─── 天石教 教義 第1条 ───
末期の子供たちに話しかける。君たちはもうじき死ぬ。助ける方法は無い。だが自分のアーツでなら君たちを犠牲にして他の子たちを助けられる
きっと痛みを伴うだろう。きっと私を恨むだろう。だが君たちの犠牲で、多くが助かるんだ
「──────」
最早声も出せない。子供たちはただその目に涙を浮かべ、ゆっくりとうなずいた。自分たちの最期と言う物がこんなところでなんて考えても居なかっただろう
いや、親に捨てられた時にこんな最期は予想していたのかもしれない。体から突き出している源石結晶を撫で、彼らの身体にまだ動ける子供たちの鉱石病を移していく
苦しむ声を聴きながら、謝るしかできなかった。声も出せない彼らに押し付け、多くの子供たちを救うために犠牲を強いている
1人がこと切れ、2人がこと切れ……全員分の鉱石病を移し終えた頃には、末期の子供たち全員が亡くなっていた
シャイニングの置いて行った食料も、水も、何もかもを纏め、数人にまで減ってしまった子供たちの頭を撫でる
自分にはこの子たちを育てる事が出来るのだろうか、シャイニングのように見捨てて行った方が楽だったかもしれない。そんな事ばかりが頭の中を駆け巡り、もしもだけが先行する
「ぐっ───!!」
アーツを使いすぎてか、それとも普段使っていなかったからか、教主が自分の身体を押さえてうずくまる。激痛と判断するのは容易であり、子供たちはどうするかパニックを起こす
1人が、教主がやっていたように手をかざす。アーツの事なんて分からないのに、まるで誰かに教えられたかのように手をかざして、アーツを使い始めた
子供たちに分散されていく自らの鉱石病。シャイニングすら見落としていたこのアーツの副次効果は、このアーツを使われた感染者(非感染者)は教主と全く同じアーツを使えるようになる
そしてこれこそが、教主が教主たる理由となってしまった
廃墟から二日ほど歩いた、小さな集落。教主たちがやってきたのにすぐに気づいた彼らは、怪しさ満点の彼らを追い出そうとする
しかし仮にもサルカズ。2mはあろうと言う体躯は集落の住民たちに手出しをさせない程の威圧感を放つ
「ここから出ていけ!!食い物も何も無いぞサルカズ!!」
投石。住民の一人から投げられた石を片手で握り潰し、自らの鉱石病が完治はしていないものの軽度になっている事に感銘を受け、子供たちの一人の頭を撫でてから、目の前の男が向けてきている槍を掴み、男を一気に引き寄せる
誰もが息を呑んだ。この男は子供たちの為にこの集落の人間を皆殺しにして食料も何もかもを奪うのだと理解しながらも、人質とされた男の動向を見守るしかなかった
「……鉱石病に感染していますね?」
「な、なんでそれを……」
ぼそぼそと他の住民に聞こえないように話すサルカズは、片手を男に、片手を子供の1人へと置き、アーツを使いはじめた
マントで見えはしないが、アーツを使って何かをしている事は理解できた。発火するのか、溶けるのか、凍るのか、誰もがそのアーツの動向を見て、逃げるかどうかの算段を組み立てていく
「これで治りましたよ」
その一言と共に、最近になって咳を発症した男は解放された。男のなんともない表情と、喉を触りながら病状を確認する姿に、思わずどよめきが広がる
「皆さん落ち着いて下さい。私は医者で、この子達はその見習いなのです」
最初の子供達。その誕生と同時に、彼の教主としての1歩がここから始まった
次作を書こうと思いますが……
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天石教の続き(教主を更に追い詰める)
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他作(色々考えてはいます)