天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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常に教義を胸に留めよ。さすれば正しい道へ進めるだろう

─── 天石教 教義28条 ───


18話

───その日は、珍しく忙しかった事をよく覚えている

警備員としての仕事では無く、子供達の遊び相手として忙しかった。見回りのお姉さんとして親しまれ、遊びに誘われる事はあれど、仕事があるからと断れば引き下がる子達だった

だが、今日は引き下がらなかった。何でも思い出作りの1つだからと押し切られ、私は子供達との遊びに興じる事となり、今はかくれんぼで鬼をしている

 

「見つけた」

 

隠れるのが下手な子も居れば、軍人顔負けの潜伏能力で完全に自然と一体化していた子まで。正直本気で探さなければ見つけられなかったと思う

子供の体力は無尽蔵だ、なんて言うのはどうやら本当らしい。休憩の為の時間ですら子供達は鬼ごっこをして遊んでいる

不思議なのは、今日に限って子供達の押しが強い事だ。いつもなら一定の距離を取るような、仕事の邪魔をしたらいけないぞ、と年長の子が宥めているのが嘘のように無邪気に遊んでいる

 

「今日は…私を誘ったが、何かあるのか?」

 

遊び疲れたのか肩で息をし、大の字で寝転がっている男の子に声をかける。歯が抜けたばかりなのか、上前歯の無い口でニッと笑いながら、楽しそうに話してくれた

 

「あの子が巫女になるんだよ!」

 

巫女。教主や最初の子供達が言っていた単語だった。詳しい話を聞こうにもはぐらかされ、終ぞどのような物かを聞いていなかった

寝転がっている子供の指の先に居るのは、この中でも比較的重症と言える感染者の子供だった

巫女。神への役割を担う何か。詳しく話を聞けば、巫女や神子に選ばれた子達は別の場所に送られ、特別な教育が行われながら天石教にとって重要な役割を担う、らしい

騎士としての勘か、それとも教主や最初の子供達の怪しさからか、私は彼等を信用しきれて居らず、その特別な教育を見なければならないと考えていた

 

翌日、巫女に選ばれた少女が車に乗せられるのを皆で見送った。行先は建設中の聖堂だと言う事を聞き、夜間警備員との交代後に聖堂へと足を運んだ

建設中の聖堂と言えど既に1階と地下は完成しており、月明かりに照らされた純白の聖堂は、蒼く発光しているようだった

 

「ニアールさん?聖堂を見にこられたんですか?」

 

ヘルメットを被った、猫のような現場監督から声をかけられる。事務仕事終え、現場の確認を終えた後らしく、その足は自宅へと向かっていた

声をかけたのも珍しかったからだろう。普段は此処に来ず、町を歩いて地理を把握する事に勤しんでいるのだから

 

「1階と地下が完成したと聞いて、見てみたくなりまして。巫女になった子が此処に来たのもあって、つい」

 

「今日の現場作業も終わってますし、今しがた不安定な場所が無いかの確認も終わりましたので存分に見て行って下さい。ヨシッ!」

 

ずっとヘルメットを被っているが問題ないのか。なんて言葉を飲み込み、自宅へと歩いていく彼を見送る。コレで、この聖堂に居るのは巫女や神子達だけである筈だ

───此処にあってはならない、商業連合の車を見つけるまでは

 

地下空間は、感染者が死亡して源石爆発を起こす際に隔離する隔離部屋、重症感染者達の居住及び娯楽空間、祝福室と書かれた3つの部屋しか存在していない

孤児院へ帰れ。何も見なかった事にしろ。頭の何処かでそんな警鐘が鳴るのを押さえ込み、足音を立てないように歩き、祝福室から漏れる明かりの原因を探る

 

「コイツは新進気鋭の騎士なんですがね。馬鹿な奴がコイツの部屋に源石粉塵を撒いて感染者にしやがった。燿騎士以降感染者の騎士も認めるべきって言われますがね、圧力はまだ残ってるんで、治療を頼みに来たんです」

 

「…………詮索はしません。この人が感染者になったと知ってる人は他に居ないのですね?」

 

「ええ。実行犯は消しましたし、コイツが感染者になった事を知ってるのは私とコイツと教主サマと……コイツを感染者にしようとした奴だけです」

 

3人の人物が話し合っている。声色で分かるのは教主だけで、後の2人は分からない。だが話の内容から考えるに、騎士とそのマネージャーだろうか

扉を少しだけ開ける。音が鳴らないのは建付けが良いのと新品だからだろう、彼等は気付かずに話を続けている

そして、眠い目を擦りながら教主と手を繋いでいる、巫女として今朝連れていかれた子供を視認してしまった

 

「教主様ぁ、眠い……」

 

「スグに終わるから、もう少しだけ我慢して貰えるかな?」

 

教主が空いている片手を差し出し、騎士の手を握る。淡い発光と共にアーツが使われ、騎士の身体から赤色の何かが抜け、巫女の身体へと入っていく

教主の手が騎士から離れれば、騎士は両手を見つめた後、身体をゆっくりと動かし、自らの身体に不調が無いのを確認する

 

「凄い……本当に治ってる…」

 

「相変わらず凄いアーツで。ほら、さっさと行くぞ……寄付金は此処に置いておきますよ」

 

机の上に置かれた紙袋を確認し、教主が私の覗いている向かいの戸を開けて階段へと誘導する。騎士とマネージャーが出ていったのを確認し、教主は咳き込みながらも寝入った巫女を感染者用のベッドに寝かせ、そっと頭を撫でた

 

「……ニアール、覗くのならもう少し殺気を抑えた方が良い」

 

2メートルはある体躯を、ニアールは隔離部屋へと殴り飛ばしていた

次作を書こうと思いますが……

  • 天石教の続き(教主を更に追い詰める)
  • 他作(色々考えてはいます)
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