天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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悪意に染まってはいけない。我等は善意によって事を成すのだ
─── 天石教 教義2条 ───

種は芽吹いた。もう止められない


7話

始まりは紙面の端であった。何処かの源石鉱山での落盤事故が発生し、多数の死傷者及び鉱石病感染者が発生したと言うのを、その日の新聞の端に見つけた

自分には関係も無いと考え、その日は直ぐに読み飛ばした。鉱石病感染者に意識を割く必要なんて無いと考えたからだ

翌日の紙面には、端から移動し、少しだけ中央に寄った続報が載っていた。どうやら爆発的な勢いで鉱石病患者が増えているらしい。被害者である感染者に話を聞いた所、見た事も無いアーツを使って鉱石病を移されたと言う

段々と中央へと寄っていくその記事を見ながら、まるでヒビ割れが亀裂へと変わっていくような快感を感じた

数日程仕事が忙しく、家に帰ることが出来なかった。毎日届けられていた新聞がポストに詰まっており、久しぶりの休日である事を忘れそうになる

古い日付から読んでいく。気にかけていた続報が出ている。かなり枠が大きくなっており、見出しに後2歩ほどで届きそうだ

内容と言うと、その感染者達を吸収する為にレユニオンと言う組織が活動し始めた

次の日付を読む。見出しにまで躍り出たソレは最早自分には関係無く、続報ばかりが目を引いていた。落盤事故によって発生した感染者達はレユニオンとの合流を拒否。更にはレユニオン内部に存在していた天石教信者達が合流し、彼等近くにあった天石教教会に集い、決起集会を行った

記者が別件の取材の為に教会内に居たらしく、絶対に教会内では手出しをしないと言う条件の元、リーダー格の男……源石鉱山の現場監督であった男に話を聞く事が出来た

 

私は非感染者でした。源石鉱山に来るまで、感染者になんてなりたくも無かったですし、そもそも感染者と言う物は穢らわしいとすら考えていました

監督者として2ヶ月程経った頃ですかね。天石教の方がやって来たんです。ほら、不思議なアーツを使って鉱石病を治したり軽くしたり出来るでしょう?源石鉱山では、事故や鉱石病で死にかけの感染者に移す事で源石に変えたりする事が当たり前でした

あの人達は葬儀まで行ってくれました。私達の心の支えにも。懺悔を聞いてくれたり、空いた時間では外であった事を話してもくれました。上役はいい顔はしませんでしたが、教団には悪い顔が出来ないのか黙認していましたが

……冷静に考えれば押し付ける事で他の人が助かるなら、とも考えますよ。でもまぁ……もし自分であったり、自分の子供が押し付けられて殺されたら、なんて事を考えたら……話を聞いて貰ったりするのが、どれたけ楽だったか

現場監督やっていれば嫌でも分かりますけど、感染者だろうと非感染者だろうと血の通った人間なんです。言葉も通じれば冗談だって通じる。それに天石教の人達なら感染者だって非感染者に戻せる……そこまでされたら、もうどっちでも変わらないんじゃ無いか、て考えていたんです

……そして、あの落盤事故が起こりました。今回のは大規模だったらしく……幸いにも私の居る地区では落盤は起こらなかった為、直ぐに鉱山から出て鉱員の安全確保と更なる落盤に備えました。これは鉱山規定上絶対でした。幾ら感染者と言えど、大量に失っては支障が出ると言う判断から来ているものです

約半数……数にして200名近い人員が、鉱山内から出て来れませんでした。こう言った場合は落盤が終わった後に救助活動を始めるのですが……鉱山の規定では、落盤が終わったら源石掘りを再開しろと言う命令が書かれていました

勿論上役に抗議しました。まだ落盤が起こる可能性があるとも、これ以上死なせるのかとも、色々な事を言いました。……上役は私の抗議を一頻り聞いた後、こう言ったんです

 

「仕事に戻れ。これは命令だ」

 

……私は上役の襟首を掴んで、鉱山内に放り込みました。その時に粉塵を吸い込んで感染し、私は感染者となりました

咳き込む上役を他の仲間達が押さえつけて、岩に縛り付けました。私達は直ぐに救助活動を始めて、出来るだけ助ける為の行動に移りました

天石教の方が来られたのはその時でした。惨状に少しばかり息を呑んだかと思えば、その人はアーツを使って岩を退かし始めたんです

作業は一気に進みました。そして、130人の遺体と、70名の救助者を出せたんです

……本来ならコレで終わりだった。でも終われなかった。こんな事が罷り通っていいハズが無い。皆がそんな事を考えて、全員で鉱山を出ました

鉱山から出た瞬間に、縛り付けていた上役の体が源石爆発しまして。そのせいで源石鉱山に大穴が開いて源石粉が風に乗っていきましたけど……今更でしょう?

 

───レユニオンに合流しなかったのは何故?

私達は天石教の方に救われたんです。天石教の事を批判しているような連中とは相容れません。天石教の方々は力を持たない。ならば我々が力にならなければ成りません

 

───教義に反している事は理解しているのか?

勿論です。事が終われば私達は裁かれるでしょう。教義によって

 

───では、貴方達はなんと呼べば?

……トレイターズ。裏切者達と自称しています

 

 

最新の日付けでは、天石教に対しての批判が一面を飾っていた。ここまで広範囲に広がった鉱石病や、トレイターズに対して誰がどう対処するのかすら載せられていないのは、未だ国家が些事としか見ていないからだろうか

新聞を放り投げ、大きく欠伸をしてからベッドへと向かう。シャワーを浴びる事すら面倒であり、裏面を見る事もしなかった

 

─── 各地の源石鉱山にて同様の反乱か ───

次作を書こうと思いますが……

  • 天石教の続き(教主を更に追い詰める)
  • 他作(色々考えてはいます)
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