機動戦士ガンダムSEED OVERLOAD   作:新米くん

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PHASE05 事態は未だ収まらない

「自分が所属する部隊は、ブルーコスモス盟主――ムルタ・アズラエル直属の特殊部隊で、俺はその特務兵士だ」

 

怒りにも似た勢いでそう告白するシンラのこの言葉に、誰もが息を吞むぐらい騒然となってしまった。

ブルーコスモス…それは、反プラント・反コーディネイターを掲げる人々の諸集団あるいはそれが掲げるイデオロギーを持つ自然保護団体の名称で、遺伝子操作によって生まれる人類【コーディネイター】が爆誕するとその存在は生命倫理違反として弾圧したり、反対デモを行ったりしている。

国際法でコーディネイターの出産は禁じられたにもかかわらず違法に生まれ続けるコーディネイターに不満を覚えた一部のブルーコスモスが過激派と化し、コーディネイターに対する迫害やテロを行うようになっていった。

ブルーコスモスの思想を持つ人間やそのシンパは非常に多く、経済界の大物や地球連合軍の軍幹部、政治家といった有力者にもブルーコスモスの賛同者がいる。

当然一般市民にも数多く賛同者が存在し、その殆どがナチュラルである。一方でコーディネイターの中にも出生に苦悩した末に反コーディネイター思想に生きる道を見出した者がいるため、前掲の通り、極僅かだがブルーコスモスとなるコーディネイターもいるらしい。

だがそのあまりに過激な行いに同じナチュラルでありながら、ブルーコスモスを嫌悪し、更には反ブルーコスモスの思想で動きテロまで起こすナチュラルも居る始末である。

 

彼が自身のことを告げたことにエイダは、頭を抱えて溜め息を吐いてしまう。

だが言ってしまった以上どうしようもない。

それに自分がブルーコスモスに属する者だと告げたにも関わらず、シンラは無表情で淡々としていながらも毅然と立っている。

ブルーコスモスという言葉にナタル、ノイマンたちは複雑な顔をしており、キラの友人たちもシンラに対して危ないモノを見ているような眼で彼を見つめている。

だがキラは…彼女はずっと、そんなシンラの傍から一歩も離れようとせず、ただ彼の服の袖を強く握っている。

その様子を見ていたマリューは、意を決した顔で彼にも銃を向けようとする警備兵らに銃を下げるよう命令した。

 

「銃を下ろしなさい」

 

「ラミアス大尉?!」

 

突然の彼女が発した命令にナタルは大きく眼を見開いて驚愕する。

だがマリューは微笑みを浮かべ話す。

 

「相手がブルーコスモスであろうと、この危機を一緒に乗り越えてくれる頼れる存在よ。

そうでしょ?ユーリ中尉」

 

「はい、自分はここで仲間割れをするために居るわけではありません。

それは貴方も同じでしょ?フラガ大尉」

 

っとムウに対して強く睨みつけるシンラ。

 

「そうだな……いや、悪かったなぁ、とんだ騒ぎにしちまって。

俺はただ聞きたかっただけなんだよね、ここに来るまでの道中、これのパイロットになるはずだった連中の、シミュレーションをけっこう見てきたが、奴等、ノロくさ動かすにも四苦八苦してたぜ。やれやれだな

それに……この状況で君みたいなエース以上の腕前のパイロットが居てくれるのは、こっちとしても助かるよ中尉。

同じグリマルディ戦線で駆け抜けた者として光栄だ」

 

ムウは悪かったとばかりに、首の後ろに手を当て苦笑する。

そして顔を正してシンラに握手のため手を差し出した。

シンラもそれを受け入れ、握手を返すのだった。

だが肝心な部分が引っ掛かっていた、それはシンラがナチュラルか、またはコーディネイターか……。

しかしそれをこんな状況下で、確かめる余裕などないことぐらいムウでも理解している。

そう思いを耽りながら、その場を離れるように歩き出すムウ。

 

「大尉!どちらへ?」

 

「どちらって、俺は被弾して降りたんだし、外に居るのはクルーゼ隊だぜ?」

 

「クルーゼ隊!?」

 

「あいつはしつこいぞー。こんなところでのんびりしている暇は、ないと思うがね。あんたもそう思うだろ、ユーリ中尉」

 

呼び止めたナタルにムウは答え、マリューは驚愕する。――そう、ムウには確信出来ていた。奴、ラウ・ル・クルーゼは必ず来る。

戦場を駆けた者なら分かる、感のような物か。同じような匂い感じたシンラにも同意を求めた。

 

「ならばこうしていつまでも呆けてる訳にはいかないわ。

皆脱出の用意を!各員、持ち場に戻って脱出の為の作業を始めて――。シンラ中尉、キラさん、モビルスーツを格納庫に入れてもらえますか?――あとで、シンラ中尉はブリッジにお願いします」

 

マリューはその場にいたクルーに指示を出す。今は、とにかく脱出を優先させなけれならない。

彼女の命令により、それぞれ行動を起こす。

ドクターエイダも自分のスタッフたちに命令を下して、大型トレーラーをアークエンジェルに搬入させる。

キラの友人達はクルーによって居住区に移動させられ、その場に残ったのは、シンラとキラの二人っきりとなり、彼は自分の傍らにいる彼女にそっと声をかける。

 

「大丈夫、か?」

 

「は、はい……そ、その、ありがとうございます…庇ってくれて……嬉しい、です……」

 

キラは自身がコーディネイターであると知られ、差別を受けることに恐怖心を抱いていた。

そんな自分をシンラは躊躇わず庇って助けてくれたことに、思わず嬉しいと感じてしまった。

 

「フラガ大尉やドクターも、悪気があって言ったわけじゃない。許してやってくれ」

 

「あ……、はい。さっきは助けてもらって、ありがとうございました」

 

キラは素直に頭を下げ、シンラは「気にするな」と彼女に言ってきかせる。

 

「そう言えば名乗るの遅れてすまない……聞いたと思うが、俺はシンラ•ユーリだ、その、よろしく」

 

「は、はい!!わ、私!キラ!キラ•ヤマトと言います!」

 

シンラに改めて名前を教えて貰い、彼女は嬉々としながら自分の名前を教える。

そんな二人の間に微妙な雰囲気が包まれる。

 

「……」

 

「あ、あの……」

 

シンラはキラを見つめたまま無言になった。彼の様子にキラはオロオロとしつつ声をかける。

すると彼は……。

 

「…………どこかで会ったことがあるか?」

 

「え?カレッジで初めて会った時ぐらいしか……ないと思い、ますよ……?」

 

 

 

__________________________

 

 

シンラとキラはブリッジに入るとマリュー達の方に進んでいく。今、ブリッジにいるのは、マリュー、ムウ、ナタル、そしてドクターエイダの4人だった。

 

 

「あ、シンラ中尉。それにキラさん……」

 

「誰の許可を取ってブリッジに入った!?」

 

マリューはキラを呼んだ覚えはなく、ナタルはブリッジに入って来た彼女に声を荒げる。

キラは思わずシンラの後ろに身を隠すようにしてしまう。

そんなやり取りに、ムウがいさめるように合いの手を出した。

 

「別にいいんじゃないか?ストライクを動かせるんだし、少しでも戦力は欲しい状況なんだ、話に参加してもらえば――」

 

「フラガ大尉の言うとおりね。彼女は初めてモビルスーツに乗ったにも関わらず、ジンを撃破した功績は大きいわ」

 

ドクターエイダも助け船を出す形でキラを擁護する。

未だ渋る顔をするナタルにシンラが口を挟む。

 

「バジルール少尉、すまない。彼女は俺が連れてきた。艦長に相談があって……」

 

「相談?何かしら?中尉」

 

マリューは直ぐにその内容を聞き出す。

 

「その、彼女……キラを今後戦闘に出すのか、違うのかという話です」

 

「それは………」

 

 

__________________________________

 

一方、ヘリオポリスの外……未だに宙域に漂っているザフト艦隊、その旗艦であるヴェサリウスのブリッジにて……。

 

「ミゲルがこれを持ち帰ってくれて助かったよ」

 

モニターに映しだされているのは、ミゲルが命からがら持って帰ってきたジンの戦闘記録映像である。

彼の機体はストライクにより機能停止となり、やむを得ず自爆したのだ。

 

「幾ら言い訳したとて、私は大笑いにされていたかもしれん」

 

そんなクルーゼにアデスが改めて隊長である彼の無事に安堵する。

 

「しかし隊長がご無事で何よりです。まさか隊長の機体が酷い損害を受けたと聞いて焦りました」

 

「嗚呼。私もまさか、あそこで奴と再び逢いまみえるとは思いもしなかった」

 

「奴?」

 

アデスは首を傾げるが、クルーゼは苦笑しながら答える。

 

「そう。奴………死神だ」

 

死神……その単語を口にした瞬間ーー口にしたクルーゼ、何も知らないアスランを除く全ての者たちが動揺し、ざわざわと騒然となった。

特に彼……ミゲル•アイマンは、鬼気迫るような顔になりクルーゼに問い詰める。

 

「本当ですか!!!隊長!!!」

 

「ん?嗚呼、本当だ。………そうか、ミゲルは以前に、新星……ボアズと改名する前での攻防戦で奴と戦ったのだったな?」

 

「はい……奴のせいで、俺は大事な愛機である機体を失う羽目になりました……っ!」

 

ミゲルは自分が握りしめた拳を見つめながら、悔しげにそう語る。

どういうことかサッパリ分からないアスランは、クルーゼを見ると彼は「ああ、そうか」とアスランに言う。

 

「アスランは知らないのだったな、死神のことを…」

 

「は、はい」

 

「グリマルディ戦線...その中でもエンデミュオンクレーターでの戦いで、我が軍はそこで初めて甚大な大損害を被った。

モビルスーツ30機、艦艇15隻がある一機の白い高機動型ジンによって撃破された....恐らく鹵獲されたものを使用したのだろう」

 

「バカな!?」

 

クルーゼが語る話にアスランは俄かに信じられないと顔が物語っていた。更にL4のアジア共和国管理下の資源衛星「新星」での攻防戦にでもその死神と言われる存在は、瞬く間に新星防衛と護衛を任された艦隊に相当の損害を与えた。

この時、ミゲル•アイマン操る本来の乗機であるオレンジ色のジンはこの新星防衛の為、死神操る高機動型ジンと戦闘したが僅か数秒で大破されてしまい、ミゲルは何とか生き延びたが自分の愛機は無惨な様となり敢えなく廃棄となった。

ミゲルはずっとそのことに悔やみ、いつか必ず死神にリベンジしようと願っていた。

 

「その死神が今回、新たな機体ーーそれも地球軍の最新鋭の機体に乗っている。

これだけは何としても逃す訳にはいかん!戦艦もだ!」

 

これは撃破しろとのクルーゼの命令であるのは明白。その証拠にアデスまでもが彼らパイロット勢に指示する。

 

「ミゲル、オロール、マシュは直ちに出撃!!D装備の使用許可が出ている!今度こそ息の根を止めてやれ!!戦艦も!死神にもだ!!!」

 

「「「はい!!」」」

 

アデスの激励を皮切りに、アスランを除いた3人のパイロットが出撃準備に取り掛かるーーっと一人残っていたアスランが自分もこうしては居られないと、内心焦燥感を抱きながらアデスに直訴する。

 

「アデス艦長!私も出撃させてください!」

 

「んん?」

 

既に地球軍の新型モビルスーツの奪取という任務を終えたアスランに訝しむアデス。

そんなアスランにクルーゼは口を挟む。

 

「機体がないだろ?それに君は、あの機体の奪取という重要任務を果たしている」

 

「しかし!!」

 

食い下がろうとするアスランに艦長であるアデスが一喝する。

 

「今回は譲れ!アスラン!ミゲルたちの悔しさも、君に引けはとらん!」

 

「...っ」

 

ヘリオポリスに未だ居るアークエンジェルとストライク、そしてパワードに対する新たな攻撃の為、モビルスーツ・ジンにD装備ーー要塞攻略用装備への換装し、そのコロニーすら破壊しかねない力が今、ヘリオポリスに向けられる………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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