転生したら就活失敗おじさんだった件について   作:上殻 点景

14 / 20
ライン生命の研究員のジェッセルトン・ウィリアムズは焦っていた。(極度の過労によって)おじさんとナスティだけになったエンジニア課は、3人1チームで戦うライン生命パワードスーツ選手権のエントリーすらままならない。そんな中、おじさんの前に───が現れる。


風を呼ぶおじさん

テラの寒さも厳しくなるこの頃。

何故かエンジニア課で、酷使されるのは俺だ。

 

「『ハックションッ』どうして空調が無いんだ」

「諸事情だクソガキ。寒いなら手を動かせ」

 

そう言いナスティと簡易暖炉を奪い合う日々でだ。

この寒さ、今夜は熱燗か───

 

「───馬鹿(フェルディナンド)はいるか!」

「あッ?俺は忙しいんだ。後にしろブッ

 

前が、前が見えん。

顔に、顔に衝撃がッ。

 

思わず地面でのたうち回ってしまう。

いつから、ライン生命にはゴリラが出没するようになった。

人にこんな無法が許されて良い訳がないだろ。

 

「すまない。できれば穏便に済ませたい」

「穏便に済ませろよ」

 

顔に一発入れて言う言葉か。

最近のゴリラは、穏便という言葉を知らないらしい。

 

凹んでしまった顔を戻して、前を見る。

 

前にいたのはゴリラではなく、

もちろん、サリアさんである。

「で、何用だ」

「うむ実は、私はある人物と劣悪な関係になってしまってな、それは私が意図したことではなかったのだが、結果としてそうなってしまい......(意訳:ロスモンティスと仲直りしたい)」

「ああ、だいたい分かった(理解:邪険な職員と仲直りしたい)」

 

大方、サイレンスあたりとでも喧嘩したか?

 

だが、いきなり某先生(ケルシー先生)のような長文を話さないでもらいたい。

キャラがぶれているというか、なんというか。

今日のサリア、ポンコツだな。

 

「全く、主任様がそんなことで悩むな」

「なら、どうすればいい?」

 

サリアは、希望を見つけたように言う。

俺は、おもむろに机の下を漁り取り出す。

 

「いいか、困ったら酒だ。酒をキメろ」

 

隠していた酒をサリアの手に握らす。

20年物の上物だ。

こいつを飲めばどんな奴も冗舌になって一瞬だ。

 

「どうした感動して何も言えんか」

「没収だ」

「おまッ、ソレいくらしたと思ってるんだ」

「ラボに酒を持ち込むな、馬鹿者がッ」

 

我が主任の金で買った(もちろんナイショ)1万龍門幣の酒が。

後で、警備課にでも請求しておくか。

 

そもそも、ラボの酒なんぞ。

アルコール類と変わらんだろ。

 

「全く、論外だ。ナスティいい案は無いか?」

「私か?断る。クソガキと一緒にするな」

 

流石、ナスティ。

利益にならないことはしない精神。

いいぞ、その横暴なゴリラにわからしてやれ

 

「次回の予算の掛け合いを手伝ってやる」

「仕方ない。今回だけだ」

 

おい、ナスティ。

なに寝返ってんだ。

もっとゴリラをわからせろ。

 

「古来より仲を戻すための確実な手段は道具だ」

「つまり、モノで懐柔すると」

「察しがいいな。必要なのは───」

 

ナスティは、奥から物を取り出す。

アレ、なんか見たことがあるな。

 

「エンジニア課の特製、催眠アプリだ」

 

ナスティは、サリアの手に端末を握らす。

クリステンを洗脳して資金獲得をするため作ったアプリ。

実際は、自分より強い相手には効かないなど、欠点がある物だが。

 

サリアが使えば、だいたい洗脳できるだろう。

流石、ナスティである。

 

「どうだ感動で何も言えんか?」

「......(ビキッ)」

「なっ、我が課の予算獲得アイテムがッ!」

「これも没収だ」

 

無慈悲にもサリアの手の中で潰される端末。

借りた予算突っ込んだとか言ってなかったか。

後で洗脳すれば大丈夫とか言って、無駄に凝った思い出が。

 

きっとナスティのことだ何か――――

 

(膝から崩れ落ちるナスティ)

 

ダメそうだな。

 

「エンジニア課、外まで聞こえているぞ」

「フェルディナンドか、丁度いい」

 

そんなところを通りかかる我が主任。

正直、嫌な予感しかしない。

 

「何が丁度いいのか疑問だが、サリア?」

「お嬢様曰く、仲直りの方法が知りたいんだとよ」

 

俺の言葉に、フェルディナンドは表情を変える。

 

「......フハハハハハッ」

「何がおかしい」

「いや、すまない。天下の警備課主任がそんなことで悩むとは」

「ほう?では何かいい案があるのか」

 

自信満々に語るフェルディナンド。

その顔はいつもより3倍輝いていた。

さては、何かいいことがあったな?

 

「もちろんだ。どんな時もこいつに限る」

「これは───」

 

フェルディナンドは、懐に手を入れ

 

「──20万龍門幣だ」

 

サリアに札束を手渡す。

流石だ。デキる主任は違う。

俺なんか20万もあったら秒で溶かしているぞ。

それを、こんな簡単に渡すとは。

 

「フンッ」

「何をするサリアッ。私のボーナスだぞ!」

 

フェルディナンドのボーナスは暖炉にくべられる。

心なしか部屋が少し暖かくなった気もするな。

 

「聞く人間を間違えた。他を当たる」

 

そう言って、サリアは去っていく。

残されたのは、絶望するフェルディナンドと

横たわるナスティのみ。

 

「いや、この状況どうすんだ」

 

せめて介抱か介錯してくれ。

 

しかし、サリアが仲直りを、か。

......まさかな。まさかかもしれん。

 

「やれやれだ」

 

◇◆◇

 

「ということがあってな」

「どう考えてもアンタの言い方が悪いでしょ」

 

ミュルジスにそう諭されてしまった。

確かに私の言葉足らずなところがあったかもしれない。

 

だが、相手に酒、洗脳、金だぞ。

いつからライン生命は世紀末になったのだ。

もっと警備を厳重にする必要があるのか。

 

「あの子と仲直りねぇ。生憎、専門外のなのよね」

「うむ。しかしな......」

 

前回のあの一件から距離をとられてしまっている。

具体的に言うと、近づけば威嚇され、物で釣ろうとしてもそっぽを向かれる。

 

正直、ツライものがある。

 

「そういうのって、本人に聞いてみるのが一番じゃないのかしら」

「うぐっ、それができたら苦労しない『ピポーン』むっ」

 

懐の端末が揺れる。

どうやらメールのようだ。

 


警備課主任サリア様

ジェッセルトン・ウィリアムズより

 

誰かのせいで、片付けが終わらん。

代わりに、ロスモンティスの面倒を頼む。

 

P.S.今度、酒を奢れ。


 

「すまない、急用ができた」

「ハイハイ、気を付けて行ってきなさいよ」

「もちろんだ」

 

サリアは駆け出す。

その顔はいつもの警備課主任であった。

 

「全く、人騒がせなサリアね

 

ミュルジスは、一人そう呟くのであった。

 

◇◆◇

 

「という訳で面倒を見に来た」

「どういうこと?」

 

メールを見して彼女を納得させる。

危ない。メールが無ければ即死だったな。

 

ドアを開けた瞬間「おとうさ......じゃない、おばさん」は心に効いた。

 

「だが面倒といっても何をすれば」

 

洗濯物は畳んで、部屋の掃除もされている。

本当に、何をすれば────

 

「───お腹が減った」

「任せろ。料理なら得意だ」

 

学生のころはよく一人で作った。

ミュルジスには負けるが、料理の腕はクリステンと同等と自負している。

 

「どのカップ麺がいい?」

「それは料理とは言わないんじゃ?」

 

少女の発言に膝をつく。

そんなはずは、我がライン生命一番の料理だぞ。

 

「確か、冷蔵庫に食事が」

「すまない」

 

少女の手を借り立ち上がる。

キッチンの横には大きめな冷蔵庫が。

馬鹿も料理をするのか?

 

中を覗いてみると二人分の食事。

 

「極東風ナノテク割烹料理か」

 

なかなかに手が込んでいる。

出来立てではないにも関わらず、よだれが垂れてくるな。

ありがたく、頂くとするか。

 

◇◆◇

帰ってきたのがおとうさんじゃなくて、

おばさんだった時はびっくりしたけど。

この人も悪い人ではないみたい。

 

メールを見せて必死に説得しにきたり、

頑張って料理を作ろうとしたり、

なんというか変な人だ。

 

そうやって、ご飯を食べて、シャワーを浴びた後のこと。

 

「何か欲しい物はないか?」

「欲しいもの?」

「仲直りというやつだ」

 

そう言うおばさんは、思い出とは違い弱弱しく見えた。

 

別に怒っては無いんだけど。

あの時の戦いで私はそんな感じに見えたのだろうか?

 

「その、できれば渡せる範囲で頼む」

 

うーん。

別に、金や食べ物には困ってはないし。

私が欲しいもの?

 

おばさんにはあって、私には無いもの。

 

「───なら、誰かを守れる強さが欲しい」

「......それは全て渡せるとは限らんぞ」

 

おばさんは私を見据える。

答えを待っている番人みたいだ。

 

「大丈夫、私は誰かのために頑張るから」

「そうか」

 

その発言を聞いておばさんは頷く。

その瞳は、鋭くとがっていたけど、どこかやさしかった。

 

明日からまた忙しくなるかもしれない。

明日から挫けそうになるかもしれない。

それでも私は、頑張る。

 

「───ならば、まず呼び方からだな」

「へっ?」

「先生......は違うな。やはり師匠だな」

「何を言ってるの?おばさ「師匠!」......はい、師匠」

「ならばよし。訓練は明日からだ......弟子、よ」

 

やっぱり、ちょっと不安だ。

 

◇◆◇

エンジニア課、ラボにて

 

「今日は帰ってもいいぞ、クソガキ」

「悪いが今日帰るのはナシだぜ、ナスティ」

「夕食を気合入れて作ったと豪語していただろ」

「一人分作り忘れたからな。問題ない」

 

「そうか......飲みにでも行くか」

「......もちろん奢りだぜ」

「サリアにでもツケておけ」

 

こうしてテラの夜は明けていく。




 ここまで読んでいただきありがとうございます。作者です。
 久しぶりの更新ですね。まさかこのタイミングで体調不良になるとは思いませんでした。まさか抗生物質を飲んだら効きすぎて動けなくなるとは。このリハクの目をもってしても見抜けませんでした。
 今回の話は、前回のおばさんおじさん呼びが直撃した人がたくさんいたので、何とか呼び方治せないかなぁってことで生まれた話です。それ以上に特に深いことはありません。キャラが崩壊してるのは許してネ。
 さて、私語となのですが、実はファンアートを貰いまして、うっきうっきな作者です。ただ初めてもらったもので、どうすればいいんだろと現在進行形で考えています。えっ、アークナイツのゲーム......ログインはしたからセーフです。まさかドロシーに心折られたワケ、ないじゃないですか。今日引退。明日復帰の予定です。
 さて前回も誤字報告ありがとうございます。どうして間違ったんだろと毎回頭を悩ませながら、皆様の報告で修正しています。本当に助かっています。
 また、前回も感想ありがとうございます。ベットで横たわりながら感想で紋々としていました。皆様の感想が書くモチベになっています。
 では、良きガチャライフがありますように。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。