転生したら就活失敗おじさんだった件について   作:上殻 点景

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 平和なライン生命本社。
 ここでの就活失敗おじさんの犯罪の情報を得て、サリアはおじさん捕縛を開始する。
 平和なライン生命本社が一瞬として戦場と化した。
 エンジニア課が調査されるその瞬間に居合わせたおじさんがいた。
 おじさんはそこで、ライン生命の警備課主任サリアと邂逅する......!


偽りのおじさん

 「ナスティ主任、食べ物はないのか?」

 「小僧が......勝手に食堂にでも行ってこい」

 「食堂に行けたら苦労せん」

 

 この主任、俺がサボってここにいるのは知ってるだろ。

 それもこれも、脱衣弾の制作費用代わりに、

 俺をこき使っているナスティ主任のせいなのだが。

 

 そもそも、この時間に食堂に行くと、

 悪友(フェルディナンド)ゴリラ(サリア)にエンカウントからの

 死が妥当だ。

  

 「......栄養バーで我慢しろ」

 「バーじゃ、腹の足しにもならんのだが」

 

 そう言って、見せられたのは、不穏な名前

 1本逝っとく?Mon3trバー!

 

 不味すぎて、ウチでも不評な奴じゃねえか。

 嫌がらせか。

 

 「私の昼飯だぞ」

 「......おいしく頂かせてもらう」

 

 断りずらいのは、やめてほしい。

 こんなもんを昼飯にするとは、

 イカれた味覚の持ち主か、金欠か

 

 俺は、後者で味を知ったが

 

 仕方なく、いただくが一口入れた時に広がる

 ケミカルでモンスターな味。

 まるで口の中で化け物が暴れまわっている

 ような感覚に襲われる。 

 

 ―――――クッソマズイ

 

 こいつは、不味さをごまかすためにも、作業に集中だな。

 手元のパーツをくみ上げるのに精神を割く。

 

 だが、そんな姿は面白く見えたのか知らんが、

 横から影が差す。

 

 「それで、お前はさっきから、何を作っているんだ?」

 「何を、っていうほど大したもんじゃねぇ」

 

 バーを無理やり、飲み込み、

 手を止める。

 

 彼女の前には、バラされた簡易重力装置。

 周囲には、凹凸のある大小さまざまなパーツ。

 

 そして、俺の目前には、原石(源石)を用いた機器。

 

 「原石(源石)を用いた道具。これは、もしや――――――」

 「――――そう、暖房付きウォッシュレット便座だッ」

 「いや、なぜそうなる」

 

 いや、どこからどう見ても、

 T〇T〇のウォッシュレット付きトイレだぞ。

 

 しかも、原石エンジンで便座が温かくなる。

 

 「いいか、ナスティ主任。こいつは革新的だ」

 「どこが革新的だ」

 

 胡散臭い目をする主任。

 確かに、温かい便座がなんだと思うかもしれない。

 だがッ、それは間違いだ。

 

 「これでゴリラに追われてトイレに籠る羽目になっても、

  冷たい便座の中、耐久しなくても良くなるッ!」

 「状況が限定的過ぎるだろ」

 

 「さらに、こいつだ」

 

 そう言って、手のひらサイズのいびつな機械を見せる。 

 

 「なんだこの機械は、蓄音機か?」

 「流石だ。こいつは蓄音機を改良した【音プリンセス】

  ――――なんと、トイレで音楽を流せる」

 「だから、どういう需要だ」

 

 さらに懐疑的な目で見るナスティ主任。

 だがこいつは、迫りくるゴリラの怖さを知らないから

 そんな目で見れるのだ。

 

 「こいつがあれば、ゴリラに追われてトイレに逃げ込んだ時、

  音楽で心臓の音が消せる」

 「それは、本当にゴリラなのか?」

 

 呼吸の音までは消したが、まさか、心臓の音で

 場所を特定されるとは思わなかった。

 サリアの耳は、デビルイヤーかもしれん。

 

 「......いや、まて、ゴリラは男子便所まで入っていくのか」

 「ああ、女子禁制の場所だろうとお構いなくだ」

 

 トイレどころか、男性用の更衣室。

 シャワールームまで入って来やがった。

 

 あのゴリラに、プライバシーという文字は存在しない。

 

 「最近のゴリラの進化はすごいな」

 「全く、紳士な俺を見習ってほしいものだ。

  しかたなく、前回は逆に――――」

 

 「――――見つけたぞ、ジェッセルトンッ!

  貴様には、女子トイレ覗きの疑いがかかっている」

 

 ......全く、紳士な俺が、

 覗きなんてするわけがないだろ。

 

 心なしか、ナスティ主任の目が冷たい気もするが

 とりあえず挨拶代わりに、

 

 ――――――飛んでくる拳を躱す

 

 「全くの誤解だ。ゴリラから逃げようと

  女子トイレに逃げ込んだんだ。

  覗きがしたかったわけじゃない」

 

 アレは、エネルギー課でリアル格ゲーの大会をした時だったか、

 庭園で焼き芋を作った時だったか、忘れたが、

 とりあえず仕方なかったのだ。

 

 ――――――回し蹴りを、後ろに回避する

 

 「だが、ミュルジスから証言があるぞ」

 「あれは、不慮の事故だ」

 

 逃げるため隠れていた女子トイレに

 ミュルジスが入ってきたのだ。

 むしろ、覗かれたのは俺の方だ。

 

 よって、捕まえるならミュルジスが妥当だろ。

 

 ――――――目前の拳を、左手で逸らす

 

 「そうか、なら私のことをゴリラと呼ぶ噂と

  ついでに警備課で話は聞かせてもらおう」

 「私怨で捕まるのは勘弁なんだが」

 

 狭い室内では、ジリ貧か。

 どうにか後ろのドアから逃げたいが、

 サリアに阻まれたままである。

 

 手にわずかにアーツを集中させる。

 バレずに生成して脱出するには、

 もう少し時がいる。

 

 なら、言葉で稼ぐか―――――

 

 「ゴリラをゴリラと言って何が悪い」

 「失礼な奴だ。私だって――――――乙女だぞ!」

 「ゴリアが、何を言ってやが......ぐッ」

 

 直線的な動き、回避し......

 体が、動け、ない、だと。

 

 この、魂を縛られる感覚......呪術か!

 

 「手間をかけさせた、ナスティ」

 「流石に、悪口は見逃せないな。

  ちょっと、叱られてこい」

 

 視線の先には、

 骨筆を器用に回すナスティ。

 

 バンシー由来の呪術とは、やってくれる。

 

 「う、ら、ぎり、ものォ」

 「なんとでも言え、夕食は警備課に差し入れてやる」

 

 そうして、俺は警備課にドナドナされるのであった。

 

 ◇◆◇

 

 屋上に刺す、光が目に染みる。

 

 「ったく、ひでぇ目にあった」

 

 結局、反省文、懲罰作業、謝罪

 の三連コンボを決め、

 解放されたのは朝。

 

 当然、夕食は食わしてくれなかった。

 許さんぞ、サリア。 

 

 復讐に燃える光に

 照らされるは一つの影。

 

 俺の影にしては、細いほそい影。

 

 「意外と元気そうだな」

 「これが元気そうにみえるか元凶さんよ?

  そいつは病院を紹介するぜ」

 

 服はよれよれ、顔は隈、頬はげっそりだ。

 元気な要素を見つける方が難しいんじゃないか?

 

 「だが、目は生きている」

 「やせ我慢だ。男の子は意地っ張りだからな」

 「そうか......また1つ学ばせてもらった」

 

 ああ、光が目に沁みやがる。

 さっきまで、暗かったくせにもうこれだ。

 空は、鳥どもが元気に飛んでやがる。

 

 クソッタレな一日が、また始まる―――――

 

 「―――――お前は、空を飛べると思うか?」

 「突然だな。そいつは、人が物理的に、てか?」

 

 それなら、可能だな。

 サリアに空高くぶっ飛ばされたことなら、何度もある。

 まさか、ライン生命の建物を上から

 拝めるとは思わなかったが。

 

 「いや、そうではなく、都市がだ」

 「飛べるさ」

 「――――――理由もないのに、断言するのだな」

 

 主任は訝しむように、こちらを見る。

 全く馬鹿なことを聞いてくれる。

 

 「理由か?俺がそうだ」

 

 前世で、金属の塊が飛んでんだ。

 オカルト、オーパーツ何でもありの世界で

 都市が飛ばないわけがないだろ。

 

 「この話で、笑わなかったのは、お前で2人目だ。

  そして、肯定したのは、お前が初めてだ」

 「そいつは結構。賞品でもくれんのか」

 「栄養バーならあるぞ」

 

 そうして、主任のポケットから取り出されるは、

 昼にも見たクソ不味いバー

 

 正直、腹は減っているが、勘弁してほしい。

 

 「主任の朝飯ならやめておこう」

 「安心しろ2本ある」

 

 そう言って、差し出された栄養バーを受け取る。

 

 口の中に広がるケミカルな味。

 拙い不味さでもあるが、

 ――――あるが、腹は膨れた。

 

 きっと、今の俺は百面相を呈しているだろう。

 

 「アンタは、食べないのか?」

 「生憎、まだお腹は空いていない。

  なに、私は満足したからな」

 

 人の嫌な顔を見て満足とは、

 ずいぶん悪趣味なこった。

 

 大方、サリアにでもドヤされたか?

 そんな思考から抜けきると、

 影は一つになっていた。

 

 

 「さて、代わりの朝飯でも買うか」

 

 空に跳ぶ主任の呟きは、

 空を飛ぶ鳥の呟き、

 より劣る。

 

 今日もテラは、変わらない。




 ここまで読んでくださりありがとうございます。作者です。
 私語となのですが、別のゲームに現を抜かしていたら、限定ガチャが終わっていました。天井まであとわずかな気もしますが、財布の中身が薄くならなかったのでセーフとします。ところで、この三角のマークがついたカードはどうすればいいんでしょうか。薪にでもくべますか。皆様は、期日には気をつけてください。
 そんなこんなで、誤字報告ありがとうございます。チェックはしてるんですが、書き直したりするとどうしても誤字りますね。なので、皆様の報告は本当に助かっています。この場を借りてお礼を申し上げます。
 前回も、感想ありがとうございます。やっぱり、感想をもらうと書くモチベが上がりますね。本当に助けられています。
 では、良きガチャライフがありますように。
 
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