─── 天石教 教義23条 ───
ロドス艦内、医療区画の末端。そこには小さな教会が建っている
掲げられている看板には天石教ロドス支部と書かれてはいるものの、中にあるのは小さな机と一対の椅子だけであり、御神体のような物は存在していない
常駐している人間は居らず、利用の際にはベルを鳴らして下さいと書かれているソコは、ロドス内部にて議論の的となっている
曰く、ロドスに対する挑戦状。曰く、鉱石病治療の根源を濁らせる物。曰く、人類と言う物を象徴する物
最早この教団の事を語るのはロドス内においてはタブーと言っても過言では無い。しかし、ドクターもアーミヤも常に例外はあるべきとの理解を示し、この教会を置く事を許可している
何よりも、利用価値が高過ぎる点が挙げられてしまう故に、物事を冷静に見れてしまう人間は、この教会の存在を認めざるを得なくなる
チリンチリンと音をさせ、ドクターがベルを鳴らす。医療区画から修道服を纏った2人の女性がやってきては、ドクターに対して一礼する
定期的な言動チェックだけは必ずして下さい、と言うのはアーミヤの言である。この2名は鉱石病患者であると同時に、非常に優れたアーツの使い手であり、外科医だ。彼女達は、教主たるサルカズの男性から医学と医療を教授されており、更には鉱石病への理解も深い事から、ロドスにおいて医療区画内での処置や治療を行っている
教会内へと案内され、ドクターは椅子へと座る。対面に座った女性がにこりと微笑み、もう1人の女性は紅茶を淹れている
「今月は誰も来られませんでしたよ。ロドス内では異端だと自負していますが、それでも誰も来ないのは素晴らしい事です」
最初の子供達。彼女達は教団内にてそう呼ばれている。教主自らが手塩にかけて育てた子供達の呼び名であり、教団内においては幹部として見られる存在
ロドスの事を尊敬していると言う教主の言葉は嘘では無い。事実として幹部である2人を寄越しているし、教団としてもスポンサーに着きたいと宣言もしている
しかし、ドクターもアーミヤも、更にはケルシーまでもが一致してその提案を断っている。相容れない事が分かっている事、自らの信徒を犠牲にしている事などが上げられるが、教団の力をこれ以上強くしたくないと言う理由もある
多額の寄付金が彼女達を通じてされているのも知っている。戦場において教団員がロドスのオペレーターを救っているのも、レユニオン構成員を治療して非感染者へと変えているのも、全て事実だ
そして、それらを知っているが故に、教団とは相容れない
「それは良かった。君達の活躍も聞いているよ」
ドクターから要請されれば彼女達は戦場へと赴く。戦場において彼女達の存在は酷く重宝される。戦場や現場で鉱石病の治療をせねばならない時、彼女達がアーツを使うだけでその治療を先延ばしにしたり、軽度であれば彼女達が完治させる事すら可能である
それ故に、現場に赴く際のオペレーター達からは彼女達を要請する声が多々上がる。しかしドクターにとって、彼女達を要請すると言う事は、ロドスと言う企業理念の敗北とも捉えている
「ありがとうございます。ですがまだまだ精進を続けねばなりません。ここから帰った時に信徒達へ教えられる事をもっと増やさないと」
教団は鉱石病治療だけが取り柄では無い。貧民であれ富裕層であれ、信徒であれ他者であれ、外科治療や投薬治療を行ったり、炊き出しを行ったりと慈善団体としても有名である
貧民は信徒となり、毎月一定額を納めて治療をして貰う。富裕層は繋がりがいらない場合、一括払いにて治療をして貰う
足のつかない治療は、誰だろうと欲しているのだから
ロドスに来ているのも慈善事業の一端と言うのが顛末であり、事実だ
「そうか。感染者への治療だけでなく普通の人への外科治療もできるようになるのはいい事だ」
ドクターが紅茶を飲み干して立ち上がる。目の前に座っている女性に背を向け、教会を出ていく
これ以上ここに居られない。長く居れば居るだけ自分が汚染されるような気分になり、彼女達に懺悔しそうになる自分が許せないのだ
端末からアーミヤへと報告しながら、ドクターは足早に執務室へと戻っていく
「「本当に、せっかちな人ですね」」
呟く2人の言葉は、誰にも聞こえない
次作を書こうと思いますが……
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天石教の続き(教主を更に追い詰める)
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他作(色々考えてはいます)