転生したら就活失敗おじさんだった件について   作:上殻 点景

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クルビアの[ライン生命]で働くおじさんの元に、今日も仕事がやって来る。
クリステンの執務室の掃除という仕事だ。前回壊してから修復作業に加えて内部の書類整理までときた。退屈そうな仕事で乗り気ではなかったおじさんだが、給料で脅され渋々仕事を引き受ける事に。しかし、掃除をするにつれ、書類の中に胡散臭い名前を見つける。就活失敗おじさんの真の顔、転生者としての側面が行動を起こさせる!


おじさん May Cry

 ライン生命 エネルギー課 ラボ

 

 「フェルディナンド、馬鹿は来ているか」

 「ジェッセルトンか、現在進行形でサボり中だ」

 

 フェルディナンドはそう答える。

 実際、ジェッセルトンは一昨日から見ていない。

 

 「大方、エネルギー課のラボにでもいるんだろ」

 「そうか、ならいい。手間をかけた」

 「君が、奴を心配するとは、面白いこともあるもんだ」

 

 ずいぶんと奴に毒されているな。

 昔の君ならそんなことを気にはしなかった。

 否、そう口にしなかった自分もか。

 

 「直感とでも言うのか?根拠はない」

 「ずいぶん非科学的だな」

 

 サリアは、そう言うと去っていく。

 

 フェルディナンドは、手元にある白い封筒に目をやる。

 差出人は、ジェッセルトン・ウィリアムズ。

 内容は――――――

 

 ライン生命の辞表

 

 「全く、迷惑な話だ」

 

 ◇◆◇

 クルビア郊外にて

 

 「ようこそ、私の研究施設へ、案内します」

 「こちら、ラインの商務課だ。助かる」

 

 握手するは、初老の男性。

 

 見たことは無いが名前だけならば知っている。

 そして実際に知っているより、まだ若い。

 

 「ローキャンさん、で大丈夫か」

 「ローキャンで構いませんよ」

 

 見た感じはただの優男だな。

 髪はやや白いが、まだ残っているし、

 正直イメージとだいぶ違う。

 

 「かなり大きな施設だな」

 「ええ、あなた方の投資のおかげです」

 

 商務課の資料ではかなりの額だったな。

 事故で、統括課を片付けさせられたとき、こいつの名前を見てまさかとは思ったが。

 大当たりだな。

 

 「タバコを吸われるんですか?」

 「たしなむ程度には、な」

 

 ローキャンは鼻を鳴らし、急にこちらを見る。

 匂いはとったハズだが、残っていたか?

 

 「いえ、研究所内部は禁煙なので」

 「吸うつもりはない。吸うとしても外でだ」

 

 正直、バレたかと思ってビビったぜ。

 服の持ち主は、タバコを吸ってなかったか。

 まあ、なんとでも言い訳はできる。

 

 どうせ服をパクられた奴は、ライン生命内のトイレでおねんねだ。

 

 「我々は、このローキャン水槽内で、世紀の大実験を行っています!」

 「結構ないいようだ。科学者ってのは同じことを言う」

 「あなた様も、見ればわかります」

 

 世紀の大実験ねぇ。

 内容を知る俺からしたら、胸糞以外の何物でもないんだが。

 

 当事者たちから見れば、そうか。

 やはりクソだな。

 

 内部を案内されること数分。

 

 「では、この先で待っていてください」

 「私は、成果。いや、彼女を連れてきます」

 

 指定されたのは一際重厚な扉。

 扉は外部から守るというより、内部から守るように見えた。

 

 よっぽど彼女とやらはじゃじゃ馬なのかね。

 思い起こすは、猫耳の小柄な少女。

 

 「さあ吉と出るか、凶とでるかだな」

 

 地獄の扉は開かれる。

 

 ◇◆◇

 

 「コイツは――――」

 

 案内されたのは、白く広い空間。

 

 周囲には、いくつかの鉄くずや血の跡。

 向こうには同じく硬そうな扉。

 上層には、頑丈そうなガラスが張られている。

 

 『―――よく来てくれた。ラインの商務課』

 「豪華な食事を期待したんだが......?」

 『冗談はよせ、ジェッセルトン・ウィリアムズ』

 「ちっ、バレてたか」

 

 直後―――自分の足元に、物体が突き刺さる。

 

 デカすぎる白い塊だ。

 どうやったら飛ぶのかも分からんが、

 こんなことをできるヤツを一人知っている。

 

 「ロスモンティスかッ!」

 

 逆方向の空いた扉を睨む。

 姿は知っている者とは違い、頭にはバイザーがあり、背中には黒い機械。

 

 「ロスモンティス......?誰のことだ?彼女は、ナルシッサだ。二度と間違えるな!」

 

 ローキャンは、ガラス板の向こうで激昂する。

 ロスモンティスから飛んでくる塊を避け、彼女を見据える。

 妙だな、何故ローキャンは彼女を制御できている。

 本編では、暴走していたハズだ。

 

 「どうした?手も足も出ないか?」

 「生憎、ただの研究員だからな」

 「笑わせてくれる......だが、腹立たしいことに、君の研究が役立ってはいるのは事実だ」

 

 俺の研究だと?何のことだ。

 大したものは作ってないハズだが。

 

 『魔法の弾だよ。アレには、嫉妬を通り越し感銘すら受けた』

 「脱衣弾かッ!」

 

 警備課とクリステンに回収された物か。

 確かに、取り戻そうと数回襲撃したが、作った数とは合わなかった。

 てっきり、戦闘で消失したもんだと。

 

 『全ては、この私ですら理解できなかった。だが簡単に考えればただの暗示だ』

 「暗示だと」

 『極度のな。後は方向性を弄り、記憶にした』

 「何が言いたい」

 『つまり、彼女には全てを忘れ、私を父と思ってもらった』

 

 ローキャンは、迷いなき瞳でそう言った。

 父の命令には絶対、てか。

 

 つまり、ロスモンティスのデカい機械はそのためか。

 ならソイツを壊しちまえば解決だな。

 

 塊を避けながら、方法を考える。

 

 『安心したまえ、死んでも君の脳は有効活用させてもらう』

 「なら次回に持ち越しだな」

 

 ローキャンからそんな放送が入る。

 魔法の理論だけ抜き取りたいってか。

 正直、俺も知っているが、理解はしていない。

 

 とりあえず、目の前の彼女からだ。

 白い塊の大きさは脅威だが。

 この速度なら、こちらの方が上だ。

 

 右手にアーツを集中させる。

 

 「封印解除―――――」

 『悪いがナルシッサは、まだ本気ではない』

 

 ロスモンティスのバイザーが、赤く染まる。

 

 俺のビームは、白い塊に迎撃される。

 威力が足りていないな。

 武器の質が悪いのか。

 

 ローキャンが何かやる前に、

 再びアーツを右手に集める。

 

 『ナルシッサ、目の前の人間は君の兄弟を殺した』

 「私の兄弟を殺した......?」

 『そうだ、そいつは君の敵だ』

 「私の、敵」

 『敵はどうする必要がある?』

 「敵は、私の敵は......コロスッ!」

 

 ロスモンティスから、先とは比べ物にならない圧を感じる。

 また塊か、よけ――――――

 

 「カァッ!?」 

 

 部屋の壁に、俺は叩きつけられた。

 腹部に、白い槍、こいつか。

 

 槍を引き抜き、壁から立ち上がる。

 何かでコーティングされてやがる。

 

 『ハハハッ、どうかね。私のナルシッサは!』  

 「もう少しおしとやかで、あって欲しかったぜ」

 

 できれば虫を殺せぬ少女とかで頼む。

 こんなに暴力的なのは勘弁だ。

 

 先ほどから武器の生成速度が遅い。

 時間を稼ぐ必要がある。

 

 『だが、まだ息があるとは、流石主任のお気に入りか』

 「その主任に、直に鍛えられてるんでな」

 

 伊達にサリアに殴られてはいない。

 手にアーツを集め、武器を形成しようとする。

 

 『だが彼女は倒せんぞ』

 「やらなければ、分からんだろ」

 『君のアーツは、周囲の金属から武器を作る』

 「ずいぶんと詳しいな。ストーカーか?」

 『まさか。だがそこの壁は特性合成樹脂製だ』

 「どうりで悪趣味なデザインだ」

 『手持ちの金属では、ロクな武器も作れまい』

 

 妙に詳しいな。誰かが俺を観察していたか。

 話している間に、携帯している金属を集める。

 作り出すは、金属のナイフ。

 

 貧相だがこれで十分だ。

 

 ナイフを構え、ロスモンティスに――――――

 

 『時間は、君だけのものではない』

 「遅い」

 『心臓を貫かれた君には関係のない話か』

 「敵、コロした」

 『いい子だナルシッサ。さあ帰ってお茶でも』

 「――――――!」

 『......馬鹿なッ、即死な攻撃なハズだぞッ!』

 

 気絶していたようだな。

 胸には床まで刺さった巨大な白い槍。 

 原因は、こいつか。

 

 下半身に力を入れ、刺さった槍ごと体を起こす。

 

 「悪いが、日ごろの行いはいい方だ」

 

 槍を引き抜き、アーツを起動する。

 

 「貴様には訂正がある。俺のアーツは――――」

 『無駄だ、槍は樹脂でコーティングがしてある』

 「―――――源石(コア)を起点に、物を作る能力だ」

 

 極大のアーツ光。

 収束した手に現るは光の奔流。

 

 「22番封印起動、最果ての槍」

 

 コイツを起動するのは久しぶりだ。

 

 『ありえん。どこに―――貴様、まさか人体か』

 「ご名答だ。人間には256本の骨がある」

 

 ただ、全部の骨が源石(コア)なだけだ。

 

 『正気か、そんなことをすれば―――――いや、体の器官までも源石なのかッ!』

 「だとすれば、どうした」

 

 アーツを使えば、源石の臓器ぐらいは動く。

 それだけの話だ。

 

 『それは、人ではない。化け物と変わらんッ!』

 「心は、人と変わらんさ」

 

 ローキャンの激昂とともに、白い槍が飛ぶ。

 手に持った光を振り、槍を消し飛ばす。

 やはり威力が強すぎるな。 

 

 だが、突破するにはこれしかない。

 

 「十三拘束解放破棄、疑似宝具展開――――」

 『まずい、退いてくれ、ナルシッサッ!』

 

 ほう威力に勘づくか。いい判断だ。

 だが、肝心の彼女を煽りすぎたな。

 

 「敵は、コロす」

 

 「聖槍、抜錨ッ!最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)ッ」

 

 莫大な光の奔流が、白い槍と激突する。

 拮抗は一瞬。

 すぐさま世界を溶かし、彼女を―――――

 

 「封印交換コンデンター装弾・武装解除弾(エクサルマティオー)!」

 「――――――!」

 

 裸、にするのであった。

 彼女は、何かにびっくりし、そのまま倒れる。

 

 どうやら、気絶でもしたか。

 

 『なっ、私のナルシッサに、何をッ!』

 「ただ服が脱げただけだ。慌てんな」

 

 消えかけるロン槍を拾う。

 もうカスみたいな力しかないが、ガラスぐらいは割れるだろ。

 

 窓に向け、投擲姿勢に入る。

 

 『ヒッ―――――私は逃げるぞッ!』

 

 上部のスピーカーからそんな声が届く。

 あんなところから声を出していたのか。

 

 「まあ、目的は達成か」

 

 気持ちよく寝る猫耳少女に服をかける。

 アウトな気もするが、着てないよりはマシだ。

 

 「さて、どうしたものか」

 

 辞表も出しちまったし。

 流石に、ライン生命には戻れんな。

 

 ◇◆◇

 ローキャン水槽 地下通路

 

 「はあ、はあ、あの小僧やってくれる」

 

 実験場へ搬入するための地下通路。

 念のために残しておいて助かった。

 

 ローキャンの脳裏に浮かぶは、1人の化け物。

 ライン生命にて、こちらの研究装置や材料を使い、妨害をしてきた男。

 

 そんな男が向こうから来たので、手厚く歓迎してやったが、結果はあの様だ。

 

 「だが、上に伝えれば、奴もただではすむまい」

 

 腐っても、ライン生命が関わる研究だ。

 そして素晴らしい研究成果も得た。

 それを潰した研究員。結果は見えている。

 良くて追放。悪ければ実験体行きだな。

 

 「ならばさっそく――――――君か」

 「どうもローキャンさん」

 

 正面の男―――フェルディナンドはそう言った。

 

 「ちょうどいい、君に――――」

 「ウチの研究員のことですね」

 「話が早いな。早速、ヤツを捕まえてもらいたい」

 

 彼の反応を見る。

 もしかするとヤツは私を殺すために。

 そんな考えが頭をよぎる。

 

 「まさか、優秀な頭脳のあなたと馬鹿な彼。比べるまでもない」

 「流石、主任。冷静な判断だ」

 「ではこちらに、迎えの車を待っています」

 「ありがたい」

 

 くたくたな足に鞭をうつ。

 私は、地下通路の光を目指し、必死に歩くのであった。

 

 ◇◆◇

 

 地上に出た先には、数台の車。ライン生命の物だろう

 

 「本当に感謝する。研究が発表されたら」

 「大丈夫ですよ、もう終わりますから」

 彼は、そう区切るように発言する。 

 

 周囲を取り囲むは、屈強な警備兵。

 服装はライン生命のモノだが。

 

 「遅かったなローキャン。各員捕まえろッ!」

 「なっ、話が違うではないかッ!」

 

 私は、警備課主任の登場に驚く。

 どういうことだ。

 保護をしてくれるのでは、ないのか!?

 

 「話とは、何のことですかな?」

 「私を選んだ、ということだ!」

 「ああ、貴方より賢い人はいますが――――アイツより馬鹿な奴(悪友)はいないので」

 

 私は、膝から崩れ落ちる。

 そんな、私にはナルシッサが。

 

 この、私を、捨てるというのか! 

 

 「話は済んだか。では、連れていけ」

 

 そうして、私は薄暗い監獄に収監された。

 

 ◇◆◇

 

 「で、どうして戻れたんだ」

 「全く、クリステンに感謝しておけ、クソガキ」

 

 横に座るはナスティ。

 正面には、ベッドで眠るロスモンティス。

 

 「んで体調は?」

 「数値は正常だな。後はいずれ目覚めるだろう」

 

 かなり無茶苦茶したが、無事で何よりだ。

 正直、彼女に魔法が変な影響残してたら、死にたくなるところだった。

 

 なにはともあれ、一件落着だな。

 

 「何が一件落着な顔をしている、クソガキ」

 「違うのか?」

 「当然だ。事件の内容、寝ている彼女のこと、クソガキの体について報告が山ほどあるぞ」

 「......フッ」

 

 思い浮かぶは、深夜に報告書を書く自分。

 悪いが俺は逃げるぞッ!

 

 傷だらけの体に鞭をうち、

 病室を飛び出す。

 

 「ミュルジスッ!」

 「了解よ」

 「甘いッ」

 

 右に回避し、ミュルジスを躱す。 

 貴様が隠れていることぐらい、把握済み!

 なにせ、かくれんぼの経験が違う。

 

 取っ手に、手をかけてドアを開ける。

 その向こうには、

 

 「げっ、サリアッ!」

 「フンッ」

 「へっ?」

 

 我らが警備主任様が、いたのであった。

 初手、カルシウムパンチは卑怯だろ。

 病み上がりの人間にやることか、これが。

 

 再び、病室に戻される。

 クッソ、頭が痛い。

 

 「クリステンに悪いと思わんのかクソガキ」

 「どうして、クリステン?聞いた話だと、主任の報告の後、サリアとナスティが――――――」

 「「いいから、それ以上口を開くな!!」」

 「ミュミュミュゥッ!!」

 

 ミュルジスは、口を押えられて暴れている。

 ああ、なんか言ってるが頭が痛い。

 

 その後、騒音でロスモンティスが目覚めてもう一波乱。

 皆一緒に、ライン生命の医療室から追い出されるのであった。

 

 今日もテラは平和である。

 

 

 




 ここまで読んでいただきありがとうございます。作者です。
 私語となのですが、狂人号が終わって寝たいのに、イベントが追加され夜しか寝れない日々を送っています。今回の話は、いい加減本編薦めたいのと、感想で他のキャラクターをちょっと期待されたのと、次話を期待するという思いにより生成されています。正直、ローキャンのキャラクターも良く分かってないですし、ローキャン水槽のことも詳しくないので妄想たっぷりとなっています。足りない部分は脳内で補完しましょう。
 では、前回も誤字報告ありがとうございます。今更、どうしてこんな文字を間違えてんだと頭を痛めつつ、修正しています。報告をくれる皆さまへこの場を借りて感謝を申し上げます。
 また、感想くれる皆様もありがとうございます。最近、モチベが終わってる作者ですがなんだかんだ書けるのは皆様のおかげですね。気長に頑張りたいと思います。
 では、良きガチャライフがありますように。
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