転生したら就活失敗おじさんだった件について   作:上殻 点景

13 / 20
ローキャンによる新たな人類の生成実験「ローキャン水槽事件(仮)」により、生体改造されたナルシッサ。それは、彼女の親族を犠牲にし、彼女の心に悲劇を生んだ。恐怖と残酷な実験を終わらせ、静かに空を見上げる人物がいた。ライン生命エネルギー課に所属するジェッセルトン・ウィリアムズと、エネルギー課の主任のフェルディナンドである。一方、ライン生命の医療室では、星の見えない部屋の空を見上げる彼女、ナルシッサの姿があった。混迷を極めるテラで、重なりあう彼、彼女らの視線の先に、何を見る?


-ROSMONTIS-

 ライン生命、エンジニア課、ラボ跡地にて、

 

 爆発した跡地にて、俺は窮地に陥る。

 横には、出血して気絶したナスティ。

 

 「ジェッセルトン投降しろ。今なら償える」

 「悪いがサリア。それは出来ない相談だ」

 

 俺は、そう吐き出す。

 周囲を囲むは、ライン生命の警備課隊員。

 正面には、警備課主任サリア。

 

 「よく聞けサリア。俺は悪くない」

 「いまさら、弁明か?見苦しいぞ」

 

 サリアは、聞く耳持たずだ。

 クッソどうすれば誤解を解ける。

 

 「貴様の罪は、エンジニア課の爆破。そして――――」

 

 サリアの凛とした声が通る。

 その声には、警戒、殺意、そして、

 どこか動揺が混じっていた。

 

 「ダメッ!おとうさんをいじめないで!」

 

 「――――他に言い分はあるか」

 「ロスモンティス。それ以上何も言うなよ」

 

 サリアの冷たい視線が刺さる。

 横にくっついたロスモンティスは、威嚇している。

 

 シャー、シャー威嚇する姿は、

 怖いというか、可愛い......

 

 じゃなくてだ。

 

 「いいかサリア。よく聞け――――」

 

 話は、3日前にさかのぼる。

 

 ◇◆◇

 エンジニア課、ラボにて

 

 「何用だ、クソガキ。暇じゃないから帰れ」

 「悪いが、真っ当な用だ」

 

 そう言って、背中のロスモンティスを見せる。

 すぐ隠れてしまうあたり、まだ他人が恐いか。 

 

 ナスティは、寝てなさそうで機嫌が悪い。

 また、資金繰りが悪化したか?

 

 「例の子か。生憎、ここは託児所ではない」

 「いや、この子の補助器具を作りたくてな」

 

 ロスモンティスを早期の救出は出来た。

 だが、彼女の状態は原作通り。

 記憶が欠落する。

 

 助けた以上、面倒は最後まで見るべきだ。

 故に、エンジニア課の力を借りに来たが。

 

 「断る。そんな金も、材料もない」

 「そこをなんとか、だ」

 

 俺は、再三懇願する。

 彼女が目覚めて数日、色々と試してみた。

 曰く、感染器官は脳と一体化。

 故に、下手に治せないのが問題だ。

 

 「努力は認めるが、他でやっていろ」

 「そうか、邪魔したなナスティ」

 

 断られてしまったものは仕方ない。

 次は、ミュルジスあたりに頼むか。

 最悪、クリステンの知恵だな。

 

 そう思い、帰ろうとするが、

 袖をロスモンティスに引っ張られる。

 

 彼女は、決心したように前に降りる。

 

 「どうした?早く帰れ―――」

 

 「その......ナスティおかあさん、お願い!」

 

 ロスモンティスは、頑張って声を出した。

 声は震えていたし、手はぎゅっと握っていた。

 

 だが、彼女は前を向いていた。

 

 その頑張る姿は、控えめに言って天使だった。

 

 「――――丁度、暇をしていたところだ」

 

 「おい、鼻血でてるぞ」

 「うるさいッ!で、何を作るんだ、クソガキッ」

 

 俺は、真顔で鼻血を垂らすナスティを咎める。

 大丈夫か、こいつ。

 とりあえず布を渡し、話を進める。

 

 「作るのは、携帯できる記憶媒体だ」

 「脳の代わりに記録か、悪くはない」

 

 だが、この計画には足りないものがある。

 

 記憶媒体の設計は、大体できている。

 鼻血を垂らしたウチの主任(フェルディナンド)が秒で作った。

 

 「だが、どうやって送受信するつもりだ?」

 「そこに便利なヤツがいるだろ」

 

 呑気に浮いているステッキを見る。

 どうせここに監禁されて、暇だろ。

 それがナスティの機嫌の理由な気もするが。

 

 「丁度、廃棄処分を検討していた」

 「なら、使っても問題ないな」

 『えっ、本人の人権は無視ですか?』

 

 浮いているステッキ(エメラルド)から抗議が届く。

 だが、貴様は一つ勘違いをしているな。

 

 「杖に人権はない」

 

 おとなしく素材にされろ。

 それか、廃棄だ。

 

 『でも、ろりっこは気が引けるというか』

 「育つまで待ちやがれ。可愛いだろ」

 『うーん、どうしましょうか』

 

 クソステッキは俺の周りを飛び回る。

 正直、やる気はなさそうだな。

 

 仕方ない、こうなれば実力行使―――

 

 「私も、立派な女の子ッ」

 

 ロスモンティスは、ふんすと意気込む。

 だがどう見ても、必死に背伸びをしている子供にしか見えん。

 

 クソステッキは、彼女を見定める。

 妙に、真剣だな。

 

 『......これは失礼しました、レディ。それなら、エメラルドちゃんも頑張っちゃいますよ~』

 

 クソステッキは、返答する。

 どういう心変わりだ。

 やはり、良く分からん代物だな。

 

 さて、準備に―――――

 

 「カワイイ」

 「それは、同意だ」

 

 いや先に、壊れたナスティを正常に、だな。

 

 ◇◆◇

 

 「と、いうことだ」

 「どういうことだッ」

 

 サリアから冷静なツッコミが入る。

 いや、そんなこと言われても困る。

 

 気が付いたら、ロスモンティスに懐かれた。

 気が付いたら、呼び方がおとうさんだった。

 

 それだけの話だ。

 

 後、エンジニア課が爆発したのは、クソステッキがご機嫌に魔法をブッパしたからだ。

 俺は、悪くない。

 

 「まあいい、話は署で詳しく聞いてやる」

 

 サリアは、拳を構える。

 隊員たちもにじり寄って来る。

 

 ロスモンティスがいる手前、暴力は困るが。

 仕方ない。そちらがその気なら、だ

 

 手にアーツを集め、集中。

 封印武器を―――――

 

 「奴にアーツを使わせるなッ、撃てッ!」

 

 俺は、飛んでくる矢を躱す。

 だが、同時に溜めたアーツも途切れる。

 そう簡単に、上手くはいかんか。

 

 「それは、迂闊だぞ」

 

 サリアが、目の前に。

 コイツ、あの一瞬でここまで距離を!

 

 「上等だッ!」

 

 迫って来る奴に合わせて拳を合わせる。

 カウンターでも、喰らって―――――

 

 「その程度で、私の盾を貫けるとでも?」

 

 俺の拳は、壁に阻まれるのであった。

 おいおい、皮膚も硬化できるなんて知らんぞ。

 

 「これで、私の勝ちだ」

 

 拳が、俺の顔に―――――

 

 「サリアおばさん、きらい」

 

 「ガハッ」

 「サ、サリアッ!?」

 

 その一言は、強烈だった。

 重く、切なく、辛く、

 何よりも、純粋であった。

 

 それは、万物を防いだ盾を貫通し、

 サリアの(ハート)を的確に貫いた。

 

 いくら、サリアでも時代には勝てなかった。

 

 「え、衛生兵ッ!」

 「ダメです。立ったまま死んでいます」

 「まだだ、抜けた魂を押し戻せッ!」

 「はっ、はい」

 

 こうして衛生班、警備課、おじさんの努力によって何とかサリアは一命をとりとめた。

 ただし、本人は1週間の休暇を貰った。

 

 どうやら傷は深かったようだ。

 

 ◇◆◇

 

 私の名前は、ナルシッサ、らしい。

 らしいというのは、紙に書かれていたからだ。

 正直、記憶がないので分からない。

 

 私には、変な男の人がいる。

 彼は、起きてからずっといる。

 

 「なんだロスモンティス?腹減ったか」

 

 彼は私をロスモンティスと呼ぶ。

 意味は分からないが、ロスモンティスらしい。

 

 「その......」

 

 彼はずっと頑張っている。

 私の症状を知ってから、ずっと、だ。

 

 「......別に頑張らなくてもいい、から」

 

 本当に、そう思う。

 

 なぜ見ず知らずの私にそこまでするのか。

 どうして、こんな私を助けようとするのか。 

 

 きっと罪なのだ、この症状は。

 家族を奪ってまで生きた、私の。

 

 「だから―――――」

 

 髪をぐしゃぐしゃされる。

 

 「ガキンチョが、細かいこと気にすんな」

 「でも――――――」

  

 「―――いいか!ガキンチョは食って、寝て、遊んで、明日のことだけを考えてりゃいい」

 

 おじさんはご飯を作りに行ってしまった。

 ぐしゃぐしゃな髪には、ほんのり熱が残る。

 

 その後、おじさんは私と、

 食べて、

 出かけて、

 遊んで、

 話して、

 私は寝た。

 

 おじさんは、今日も頑張っている。

 

 布団は、今日も温かい。

 天井はちょっと明るい。

 

 おじさんの言葉を思い出す。

 ぶっきらぼうな、何気ない言葉だ。

 明日には忘れるかもしれない。

 

 だが、この決心だけは――――――

 

 この体は元には戻らないかもしれないけど、

 

 「私も、頑張る」

 

 私の名は、ロスモンティス。

 頑張るおじさん(おとうさん)のために、頑張る女の子(ロスモンティス)だ。

 




 ここまで読んでいただきありがとうございます。作者です。
 今回のお話は、ロスモンティスを動かしたかったのと、ロスモンティスが可愛かったのと、いつか交換したいという願いを込めてできました。
 さて私語とですが、皆さんは尖滅試験作戦、進みましたか?私は300を超えないあたりから絶望しています!あまりの絶望にドロシーで一本書けそうなレベルですね。攻撃力といい、体力といい、色々おかしい。ちょっとゲーム内でおじさんが欲しくなったのは内緒です。槍でパワードスーツを即死させろ。
 さて、前回も誤字報告ありがとうございます。「ナルシッサ」を「ナッシルサ」と書いた当たり頭がハリポタにでも毒されていますね。本当に助かりました。これからもよろしくお願いします。
 また、前回も感想ありがとうございます。やっぱり、次の話を期待されるとなんだかんだ書いてしまいますね。感想をモグモグして、モチベにしております。
 では良きガチャライフがありますように。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。