天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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天石教に栄光あれ


8話

「ドクター伏せて!!」

 

思わず頭を下げる。アーミヤのアーツが武装した使徒を名乗る者を穿ち、無力化する

頭を上げ、逃げる為に走る。アーミヤの速度に追いつけない自らの体力の無さに辟易しながらも、頭は常に回転している

 

レユニオン以降、龍門はスラムへの締め付けを厳しくしていた。だが天石教によって治安の改善や教育が行き届き、段々と歩み寄れるかと思われていた時、自称天石教下部組織によって近衛局が襲撃された

身体に爆弾らしき物を巻き付け、使徒に栄光あれと叫び、自爆する

それを合図として他の構成員が市民を襲う。棍棒で殴りつけ、マチェットで切り刻み、その行為は最早テロと言う他無い

レユニオンの再来か、と誰もが考えた。だからこそ行動は早かった。近衛局内で無事であった隊員達が即座に隊列を組み、テロ犯達の制圧にかかる

連携力の高い近衛局にとって散発的なこのテロの鎮圧は手馴れたものである。事実として次々と鎮圧しているのだが、それでも爆発は収まらない

何人かかなりの手練が居るらしい。どうやらこのテロはかなり計画されていた物のようだ

 

「大丈夫ですかドクター、もうすぐ戦闘オペレーターの人達が来ますからね」

 

「大丈夫だアーミヤ。やはり近衛局は優秀だよ」

 

統制を保って動く彼等をみながら胸を撫で下ろし、安全の確保された広場に入る。負傷者が多く、天石教の信徒らしき人物達が処置を行っている

正規の医者では無いにせよ、彼等の処置は的確だ。アーミヤと共にその輪に加わり、改めて頭を回転させる

話によればカジミエーシュ、ヴィクトリア、聖都でも同様のテロが起こっているらしい。ヴィクトリアは戦士達の活躍によって鎮火に向かっているらしいが、聖都とカジミエーシュはかなり長引いているらしい。コイツらは下部組織と言いながら自分達が頭になりたい、とでも思ったのだろうか

狂人の思考は分からない。しかしトレースは出来る筈だ

 

アーミヤに指示された通りに患者の足を抑え、骨折している箇所を固定する。何故ここまで大規模なテロを行う?聖都で行う意味は?これではただの無差別テロでしか無い

それが目的だとしたら?最初から天石教にさらに信者を集める為の工作なのだとしたら?

天石教も被害者であると見せる為にわざと暴走しているような状態。天石教が正式に下部組織を認めないと宣言したからこの暴走が起こったと言う事にする為?だとすれば辻褄があってしまう。教主を攫ったのは自分達であり、自分達を認めなければさらにテロを行う、と先程から映像で流れているのはその為か

 

「ドクター、処置が終わりました。次に移ります」

 

「……ああ」

 

そうか。全て演出か。だとすれば彼等は排除される事が目的なのだな

……その後天石教は解体すべき、なんて運動が起こる事は無視して

 

─────────────────────

 

1人の女性サルカズが、カジミエーシュの街中を歩いている。皆が爆発から逃げる中、とある場所へと向かって歩を進める

特徴的なのは黒いローブを身にまとっている事だろうか。今の状況から見れば、彼女が死神だと言われても誰も疑わない程に、その姿は不審であり、同時に不気味である

導かれるように歩き続けたその場所にあるのは、廃教会。このテロの主導者であるストレイドと、その近衛が居る最後の場所

三回扉をノックすれば、僅かに開く扉。力で強引に開ける事も出来るであろうが、彼女はそんな事をしない

 

「ストレイド氏と、教主様にお話が」

 

「そんな奴は居ない、帰りな」

 

扉が閉められそうになれば、杖を挟んで扉を閉めさせない。少なくとも、こんな時位しか彼とは話せないからだ

 

「そこをなんとか。少しお話があるだけですから」

 

「力強っ……クソ!!!」

 

「良い。入って頂け」

 

その一言があれば、近衛は即座に力を緩め、扉を開けた。根気よく整備したのか、扉は開閉時に音の1つすらしない

中はまるで祭壇のようだった。教主が座っている玉座の隣に立つ男が、ストレイド氏だろう

 

「招かれざる客、と言うものですね。お噂は聞いております、シャイニング様」

 

「このような時しか来られないと思いまして。不肖の弟子に会うのもあまり良くないのですが」

 

ストレイドが教主の前に立とうとするのを教主が手で制し、玉座から立ち上がる

ゆっくりとした足取りで自らの元師匠の前にまで行き、膝をついて頭を垂れた

 

「お久しぶりです、師匠。話したい事がたくさん……たくさんあるのです」

 

「そうですね、私も話したい事が沢山あります。今くらいしか話は出来ませんから」

 

ストレイドが剣に手をかける。近衛の空気が張り詰め、全員が武器を握り締める

この中において、当たり前のように話すのは2人だけだ

ピンと張り詰めた空気の中、2人だけが、ティータイムで話をするように話をしている

 

「俺は……間違っていたのか?天石教を生み、トレイターズを生み、彼等を生んでしまった私は……ただあの子達と一緒に暮らしていければ良かった俺は、間違っていたのか」

 

「その答えを私は持ち合わせていません。ですが……傭兵であり、人の命なんて石ころ程度にしか思って居なかった貴方が、あの子達を助けると言った時。私は凄く嬉しかったのです」

 

「…………師匠、俺、は」

 

「このテロも、トレイターズも、決して許される事ではありません。ですがそれ以上に、貴方のその背には多くの命が乗っている。それでも。全て投げ出したいと乞うのであれば───」

 

シャイニングの剣が抜かれようとした時、ストレイドが割って入った。剣を向け、真っ直ぐとシャイニングを見つめる

そんなのは許さない。この人はこの地獄の清涼剤だ。この世界の止まり木だ。この人は救いだ。私の救いだ。あらゆる言葉が喉から突いて出ようとするのを押さえ込み、口を開く

 

「……お帰りだ。丁重にお返ししろ」

 

「嫌だ……嫌だ!!師匠!!頼む!!!お願いだ!!!!せめて、せめて俺を……!!!!」

 

教主であった男が近衛に取り押さえられる。ストレイドはシャイニングから目を離す事すらしない。瞬きすらしないその目に宿っているのは、狂信である

取り押さえられ、注射によって眠らされた愛弟子を見ては、シャイニングはストレイドに背を向け、何も言わずに出口へと向かった

 

「せめて、彼の道行きに幸多からんことを」

 

「教主様の行く道は我々よりも酷い地獄ですよ」

 

扉が閉まると同時に言われた言葉を聞いて、シャイニングは愛弟子を楽にする事が出来なかったのを、少しばかり後悔していた

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