を宥めた。

フレイは突然のことに驚き目を丸くする。

 

「あ...」

 

「大丈夫、大丈夫よフレイ。貴女はしっかり頑張ってるわ。私が見ていたんだもの」

 

「ドクター………」

 

「大丈夫、だから今は耐えて部屋に居なさい。いいわね?」

 

「はい」

 

フレイはエイダの言うことを素直に聞いてその場から立ち去る。

その時シンラとすれ違う形になった際、彼に会釈して走っていく。

 

「出撃準備なさいシンラ」

 

「彼女、フレイ・アルスターと、いつからあんなに親しく?」

 

「砂漠に居た時、彼女が密かにシミュレーターをやっていたのよ。そこからね」

 

砂漠に居た際、一人シミュレーターに没頭していたフレイに声をかけたエイダは、密かに彼女にシミュレーターを介してモビルスーツの操縦を教えていたのだ。

フレイは彼女がコーディネーターであろうとも素直に言うことを聞き、教えた通りにやっていたがその教えを吸収する勢いが素晴らしく、ナチュラルでありながら優秀とも言えるレベルであった。

その時からフレイがエイダに対して、親のように慕っていた。

因みにシミュレーターの件やエイダが教えていることは、マリューには言っていない。

 

「艦長にどやされますよ」

 

「別に彼女の部下になった覚えはないわ。それよりも早く行きなさい、ウェアはパンツァーで用意してあるから」

 

「了解」

 

走っていくシンラ。その後ろ姿をエイダは神妙な顔で見つめた。

 

「シンラ…貴方には必ず話すわ。貴方の過去……両親のこと……そして貴方自身のことも」

 

 

_______________________

 

「オーブ艦隊より離脱する艦艇あり、艦種特定、足つきです!」

 

オペレーターより上げられた報告にザラ隊メンバーは各々反応する。

 

「え!?」

 

「ひゅ~~♪」

 

「当たりましたね、アスラン」

 

「出撃する!今日こそ足つきを落とすぞ!」

 

 

『注水確認よろし!ハッチ開放!進路クリア。射出始め!』

オペレーターの指示により、四機のGが発進・射出される。

 

 

________________________

 

 

敵が来たことをアークエンジェルは察知していた。

 

「レーダーに反応!数3、いや4!」

 

「え!?」

 

「機種特定、イージス、バスター、ブリッツ、デュエル!」

 

既に網を張られていたことに驚く一同。だがアラスカへの旅路をここで終わらす訳にはいかない。

マリューの号令が響く。

 

「逃げ切れればいい!厳しいとは思うが、各員健闘を!対船、対モビルスーツ戦闘用意!」

 

「ECM最大強度!スモークディスチャージャー投射!両舷、煙幕放出!」

 

マリューに次いでナタルがCICで指示を飛ばす。海で遮るものがない、ならば目眩ましとして煙幕を発射させた。

 

そして出撃の時である。既にムウとトールがスカイグラスパー一号機、二号機に乗り込んでいた。

 

「…ぅ…」

 

「そう緊張するな。上空からストライクとパワードの支援だけやればいい」

 

「行くぞ!落ちるなよ!」

 

『進路クリアー。スカイグラスパー、ケーニヒ機、発進!気を付けてね…』

 

オペレーターのミリアリアの指示でムウとトールの機体が発進する。

ムウの一号機はエールストライカーを換装し出撃。続けて二号機に搭乗するトールはソードストライカーを背負い発進した。

その後、キラが操るストライクはランチャーを換装し、船体から出てきたケーブルを掴みアグニへ接続する。

 

「やらせないんだから!」

 

 

『続いてパワードパンツァー!発進どうぞ!!』

 

「了解!シンラ・ユーリ!パワードパンツァー、でる!」

 

発進したパワードパンツァーは、上手く海面に着地し、腰部や脹脛部分にスラスターを駆使しその重武装の鈍重なシルエットとは裏腹に、海の上をホバリング移動で高速滑走している。

 

その様子をアスランたちは息をのむ。

 

「あの砲撃形態のパワード!!水面も動けるのかよ!!」

 

「パワード!!今度こそ!!」

 

「協力しましょう!!」

 

 

 

「死神ぃい!!」

 

アスランのパワードに向ける殺意の眼光が鋭くなる。

オーブを抜けた先で再び始まる彼らの激闘、どうなるか……。

 

 

 

 

 

 

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