ある日のエネルギー課のラボ
「といわけでフェルディナンド、釣りに行くぞ」
「いきなりどうした」
どうしたも、こうしたもない。
ここ最近、飲み屋に行き、肉、肉、肉。
流石に飽きてきたのだ。
故に、魚が食いたい。
ただそれだけである。
「シエスタなら、まだ時期じゃないだろ。今は、冬だぞ」
「シエスタ?なぜ、そんな生ぬるい釣りをする」
「なら、どこに行くつもりなんだ」
「もちろん――――――」
―――――イベリアだ。
こうして、地獄の魚釣りは幕を開けるのであった。
◇◆◇
「という訳で来たが、本当に何もないな」
ここへ来る途中の町は、寂れていたし、
海に行こうとしたら、止められた。
「全くだ、こんな寒い時期に正気とは思えんな」
横には、厚手のコートを被ったフェルディナンド。
そんな恰好で、釣りができるのかと心配になる。
「まあ、波はやや高いが、天候はいい。数時間もすれば一匹は釣れるだろ」
「甘いな、そういった奴ほど坊主になるのが釣りというものだ」
お互いに、釣り竿のセッティングを始める。
「やけに高そうな竿だな」
「当然だ。このフェルディナンドいかなることにも手は抜かない」
――――――クルビア最新式、ブリキ3000だ。
そう言うと、無駄にピカピカ光っている竿を見せつけてくる。
「いいものを使うからと言って釣れるわけじゃねえぞ」
「なら、そちらはどうなんだ」
見せるは、ただの普遍的な竿。どこにでも売ってあるような一品だ。
「今回の勝負はもらったようなものだな」
「それはどうかな」
そういって、今回の餌を見せる
「――――――ッ!」
「悪いが、俺の餌は特上だ」
「馬鹿な、オリジムシだと」
「しかも、ただのオリジムシじゃねぇ。最高級の源石を食わしたド級のオリジムシだッ」
今回のために、エンジニア課の資材から選び抜いた源石を食べさせ育てた餌。
正直言って、普通の餌とは格が違う。
「面白い、それでこそ我がライバルだ」
「当然だ、最強の竿と最強の餌――――――」
「最強は2つもいらんことを証明してやろう――――――」
「「――――いざ勝負」」
男たちの負けられない釣り勝負が始まるのであった。
決戦の舞台は、イベリアの冬の海。
今日の海は、荒れている。
◇◆◇
「魚が、釣れん」
この3時間、釣り上げたものといえば――――――
・長ぐつ
一般的にテラで使われる長ぐつ。防水性はいまいち。旨くはない。
・うに
見かけは栗。錬金素材。味は普通。
・鍵
宝箱や扉を開けれる。味は普通。
生物が一切いないな。
「フェルディナンド!そっちは何か釣れたか?」
「当然だ、無機物ばかり釣っている貴様とは違うッ!」
そういって、ヤツが見せてきたのは――――――
Lancet-2ー海難救助特化型。
黄色いフォルム、丸みを帯びた体、黄色いブイ
どっからどう見ても、クロージャのおもちゃである。
「リリースだ」
釣ってしまって申し訳ないが、イベリアの海に投げ返す。
「なっ、貴様、私の釣果にケチをつけるつもりか」
「ケチっていうか、歴史を捻じ曲げるつもりか」
てか、お前も無機物じゃねえか。
魚を釣れ、魚を。
そうして、取っ組み合いをすること数分。
お互いが疲れ果てて、バテ始めたころ、
少し雲行きが怪しくなってくる。
「一雨きそうだな」
「全くだ、誰の行いが悪いのやら」
「お前が言えた話か、それは」
ピカピカした竿を持つ、奴を見る。
すると何かを察したのか、フェルディナンドは、
「......ジェッセルトン。俺は、片付けをする」
「そうか」
「悪いが持ち場を離れる――――――」
足場に竿を置き、
「――――――だがその間に、竿がどうなっても知らん。離れた、俺が悪いからな」
「助かる」
片付けに向かった。
「さて、やるか」
ヤツの竿を巻き上げ、餌の交換をする。
使うのは、もちろん俺の特上オリジムシ。
狙うは、大物、ただ一つ。
最強×最強の力を見せてやる。
まだ、海は荒れている。
◇◆◇
雫が体に落ちる。
糸を垂らしてから、数分。その差は劇的であった。
手に来る感覚――――――間違いない、大物はこの下にいる。
「さあ、我慢比べと行こうじゃねぇか」
警戒心は最上級。ならば、食うまで待ってやる。
―――――体に、雨が打ち付ける。
それでも俺は竿を持つ。
―――――天候は嵐。体は限界。
だが、それでも竿を持つ。
勝負は、一瞬
「喰らったなァッ!」
手にかかる、確かな感覚。
間髪入れずリールを巻き上げていく。
「最新式じゃなきゃ、折れてるレベルだぜ」
だが、竿は重い。その重さは、
もはや、テラそのものが引っ掛かってるのではないかと思うほどである。
勝負すること、さらに数分。
決着は、不意に訪れる。
――――――まずい、体がッ。
歪む視界。
長時間による疲労、極度の緊張、最悪な天気
それらによる、限界が既に来ていた。
手から竿が―――――
「―――――馬鹿がッ!」
支えるは、クソッタレな野郎の手。
「なんだ、帰ったんじゃないのか」
「生憎、竿を忘れていたことに気づいてなッ」
支えるは、男二人。
だが、それでも足らんか。
ならば、現状を変えて後顧の憂いを断つ。
「十五番封印起動、疑似
瞬間、手に集まるアーツの光
取り出されるは――――――
堅城コーデのサリアが描かれたカード。
「大当たりだ。硬質化、発動ッ」
自身の周囲が盛り上がり、重しとなる。
支えとしては、十分。
「気合入れろよ、フェルディナンドッ!」
「そちらこそ、早く吊り上げろッ」
魚影は、既に見えるレベル。
普通の魚がかすむような大きさ。
いや、こいつは――――――
「竿持ってろ、落とすなよ」
「何を、するつもりだ」
「多重封印解除、劣化クラスカード」
体に尋常じゃない、痛みが走るが、気にはしない。
いや、気にしている場合ではない。
「詠唱破棄、
手に現れるは、2本の真紅の槍。
「死にさらせクソ魚ッ!
殺しても4度もよみがえり、重装をぶち抜いてくる。
そんなクソみたいな記憶とともに、槍を投げつける。
槍は、ディヴィニティエンドを貫通し、
クソ魚は、物言わぬ残骸へとなり果てたのであった。
気づけば嵐は止み、空には晴天が広がっていた。
◇◆◇
「という話があったんだ、ミュルジス」
「馬鹿なんじゃないの」
場所は変りて、いつもの飲み屋。
酒とつまみを食べるは、男女2人。
あの後、雨に当たりすぎた俺らは風邪を引き、
仲良くイベリアの病院に一晩お世話となる。
まあ、なんだかんだ楽しかった冬の釣りではあった。
「だが、おいしいだろ」
そう言って、刺身を指差す。
大半が、ミュルジスに食われているが気にしない。
「へっ、おいしいって、何が?」
「そりゃ、釣った魚だ」
「これって、もしかして、そのシーボーンだったり―――――」
急に青い顔になるミュルジス。
周囲の水も震えている。
「安心しろ、冗談だ」
「なっ、だましたわね」
先ほどの顔はどこにいったのやら、急に元気になる。
ちょろい奴め。
「お前が、馬鹿みたいに食うからだ」
「うるさいッ、だっておいしいからよ」
そうして、酔っ払い共の、喧騒と共に、
テラの夜は、今日も明けていく。
ちなみに――――――
そう思っていた俺のお腹は、翌日、腹痛で悩まされることになる。
ちなみに、ミュルジス主任も、なぜか休んだ模様。
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者です。
狂人号にキレ散らかしながら進めていたら、こうなりました。4回目の復活は聞いてないです(1敗)。てか、オペレーターを食べないでくれ、火力が足らん。強襲......知らない子ですネ。
さて、私語となのですが、最近ちょくちょくランキングに乗っていたりしてうれしいような、自分の作品の名前を見るという羞恥心に駆られています。贅沢な悩みですね。名前をとられそうな気もします。
さて前回も誤字報告ありがとうございます。前の話の誤字脱字修正をくださる方もいて、本当に助かっています。この場を借りて感謝申し上げます。
また、感想をくださる皆様方もありがとうございます。気づけば2桁話です。こうやって続いているのも、皆様の感想の力だなァと日々思っています。
では、良きガチャライフがありますように。