長くなったので二話に分割。
因みにストーム1は(R)です。
偵察のため拠点を出発したストーム1、4は現在、鬱蒼とした林の中を川沿いに歩いていた。
「ストーム1、これを見てみてくれ」
水分を多く含んだぬかるみに悪戦苦闘しながら進んでいると不意に呼び止められ、振り返るとストーム4が何かを指指していた。
隊員たちもつられて目線を移すとそこには立派に形成された青く澄んだ色の鉱物が存在していた。
青い鉱物といえば真っ先に思い浮かぶのはサファイアだ。
しかしここは自分たちの知る星とは違う場所であることは何となくだが分かる。それにこの星は地球では見たこともないような独自の生態系が築かれている。故にこの鉱物も全くの未知の鉱物である可能性もあるというわけである。
「…プロフェッサーなら何か分かるかもしれないですね」
「なら持ち帰るとしよう。これが我々にとって有益な物であるといいのだがな」
直接鉱物に触れて手持ちの道具でも壊せることを確認すると、少量砕いてポーチの中に仕舞っていく。
全て採取し終わり、ポーチの口を縛っていると後ろから期待と羨望の籠もった声が聞こえてきた。
「隊長たちばっかり羨ましいですよぉ」
「私持ち帰ってアクセサリーにしたいなぁ」
「隊長持って帰っちゃダメですか?」
普段は英雄と呼ばれ任務になればクールに遂行する彼女たちも、キレイな宝石を前にしたら一人の女性ということである。
「お前達…ここには任務で来ていることを忘れているわけではあるまいな?第一これは研究サンプルであって私的に拾っているわけではない」
巨大な鉱物を前に色めき立っている自身の部下達に改めて任務の重要性を説く。
お説教に近い説明を一通り聞かされた彼女たちは、渋々といった感じではありながらも納得はしたのかそれ以上は何も言わなかった。
とはいえ隊長自身も女性であるため彼女たちの心情も分からないでもなかった。
自身はどちらかというとオシャレな物からは縁遠い存在だと思っている。それでも目の前の圧倒的な光沢と大きさを誇る鉱物を見ていると胸が高鳴らないといえば嘘になる。
そのため何だかんだ部下思いである彼女は部隊を率いる者としては正しい行動をしたものの、バツの悪そうな表情を浮かべていた。
そんな彼女たちを見かねてストーム1がこんな提案をした。
「…でしたら少し多く持ち帰るとしましょう。…余った分を皆さんに回してもらえるよう俺の方から説得してみます」
そう言うと彼女たちの目が爛々と輝くのが分かった。
「え!いいの?」
「嬉しい!やった!」
「ありがとうございますストーム1」
ストーム1からの思わぬ提案により喜びをあらわにする彼女たち。
そこにストーム4の隊長が困ったように声をかけてくる。
「ストーム1本当にいいのか…お前は自身の権限で物を頼むのをあまり好ましく思ってなかったじゃないか」
今まで本部から何度も希望する物品や待遇などの要望はないか本人に確認がなされていた。
しかし彼は決まって自身には分不相応だと断っていたのをストーム隊全員が知っている。
強いて上げた要望など“常に前線にいさせてくれ”である。
本人が望まないからこそ彼は自身の持つ絶大な権限とは裏腹に階級は一兵卒と変わらない。
異世界の資源という貴重なサンプルを少量とはいえ私的に回してもらうとなると直接調査するプロフェッサーは勿論、司令本部の方にも話を通す必要があるだろう。
宇宙戦争を勝利に導いた立役者であるストーム1が頼み込めば断られることはまず無いが、それはつまり自身が敬遠していた“立場”を利用するということである。
普段から多くは語らない男だが其の実、隊の誰よりも仲間想いだというのを皆が知っている。
そのため流石にそこまで気を遣わせるのは気が引けると思っているとストーム1は首を横に振る。
「…どうか気にしないで下さい。…生きて…皆さんがこうして笑って下さっているだけで俺は満足ですから」
「…?すまない。少し聞き取れなかった所があったのだがなんて言ったのだ」
本人は“気にしないでほしい“と言う。
EDFの標準装備であるバイザーのせいで目元は見えないものの、何故かその瞳が慈愛に満ちていることは不思議と感じ取ることが出来た。
「そうか…そう言ってもらえるだけ我々も嬉しいものだな」
少しの間、その場に穏やかな静寂が訪れる。
しばらく皆が無言でいると“ゴホン”とわざとらしく咳払いをし、ストーム4隊長が探索を再開するよう促してくる。
皆が頷き、同意した所で探索を開始しようと一歩踏み出したその時、茂みの奥から野太い雄叫びのようなものが聞こえてきた。
すぐさま警戒態勢を取るとバイザー越しにマップを表示させる。
衛星が上がっていないため詳細なマップは表示されないものの、自身を中心に生体反応は感知するためこれで周囲を警戒する。
するとマップ上に赤点が複数点在しているのが確認できた。
それだけでなく赤点がこちらに集結しつつあるのも見て取れる。
敵性生物の接近、その事実が現場に緊張を走らせる。
「…ストーム1どうする」
「…一先ず様子を見ましょう。…これが現地人であればこちらから敵対するわけにはいきません」
「了解だ、お前達!一旦後退し敵の姿を視認する。いつでも飛べる準備はしておけ!」
「「「Sir! Yes! Sir!」」」
流石は精鋭というべきか、作戦が決まってからの彼らは早い。
すぐさま後退しつつ退路を確保し、見晴らしの良い場所で自身の得物に手をやり迎撃態勢に入る。
どれくらいたったか、敵性生物が姿を表すまで秒読みという所まで来ていた。
アサルトライフル“オーキッド”
銃を持つ自身の手に力が入る。
他の隊員を見ると“マグブラスター”“パワーランス”“サンダーボルト”など多種多彩なプラズマ兵器を持ち、落ち着いた表情で敵が現れるのを待っていた。
そこには緊張こそあれど、恐れや躊躇いといった感情は見受けられない。
流石だとストーム1が思っていると遂に対象が茂みを割って姿を表す。
彼らには知り得ないことだが、それはフロギィと呼ばれ鳥竜種に分類される毒を操るモンスターであった。
ソレらはやや前傾姿勢の二足歩行でオレンジの体色をしており、喉は袋状に膨らんでいるのが確認できる。
そして中でも一際大きい個体がおり、ドスフロギィと呼ばれる群れを束ねるボスである。
「…大きいですね」
「ああ…。偵察に赴いた際にはあの大きいのは確認出来なかった。恐らくヤツが群れのボスで間違いないだろう」
人を超える大きさをもつ生物に驚きつつもどう対処すべきか考える。
(…小さいのはあまり脅威には見えないが、問題は群れのボスだ。…生態が分からない以上、無闇に戦えば被害を被る可能性もある)
情報という戦闘に置いて最も重要なファクターを彼は決して軽視しない。
それはプライマーとの戦争で嫌という程思い知らされたからだ。
まずはあのボスと思われる生物の情報を引き出すためにストーム4に協力を仰ぐ。
「…露払いは俺が。…皆さんには群れのボスの注意を引きつつ攻撃パターンを探って頂けますか」
ウィングダイバーであるストーム4はフライトユニットを装備しており、空中戦を最も得意とする部隊である。
見たところ獣たちは空中に届き得る攻撃手段は無いように見える。
それこそ口から火でも吐けば別だが、生物学に詳しくない自分でもそんな滅茶苦茶な進化はあり得ないことは想像に難くない。
しかし過去には怪生物サイレンや生物学的に飛行手段を持たない筈なのに大空を浮遊、反射シールドまで装備していたプライマーの尖兵がいる以上、警戒をするに越したことがないのも事実だ。
ストーム4もそのことを理解しているのか、深く頷くと声を張り上げ隊員たちを鼓舞する。
「ストーム4出るぞ!ヤツに空中戦の恐ろしさを教えてやれ!」
「「「Hoo-ah!」」」
大物を任されたストーム4は隊長の号令のもと、大空を翔けるように飛び立つのであった。
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大空へと飛び立ったストーム4を見送りつつ、ストーム1も戦闘を開始しようとしていた。
匂いで我々の存在は認識していたようだがストーム4が飛び立ったことにより初めてこちらを視認出来たようだ。
こちらに気付いたフロギィたちはエサを見つけた獣のように突撃を仕掛けてくる。
鳴き声を発する度に端々から涎を撒き散らす様は醜悪そのものだがその瞳は獲物から逸らされる事はなく、そこから食物連鎖の捕食者としての姿が伺い知れる。
ストーム1は様子見としてまず一番手前に来たフロギィを狙い撃ちする。
トリガーを引き銃口より発射された弾丸は狙い通り頭部へと着弾する…筈だった。
後方でストーム4と戦闘をしているドスフロギィが突如雄叫びを発したかと思うと、フロギィがサイドステップを繰り出し銃弾を躱したのだ。
「…外した?…いや」
疑問を確信へと変えるためもう一発銃弾を発射する。
するとやはり、先ほどと同様にドスフロギィが雄叫びを発すると同時に銃弾を躱す仕草を見せたのだ。
「…統率の取れた獣か…厄介だな」
一連の行動により群れのボスが指示を出している事は明白であり、組織的な狩りを行う知恵のある獣に思わず愚痴を零す。
その証拠に突撃を仕掛けてきたフロギィたちは飛び道具を警戒し、ストーム1と一定の距離を保ち威嚇をしている。
並行してこちらを囲むように少しずつ横に広がりを見せているのにもストーム1は気付いていた。
背後を取られぬよう後方にローリングし、大きく距離を離す。
しかしそれに気付いたフロギィの一匹が前方に跳躍し何かを吐き掛けてくる。
喉袋を大きく膨らませ吐き出したそれは、空気中に滞留しているのが目に見えるくらい濃い紫色をしていた。
その気体は何か、それはストーム4からの無線で分かることとなる。
「気を付けろストーム1!ヤツらは毒を使ってくるぞ!」
―毒―
人類にとって最も効果を発揮する危険な物質の一つ。
色の濃さからも強い毒性が伺えるそれをまともに食らう訳にはいかない為、再度ローリングをし距離を大きく離す。
そして直ぐ様体制を整えさらに弾丸を叩き込む。
「…やはりか。…ならば」
しかし結果は同じでありこれでは埒が明かないと、ストーム1は背中に背負って来たもう一つの“武装”に手を伸ばす。
しかしこれは威力が高すぎる為、周囲を考えるとあまり多用はしたくないというのが本音ではあった。
どうするべきかと悩んでいると突然、爆発音が聞こえ周囲に地響きと衝撃波が走る。
音の方へ目を向けるとドスフロギィがストーム4にプラズマキャノンを打ち込まれ絶命しているのが見えた。
「…今!」
これを好機と捉えたストーム1は直ぐ様前方のフロギィへと銃口を向ける。
(…群れのボスを失い浮足立っている今のヤツらなら難なく殺れるはずだ)
アサルトライフルの中でも特に火力の高いオーキッドから発射される正確無比の弾丸はいとも容易くフロギィたちの頭を砕いていく。
仲間を殺されたフロギィたちは怒り狂い次々とストーム1へ体当たりを仕掛けてくるが所詮は統率を失った獣たち。
それらをすんでのところで躱しすれ違いざまに弾丸を叩き込む。
最後の一匹を片付けた事を確認したストーム1はホッと一息をつく。
異世界に来て初めての戦闘はこの世界の脅威度を改めさせるには十分過ぎるものであったのだった…
あらすじにストームチームとガッツリ記載してありますがストームチームだけが主人公ではないです。