EDF ツキトの都へ出陣す   作:ゲストユーザー

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 次で大尉とグリムリーパー出せればと。


第三話

 その後、周囲の安全を確保したストーム1、4は合流を果たし雑談も交えて今後の方針を話し始める。

 

 「ふっ…複数を相手に無傷とは流石というべきか」

 

 「…買い被りすぎです。…毒を使うという皆さんからの情報が無ければ危うかったかと」

 

 「そう思うなら普段から我々をもっと頼って欲しいものだがな」

 

 戦時中から口酸っぱく大尉に言われていることをストーム4にも言われストーム1は苦笑することしか出来ない。

 

 その時ストーム1は一つの疑問を思い出す。

 

 「…そういえば何故皆さんはヤツらが毒を使うと分かったのですか」

 

 見るからに毒々しい見た目だったとはいえ、あの時確かな分析もされてない状態でそれが毒だと断言していたストーム4を不思議に思う。

 

 「その事だが…不覚にも攻撃を受けたことでそれが毒だと分かったんだ」

 

 EDF兵士が装備するアーマーにはバイタルセンサが取り付けられており、装着者の状態がバイザー越しに可視化出来る設計となっている。

 

 この機能は開戦時元々備わってなく、スキュラと呼ばれる体から毒ガスを発する恐ろしいエネミーの台頭によりプロフェッサーによって追加されたものであった。

 

 これにより毒ガス内からの迅速な退避が可能となっている。

 

 さらに言えば装備者の異常を感知するとアーマー内に組込まれている解毒剤が自動で投与される機能があり、当時のプロフェッサーの努力が伺い知れると同時に戦時中の生存率が飛躍的に上がったのは言うまでもない。

 

 だが感知してから投与、効き目が出るまでに若干のタイムラグがあるため油断は禁物である。

 

 「済まない。心配を掛けた」

 

 「…いえ皆さんが無事で何よりでした…それで一度この獣のサンプルを持ち帰るために拠点へ戻ろうと思いますがよろしいですか」

 

 そう言って絶命しているドスフロギィたちを指指す。

 

 戦闘によって所々欠損してはいるもののまだまだ採取出来る所は多い。

 

 それに死肉を持ったままウロウロしているとそれを餌にする肉食獣を呼び寄せかねない。

 

 「特に異論は無い。大尉殿に連絡を取り帰投するとしよう。お前達!手早くサンプルを回収し、拠点へと即時帰還するぞ!」

 

 「うへぇ…隊長本気ですか…」

 「ポーチが血で汚れちゃう…」

 「ストーム3に回収に来てもらいませんか」

 

 そういうのは無骨なストーム3にやらせろと騒ぎ立てる隊員たち。

 

 ヤジを飛ばす部下達を聞き流しつつ帰投する旨を大尉へ伝えようと無線に手を掛けるとストーム4は「しかし…」と続ける。

 

 「巨大な体躯に強力な毒性を持った獣か…この世界は我々が思うより危険な進化を遂げているのかも知れないな…黄金の果実を求める余り破滅しなければ良いのだが」

 

 旧約聖書になぞらえて語られたソレが軍上層部の事であるのは言うまでも無かった。

 

 そうこうしているとその場に居た全員がある違和感に気付く。

 

 “風”を感じるのだ。

 

 この大自然の中、風が吹くこと自体は何もおかしい事はない。鬱蒼とした林の中ではむしろ歓迎したい現象である。

 

 しかしそれが“不定期”かつ僅かながら“熱気”を含んでいれば話は別だ。

 

 耳を澄ませばズシン、ズシンと微かに鈍い音も聞こえてくる。

 

 こちらに近付きつつあるその音は自然と鳴るようなものではなく、そこに何かがいるのは明白であった。

 

 「…どうするストーム1」

 「…我々はあくまでも斥候…少数しか居ない今、交戦を避けられるのなら避けるべきです」

 

 いつもは制止しても突撃するのに珍しく慎重な姿勢を見せるストーム1にストーム4は驚きを見せた。

 

 「ほう…以外だな。お前なら一人でも戦闘に行くと思っていたが。だが賢い選択だ。私もその意見には同意する」

 「…あの時は倒すべき敵を知っていて守るべき未来があった…今は敵も未来も分からない…ただそれだけの違いです」

 

 思い出すのは最初のループ。何も分からなかった自分は―武器、戦略、敵―他にも学べる物は何でも学んだ。

 

 無知のまま戦う恐ろしさを身を以て体験したからだ。

 

 「そういえばお前は戦時中、まるで未来を予知してるかのように戦っていたな。どんなカラクリか気になる所だがそれは帰ってからにでもしよう」

 

 そう言って全員が素早く撤退の準備を整える。

 まだミニマップには映って無いものの先ほどより近いことは肌で感じていた。

 

 程なくして準備が完了した所でとうとう赤点がミニマップに表示された。

 しかし点は正確には二つであり、片方は白く表示されていたのだ。

 

 EDF装備のミニマップには三つの識別点があり、青は仲間の識別信号が送られる者に、赤は人間から逸脱した大きさか異なる生体反応を示す者に、そして白は人間に近い大きさか生体反応を示す者に付けられる。

 

 つまり今映っている白点は現地人の可能性があるのだ。

 

 この世界の生物は並みの人間では簡単に命を落とすほどの強さを持つ事は先ほどの一戦で認知しており、この赤点が今倒れている獣と同等であるならば近くにいる現地人がどういう結末を辿るかは想像に難くない。

 

 本来であればそこに居合わせた訳でもない以上、安全をとって撤退を始めるのがベストであるがそうはいかないのがストーム1という男である。

 

 ループすらしてない最初の世界。一般人であった自分を果敢に戦い救ってくれた大尉。

 彼の背中を見たその時からストーム1の心は決まっていた。

 

 ―自分の手で救える人は決して見殺しにはしない―と

 

 故に彼は動く。未知の世界、未知の敵、だから何だと。

 

 “EDFは仲間を見捨てない”

 

 それはまだ見ぬ者に対しても適応されるのである。

 

 「…すみません…俺、行ってきます」

 

 そう言い彼はミニマップを頼りに最短を駆けていく。

 

 レンジャーの着用するアンダーアシスト装備によってぬかるんだ沼地すら物ともせず、あっという間にストーム4から見えなくなった。

 

 「ふっ…やはりお前は英雄ストーム1だ。誰とも知れぬ者のために命を賭けるか…バカだが嫌いじゃない」

 

 お前はいつだって誰かのために戦い続けてきた。

 最初はどうせ早死にするだけだろうと冷めた目で見ていた。

 だが予想は外れ次々と戦果を挙げ続けるお前に何時しか希望を与えられていたことに気付いた。

 かつてスプリガンと呼ばれていたあの頃とは違う。同じストームのコードネームを持つ仲間なのだ。

 

 だからこそ彼女たちの次の行動は決まっていた。

 

 「仲間を見捨てて逃げろと軍で習ったか?違う!EDFは仲間を見捨てない!英雄の援護に向かうぞ!」

 

 「「「Sir! Yes! Sir!」」」

 

 かの英雄の背を追いかける様にストーム4も飛行を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 常人を遥かに超える速度で走るストーム1はミニマップを確認し、もうすぐ対象と接敵することを認識する。

 

 (…敵とやり合わず救出対象を回収出来ればベスト。最悪なのは…)

 

 “救出対象の死亡”

 

 それが脳裏をよぎる。

 

 そして直ぐ様脳内の最悪なビジョンを片隅へと追いやる。

 そうならないために今走っているのだと自分に言い聞かせながら。

 

 そして気付けば目的地が目の前という所まで来ていた。目の前は崖だったがそこまで高くなかったため勢いのまま飛び降りる。

 

 アンダーアシスト装備によって無傷で着地に成功したストーム1は眼前に広がる光景に度肝を抜かれた。

 

 体から血を流し片膝をついている男がいたのだ。まだ息はあるものの危険な状態にあるのが見て分かる。

 よく見ると行李を背負っているようで行商人か何かだと思われる。

 

 

 だがストーム1が驚いたのは男を見たからではない。

 

 その向かいにいる()()()()()()を視界に収めたからだ。

 

 巨大な両翼を大きく羽ばたかせ滞空し、立派に伸びたその尾は先端を毒々しい液体で塗らしながら鋭利に輝いている。

 よく見れば体中どす黒い傷跡がびっしりと付いており、その瞳は世の全てを呪うほどの憎悪で満ちているかのようだ。

 

 竜から目が離せないでいると男が力を振り絞って何かを伝えようとしていた。

 

 「…貴方は…ハンター…ですか…気を付けて…下さい…あれは…恐らくヌシと…呼ばれる…個体…のリオレイア…噂では…原種を超える…猛毒…を使…うと…………」

 

 男の体は酷く傷ついており、とうとう気を失ってしまう。

 

 そんな男の状態を見てストーム1はすぐに腰に付けてあるエリアルリバーサーを周囲に展開してオーキッドを構える。

 

 相手は歴戦の個体。

 別名“陸の女王”と呼ばれる上位捕食者の中でも熾烈な生存競争を生き抜いてきた真の強者。

 

 その圧を肌で嫌というほど感じつつ眼前の敵を視界内に収め油断なく対峙する。

 

 今まさに怒れる女王との死闘に火蓋が切られるのだった。


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