ライン生命、???
そこは、漆黒に囲まれた空間。
赤く光る石板に囲まれるは1人のおじさん。
おじさん──ジェッセルトン・ウィリアムズは手を組み。
伊達メガネを光らせる。
周囲の石板から、声が響く。
「ジェッセルトン君、今日の計画のほうはどうかね」
「おおむね、順調です」
おじさんは答える。
「だが、この費用はどう説明する」
「誤差の範囲内かと」
「──50%越えが、誤差だとッ!」
石板から叱責が飛ぶ。
現場を知らない奴らめ。
特殊弾の製造にいくら金がかかると思ってんだ。
「落ち着け。彼は今までやってきた実績がある」
「......今回だけだ」
議長のおかげで難を逃れたか。
最終段階での計画中止はこちらとしても望んではいない。
「安心してください。物資の運搬は順調です」
「頼んだ。貴様には我々の悲願がかかっている」
気づけば、石板は消え、
周囲に灯りがともる。
計画自体が利用されているとも気づかないとは呑気なものだ。
「全てはラインのシナリオ通りに」
静かに、おじさんは立ち上がる。
◇◆◇
クルビアの日は落ち、夜が顔を出したころ。
エネルギー課ラボにて。
今日も多くの研究員たちがレポートや実験と戦っている。
だが、主任は違った。
「すまんな、職員達。今日は先に上がらせてもらう」
「お疲れさ.....主任もしかして」
挨拶をした研究員は、今日が何の日かを思い出す。
今日、12月25日はクリスマス。
ラテラーノの神聖な文化らしいが。
クルビアでは、どこで間違ったのか恋人や子供と楽しく過ごす日と解釈されている。
「悪いが、私には待っているレディーがいるのでね」
フェルディナンド主任は、笑顔で返す。
笑みの下には、女性との妄想があるのか。
仕事が終わらない俺たちを見下しているのか分からない。
「コレは、君たちへのクリスマスプレゼントだ」
「甘い香り?チョコですか」
手に渡されたのは、銀紙に包まれた物体。
内部からはカカオの香りが漂う。
「何、ささやかなモノさ」
主任は、一人一人にチョコを配っていく。
彼なりの気遣いなのだろうか。
主任、自らが渡すとは。
それともよほど嬉しいことでもあったのか。
「ジェッセルトン君。君にもクリスマスプレゼントだ」
「何だ?俺は忙しい──」
主任は、書類の束を投げつける。
はた目から見ただけでかなりの量がある。
「──追加のレポートだよ。明後日までに頑張ってくれたまえ」
紙束を渡された研究員は、暗い。
きっと絶望しているのだろう。
当然だ、2日で終わるわけがない。
クリスマスどころか、日の目だって拝めない量だ。
「ではなッ、諸君。良きクリスマスを!」
フェルディナンド主任は、高笑いをして出ていった。
手に残されたチョコを見る。
市販品の安物のチョコだ。
こんなモノ。
こんなモノをもらってうれしい自分が......悔しい。
大人になれば、クリスマスは家族と過ごすと思っていた。
仕事が終われば暖かい家が迎え、娘に会える、そんな日々を想像していた。
だが現実はどうか。
俺は、今日も研究室に籠り、今日を終えようとしている。
所詮、俺は家畜だ。
企業に飼われる家畜でしかないのだ。
仕事に戻ろう。
書類を手に取ろうとしたとき──
「
絶望していたはずの研究員から声がかかる。
◇◆◇
夜のクルビアに赤い服を着た連中が走る。
赤は、夜のクルビアを飛ぶように駆ける。
人々は「サンタだァ」「何言ってるの」「本当だって!」
彼らを気にする様子はない。
赤い連中は街の中を進む。
「Jに通達。
「同伴者は他会社の女性。詳細はいりますか?」
「ゴミ箱に捨てておけ」
俺は、冷徹に言う。
多数のモニターが輝き、室内を照らす指令室に、幾多の言葉が飛ぶ。
数人のオペレータが忙しなく動き、見据えるは一人のおじさん。
全員がサンタの格好でなければ、秘密基地のように見えるに違いない。
「
「狙撃指示を待たせろ」
対岸のビルに陣取る青い点。
だが、狙撃には
「
オペラ交じりの音声が響く。
音が遠いが、問題はない。
『今日は、おいしい料理ありがとうございます』
『そうだな。最後に渡したいものがあるんだ』
モニターに映る赤い点が止まる。
『これはサプライズだよ──「
バッァンッ!!
『きゃあああッ』
「
「次だ。
「了解」
クリスマスの夜は、リア充の悲鳴に染まる。
◇◆◇
サンタがひしめく、指令室。
「
「現在、
「よし、現状を維持しろ」
一回りデカい点は、警備室にいるな。
ロスモンティスには悪いが頑張ってもらいたい。
クリステンは、会食パーティに参加中。
ミュルジスに至っては庭園に籠ってやがる。
クリぼっちとは悲しい奴め。
計画に支障はない。
このままライン生命のリア充どもを
「Jに通信。警備課の連中が嗅ぎまわってます」
「まずいんじゃないか?」
副指令の
心なしか付けヒゲも震えている。
怯えすぎだ。
今日のためにどれほど準備をしたと思う。
「28か所だ」
「へっ?」
「通信所のダミーは28用意した」
「さ、流石だ。奴ら、ここを見つけるころには日が昇ってるぜ」
だが、それでいい。下手に怯えられると指揮に関わる。
「交代の時間だ」
「見回り遅かったじゃないか」
「ああ、少し手間取ってな」
視界の隅で、隊員の出入りが起こる。
──赤い服はやはり目立つな。
時計を見る。
想定より、5分遅れ、か。
隊員が、時間を少し過ぎたことは問題ではない。
問題は──
「ところでJ。君がそうか?」
「なぜそんなことを聞く──警備課」
やけに染みついた硝煙の匂いだ。
「誤認逮捕は、名が廃るからな」
赤い服が翻る。
付けヒゲを取り、現れるは銀髪のヴイーヴル。
冷たい瞳が俺を貫く。
『Jッ大変だ。
「安心しろ、肉眼で捉えている」
無線に返し、通信を切る。
横の
「馬鹿な、28のダミーだぞ。どうやったんだ!」
サリアが持つ白い袋から、28個の無線機が落ちる。
「筋肉は全てを解決する」
「総当たりだと......本当に人なのか」
妥当だ。
常人には不可能な行為。
普通なら情報を精査し、発見する手段を取る。
常識を無視し、非常識を貫く。
それがサリアという生き物だ。
「だが、主任とはいえ一人だ。数で潰せ」
周囲の人間に指示を出す。
全員で20人弱。
エンジニア課からパクった武器で、武装も完璧だ。
「一人で本拠地に乗り込む馬鹿がいるか「ドンッ」」
響き渡る重低音。
破壊される周囲の建物。
オイオイ......
黒いパワードスーツだと。
しかも妙なオーラまで感じる。
「サプライズにしては足りてないぜ」
7、8、9...3人で1体相手でも足りんか。
最新装備とはいえ、新兵だ。
流石に荷が重すぎるぞ。
「なに、4人に1つでも十分だろう?」
サリアは、見透かしたように口を開く。
だが、妙だな。
本社のパワードスーツには工作したはずだ。
修理には3日はかかる。
どこからひっぱって来やがった。
──サリアは、答え合わせのように言葉を紡ぐ。
「貴様らに問う、我らは何だッ」
「「「我らライン、ラインの科学考察課なり」」」
「ならば科学考察課。貴様らに問う、右手に持つものは何だッ」
「「「裂浪と光明の躯なり」」」
(HP-25%、配置時間-50%、灯火-3)
「ならば科学考察課。貴様らに問う、左手に持つものは何だッ」
「「「源石推30とコイン式おもちゃなり」」」
(攻撃速度+18)
「ならば科学考察課。貴様らは何だッ」
「我ら
「我ら臨時特殊なり。ラインの高速再配置組なり」
「
「よろしい、ルートビアを決めろ。撃鉄を起こせッ」
一斉に、パワードスーツに火が入る。
主任様もやる気と来たか。
クリスマスに邪魔をされてキレそうってか。
だがな、こっちにも負けられない理由がある。
「上等だ。総員ここを死地と捉えろ──」
武器を作り、構える。
はいた息が、白い。
聖なる夜の戦い。
敵は、強大。味方は少数。
いいぜ、気に入ったッ!
「──
「「「
撃鉄が下される。
◇◆◇
「全く、戦力差を見誤る貴様ではないだろ」
「うるさい。理由があったんだよ」
「この馬鹿を、連れていけ」
3日は、拘置所で反省が妥当か。
暴れる
「あとは任せるか」
隊員が乗り込んだ車を見送る。
科学考察課やミュルジスへのお礼も必要だ。
こちらも、こちらで────
馬鹿がいた場所に、かわいらしい封筒が残る。
大方、さっきの争いで落としたのだろう。
「
切られた封をちぎり、中を見る。
サンタさんへ、
おもちゃや食べ物はいらないので
おじさんと遊べる日が欲しいです。
ロスモンティスより
「馬鹿な理由で、馬鹿な騒ぎを起こしてくれる」
思わず頭を抱える。
ため息を1つ吐き、通信機のボタンを押す。
『あーミュルジス、聞こえるか?』
『どうしたのサリア?聞こえてるわよ』
『──水分身を貸してほしい、以上だ』
今日もテラの夜は明けていく。
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者です。
新しいイベントが始まり、また民間人にキレる季節が始まりました。停滞するシラクーザなら死んでいるところだぞ定期。
さて私語となのですが、投稿しようとしたらスマホが壊れました。朝起きたら、リアルGGちゃんに転生したのではと期待した作者です。そんなこんなで、新スマホと戦いながら日々を生きています。
さて、前回も誤字脱字報告ありがとうございます。書き方を変えると誤字脱字も、比例して増加しました。あとがきまで誤字るのは聞いていないです。
また、前回も感想ありがとうございます。クリスマスの話なのにクリスマスに投稿されていないのは作者がリア充だからですね。決して、イベントでクリスマス潰したとかそんなわけないじゃないですかァ。
では、よきガチャライフがありますように。