天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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正義の味方では無く 人の味方になりなさい

─── 天石教 教義9条 ───


14話

鎧の上から金棒で叩かれた殴打痕、盾で防いだが為に折れた左腕。何とか食らいつき、相手の目を潰そうとして潰された人差し指と中指、アーツを使用した為に上昇した血中源石濃度、それでも尚勝ちに行った彼の体はボロボロである

 

彼は中堅の部類であるが致命傷は絶えず、同時に、この裏騎士競技の壮絶さを物語っており、同時に、彼の生への執着も見せつける

騎士競技。カジミエーシュ独特の風土と共に育ってきたこの競技は今や商業連合によって汚染され、根本にあった騎士同士の誉れなど無く、ただのエンターテインメントとして落とし込まれたソレは、今やカジミエーシュの一大産業だ

 

その人気は国外にすら響いており、公に見に行けない者達が裏で興行とする程の人気だ

その為辺境ではこうした裏騎士競技が盛んに行われている。商業連合の手も届きにくく、騎士達が見回りに来る訳でも無く、敗れ去り、表舞台に上がれなくなった連中を連れて来ても文句も言われず、感染者を殺そうが誰も文句を言わない

 

ソコに来たのが教主と子供達だった。彼等はこうした事が行われているとは知らず、ロドスから救助のお礼として貰った医療キャンプ施設を村の近くに設置し、診療所を開設した

最初こそ村の人間だけが行く場所であったソコに、治療をして貰えなかった裏騎士競技の感染者が訪れた。村人は顔を顰め、彼に石を投げんばかりの罵詈雑言を浴びせた

当たり前の反応であった。自分も感染者になる前はあんな風に罵詈雑言を浴びせていたのだから。そんな事を考えていると子供達に呼ばれ、診察室兼治療室へと押し込まれた

 

教主は問診した後彼を治療し、手を握り、お疲れ様ですの一言を告げた。瞬間、彼は涙を止める事が出来なくなっていた。それまで溜め込んでいた全てを吐き出すように泣き、泣きながら後悔も無念も吐き零した。教主は何を言うでも無くソレを受け止め、感染者が泣き止んだ後、他にも居るなら連れて来て下さい、治療料金も余裕が出来たらで良いですよ、と告げ、そんな事を言われてしまった彼は深く深く頭を下げる事しか出来なかった

 

最早村人の罵詈雑言は気にもならなかった。彼は待合室に置いてあった冊子を1冊持ち、自らを待つ裏騎士競技場へと戻っていく

信仰に目覚めたと言う彼を最初は誰もが気持ち悪がり、近寄らず、早々に彼を殺す為だけの試合が組まれた

───しかし、彼は勝利した。体格も、武器も、防具も、全てが格上の相手に果敢に組み付き、金棒で殴り飛ばされようとも、盾ごと腕が折れても、目潰しに失敗して指が折られても、なんとか組み付いてアーツを使用し、鎧の内側から燃やす戦法を取って勝利したのだ

彼は気絶している処刑人の前に膝をつき、手を組んでブツブツと呟く

 

─── 感染者も非感染者も 同等の生活を ───

 

以後、彼は天石の使徒と名乗り始める。暇さえあれば自らと同じような感染者達を連れて診療所へと向かい、教えを広める為に村人と交流し、どれだけ罵詈雑言を投げかけられようが、彼は根気強く教えを広め、遂にはその教えは、村人を通じて外へと広がった

天石教───その始まりである

次作を書こうと思いますが……

  • 天石教の続き(教主を更に追い詰める)
  • 他作(色々考えてはいます)
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