─── 天石教 教義11条 ───
ドクター達がカジミエーシュの辺境──天石教本部に到着したのは、彼女達の提案から2日後の事であった
天石教側が迎えを寄越した車に乗り1日、そこから寝台列車で1日、辺境から伸びる鉄道網は段々とその範囲を伸ばしており、同時に天石教と言う宗教が、それ程までに力をつけたと言う事実でもある
カジミエーシュ側も把握してはいるものの、誰かが動く訳では無い。そんな事をしても得にならないし、自分達がやらねばならない事を勝手にしてくれるのであれば、何ら問題は無いと判断しているのだ
「見ろ!最初の子供達だ!!!」
ドクターと共に降りた2人を見た誰かが声を上げた。荷降ろしをしていた作業員も、引継ぎをしていた車掌も、物売りをしている子供までもが、その一言で一斉にドクター達の方を振り向いた
皆が手を合わせ、頭を下げた。一糸乱れぬ、まるで統率された軍隊のように頭を下げたのだ
ドクターの隣に居るアーミヤが一瞬だけ表情を曇らせる。これだけ多くの人が居て、彼女が感じ取る程に強い思念は、ただ1つであった
感謝。その思念ばかりが最初の子供達である2人に向けられている
「皆様ごきげんよう。そんな事なさらないで下さい、私達はあくまで皆さまを救う為の道具なのです」
「ああ、そのような事仰らないで下さい。最初である貴方達が居なければこんなに発展する事は無く、皆が鉱石病で苦しむばかりだったのです。この感謝も敬意も、貴方達に向けられるべきなのです」
彼女の言葉が告げられれば皆が顔を上げ、1人がそう告げれば一礼し、自分の仕事へと戻る
先程までの喧騒と賑わいが戻ってくる。アーミヤが気持ち悪さに酔いそうになるのをドクターが支え、アーミヤは小さくお礼を告げる
対する2人はさもそれが当たり前と言わんばかりにドクターの方へと振り向き、行きましょうかと告げた
倫理観の違いを突きつけられたような気分だ。善性ばかりが前面に押し出され、人の悪意を覆っているような感じだ
……いや、本来ならコレで良いのかもしれない。気持ち悪さを感じるのは、自分達が人の善性を信じきれていないからだろう
「行きましょう。運転手を待たせるのも良くありませんから」
2人の後をついていきながら、ドクターとアーミヤは駅構内を観察する。恐らくは今回の事件について嗅ぎ回っている記者であろう人々がフィーカを啜りながら記事を書き、源石交易に来たであろうスーツを着た男達がその隣で戦略を練る
駅前には多数の店が並び、行き交う人々に生鮮食品や加工品、土産物を買わないかと声をかけ、観光客らしき集団がソレに捕まっている
「どうぞ、ドクター」
真っ白な、教団のマークの付いた車であった。駐車区域であるにも関わらず、この車の周囲には誰も近づかず、同時に誰もその事に異を唱える事をしていない
アーミヤと共に車に乗りこみ、駅前から聖堂へと向かう
列車の時点で見えていたが、近付けば近付く程その大きさに圧倒される。聖都と呼ばれるに相応しい聖堂は白くそびえ立ち、聖都に来た者達を祝福している
最早圧巻の一言である。もしロドスが正式に支援を受けると言えば、天石教の下部団体とすら見られてしまう程に
「着きました。我等の家です」
聖堂から少し離れた場所にある、こじんまりとした家。もしかすると住宅街にある一軒家の方が広いのではと思える程の家に、彼は居た
「お久しぶりですね、ドクター」
嬉しそうに声を弾ませる教主は、庭先で優雅なティータイムを楽しんでいたのだ
次作を書こうと思いますが……
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天石教の続き(教主を更に追い詰める)
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他作(色々考えてはいます)