天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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神に至った兄弟姉妹達の為に、他者を救い、他者を慈しむのだ

─── 天石教 教義13条 ───


15話

「このような時期に申し訳ない、ドクター。彼女達の茶葉が切れただけならペンギン急便でも使えば良かったのですが。ニアールは元気でしょうか?彼女とは喧嘩別れをしましたので……」

 

教主の対面へと座り、フードも外さず紅茶を飲む。フルーティな風味が鼻をぬけ、一息つくには丁度いい逸品だ

雑談ついでに昔のニアールの事を聞く。ニアールが騎士競技から引退した後、この辺境に辿り着いた彼女が、暫くの間自分達の警護を引き受けてくれたが、教主達のアーツとその利用法、そして少数を犠牲にする在り方で意見が食い違い、喧嘩別れをしたのだと言う

 

アーミヤはロドスに居た2人と共にティータイムを楽しんでいるが、意識は常にコチラに向いている。何かあればアーツを使ってでも教主を取り押さえるつもりだと言うのが分かる程に警戒している

何故彼女はそこまで警戒するのか以前考えたが、理由はシンプルだと気付くのに時間はいらなかった

少数を犠牲にして成り立つ平穏と言う物が許せないのだ。仮にその少数の犠牲が一時的であれば、まだ納得の余地もあっただろう。だがこの少数の犠牲は常に増え続け、この少数が多数になるのも時間の問題であると言うのに、それを甘んじて享受する多数が許せず、同時に、ロドスと言う組織の知名度の無さにも、未だ治療薬すら作れない自分達にも、そして自分達ですらこの少数の犠牲に頼らねばならない時がある事にも怒っているのだ

故に警戒する。もしロドスが治療薬を作れなかったら。もし天石教が救いになってしまったらと考えて

 

「ドクター、是非とも貴方のお力を貸して頂きたい。この事態を打開するには、どうしたら良いのかをご教授して頂きたいのです」

 

きっと、このサルカズの男───教主は、以前のドクターに会っている。あの2人を通じてドクターが記憶喪失だと言う事も知っていながら、決断力や事態打破の力量が全く鈍っていない事を知ったが故に、助けを求めたのだ

無論、断る事も視野に入る。助ける義理も無ければ、手を貸す理由も無い。仮に助けた場合、彼は有形無形を問わずロドスを支援する事を約束するだろう

そうなると困るのはロドスの在り方となる。天石教に支援されるロドスとなってしまえば、傍から見れば天石教のフロント企業でしか無い

メリットは知名度の向上、無尽蔵とも言える予算、あらゆる場所での拠点の確保、あらゆる人員の増加が上げられる。困った事にロドスからしてみれば喉から手が出る程に欲しい物ばかりである

デメリットはロドスが少数の犠牲を容認しなければならなくなると言う事だろう。彼等のしている事は対症療法でしか無く、ロドスの在り方として絶対に受け入れてはならない。上記のメリットが霞む程の事だ

断った場合はどうなるだろうか。遠からず各国の軍隊はトレイターズによるテロを完全に制圧し、天石教を目の敵にした弾圧と虐殺が始まる

そうなれば彼等の保護している貧者は虐殺され、感染者は弾圧される。逃げ延びた者達はレユニオンよりも恐ろしい、地下に潜ったテロ組織になる事も容易に想像出来る

詰まるところ、断る事が出来ない。軍に被害があるものの、未だ一般市民の危機感が無い今の時期だからこそ、この事態は収拾する事が可能なのだから

 

「直ぐに行動しよう」

 

「勿論です。して、どのような事を?」

 

「教主。貴方を軍の最前線に連れていく」

 

ドクターの突拍子も無い一言は、アーミヤを含めた全員を振り向かせるのに十分であった




コメントは全て読ませて頂いております。ご感想ありがとうございます

次作を書こうと思いますが……

  • 天石教の続き(教主を更に追い詰める)
  • 他作(色々考えてはいます)
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