天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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使徒に栄光あれ


7話

「使徒様、続々と摘発されています。そろそろかと」

 

「そうか。中々持った方だな……教主様、我々は動きます」

 

「……何をするつもりだ?ここまでは予定調和と言わんばかりだな」

 

本部らしき廃教会。その玉座に鎮座する教主の前に頭を垂れるストレイドは、作戦が第2段階に移った事を報告し、それと同時に、これから起こる事への許しを乞う

 

「教主様。我々は使徒で御座います。使徒の役目は他者に信仰を扇ぐこと……我々がいまからする事を、お許しください」

 

「許さん、と言っても君達はするのだろう?……テロか」

 

「はい。教主は我々が攫ったと明言しながらテロを起こします。それを天石教及び各国の警察が我等を鎮圧するでしょう……そうすれば、我々の目的はほぼ完遂と言っても過言ではありません」

 

「自分達はあくまでテロリストであり、天石教は関係無いと言うのか?成程、これまでの事はすべて布石か。自称下部組織を作り続けて、天石教側は被害を受けている様に見せかける……そして自分達が最後の自称下部組織として大規模なテロを起こして鎮圧され、民衆と各国の溜飲を下げ、終息とする……」

 

大筋としては出来上がっている。後は最後のピースである自分達がテロを起こす事。ストレイドはゆっくりと頷いて、顔を上げる

その目にあるのは覚悟であり、決意であり、そして最期を迎えようとする男の顔である

困った、こう言う男はどんな事を言おうとやり遂げる顔だ。きっとどんな事を言おうと止められないし、盲信している顔だ

 

「教主様。私は確かに悪を成します。聖都にも、カジミエーシュにも、他国にも、テロを起こします。少なくない数が犠牲になるでしょう。ですが、これで天石教は更に拡大する。カジミエーシュ政府と肩を並べる程に」

 

「私はそんな事を望んでいない。私はただ、あの子たちと暮らしていける程度なら……」

 

そんな事はもう、叶わない。天石教の規模は大きくなり過ぎて、最早小さな国家と言える程の規模になっている

聖都だけでなく、各国に信者がいる。蜂起を促せばレユニオンよりも大規模な国家転覆が可能になるだろう

……だが、それでも。我々はそんな事をしないのだ。してはならないのだ

もうあのような地獄は見たくない。ああ、師匠に頭を垂れてこの首を落として貰えればどれほど楽だろうか

 

「教主様、もう遅いのです。全てが遅いのですよ」

 

─────────────────────

 

「さあ吐け!!お前達の目的はなんだ!!」

 

自白剤を投与して30分。目も虚ろな男に詰め寄りながら、それでも尚情報を出さない男に対して、刑事は激怒していた

絶対に何かを知っている。だと言うのにこの男はその精神で耐えている。それが許せなかったのだ

 

「へ、へへ……は、話してやるよ。俺達はな、テロを起こすんだ」

 

「さっきからずっとそう言っているだろうが!!そのテロを起こす場所を……」

 

大きな爆発の光が、取調室の窓から差し込んだ。間違いなくアーツによる爆発であり、カジミエーシュ移動都市の真ん中で、ソレは発生したのだ

爆風によって窓が割れ、咄嗟に防御姿勢をとった瞬間、同じく尋問を行っていた天石教警備部の人間に押し倒され、庇われた

署内に警報が鳴り響く。粉塵が巻き上がり、庇ってくれた男の息は浅い

 

「おい……おい!!クソ、これがお前の望ん……」

 

尋問されていた男の身体には、多数のガラスが突き刺さっていた。恍惚の表情を浮かべながら、爆発によって発生した煙を見上げている

出血が酷い。まるで噴水のように血を噴き出す男にかける言葉は無く、庇ってくれた男を持ち上げる

とにかく病院に。助けてくれるか?こんな状況で。そんな考えが頭の中を駆け巡る。そうだ、アイツらなら助けてくれる

 

「おい!!怪我人だ!!俺を庇って……」

 

「そこにうつ伏せに寝かせて!!ガラスには触ってないですね!?粉塵を吸い込んだりは!?」

 

我々の会議室だった場所は既に緊急治療施設へと様変わりしていた。天石教の警備部も、署内に居た常駐医も、全員が慌ただしく動いている

大量の書類が置かれていたであろう机に男をうつ伏せに寝かせ、改めて惨状を把握する。ホワイトボードには現状把握出来ている怪我人の数や怪我の度合いが書かれており、必要な治療道具の一覧まで書き出されている。だが、今俺達のする事はコレじゃない

 

「行って……ください。奴等を捕まえて、法の裁きを与えるんです」

 

自分を庇った男が意識を取り戻した。噎せ返るようにヒューヒューと浅い呼吸をしながら、その男は俺に手を差し出していた

───俺は、誤解していた。コイツらは、本当に俺達に協力してくれていたんだ

敵は奴等だけだった。コイツら(天石教)は潜在的な敵なんかじゃ無かったんだ

俺は、差し出された手を強く握っていた

 

「ああ。必ず法の裁きを与えてやる。だから死ぬなよ、お前の淹れたフルーツティーをまだ飲んで無いんだからな」

 

そんな軽口を言い終えれば、すぐにラケルが飛んできた。長い髪は上でまとめあげられており、男の服を切り裂いて傷を見る

男の意識が再度途絶え、手の力が抜ける。だらんと垂れる腕を見ては、意を決して背を向ける

 

「貴方の生き様に、せめて加護があらんことを」

 

ラケルの一言に見送られ、俺は無事な騎士連中や警官を集め、事態の鎮圧へと向かっていた

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