天石教ーてんごくきょうー   作:rezeaizen

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救う事を恐れるなかれ。その手には救う為の力がある

─── 天石教 教義17条 ───


8話

ロドス本艦。孤児達を率いての旅路の途中、教主たる男はソレと出会った

整備中で止まっているらしく、恐らくは戦闘オペレーターであろう人物達が船の周囲を警戒しており、目敏い者達は既にサルカズが率いる1団に気付く

ロドスは慈善団体では無い。故に助ける様な事はしない。サルカズ1人に対して子供が多数居たとしても、この世界から見れば当たり前の光景とも言える。子供達は奴隷としてでも売られるか、スキモノな奴等に売り払われる

悲しい現実であり、同時に、この世界を良く体現しているとも言える光景だ

 

「敵襲!!!」

 

1人の戦闘オペレーターの叫び声と共に振り返る。恐らくは野盗であろう連中が、ロドス本艦を襲撃していた

オペレーターが対処してはいるものの、数としては不利である。新参者である自分すら、先輩である男に連れられて対処に向かう

 

「近寄らせるな!!数は少ないぞ!!」

 

20人程の野盗である。前線を張っている重装オペレーターがそう叫び、彼女を抜いてきた連中の対処の為に前へと出る

訓練で散々やってきた事だ。大丈夫、訓練通りにやれば良い。頭の中で反芻し、自分に言い聞かせる

野盗の1人と対峙する。手に持っているのはマチェットらしき刃物。自分達が生きる為に他者を襲うような輩に負ける訳にはいかない。槍を握る手には力が入り、マチェットらしき刃物にべっとりと付着している血液を見て怒りを込める

頭の奥が冷たくなるのを感じる。アドレナリンが分泌され、それまで起こっていた体の震えが収まっていく

 

「───シッ!!」

 

突き。恐らくは今までの訓練で出した突きよりも素早く、的確に相手を捉えていた突きは相対する賊の身体を捉えていた

対する賊もそれなりに腕に覚えがあるのか、筋肉の動きから予知したであろう突きを紙一重で避け、お返しにマチェットを突き返す

戻した槍の柄を使い軌道を逸らし、石突きで賊の腹部を抉る。ぐげ、と言う断末魔を聞きながら槍を半回転させ、賊の顎に槍の柄を叩き込む

脳震盪。何とか立ち上がろうとする賊が立つ事すら出来なくなったのを見終えて背を向ける。他のオペレーターの救援に行かなくては、と考えた瞬間、背中から腹部にかけて冷たい物が貫通した

投擲されたマチェットであった。あの状態ですら投げる気力がある事を賞賛すべきか、それとも自らの力の入れ方が甘かったのか、背後で賊の倒れる音を聞きながら、ぺたりとへたり込む

抜いて良いのだろうか否先輩から刺さったら抜くなと言われていた気がするしかしこの激痛はなんとかしなければ死───

 

「抜くと死ぬぞ。抜くな」

 

マチェットを抜こうと手をかけた瞬間、声をかけられた。聞きなれない声と共に浮遊感が襲い、自分は先程見つけたサルカズの男によって担架に乗せられていた

医療オペレーターが急いでコチラにやってきているのを視界の端に捉え、自分はサルカズの男によって横向きに寝かされ、担架でロドス艦内へと運び込まれた

 

「よし、移すぞ。1、2、3」

 

ガタン、と音をさせて担架から手術台へ移された患者の息は浅い。戦闘オペレーターの新入りである患者は初日から奇襲を受け、投擲によってマチェットが背中から貫通していた

運が良いのか悪いのか、動脈や内臓を避けた位置を貫かれている為まだ致命傷では無い

 

「俺、助かるんですか」

 

「話すな、動脈まで傷が達する。麻酔の用意だ」

 

子供達がエーテル麻酔を用意し、オペレーターの口に麻布が当てられる。ポタポタと数滴が垂らされたと思えば、彼の意識は深い水の底へと落ちていった

 

「助かりました。外科手術が出来るのですね」

 

医療オペレーターの1人が教主に声をかける。成り行きとは言え彼はマチェットで貫かれた新人を救い、子供達にトリアージを任せてオペレーターの治療順を決め、手術を終えれば直ぐに他の患者へと取り掛かって救い続けた

見事な手際である。恐らくは戦場等で培われたであろうその医療技術は、ロドスが現在最も欲しがっている物だ

 

「自分に出来ることをしたまでですよ」

 

サルカズらしからぬ丁寧な物言い。助手である子供達は軽傷のオペレーターの手当を終え、器材の消毒と清掃を手伝っている。歳はバラバラであるが、全員がこのサルカズの男を信頼しているのが伝わってくる

 

「───ガハッ!!!!」

 

軽傷であった男が突如として口から血を吐いた。彼は何ヶ所か刃物で切られてはいたものの、どれも傷としては浅く、傷口の消毒と何針か縫う事で処置は終わっていた

しかし、今の彼は喉を掻きむしり、何かを訴えかけるように口を開いては血を吐き続ける

 

「呆けているな!!腕を押さえろ!!」

 

教主が男の体を押さえつけ、呆然とする医療オペレーターに指示を飛ばす。一瞬の遅れがあったもののすぐに男の両腕を取り押さえ、教主が掻き毟っていた喉に触れ、触診する

 

「……喉に源石が出来て呼吸が出来ないのか!!だがコイツはさっきまで…」

 

応急処置として鎖骨同士の間にメスを入れて気道に穴を開け、呼吸出来るようにチューブを入れる。呼吸が出来るようになったオペレーターは、血文字を使って医療オペレーターへと伝える

 

武器 源石粉塵 付着

 

血文字でそう書かれた瞬間、優秀な彼等は理解した。この処置室に居る負傷者は全員鉱石病患者になったと

次作を書こうと思いますが……

  • 天石教の続き(教主を更に追い詰める)
  • 他作(色々考えてはいます)
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