イメージED:SOLDIER-哀しみの詩-(ガンダムEVOLVE ep8主題歌)
ザフト部隊のアークエンジェルへの再攻撃はやはり起きた。これを迎え撃つべくパワードとストライクは出撃する。
シンラは難なくジンを三機撃破するが、しかし度重なる戦闘によって滔々コロニー自体がボロボロとなり、その存在を保つことは不可能と物語るかのように崩壊を起こす。
その崩れゆくコロニーの空気を全て宇宙へと解放される影響に、キラが乗るストライクは巻き込まれシンラの名を叫びながら宇宙へと放り出されてしまう。
「きゃああああああ!!!!シンラさぁんっ!!!」
「っ!?キラァっ!!!」
シンラは彼女の叫ぶと共に彼女を救うべくパワードを動かす、だがそれを邪魔するようにイージスが阻む。
「っ」
「イージス!こんな時に!!!」
「よくもミゲルたちを!」
イージスは主力装備である専用ビームライフル――60mm高エネルギービームライフルの銃口をパワードに向ける。
ミゲルたちを意図も容易くその命を奪ったパワードに深い怒りを抱くアスラン――目の前にいるこの機体のパイロットは、あのクルーゼを追い詰め、エースパイロットであったミゲルすら簡単に殺した死神が乗っている。
自分にそんな相手と戦えるのか不安と恐れを心に抱くが、しかしそれでもザフトの赤服を纏う者として此処でむざむざと奴を野放しには出来ないと強い使命感に駆られる。
一方、シンラはそんなアスランの心情など知るわけもなく、さっさとキラを助けに行きたいという焦燥感と、今自分の邪魔をするイージスに対する怒りによって突き動かされる。
「ミゲルたちの仇!!」
「どけぇ!!」
パワードは大出力ビームライフルを腰後部にマウントし、デュアルセイバーを展開してイージス目掛けて吶喊。
イージスもビームライフルでこれを迎え撃つべく攻撃するが、そのどれも当たらず虚空へと消える。
「なんて操縦捌きだ!!こいつはナチュラルなのか!?」
「邪魔だぁ!!」
瞬時にイージスの懐まで入り込んだパワードは、すれ違い様にライフルを切り裂いた。
武器をやられたアスランは啞然としながら、素通りしてキラが放り込まれた宇宙へと飛んでいくパワードの後ろ姿を見つめるしかなかった。
「何なんだ...奴は...。――っ!!そうだ!!キラが!!」
彼もキラが気掛かりと助けに行かねばと思った矢先、ヴェサリウスより通信が入る。
《アスラン、私だ》
「っ!!クルーゼ隊長!!」
《帰投しろ、アスラン》
「し、しかし!!」
まだ自分はキラを助けに行けてない――彼は何としても彼女をこの手で助けたいという気持ちによって冷静さを失っている。
だが通信越しにクルーゼの冷徹な声音が響く。
《帰還しろ、アスラン・ザラ――三度は言わんぞ?》
「っ....了解しました。アスラン・ザラ、帰還します....(キラ...)」
後ろ髪を引かれる思いでアスランは歯を食いしばりながら、ヴェサリウスへと帰還の途へと走る。
崩壊したヘリオポリス――それを外にいるヴェサリウスにでも観測していた、艦長のアデスは啞然としながら隊長であるクルーゼに振り向く。
「隊長...」
「.....」
しかしクルーゼはまるで一つも動じる様子が一切なく、只々この惨状に対して誰にも聞こえないよう一言...。
「フッ、無様なものだな?人というのは...フフッ」
そしてクルーゼは、静かに一人嗤った....。
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ヘリオポリスの崩壊から何とかアークエンジェルは無事であった。崩壊は防ごうと懸命だった彼らの想いは虚しく、中立のコロニーであるヘリオポリスは無惨な末路を遂げた。
コロニーという人工の大地を失い、重力すら無くなったことで艦内は無重力が起き、ブリッジではムウがCICの席から離れてもっと直にヘリオポリスの状態を確かめる。
そしてその末路の姿に彼は何とも言えない気持ちを抱きながら呟いた。
「こうまで、簡単に....脆いとは....」
マリューもこの惨状を目の当たりにし、自分たちの所為でこうなったのだと艦長席に着いたまま拳を握り、強く力を込めてしまう。
その間にもCICに着いているナタルが、通信でストライクとパワードの無事を確かめるべく呼びかけていた。
「――X105ストライク!!X00パワード!無事であれば応答を!!」
その宇宙へと放り出されたストライク...乗っているキラは、目の前の出来事に信じられないと眼の焦点が合わず、口元が震えている。
「そんな....ヘリオポリスが.....私たちの居場所が....壊れ....どうして....」
今までずっと平和だった自分たちの居場所がこうも簡単に崩れ、全て無くなった事にいつの間にか彼女は涙を流していた。
その彼女に呼びかける声が――
《キラ!キラ!!キラっ!!応答しろ!!》
「っ!!シンラさん!!」
彼女は急いで通信に返答する。シンラの声だと先ほどの悲しみから僅かな希望と嬉しさが込みあがる。
シンラも彼女の声を聞き、慌てる気持ちを抑えつつ無事を確かめる。
「無事か!?キラ!」
《はい!無事です!》
「いま何処にいる?座標を送れるか?」
《は、はい!》
すると直ぐに彼女がいる座標が表示された。彼は直ぐにでも其処に向かう。
「待ってろ、すぐ助けに向かう」
《はい...シンラさん》
「どうした?」
《私...シンラさんが無事で...嬉しいです》
「キラ....」
自分よりも彼のことを案じていたキラに、シンラは申し訳ないと感じる。ヘリオポリスは彼女にとって大切な居場所だったのにも関わらず、それを自分たち地球軍が此処でモビルスーツを開発などしなければこんなことにはならなかった――彼は自責の念を抱く。
「俺もお前が無事でいてくれて、嬉しい...キラ。すぐにいく」
《はい....》
通信を一度中断し、彼女がいる場所までパワードを飛ばすシンラはその道中である事を思う。
「どうしてしまったんだ?――俺は。なぜこうも感情が湧いてしまう...今までこんな事なかったのに...」
原因は何か分かる――彼女と出会ってからだ、自分の感情がこうもかき乱されるのは。シンラはそう考える、しかしだからといって彼女が悪いという訳じゃない。
寧ろ彼女を守りたい、守らなければ、守らねばならないという謎の激しくも強い使命感のような何かに突き動かされる。
そしてようやくストライクを見つけたパワードは、傍らまで近寄る。
「キラ!動けるか!?」
《はい、機体に問題はありません》
「アークエンジェルまで帰還しよう」
《はい》
二機はそのままアークエンジェルへと向かって飛ぶ。その最中、キラはコロニーから脱出した救命ポットがバーニアを吹かしながら離れていくのを、多数、見つける。
「あれって...」
《ヘリオポリスの救命ポッドだ。恐らくプログラムに従ってオーブ所有の別コロニーへと向かうんだろう》
「(お父さん、お母さん..無事だよね...?)」
一緒にヘリオポリスに住んでいた両親を思うキラ。その時、モニターに一隻のヘリオポリスの救命ポッドが宇宙空間を漂っていた。
「あれは...シンラさん!」
「確認した、ヘリオポリスの救命ポッドだ」
「何とか回収出来ませんか?お願いします!」
「....わかった」
キラの懇願を聞き入れたシンラは救命ポッドに向かう。
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一方、アークエンジェルはレーダーにてパワードとストライクの反応を確認し、無事なのだと安堵する。
しかし今後どうするのか、ムウはマリューにそれを問いかける。
「で、これからどうする?」
「本艦はまだ戦闘中です!――周辺にザフト艦の位置は掴める?」
マリューはオペレーターを務めるチャンドラが渋い顔をする。
「無理です、周辺に熱量を持つ残骸大量に多く...これでは」
彼の話を聞いてマリューは落ち込むが、ムウはそれはザフトもきっと同じだと諭す。
だがマリューはムウとは違って楽観的にはなれなかった、未だにザフト部隊は健在で恐らく自分たちを追撃してくるのは明白である。それはムウも分かっていた。
「まぁ、こっちには虎の子のストライクと俺のゼロ、そして一番真面で切り札になりそうなのは中尉のパワードのみ...艦もこの陣容じゃあ、戦闘はな」
現状の戦力では真面に戦うなど自殺行為であるのは、誰もが分かっている。
「最大船速で振り切るかい?」
「え?」
「かなりの高速艦なんだろ?こいつは」
「向こうにも高速艦のナスカ級がいます!到底振り切れるとは思えません!」
「なら投降するかい?」
ムウのこの言葉にマリューは信じられないと耳を疑う。投降すればアークエンジェルやストライクとパワード諸共全てザフトの手に落ちることになる、にも関わらずムウはそれも一つの手だという。
その時、ナタルの声がブリッジに響く。
「どういうことです!?そんなこと誰も許可はおりてません!!」
「バジル―ル少尉、どうしたの?」
「パワード、ストライク、帰投しました。しかし救命ポッドを一隻保持してきています」
マリューとムウは啞然とするが、その一方で救命ポッドを保持してきたパワードとそれに随伴しているストライクは、アークエンジェルの手前で待機させられている。
ナタルによって許可もなく救命ポッドをアークエンジェルに運ぶのを良しとせず、彼らに待機命令を言いつけた。
シンラはそれを聞くしかなかったが、キラはそれを聞き入れることは出来なかった。
「そんな!!推進部が壊れて漂流していたんですよ!避難した人たちが乗ってるんですよ!!」
それをナタルが真っ向から一蹴する。
「すぐに救援艦がくる。アークエンジェルは戦闘中なんだぞ!」
戦いが終わらぬ状態のアークエンジェルに避難民をこれ以上乗せるのは出来ない。だがキラはこのまま寒い漆黒の宇宙に漂流させるなんて出来ないと、それを拒否する。
「いやです!!このまま宇宙にほったらかしには出来ません!!」
「何を言っている!!避難民の受け入れなど許可できる訳が...!」
しかしそれをマリューは待ったをかける。
「いいわ許可します」
「艦長!?」
「こんなことで時間を無駄にしたくないの....シンラ中尉」
「はい」
「救命ポッドをアークエンジェルに収容して」
「了解」
マリューの指示の下、パワードはストライク共々アークエンジェルに帰投し、格納庫ブロックに入り救命ポッドを下した。
その間にマリューは自身の考えを口にする。
「状況が厳しいのは分かっています――ですが!投降しません」
彼女はそう強く言う。ザフトに決して自分たちが開発したアークエンジェルやストライク、そしてエイダたちが開発したパワードを渡すなど絶対にしたくないと宣言したのだ。
「我々は何としても、このアークエンジェルとストライクを大西洋連邦本部に届けなければならないのです」
その彼女にナタルが意見をする。
「艦長、私はアルテミスへの進路を愚考いたします」
「アルテミス?ユーラシアの軍事要塞でしょ?」
「傘のアルテミスか?」
ムウの問いかけにナタルは首を縦てに振る。アルテミス――地球連合軍加盟国ユーラシア連邦が保有する宇宙要塞だが、向かうにしても問題がある。
「でもアークエンジェルもストライクも未だ味方識別コードも持っていない状態よ、それを...」
「私とて、本艦とストライクが大西洋連邦の極秘機密であることは無論承知しています。ですが、このまま月の進路を取ったとて途中、戦闘もなくすんなり行けるとは、まさかお思いではありますまい。ドクターたちが持ってきてくれた物質のお陰で、この先何とかなりますが……しかしやはり限りはあります、なのでここはアルテミスに向かうのが良策かと……」
「そう、ね」
ナタルの言うことも一理ある。ドクターたちが持ってきた物質と言えどそれもこの先無限に在るわけでもない、それに友軍の助力もなくこの先単独で航行など難しい。
人員も満足に居るわけもなく、これでザフトと戦える訳でもないのだ。
「事態は、ユーラシアにも理解してもらえるものと思います。現状はなるべく戦闘を避け、アルテミスに入って補給を受け、そこで月本部との連絡を図るのが最も現実的な策かと思いますが…」
「アルテミスねぇ…そうこちらの思惑通りにいくかな…?」
ムウが懐疑的に言うが、しかしマリューは悩んだ末に今は、ナタルの策を頼りにしてアルテミスへの進路を取る事となった。
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崩壊してしまったヘリオポリスを見つめ、艦長であるアデスは呟く。
「このような事態になろうとは…いかがされます?中立国コロニーを破壊したとなれば、評議会も…」
「地球軍の新型兵器を製造していたコロニーの、どこが中立だ」
だがクルーゼはそれを冷酷にも一蹴する。冷たく容赦ない言葉にアデス以下ブリッジのクルー全員は言葉を詰まらせる。
「住民の殆どは脱出している。さして問題はないさ。”血のバレンタイン”の惨劇に比べれば」
「っ!?」
その言葉にアデスは息を飲む。自分たちは嘗て地球軍がやったことを結果的にも似た行いをしたのだと自覚する。
だが感傷に浸る暇はないぞとクルーゼは言う。
「敵の新造戦艦の位置は掴めるかね?」
「い、いえ、この状況では…」
オペレーターにアークエンジェルの動向を問いかけるも、ヘリオポリスの大量の残骸に熱を持つものが、夥しく漂っているせいでわからない。
しかしクルーゼは尚もあの船を追う意思を持っている、それがアデスを驚かす。
「まだ追うつもりですか?…しかし!こちらには既にモビルスーツは…」
「あるじゃないか。地球軍から奪ったのが4機も」
「あれを投入されると?!」
クルーゼは躊躇いなどない勢いで奪った機体を使うと言っている。
アデスは躊躇するように言うがーーしかしそんなの知ったことではないとクルーゼは、アークエンジェルの位置を把握するべく指示を下す。
「データを取ればもうかまわんさ、使わせてもらう。宙域図を出してくれ。ガモフにも索敵範囲を広げるように打電だ」
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その頃、アークエンジェルはアルテミスへ進路を向けるべく、ザフトの眼を欺く為に行動に移す。
「デコイ用意!発射と同時に、アルテミスへの航路修正の為、メインエンジンの噴射を行う。
その後、閑静航行に以降!艦の制御は最短時間に留めよ!」
マリューが指示する中、ムウが一人呟く。
「アルテミスまでのサイレントランニングーー凡そ二時間ってとこか……あとは運だな」
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アークエンジェルが行動に移した頃、宙域図の前で作戦を練っていたクルーゼとアデスに、突如索敵範囲に反応があったとの報告が舞い込む。
「大型の熱量感知!諸元解析予測コース、地球スイングバイにて月面、地球軍大西洋連邦本部!」
よし!!っとアデスは獲物が掛かったと意気揚々とするが、クルーゼは違った。
「そいつは囮だな」
「し、しかし!念のため、ガモフにも確認を!」
「いや、奴らはアルテミスに向かうよ。今ので私はいっそう確信した。ヴェサリウス発進だ」
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アークエンジェルでは、シンラとキラによって救出された一隻の救命ポッドより避難民を受け入れていた。
その中にはキラたちと同い年で同じ工業カレッジに在学しており、サイ•アーガイルの許嫁でもある少女ーーフレイ•アルスターは、キラとトールたちは再会する。
フレイはキラがモビルスーツを操縦することが出来ると知って、どうしてか問い詰めてきた。
「どうしてただの女の子の貴女が、モビルスーツなんて乗れるのよ!?」
「それは………」
何も言えずただ顔を伏せるキラ。そのキラの友人であるカズイ•バスカークが、余計な要らぬ一言を言う。
「キラはコーディネイターだからね、だから出来るんだよ」
「え!?」
「カズイ!お前!!」
これにトールは怒りカズイを黙らせるが、フレイはキラに対して懐疑的な視線を送る。
フレイの父ーージョージ•アルスターは地球軍の外務次官を務めると共にブルーコスモスにも所属する人物でもあった。
その父親の影響からか、コーディネイターに対して差別的な偏見を抱く。
同じ年の女の子同士だからか、フレイはキラに対して睨むようにするが、それをミリアリアが鋭い目付きで割って入って止めさせた。
「ならキラに助けられるぐらいなら、壊れた救命ポッドの方がマシだった?」
「それは……」
それを言われたらフレイはこれ以上何も言えなかった。
その後騒ぎを起こしてごめんなさいとフレイは渋々ではあるが、謝罪するとキラは「気にしないで」と笑みを浮かべる。
その時、シンラはムウとマリュー、そしてドクターエイダの三人と話し合いをしていた。
内容はやはりキラのことである。ナタルはマリューの代行で艦長席に着いているので、この場には居ない。
「それで中尉、俺らに話って....あの嬢ちゃんのことか?」
「はい」
彼の問いに躊躇なく答えるシンラに、ムウは「やっぱり」と頭を掻く。マリューは複雑な顔をし眼を伏せて、ドクターエイダが一切表情を変えずに彼に言う。
「その件はもう終わったはずよ?シンラ」
「ならこのまま、彼女に戦闘を強要させるのですか?それこそ酷でしょ」
エイダの言葉に反論するが、ムウが彼に諭すように言う。
「でもな?中尉――この船を守れるのは、俺とお前さんと、あの子しかいないんだぜ?確かに俺たちだって、民間人であるあの子に戦いなんてことをやらせて、申し訳ないと思うさ....でもな?俺はそうだし、お前さんだって無敵の存在!!ってな訳じゃないだろ」
「それは...そうです」
ムウの言葉には一理ある。自分は戦場で死神と恐れられてはいるが、だからといって戦争を早期に終わらすことが出来るスーパーマンではない。
「それにな?いずれまた戦闘になった時、今度はあの子にストライクに乗らせず艦と共に沈めて死なせる気か?」
「そんなことは!!!」
ムウの極端とも言える例え話に声を荒げるシンラ。その時、彼の肩に暖かい温もりが乗せられる――それは彼女、マリューの手だった。
彼女はシンラに悲しげで優しい笑みを浮かべている。
「艦長...」
「シンラ中尉...貴方の言いたいことは私も同じ気持ちです――でも今は、アークエンジェルや此処にいる人たちを失うわけにはいかないの...皆が生き残る為にも」
「....っ」
シンラの肩に乗せるマリューの手は、震えながら必死に彼の肩を離さないとばかりに強く力が込められている。
彼女もやりきれないと言う気持ちでいるのだ、シンラはそれが感覚的に気付き、これ以上何も言えなかった。
ならば話は終わりだなとムウはそこで退場する、ドクターエイダも自分の持ち場である格納庫へと戻ろうとシンラの横を通り過ぎようとした際――
「シンラ、貴方....随分感情が抑制できてないようね?なにが原因なのかしら?」
っとそれを言い残して去っていき、残ったのはシンラとマリューとなった。
2人はそのまま何も言わず、艦内通路を歩く。
「....」
「....ねぇ、シンラ中尉」
「は、はい」
「中尉はどうしてブルーコスモスに?」
突然の彼女からの質問、確かに彼女としては不思議だった。反コーディネイターの思想を抱く組織ブルーコスモスに、なぜ彼のような人物がいるのか?マリューはそれが疑問で仕方なかった。
するとシンラは――
「.....自分には、その、幼少期の全ての記憶が全くないんです」
「....え?」
いきなりの返答だった、だがシンラは話を続ける。
「身寄りもなく天涯孤独だったと、ドクターエイダが自分を引き取って育ててくれました。だからドクターが在籍しているアズラエル財団で従事するため、軍に入ったんです...恩返しと言いますか」
「....っ」
マリューは息を吞む、まさかそれほどの事情だったとは知らなかった。だがシンラはそんなの気にしていないと平気な素振りで言う。
「自分は別にその境遇に関してなんてことないと思っています。それにこの道を選んだ以上、俺は覚悟しています」
「中尉...」
「俺は戦う者としていつ死んでも覚悟はしています、だから――」
「それは違うわ、シンラくん!」
「え....?」
彼女はシンラの言葉を遮り、彼女は必死な顔で訴える。
「貴方が必死に戦ってくれたから、私たちやキラさんたちも生きてるの!だから死の覚悟なんて言わないで!!」
「艦長...でも、俺は」
その時、艦内アナウンスでチャンドラの声が響く。
《艦長、至急ブリッジへお戻りください!》
「戻らなくちゃ...じゃ、シンラ中尉」
先ほど中尉ではなく君づけで呼んだが、また中尉と呼び戻した。そして優しい笑みを浮かべてブリッジへと向かっていく。
彼女の後ろ姿を見つつ、シンラも一人歩く。
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その一方で、ヴェサリウスでは、隊長室に呼び出されたアスランが端末機に声を掛ける。
「アスラン・ザラ、出頭いたしました!」
「ああ。入りたまえ」
クルーゼの部屋に入ると、シートに座ったままの彼に敬礼する。それをクルーゼは手で制す。
「へリオポリスの崩壊でバタバタしてしまってね。君と話すのが遅れてしまったな。」
「はっ!先の戦闘では、申し訳ありませんでした!」
「懲罰を科すつもりはないが、話しは聞いておきたい。あまりにも君らしからぬ行動だからな、アスラン」
緊張した面持ちで俯くアスラン、彼は自分の言葉を待っているクルーゼは静かに見つめる。
責めることもなく淡々と質問する彼はアスランに問いかける。
「あの機体が起動した時も君は傍にいたな」
クルーゼに対してアスランは覚悟して話した。
「…申し訳ありません。思いがけぬことに動揺し、報告ができませんでした。あの最後の機体、あれに乗っているのは、…キラ・ヤマト!月の幼年学校で一緒に居た幼馴染で――コーディネイターです」
「.....ほう?」
アスランから語られた内容に、クルーゼは静かに興味深そうにしていた....。