天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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この地獄のような世界で この人だけが我等を導いてくれる

─── とある信徒の手記より ───


9話

『ようやく判明しました。今回のテロで唯一動いてない騎士はストレイドです。検挙時及び報告で廃教会方面に何も無いと言っていた裏付けも取れました』

 

「良くやった。確かあの廃教会は無人だったな?」

 

『はい。建物自体は差し押さえられてカジミエーシュの物ですが、誰も管理したがらなかったので。本当に居るんですか?』

 

「御託は良い、回せるだけ回せ」

 

廃教会近く、警察本部から集められるだけの人員を集め、対処に追われていない騎士を出来る限り集めた刑事は、大きく息を吐く

周辺はずっと爆音や悲鳴が聞こえているのに。この場所だけはずっと静かだ

息を呑む音がする。隣に居る騎士の1人の肩が震えている。震えをどうにかしてやろうと肩に手を置いた瞬間、ぐらりとその騎士が倒れた

泡を吹いている。後頭部を殴られたらしく、頭蓋骨は陥没している

 

「抵抗するな!!!カジミエーシュ警察だ!!!」

 

警棒を引き抜き、音もせずに仕留めた者に警戒する。自分の一声によって全員が警戒したのか、何人かが剣戟の音をさせて接敵を知らせる

殺す事に躊躇が無い、コイツらがあの天石教の下部組織であるものか。そんな考えが頭を過ぎりながら、目の前に現れたフードの男の足と腕を殴りつけ、拘束する

 

「1名確保!!!繰り返す、1名確保だ!!!」

 

『そっちに鎮圧を終えた騎士達が向かいました、ソイツは転がしといて下さい』

 

無線から聞こえる音声に頷きながら教会へと走り出す。先んじて教会の制圧に向かった騎士が玄関を破ろうとした瞬間、扉は内側から破られた

アーツを使用しているのか、内側から破った男は即座に騎士を弾き飛ばし、焼き払おうと更にアーツを使用する

気を逸らす為に警棒を投げつければ、漸くその男がストレイドだと言う事に気付く

 

「ストレイド!!!貴様を捜査撹乱及び武器の不正使用の罪で逮捕する!!!大人しく捕まれ!!!」

 

「断る」

 

教会内から出てきたストレイドの近衛が他の騎士や刑事を相手取る。本気で殺すつもりなのがよく伝わる程に、その殺気はコチラを飲み込まんばかりだ

だが、それすらも凌駕するのが自分達の怒りである。認められないからテロを起こし、それだけでは飽き足らず民間人を虐殺するような輩に対し、かける情けは存在しない

怒号が響き渡る。お互いの怒りと殺意が入り交じるこの場所は、最早戦場と言っても過言では無い

 

「何故こんな事をした!!!そんなにも天石教の下部組織になりたかったか!!!」

 

予備の警棒を取り出して相対する。恐らくだがこの教会に天石教の教主は囚われている

全ての黒幕がコイツだったんだ。そう考えれば納得出来ると同時に、腹の底から怒りが湧いてくる

だが勝てるビジョンが見えない。何よりも相手は剣だと言うのに、自分は警棒である。それでもこの怒りは収まらないし、この冷静な思考よりも前に感情で動いている

 

「あの方に認められたかったんだよ、俺は」

 

燃える。ストレイドのアーツが彼の手を覆い、剣に火を纏わせる。どう足掻いたって勝てない、だがそれでも行かねばならぬ。迫るストレイドを相手にしようとした瞬間、黒色のフードを着た女性が割って入った

見慣れない女性であった。体躯から見てサルカズだろうか、なんて考えている内に、刑事である自分は吹き飛ばされていた

ストレイドがアーツを広範囲に使ったのだろう、視界がぼやける中で、ストレイドが叫ぶ

 

「邪魔をするかシャイニング!!!」

 

「弟子の不肖は師が始末する物でしょう」

 

眩しい光が、シャイニングと呼ばれた女性の剣から放たれる。それを見た直後、自分は気を失っていた

 

─────────────────────

 

テロ組織 使徒についての報告書

 

自称天石教下部組織を名乗り、大規模なテロを起こした通称使徒は、首謀者及び近衛の全員を逮捕、構成員の大半は鎮圧時に死亡した

廃教会内より薬によって眠らされた天石教教主を保護し、事件は解決済となった

何故このような事をしたのかと言う問いに対し「自分達が下部組織であらねばならなかった」「天石教こそこの世界を救うに相応しい」「彼等の教えをもっと広めなければ意味が無い」と、自分達の行いを棚に上げての狂言を続けている

使徒の代表たるストレイドはただ一言「お前たちが愚かだからだ」とだけ述べて黙秘を続けている

何故このようなテロを起こしたのか、何故このような事をしたのかは全く不明であるが、カジミエーシュ政府は全員の死刑を宣告した

 

天石教は今回のテロの被害者及び被害者遺族に対して謝罪、間接的にあのようなテロ組織が出来上がって居た事を把握出来ていなかった事、これらの事態を防ぐことが出来なかった事に対して頭を下げ、謝罪した

スカイストーン株式会社はこのテロで発生した負傷者の治療費を全面免除する事を確約し、自社の病院へと全員を収容する事を決定。各国から何千人もの怪我人及び鉱石病患者を受け入れ、治療を開始した

皮肉な話ではあるが、これによって世論は割れた。そして更に多くの信徒を獲得した天石教は更に勢力を強める事となり、その首輪として、スカイストーンはロドスインダストリーの推薦の元、商業連合へと名を連ねる事となる

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