─── 天石教 教義6条 ───
カジミエーシュの辺境、決して利便性が良いとは言えない場所に、天石教本部は存在する
天石教を信奉する地元住民及び信者が勝手に作り上げた大聖堂がそびえ立ち、敷地面積はおよそ500ヘクタールにも及ぶ
敷地内には病院、学校、宿舎、大規模な農場、牧場、果樹園、工場、更には図書館や商業施設まで完備され、今やカジミエーシュ内においてここ程に治安も良く、感染者も非感染者も区別無く暮らしている場所は存在しないだろう
───信者達は、この場所を聖都と呼んでいる
そんな場所に、今回発生したトレイターズの事に関しての取材の為の記者が大量に赴いていた
治療にやってきた者や天石教信者であれば歓迎する地元住民が素っ気ない態度を取るのは当たり前と言えるだろう。この辺境にやってくるような連中は、それなりの地位や金を持っているような連中か、天石教と言う宗教に惹かれた者達位だ
「すいません、この果物頂けますか?」
「はいは……なんだ、記者さんかい。買ったらさっさと出てってくれよ」
このように態度は素っ気ないものの、物を売らなかったり、法外な値段を吹っ掛けたり、粗悪品を掴ませるような事もしない。シラクーザからやってきた記者がこの事実に驚き、絶対に1面を飾ってやると息巻いていたが、そんな場所存在しないと言われて糾弾されるか、翌日にはその事実を知って欲しくない連中によって消されて居なくなっているのが常だろう
リンゴのようでトマトのような果物を受け取り、近くにあったベンチに座る
商業施設内は信者や治療に来ている患者で活気に満ちている。もし天石教の施設だと知らなければ、シエスタにでもやってきたのかと錯覚するだろう。都市1つ分と言うには多少規模が小さいが
果物に齧り付く。口の中に溢れる果汁のような甘酸っぱい液体を堪能しながら、目の前を通り過ぎていく警備ロボットに目が移る
商業施設だけでなく、この天石教本部の至る所に存在する警備ロボット。信者や商業施設に勤める地元民に聞いても、何処からやってきたのか、いつから居たのかすら分からず、いつの間にか溶け込んでいたこの警備ロボットは、犯罪が発生すると電撃を持って相手を取り押さえる……らしい
非殺傷設定と皆口を揃えて言うものの、稼働している所は見た事が無い故、推測でしか話せないと言うが、何人かはソレを見たような口振りで話していた
「おっと、会見の時間だ」
果物を食べ終えて時計を見れば、教主による会見の時間が差し迫っていた。 ベンチから立ち上がり、急いで大聖堂へと向かう
会見場受付と書かれた紙が貼られた机には台帳と信徒がおり、参加する記者達が信徒に対して何処の記者かを名刺を手渡して告げている
受付を終えた記者は整理券を受け取り、整理券番号の貼られた椅子へと座るよう告げられ、希望すれば天石教本部特産品であるフルーツティーが貰える
「会見開始時間となりました。皆様のご協力に感謝致します」
司会進行である感染者がそんな事を言い終え、壇上に教主たるサルカズの男が立ち、1度深呼吸してから、語り始める
「我々天石教はトレイターズの蛮行を決して認めない。我々の教義である救いは他者を助け、感染者も非感者も関係無く共に歩める未来を作る事である。無辜の民を傷つけ、不必要な悲しみを広げ、害する為に救う為のアーツを使うなど言語道断。現在トレイターズに対し蛮行の取りやめ及び即座の解散を呼びかけています
……そして、このような事が起こってしまう程に劣悪な環境を強いてきた各国への批判も同時に行わせて頂きます。天石教は以前から源石鉱山労働者の待遇改善、労働環境改善を訴えてきました。然しながらそれらを一笑で片付け、あろう事か鉱石病や鉱山事故で死にそうな労働者に我々のアーツを使い、他労働者の鉱石病を押し付ける惨事があった事実も公表させて頂きます」
「椅子下の資料をお取り下さい。各国の源石鉱山にて被害に遭われた方々、及び源石鉱山で働いておられる方々の名簿を入れておきました。我々の知る限りの名と生まれを記入してありますが、これすらごく1部でしかありません」
爆弾を投下された気分と言うのはこう言う事だろうか。2、3分程名簿と睨めっこする時間を取ったかと思えば、司会進行が質問時間へと移る事を明言する
各国の記者が手を挙げ、次々と質問を投げかけていく。その大半はトレイターズの内容であったが、何人かは名簿についての質問までしている。しかしこの情報は持ち帰っていい物なのかすら判断出来ない
何人かの記者が退席するのと同時に、私も持ち帰って良いかの確認の為に席を立つ。背後から聞こえる糾弾にも似た質問を聞き流し、自分の足は近くにある公衆電話へと向かっていた
次作を書こうと思いますが……
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天石教の続き(教主を更に追い詰める)
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他作(色々考えてはいます)