私は、しがないライン生命の研究員
――――そうね、名前はSとでもしとこうかしら。
いつものように何気もなく、ラボに向かっていたら
私は聞いてしまった。
『ジェッセルトン、今、暇だな』
『手に持っている書類がみえんのか』
『回答はYesかイエスのみだ。という訳で、(実験に)付き合ってもらう』
――――サリア主任の、
あの堅物で有名なサリア主任に春がきていたなんて。
これは、乙女な研究者として失格ね。
でも、相手の気持ちを考えずに無理やりなんて、そんなの良くないわね。
いや、でも、盗み聞きはよくないわ、サイレ―――――
でも、私の輝かしい頭脳がこの話を分析するべきだと。
これは、仕方ないことよ。
そう、乙女の恋心の研究のためには仕方ないことなの。
『で、今回は、どこに行くんだ?』
『今回は、夢の世界だ』
『冗談だろ?』
夢の世界......つまりディ〇ニーランドってことね。
テラのどこかに存在する人気のテーマパーク。
――――――僕らは君たちの心の中にいるのさ、ハハッ。
今、脳内に黒いネズミが......
落ち着きなさい私。
それよりも、もうそんなに進んでいるなんて、この私の目を持っても見抜けなかったわ。
てか、お相手は誰かしら?
やっぱり、安直にフェルディナンド主任?
いや、ジャスティン主任もありね。
それとも、クリステン、主任......
そんな、禁断の恋なんてッ。
あー、いけません。サリア主任、いけません。
そんな、薄い本が厚くなってしまいます。
おっと、こっちに来てるわね。
隠れるついでに、相手を確認させてもらおうかしら。
『一体、誰がそんなことを考えたんだ』
『計画はドロシー主任が考えた』
計画はドロシー主任に立ててもらったのね。
他人に任せるなんて、天才だと思っていた主任にもできないことはあるのね。
そこまで熱烈なお相手は一体......黒い服、白衣、そしてぼさぼさの短髪
あ、あれは、ラインの悪魔ッ!
ラボで爆発事故を起こすのは日常茶飯事。
エネルギー課の主任を洗脳し、エンジニア課を財源破綻させ、生態課を焼いた等の悪行はとどまることを知らず。彼の被害総額だけで、一つの課の財源が賄えるのではという、なぜクビになっていないのが疑問な伝説の男。
なんで、そんな男とサリア主任が......
もっ、もしかして――――――
男による壁ドン
[この秘密をバラされたくなかったら、分かっているよなぁ]
男が、写真を取り出す。
[く、私にナニをさせるつもりだ]
――――――きっと、そうゆうことなのね。
これは、急いでみんなに報告しなきゃ。
待ってて、サリア主任。
貴方を、このサイレンスが悪魔の手から救い出して見せます。
なんか、メガネの子が急いで走っていったんだが。
まあいい、今はそれどころじゃない。
ドロシー主任の研究だと。
絶対ロクなもんじゃねえ。俺は逃げさせて―――――
サリアによる壁、ドーンッ!
『オイ、ばらされたくなかったら、分かっているな』
サリアが、俺のやらかしの写真を取り出す。
『クッ、俺に何をさせるつもりだ』
知ってるぞ、エ〇同人みたいにするんだろ。エ〇同人みたいに。
やっぱり、サリア主任にドナドナされるのであった。
◇◆◇
「連れてきたぞ、ドロシー」
「あら、サリア主任。その子は―――――」
「代わりの生贄だ」
引きずられて、背中が痛い。
せめてもの抵抗で、アーツで体を固定しようとしたが、無理やり引っ張っりやがった。
本当に、どんな力してやがる。
「あら~。なら早速、その状態で寝て頂戴」
ドアはロックされ、手には腕輪を付けられる。
腕輪から伸びたケーブルは部屋に固定されており
どうやら逃げ場はないようだ。
目の前には、用途不明な器具。そして、用意された実験台が2つ。
うん......2つ?
「全く妙だな。ドロシーなぜ実験台が二つもある」
「あら~」
「なぜ、私の手にも腕輪をはめる」
「あら~」
ものすごい速さでサリアを拘束し、腕輪をはめるドロシー主任。
拘束具は、まるで化け物を捕まえるかレベルで頑丈そうだ。
「―――――簡単よ。被験者は多いほうがいいわよね」
「だが、私は―――――」
「この実験には、警備課全面協力。クリステン主任にも話は通してるわぁ~」
「......」
沈黙するサリア。
あのサリアが負けただと。
ライン生命のドロシーは化け物か......
ちゃくちゃくと進む準備。
そして最後に、持ち込まれるは巨大な注射器。
それは、注射器というにはあまりにも大きすぎた。
大きく、
禍々しく、
鋭く、
そして大雑把すぎた。
中の液体ボコボコいってるんだが。
本当に人に注入して大丈夫なのか。
「まだ試作品でねぇ~。量入れないとダメなのォ」
「その、人体で試したことはあるのか?」
「大丈夫。貴方たちが最初の成功者になるわぁ」
「他の奴らはダメだったと」
どうりで最近、警備課の人員が少ないわけだな。
短い付き合いだったがいい奴らだった。
「―――サリア主任、地獄で一杯やろう」
「そうだな。その時は奢ってやる」
俺たちも、覚悟を決める。
まさか、こんなところで死ぬことになるとは人生何があるか分からんな。
すまん、フェルディナンド借りた金は返せそうにない。
「二人とも、行くのは地獄じゃなくて夢の国よ~」
鈍い音とともに、俺たちの意識は暗転した。
◇◆◇
「ひどい目にあった」
「全くだ」
時刻は変り、時は夕方。
いつも飲んでいる場所に、もちろんサリアのおごりで来ていた。
あの後、サリアと合流して、死の国から脱出したり、神様を殺しに行ったりと、夢の世界では色々あったが何とか現実の世界に戻ってこれたのである。
「ここまで、酒が旨いのはいつぶりだ」
「奇遇だな。私も久方ぶりに飲んだがここまで美味しいとは」
そういいつつ、次々と酒瓶を空にしていくサリア。
初めて一緒に飲むが、ペース早いな。
「どうした、私のおごりだぞ。飲まないのか?」
「いや、流石に一気には無理というか」
横で、大ジョッキを空にしつつ絡んでくるサリア。
だが、その顔は、いつもと変わらず真顔である。
そう言えば、ライン生命の飲み会でも、意図的に酒から離された配置にされていたような。
もしや、もしかするかもしれん。
「なにィ、私の酒が飲めないというのか?」
「いや、そうは言ってない」
「ならば飲め、もっと飲め」
そういって、入れ物に並々と注がれるお酒。
いや、流石にその量はヤバいというか。
てか、酔うと人に酒を飲ませるタイプか。
クリステンといい、主任共は、特徴的な酒癖でも持っていないといけないのか?
まあいい、こういう場合の対処は、相手の言葉に惑わされず、自分のペースで飲むことだ。
酒とは真摯に付き合うこと、それが旨く飲むための――――――
「ほう......私は飲めるぞ。お前は飲めないのか」
「―――――なんだと」
安直。実に、安直な挑発。
どう考えても、ここで飲んだら、
明日は2日酔いが確実。
だが、だが、
サリアに煽られたままで退く?
面白い冗談だ――――
「―――――やってやろうじゃねぇのッ!」
一息に飲み干し、入れ物を掲げ空になったことを示す。
悪いがサリア、貴様に負けることは、
就活失敗おじさんとして許されない。
器の大きさで負けても、酒では負けん!
「ほう......おもしろい。だが、勝負はこれからだ。次の一杯を頼む、店主」
「ふん、後悔しても知らんぞ」
こうして、テラの夜は、また明けていく。
後日、猛烈な二日酔いになり、とても後悔したことをここに記す。
やっぱり、酒はほどほどが一番だな。
なお、サリアは何食わぬ顔で来ていた模様。
解せぬ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者です。
さて私語となのですが、最近自販機で500mLぐらいのジュースが飲みたくなることが良くあります。しかしながら、売っているのはどれも280mLの小さいもののみ。なのに値段は500mLの炭酸と少ししか変わらず。この前は、泣きながら2本購入することで、飲みたい欲求を解放しました。横のコンビニで買えばよかったと、気づいたのは1本目を空にした後です。皆さんも自販機で欲望を解放するときは気を付けましょう。
さて、前回も誤字報告ありがとうございます。一向に誤字は減ってませんが、努力はしてます。誤字報告をくれた皆様この場を借りて感謝を申し上げます。
また、感想をくださる皆様ありがとうございます。その感想は作者のモチベにつながっています。特に続く予定のなかった本作がずるずると続いており、これが皆様の感想の力か、と思う日々です。作者がチョロいとも言います。
では、皆様に良きガチャライフがありますように。