─── 天石教暗部 訓示第3条 ───
教主には、優秀な男性秘書がついている。教主自身は"そんなに忙しく無いから必要無い"と言うが、秘書の能力に助けられる場面が多々あった為、最近では頼りになる優秀な秘書として紹介するようになった
商業連合内ですらこの秘書の事を欲しがる輩は少なく無い。教主に相応しく無いものが2つある。それは教主の地位と秘書だ、と言うのは1種のジョークとしてすら通っている程に、この男は優秀だ
ライル・モンソン
男でありながら一瞬女と見間違える程の美貌を持ち、教主の秘書であり、運転手であり、護衛であり、友であり、天石教内のあらゆる仕事の割り振りを任され、新聞等の情報媒体を統括し、間諜を纏め上げる元某国のスパイだ
現在は改心(?)した為、教主の優秀な秘書として活躍している。その活躍は秘書としては1分のズレも無くスケジュール及び突発的な事すら完璧に対処し、護衛としては暗殺チームを単独で捕縛し、仕事の割り振りはトラブル等への対処も含めた人員の手配までする
あらゆる事に精通していながらも教主を支える以外に興味は無いと明言している為にあらゆるスカウトに応じず、常に秘書として教主の傍らに立っている
が、そんな彼にはとある噂がついて回っている。曰く"偏執的なまでの男色家である"と
国家によっては、男色と言う物は死罪に値する刑罰である。カジミエーシュにおいても男色家と言うだけで忌避される物であるし、罰則は無いにせよバレたら差別されるような事柄の1つだ
ある時、勇気ある1人が彼にその事を聞いた。彼は一瞬呆然したかと思えばクスッと笑い、指を口に当てウインクしながら「ご想像にお任せします」と一言だけ告げたと言う
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AM5:59 深呼吸して気持ちを落ち着かせる。教主様の寝室をノックするのはいつも緊張する為、この1分間を精神統一に使う
まるで恋焦がれた恋人にでも会うかのような緊張。ここに来るまでに何度も確認した自らのスーツに不備が無いかを確認し、ふぅ、と息を吐く
6時になった瞬間、部屋の戸をノックする。部屋の中からモゾモゾと布の擦れる音がするのを聞き今日もきちんと起床なされた事を確認する
「どうぞ……」
眠気の含まれた無防備な声。部屋の戸を開ければ教主様がベッドに座っている
秘書である自分だけの特権。自分だけが見れる無防備な教主様。眠そうに欠伸をして目の端に涙を浮かべるその姿。此方を見ては優しく微笑みかけ、おはようと言う優しい声
隆起しそうになる自らの心と身体の1部を何とか抑え込み、極めて冷静な態度でスケジュール帳を取り出す
「おはようございます、教主様。本日のスケジュールですが……」
教主様は同性である自分の前だからと言う理由で、着替えをなさる。スケジュールを眠い頭で聞き流し、背中を向けながら散歩用の服へと着替えながら身嗜みを整える様に、思わず恍惚の笑みを浮かべてしまう
源石結晶の浮かんでいるその背中に抱きついて頬ずりしたい、と言う欲望を抑え込んで話を進める。スケジュールを話終えると同時に、教主様は着替えを終えて此方に振り向く
「よし……ライル、毎朝悪いが付き合って貰えるかな?」
「勿論です、教主様。本日はどのルートを通りましょうか」
日に日に拡大を続ける聖都は、毎日が拡張工事の繰り返しだ。教主様はそんな現場に赴いて朝早くから来ている職人や従業員に声をかけられる
今日は北西側を散歩なされるようだ。大きく伸びをしながら歩き始める教主様の隣に立つ栄誉をその一身に受けながら、散歩へと向かう
「日差しが気持ちいいなあ……」
「ええ、本当に……教主様の祈りが天に届いておられるのでしょう」
そんな事はないさ、なんて自虐的に笑う教主様に曖昧な笑みで返し、歩幅の大きい教主様に合わせて此方も歩く
新聞を配り終えて一服する者。深夜勤務から帰る者。偶然通りかかった者。通勤する者。平等におはようと声をかけ、皆からおはようございますと返される。慕われながら飾らず、皆の事を考える教主様の隣に立つ事を許された優越感に心と体が震える
1時間かけて散歩を終え、じんわりと汗ばんだ教主様にタオルを手渡して教主様の散歩用の服と共に回収する
芳しく香る教主様の匂いに欲情して下着が濡れてしまいそうになるのを、鋼の意思を持って押さえ付ける。この欲情を発散するのは自室に戻った時だ
教主様と一緒に朝食を頂く。吸い込まれていくスープを見て自分のモノが隆起しそうになるのを抑え、雑談に花を咲かせる
以後 執務及び医療に関しての為割愛
教主様を寝室へとお見送りし、私も自室に戻る。部屋の扉を閉め、誰も近くにいない事をしっかりと確認し、私はリビドーを……【この後は汚れていて読めない】