─── 天石教 教義 第3条 ───
現在のレユニオンにとって、教団は目の上のタンコブである
感染者の権利を奪い返す為に暴力を行使しているにも関わらず、彼等は感染者団体でありながら貧民に施しを与え、教育や医療、更には住居まで用意する
寄付と言う名目で金を出せば鉱石病を治療し(厳密には巫女や神子へ移動させているだけ)、更に寄付をすれば外科手術まで行ってくれる。腕前もそこらの闇医者よりも良く、教団内での秩序が保たれている為暗殺の心配も無い。その為か後暗い怪我をするような連中にまで好かれる
レユニオンは教団に対して有形無形問わず妨害を画策していたが、実行部隊にすら教団の信仰が蔓延り、実行出来ていないのが実情である
「クソが!!!祈ってればあの教主様が救ってくれるのか!?あぁ!?」
1人の兵士が祈りを捧げる兵士へと食ってかかった。胸倉を掴みあげ、壁へと押し付ける
彼の怒りは理不尽だ。万人を救うと言いながらも自分を救ってくれなかった教団への怒りであり、同時に、救われた者達への理不尽を押し付ける物だ
胸倉を掴まれた兵士の表情は読み取れないが、その目は酷く哀憫に満ちており、掴んできた兵士の腕をそっと触る
「お前は救われ無かったんだな。あの人達の事を知っていれば、そんな言葉は出てこない」
「ふざけてんじゃねぇ!!!なら何でもっと救わねえんだ!!!教団の力があればもっと多くを救えるんだろ!!!ここに居るような連中全部をよぉ!!!」
「君こそふざけているだろう。では聞くが、ここに居る全員を救ったとして、救われなかった貧民や子供達はどうするんだ」
レユニオンと言う存在は、戦力を持った感染者集団である。権利を奪い返す為に暴力を行使してはいるものの、根底にあるのは戦い、勝ち取らなけば更に虐げられると言う事実。それ故に、レユニオン内で戦えない者は一方的に暴力を振るわれ、食事を奪われる事も頻発しており、秩序が保たれているとは到底言えず、1部の派閥を除き感染者であれど弱者を痛めつける事に変わりは無かった
「そんなもん知らねえよ。感染者じゃなけりゃ生き方なんざどれだけでもあるだろうが」
「感染者じゃなければ?ハッ。君はスラムに居る住民は全員が感染者だと思っているのか?」
鼻で笑う兵士の顔に拳がめり込む。仮面が外れ、口内を切ったのか口から血を流す
その目は酷く反抗的だった。決して殴り返しはしないが、2発、3発と殴られてもその目は辞めなかった。生意気だ、殺してやる、そんな思いを込めながら更に殴りつける為に拳を振り上げた瞬間、殴りつけていた兵士の視界はぐらりと揺れた
「おいやめろって!!!いい加減にしろ!!!」
他の兵士から引き剥がされ、殴っていた兵士は床に倒された。こんな恵まれた野郎がこんな所に居て良い訳が無い。俺は救われなかったのに。見下ろしてくる兵士に噛み付くように彼は怒りを言葉でぶつける
見下ろす兵士は仮面を拾い上げては土埃を払い、再度仮面を着け直す
「俺の居たスラムでの感染者比率は7:3だ。感染者が3だよ。分かるか?多くの人間が非感染者で、ただ貧乏ってだけで蔑まれたりしてたんだ。教団が無かったら、こんな事すら知らなかった」
弱い者が更に弱い者を叩く。教団で教育を受けてきたこの兵士は、レユニオンが現在掲げる社会秩序の破壊に賛同している
少なくとも、貧民がこのような扱いを受けていい理由も無ければ、感染者が今のような扱いを受けても良い理由にはならない。現在の社会秩序は破壊すべきだ。しかし教団はその為に力を行使しない。であれば、このような過激な思想であれど賛同する他無い
「テメエだって感染者だろうが!!!その3割の1人だったんだろ!!!」
「教団は一切の差別無く接したと言っているんだ!!!今必要なのは、教団のような方々が社会秩序を担うべきなんだ……!!!」
殴られていた兵士の目が爛々と輝いている。今の社会秩序を破壊してしまえば教団が新たな社会秩序を作ると信じきっており、その為ならば自らの痛みすら受け入れる
狂信。その言葉を聞いたのは、殴っていた兵士が他の兵士に諭されている時であった
次作を書こうと思いますが……
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天石教の続き(教主を更に追い詰める)
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他作(色々考えてはいます)