限定キャラが引けなかった。
最後の望みを託して300連目を回したところ、5年目となるスマホは
アークナイツの星6演出に耐えきれなくなり、爆発してしまう。
天に召されたと、思った青年が目を覚ますと、自分の体が、
ジェッセルトン・ウィリアムになっていた。
就活失敗するまで、あと数十年。それまでに、就活失敗おじさんは、
準備を整え、就活に失敗することができるのか。
君は原石の輝きを見たことがあるか......
就活失敗おじさん、ライン生命に立つ
「では質問だ。君は何故ライン生命に?」
「何故か......愚門だな」
面接官――――――サリア主任は、俺を試すようにそう質問する。
全く、愚かだ。何故、俺がこの場にいるのか理解していないとは
このジェッセルトン・ウィリアムズをなめてもらっては困る。
俺は、息を吸い、問いに対して、自信満々で答える――――――――
「―――――――――もちろん、面接で器が小さいと落とされにきたッ!」
その後の、面接会場の空気が死んだ。
◇◆◇
「ここはパワードスーツやロボットの動作試験にも使われている試験場だ」
そういわれ、次に案内されたのは、ライン生命にあるドーム状の施設。
内部の通路は、無機質な壁に覆われ、いくつかのドアが見られる。
「本来、他の課なら面接だけだが、警備課には実力も必要だ」
そういうと、サリア主任は、立ち止まり、ドアのボタンを押す。
「よって、これより実技試験を行うッ!」
そう、サリア主任は、何もないグラウンドの前で宣言を行った。
余りの突然の発言に驚いていると、一人の受験生が、
「あのー、実技試験はロボットって聞いたんですけど、どれでしょう?」
「鋭い質問だ。本来なら、試験用のロボットで評価するつもりだったんだが。
生憎、動作が上手くいかなくてな――――――――」
確かに、面接の紙にはそのような記載があったような気が。
正直、面接だけで落とされに来たので詳しくは見ていない。
「―――――――なので、私が直々に相手をしてやろうッ!」
瞬間、グラウンドの空気が変わる。
先程の穏やかな空気はどことやら、肌には、ピリピリとした殺意
本当に試験する気があるのか。
どう見ても世紀末覇王サリアと行った方がしっくりくる。
明らかに一人だけ画風が違う。
絶対あの拳は人を殺せる......俺は、北〇の拳には詳しい
他の受験者ビビって、逃げるだろこれは
そう思い、周囲を見ると――――――――
「ヒャッハァー!主任、自らとは、おもしろいじゃねえか」
「正直、俺より弱い奴が上にいるのは、気に食わなかったんだ。覚悟しやがれッ」
「南部ドクター神拳の極意。しかと味わえ」
―――――――貴様らもそっち側か。
余りにも場違いな試験会場に、
俺の次に面接を受けていた、丸眼鏡をかけたカワイイ女の子が恋しくなる。
「やれやれだ」
その呟きは、世紀末な雰囲気に押しつぶされた。
◇◆◇
実技試験、無事にボコされた案件。
いや、殴りかかろうと、動いたところを「残像だ」って言われて、一瞬で背後とられたんだが。
もしかしてサリアさんは、世紀末の住人か?
それなら、今、受験生が紙切れのように吹き飛んでいるのが理解できるんだが。
そもそも推しの人間を、殴れるほど人間終わってはいない。
対面するだけで、感激というレベルだ。
「今日はいい日になりそうだな」
「あなた、主任にやられて頭でもうったの!?」
他の女性の受験生がそんな心配をしてくる。
あの世紀末な中に女性もいたのか......
見るといたるところがボロボロである。
彼女に世紀末適正はなかったようだ。
それにしても、失礼だな、俺は正気だ。
ちょっと、推し成分にやられただけである。
「何、やられたのは心さ......」
「いい病院、紹介した方がいいかな?」
さらに心配された。解せないな。
むしろ、彼女の方が病院が必要なのでは。
「いや、お前の方こそ―――――――」
「そこのお前達、逃げろッ!」
危機を感じ、背後を振り向くと、そこにはこちらに迫るロボット。
――――――モノアイは赤く光り、制御下にない状態であることが一目でわかる。
おそらく、あれが試験用に使うロボットだったのだろう。
「お前、逃げるぞッ!」
考察を止め、隣にいた受験生に声をかけると、
「ごめん、びっくりして腰抜けちゃって」
どうやら、驚きのあまりか、実技試験のせいか、彼女は動けなさそうにしていた。
ロボットはもうそこまで迫っている。
彼女を抱えて逃げることも可能だが。あのロボットが追ってこないとも考えずらい。
となると方法は、絞られてくる。
ちょうど、憂さ晴らしがしたかったわけではない。
余り人前でアーツを使いたくはないんだが、四の五は言ってられんか。
そんな思いを胸に、両手を前に出す。
「4番封印起動、マスターソード抜刀」
刹那、手に強大なアーツ反応――――――――
爆発的な輝きにて、彼の手には、
ハイラルな歴史を物語る、勇者の剣が現れる。
「ちょっとばかし、ぶっ飛んでなッ」
ビーム、そう形容するしかないモノが通り過ぎた後、
残ったのは、動かなくなったロボットと唖然とする研究者だけであった。
「なにこれぇ」
そう呟く受験生の声は、後処理に追われる研究者の喧騒でかき消えるのであった。
◇◆◇
「サリア主任ッ」
「どうした、事後処理なら任せろ」
「いや、それもあるんですが、あの受験生のアーツ......」
ああ彼か。
ジェッセルトン・ウィリアムズ
面接で、「落とされに来た」馬鹿者だ。
事前調査では、ここまでのアーツを持っているとは書かれていなかったが......
秘匿でもしていたか、意図的に隠している連中がいたか
どちらにしろ厄介だ。
「まあ、興味深いものではあった」
「ですよねッ!彼が来てくれれば我々の研究も一歩進むかもしれません」
「そうだな――――――――だが、彼は不合格だ」
私の発言に、話しかけた研究者は驚く。
まあ、当然だろうな。履歴書でも問題はなく、ロボットを鎮圧したことから実力も十分、不合格の余地はないように見える。
面接での発言はアレだが、あの面接は所詮、本人の意志を見るもの。
正直、実技のオマケだ。
だがな、
いざというときに、判断が鈍る奴は警備課は務まらん。
残酷だが、それが私の判断だ。
「もし奴が、警備課以外だったら、合格だっただろうな」
少し、惜しい人材を、見逃したかもしれんな
◇◆◇
「一体、何がダメだったんだ」
面接での完璧な回答。そして、実技でのやらかし。
ハプニングはあったものの、グラウンドから逃げるように退出するときのサリア主任からの冷たい視線。
その全てが、俺を就活失敗おじさんに導いてくれるはずだった。
だが、ポストに届いた一枚の紙きれは
[ ジェッセルトン・ウィリアムズ様
あなたは厳選なる審査の結果
ライン生命 エネルギー課 に採用されました
クリステン・ライト ]
おかしい。どう考えても100点満点で落とされる回答をしたはずである。
面接が終わり、気分が良くなって祝杯を挙げたまでは覚えている。
だがその後、美人をナンパして......二日酔いで記憶がない。
「まずい、まずすぎる」
何が、不味かといえば、このままでは、孤島激震のシナリオ破綻する。
何より就活失敗おじさんではなくなるのだ。
せっかく、いい感じで孤島激震のシナリオを終わらし、ロドスの後方で雇ってもらい、推しのオペレーター達を眺めるという、完璧なプランが、一夜にして崩壊しやがった。
俺を、原作で一度だけでもなく、現実で二度も阻むか。
許さん、絶対に許さんぞ、サリアッ!
そうして、就活成功おじさんの新たな一日が始まるのであった。
◇◆◇
前日の夜 クルビアにて
「そこの美人さん、一杯飲まんか?」
「私のことを言っているのか?生憎、そんな時間はない」
「釣れんな。折角輝いているアンタが台無しだぜ」
仕事の合間に出歩いていたら、変な酔っ払いに絡まれた。
筋肉質で、上半身が黒い服しか着ていない、長髪のバンダナ男。
私の人生をこれ以上割くのは、愚かすぎる選択に感じた。
「輝いている?おかしなことを言うものだ。ならば空でも眺めておけ」
「曇っている空なんか見ても楽しくはない」
皮肉を言ったつもりなんだが、通じてないらしい。
よほど、美人と飲みたいのか。どちらにせよ迷惑だ。
大方、酔いで目もろくに見えてないのであろう。
「曇っている......?面白いことをいうものだ。空が見えんのか」
「見えるさ。だが俺が見た空には2つの奇麗な月があった。それ以来、空は曇ってやがる」
今、なんといった。この男、何故、この世界の空を知っている
「――――――!?それをどこで」
「このテラの北でだな。正直だいぶ記憶があいまいだが、アレは奇麗だった」
北だと......人類未到達地点だぞ。
そんな場所に、行ったというのか。にわかには信じがたいな。
だが、空を知っている事実は動きようがない。
酔っ払いのたわごとの対価としては、十分か。
「......気が変わった。一杯だけなら付きあってやる」
「そいつは、ありがたい。オレは気分が良くてな、奢るぞ」
そういうと、ヤツはしみったれた。路上の屋台に私を誘った。
むしろ、こんな前時代的な場所がクルビアに残っていることに少し驚いたが。
普段は飲まない、酒とつまみを頼むと、私はヤツに質問した。
「貴様は......人は空に至れると思うか?」
「どういう意味だ?」
やはり、ただの酔っ払いか?
私は、仕方なく補足してやる。
「そのままの、意味だ。例とするなら、膨大なエネルギーを持って鞘を破るとかだ」
「......ガハハハッ」
返答は、笑い声
――――――――時間の無駄に近いな。
月の情報だけ、引き抜くか。
「何がおかしい」
「いや、なんでそんな無駄なことをするのかと思ってな」
「無駄だとッ!」
今、なんと言った。
私の生涯が無駄だと......やはり、こいつも凡人共と変わらんか。
少しは見る目があるかと思ったが、
気分を害したツケは――――――――
「エネルギーでぶち抜くなんぞ無駄の極みだ。そんなもの、抜けてしまえばいい」
「......どういうことだ?」
この男は、何を言っている。偽りの空を抜ける?
そんなことができるわけがない。
「いいか、この世にはまだ見つかってない世界がある。バックドア―とかだが、今回は虚数空間が適切だな」
「虚数空間......?」
理解不能だ。だが、妄言と切り捨てるには、面白い。
その男の言葉は、まるで現実かのようだ。
これで、詐欺師ならよっぽどの役者だな。
ヤラあたりに職をすすめてもいいかもしれん。
なんにせよ、その話、この私が聞いてやる!
「ああ、虚数空間だ。ただ通常の方法だと無理だな、羅針盤の針を生成する必要があるし、エンジンは相転移......いや、今回は縮退炉の方がいいか」
そうして、彼、彼女たちの夜はふけていった。
彼女は、ジェッセルトンの話が前世の話半分なことには気づいてはいない。
それは、彼女が僅かな酒で酔ってしまうのに気づかないように。
朝、彼が寝ぼけ半分に自宅に戻ったころ
彼女は、自分の作業デスクにいた。
表記された名は、クリステン・ライト
――――――――未だ空を越えることをあきらめない者である。
手元にあるのは、サリア印で不合格を押された面接書類。
彼女はそれを合格に書き換えた。
全ては、夢のために。
こうして、世界の歯車は狂いだす。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
作者です。この作品は、アークナイツの限定ガチャ祈願のために書かれた作品となります。
私語となりますが、もちろん手持ちの石で出るわけがなく、諭吉投入で何とかなりました。実弾は偉大です。結果、朝飯代は犠牲になりましたので、暫しはミュスジスと缶コーヒーで朝を過ごしたいと思います。
ガチャ祈願の作品なので続きには期待しないでください。
皆様に良きガチャがありますように。