【完結】殺帝の子   作:ねをんゆう

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12.沈み

「……つまり、扉は」

 

「ああ、あったよ。見つけたのはアイズだ」

 

「うん……」

 

 

 18階層のリヴィラの町の近くで落ち合った彼等は、一先ずの情報共有を行なっていた。どうやらリヴェリア達の方にも特に荒事は無かったらしく、喜ばしいことに無傷での再会。

 ……しかし、何事もなかったとは言えない。

 

 

「感触的に……壁面の中に空洞がある。扉はその奥にあるかも」

 

「空洞だと?」

 

「恐らく感知はされておりませんわ。アイズ様が空洞があると勘付いた時点で、内部に光が漏れることのないよう過剰なほど手を尽くしましたので」

 

「同じように手当たり次第突き刺してみたけれど、空洞があるのはアイズの見つけた1箇所だけだった。あれ以上に深い場所にあるとは思えない。それに扉があるとは踏んでいたけれど、扉さえない通路のような形をしている可能性も考えるべきかもしれない」

 

「まあ、その辺りについて今考えても仕方がありません。空洞の奥に扉がある可能性もありますので。そもそも扉を開く度にいちいち壁面を崩すのも目立つので、扉を出た後に人間1人分の穴を空ける方が効率的ですもの」

 

「ああ、玄関空間があるのか。確かに光源把握をするためにも、その可能性の方が高そうだ」

 

「そちらについてはどうでしたか?リヴェリアさま」

 

「……こちらは」

 

「「「?」」」

 

 

 フィン達が一先ずの報告を終えると、リヴェリアはどうも妙な顔をする。確かにずっと気になっていたのは、リヴェリアの少し緊張感のある雰囲気と、リヴィラの町から漂う僅かな騒がしさ。

 ……何かが起きたというのは、きっと間違いないだろう。そしてそれは間違いなく、見過ごせるような容易いことではない。

 

 

「ハシャーナさまが……殺された……?」

 

「ああ。ガネーシャ・ファミリアのLv.4、ハシャーナ・ドルリアがリヴィラの町で殺されていた。それ故に私達は18階層の散策が出来ていない」

 

「……今はどんな状況だい?」

 

「一先ず私の判断で、町の人間を逃すことのないように集めている。ボールス達と共にこれから犯人を探すつもりだ。レフィーヤ達もそこで待機している」

 

「現場の状況について教えていただいても?」

 

「寝室で頭部を破壊されていた。争った形跡もなし。そして宿屋の店主曰く、ハシャーナは容姿淡麗な女と宿泊していたそうだ。……つまり、下手人はLv.4を力付くで殺害出来る実力を持つ女」

 

「……思い当たる人物は居ないが」

 

「他に情報はあります?」

 

「ああ、ハシャーナはどうやら30階層に単独で何かを採取しに向かっていたらしい。依頼書は血で汚れていて、それ以上の情報はなかったが……採取したであろう特殊な物は見当たらなかった。そしてハシャーナの荷物だけは荒らされていた」

 

「「……そういうこと(です)か」」

 

「………」

 

 

 Lv.4の冒険者が何の抵抗もできずに殺されるという、あまりに異常な出来事。ダンジョン18階層に存在するリヴィラの町を取り仕切るボールスという男からしてみれば、そんなもの恐ろしくして仕方ないだろう。

 しかし今の情報からでも分かることは、ハシャーナは団長であるシャクティにさえ内密に何らかの依頼を受けていたということ。それによって単独で30階層へ向かい、何かの採取をして来た。そして採取して来たそれは、既に奪われてしまったのか、それとも誰かに渡しているのか……

 

 

「勇者様はどう思われます?」

 

「頭部を破壊したのは後じゃないかな。先に首を折って、次に頭部を破壊した」

 

「その意図は?」

 

「荷物が荒らされていたことを考えるに……恐らく、女は目的の荷物を手に入れることが出来なかった。頭部を破壊したのはその腹いせ、かな」

 

「なるほど……となると、大凡の性格も推測出来ますわね」

 

「何か分かるか?」

 

「……リヴェリアさまの判断は間違っていないかと。女はまず間違いなくまだ18階層に居るでしょう」

 

「ああ。だが、それで簡単に出てくるとも考え辛い」

 

「付け加えるのなら、目的のものを簡単に諦めたりもしないでしょうし。……それが既に地上に運ばれている可能性は、五分五分ですか」

 

 

 そこもハシャーナからブツを渡された人間の性格にもよる。普通ならば直ぐ様に地上に持ち帰るであろうが、よっぽど間抜けな性格をしているのなら、未だにこの階層に残っている可能性が高い。

 そしてもし18階層にブツが残っているのであれば……

 

 

「どうする?18階層に残っていることを前提に、それを探してみるか?お前の言う通りなら、犯人を見つけられる可能性もなくはない」

 

「……グラナ、君はどうしたい?」

 

「今直ぐにレフィーヤさまを確保して地上に帰りたいですわ」

 

「君は相変わらずだなぁ……」

 

「アイズさま、申し訳ありませんが先にレフィーヤさまの様子を見に行っていただいてもよろしくて?万が一がありますので」

 

「わ、分かりました」

 

 

 最早、団長であるフィンの意向さえ無視してアイズに指示を出したグラナ。けれどそれについては特に問題がないのでフィンは呆れたように見逃すが、確かに彼女の言う通りなら、危険なことは確かだ。

 ……なにせ、最低でもLv.5以上の殺人鬼がこの階層には居るということなのだから。いくらフィンとリヴェリアが居たとしても、笑っていられる状況ではない。

 

 

「フィン、グラナ。今回のこの件、闇派閥が関わっている可能性はあると思うか?」

 

「……勇者様。ヴァレッタ・グレーデに男を誘うようなことが出来ると思われます?」

 

「それについては一瞬頭を過ぎったけれど、まずあり得ないかな。確かに彼女はLv.5だけど、そんなことをするくらいなら真っ先に首を刎ねるだろう」

 

「なら現状、闇派閥が関わっているとは断言できませんわね」

 

「そうか……」

 

「ただし、関わっていることを前提に動くことは出来ますわ」

 

「!」

 

「例の緑色のモンスター群、使役するのであればダンジョン内ほど容易い場所もないでしょう」

 

「この階層にも潜んでいるということか!?」

 

「というより、あらゆる階層に潜んでいる可能性を考えた方が良いかな。地上にも運び出せたくらいだからね。そして仮に、それらのモンスターを使うとするのなら……」

 

 

 

 

 ーーーーーッッ!!!!!!

 

 

 

 それは正に、フィンがその言葉を発しようとした瞬間の出来事であった。

 突如としてリヴィラの町を取り囲むようにして出現した、凄まじい数の蔦型のモンスター達。モンスターが生まれないはずの安全階層に、100を超えるほどのモンスターが一度にこれほど出現したという事実。であるならばそう、その理由は……

 

 

「どうやら、探し物はまだここにあったようだね」

 

「ハシャーナさまから目的の物を受け取った人物は、どうやら相当な間抜けだったようで」

 

「……!そうか、陽動と撹乱か!」

 

 

 2人の言葉に察したリヴェリアは、直ぐ様にレフィーヤ達の居る筈の場所へと走り出す。敵の目的の物を確認したいという欲はあるものの、何より優先すべきは人々の命なのだから。

 ……まあ、グラナという女だけは違うかもしれないが。

 

 

 そしてまさか思うまい。

 

 

 そんな彼女の地雷たる少女が今正に、危機に晒されているなどと。

 

 

 

**************************

 

 

 

「けほっ、けほっ……」

 

 

「レフィーヤ、大丈夫?」

 

 

「は、はい……っ」

 

 

 レフィーヤとアイズは、偶然にもハシャーナからブツを渡されていたルルネという少女を見つけてしまっていた。

 そしてティオネ達から離れて、逃げ出したルルネを追い掛けてしまった結果……こうして当然のように、ハシャーナを殺害した女に出会ってしまっていた。

 

 

「こほっ、こほっ……」

 

 

 ハシャーナの皮を被って現れたその女は、呼び出したモンスターの相手をアイズにさせている間に、レフィーヤとルルネに襲い掛かった。2人が持っていた謎の宝玉を奪い取るために。そのLv.5以上の身体能力をもって、レフィーヤの首を締め上げたのだ。

 

 ……仮にあと僅かでもアイズの到着が遅れていれば、レフィーヤはハシャーナと同様に首をへし折られていたことだろう。Lv.3の魔導士では指一本さえも跳ね除けることが出来ないという事実、自分が今正に殺される寸前だったという事実、それはレフィーヤに強い恐怖心を植え付ける。

 

 

 (ううん……それより今は、アイズさんの援護を……!)

 

 

 息を整えるレフィーヤを他所に、アイズとその女は互いの剣をぶつけ合う。

 Lv.5の中でも上位の実力を持つアイズ、しかし女はそんなアイズを更に上回るような脅威的な身体能力を持っていた。まだ風は使っていないとは言え、あのアイズが押されているというのはレフィーヤにとって驚愕でしかない。

 

 レフィーヤに出来るのは魔法による援護くらい、しかしそれは今この場においては何より必要なことだ。故にレフィーヤが震える身体を持ち上げて、杖を構えて呪文を唱えようとした、その瞬間に……

 

 

 

 

『レフィーヤさまに手を出した愚か者は……そこの汚物で間違いありませんわね』

 

 

 

 

 その女は現れた。

 

 

 

 

 ドクンッ、ドクンッ………と。

 

 

 

 

 こちらの心臓さえ揺さぶるほどに強く脈動し、他者の眼を焼くほどに激しく閃光を奔らせ、喉を締め付けられるほどに禍々しい黒紅の何かを、その右手に宿した……

 

 

 

 怪物的保護者(モンスター)が。

 

 

 

 

「なんだ……あれは……?」

 

 

「グラナ、さん……」

 

 

 

 その手に宿る何かは、アイズでさえ冷汗を流すほどの濃密なエネルギーの塊。魔力ではない、けれど魔力であってもあれほどに濃縮されていれば、生じる破壊力は尋常ではない。少なくとも女の身体を叩き潰すには過剰なものだ。

 

 

 

「アイズさま、ご協力を。……これをあの汚物に叩き込みますわ」

 

 

「え、あ……はい」

 

 

「あ、あの、グラナさん……?それ、その、死んじゃいませんか?あの人……」

 

 

「……ふふ、レフィーヤさま」

 

 

「は、はい……?」

 

 

「元より生かして帰らせるつもりはありませんので、ご安心を」

 

 

「何も安心出来ないです!?」

 

 

 

 しかしそんなレフィーヤの言葉を無視して、グラナはアイズの横に並び立つ。

 さしもの女でさえも、目の前にある黒紅のそれには眼を細めた。それはそれほどに危険な代物であると、馬鹿でも分かる。そして少なくとも、自分の肉体に致命的なダメージを与えるものであるということも、分かる。

 

 

 

「レフィーヤさまはそちらの方と町の援護に向かってくださいな、リヴェリアさまが待っております」

 

「!……わ、分かりました!」

 

「アイズさまは先程お話しした通りに……わたくしではお二人の動きには付いていけませんので」

 

「うん、分かった」

 

 

「……舐めるな、そんなものに当たるとでも?」

 

「当たるかどうかは、貴女が決めることではないでしょう?このわたくしが決めることです」

 

「抜かせっ!!」

 

 

 その言葉と同時に、レフィーヤはルルネを連れて町の方へと走り始める。グラナを狙って走り寄った女に対してアイズは割り込み、その隙にグラナは空いていた左手を自身の鞄の中へと突っ込んだ。

 

 ……あくまでグラナのレベルは3。逆立ちしたところでアイズと互角以上に戦う女の動きに対応することなど出来ない。しかしそれでも、この女はグラナ・グレーデだ。あらゆる状況において呆然と佇んでいることなどあり得ない。

 

 

「アイズさま。そろそろお休みの時間ですわ」

 

「!」

 

「……?」

 

「ふふ、お利口です」

 

「なっ!?」

 

 

 割り込んだアイズの背後から、体に当たるスレスレの軌道で投げ込まれた小さな球体。それはアイズと女の顔の間で狙い澄まされたかのようにして破裂する。

 

 ……生じるのは凄まじい閃光、つまりは閃光爆弾。

 

 この合図については、12階層で扉を探していた時に決めていたことだ。もし敵からの襲撃があった際、そしてそれが想定外の怪物であった場合、逃げることを優先するために閃光爆弾を使うという合図の言葉。

 

 目を瞑って閃光を回避したアイズに対して、女は当然ながら直撃を喰らった。生まれた大きな隙、けれどそれはグラナが拳を叩き込めるほど大きなものではない。そもそもそれ以前に、目潰し程度で大人しくなるような怪物でもない。

 

 ……そんなことさえ、想定の上だ。

 

 故にグラナは、敵が最も警戒している自身の拳を今この瞬間に使うことなど最初からサラサラ想定していない。再び自身の左手を鞄を突っ込むと、再度アイズに指示を出した。

 

 

「風を」

 

目覚めよ(テンペスト)……!!」

 

 

「なァっ!?」

 

 

 目が潰れた以上、耳に集中するのは当然。故に自身も足音を立てて迫りながら、しかし本命はアイズの一撃。

 

 風を纏ったアイズは女を強くかち上げると、グラナは鞄から引っ張り出した投げ縄を使って空中の女を捕える。……たとえLv.5と言えど、空中での移動手段などという稀少なものを持っているはずもあるまい。

 

 縄を引っ張り、空中の女を自らの元へと引き寄せる。構える右手、身体に巻き付けた縄もあって脱出など出来まい。これで当たる。

 

 

 

 

(……などと考えていたのだろう)

 

 

 

 

「舐めるなァッ!!」

 

 

 

 凄まじい剛力で強引に縄を引きちぎり、その脅威的な体幹で姿勢を整えると、女は大剣を構えてグラナに迫る。

 

 まさかそこまでのことが出来るなどと思ってもいなかったのかアイズは動かず、ただ目を見開くのみ。一瞬の驚愕、一瞬の硬直、それが明暗を分けた。

 

 今この場で最も警戒すべきは目の前の馬鹿げたエネルギーを持つ女だけ。これさえ対処してしまえば、アイズはどうにでもなる。

 

 

 

 

 

 

「……と、考えてしまいました?」

 

 

 

 

 しかし次の瞬間、女は悟った。

 

 これほどの危機的状況にも関わらず、欠片程度も恐怖の表情もないグラナを見て。

 

 そしてそんなグラナを助けようとするでもなく、むしろ攻撃するために風を増しているアイズを見て。

 

 

 

 

 

平伏せ(アラクネア)

 

 

 

 

 

 超短文詠唱。

 グラナ・グレーデの持つ唯一の魔法。

 

 

 その魔法の効果は……

 

 

 

 【指定対象の一時的拘束】

 

 

 

「くぅっ……!?貴ッ様ァッ!!!」

 

 

「ご自分の身体を過信し過ぎですわ、馬鹿女」

 

 

「ガァッ!?」

 

 

 

 紅色の蜘蛛の巣に囚われた女の腹部に、その一撃は叩き込まれる。

 極大のエネルギーを1箇所に超圧縮させ、インパクトの瞬間に解き放つ。生まれる破壊力は絶大。その肉体を持ってしても、受け切ることは出来ない。

 

 紅の閃光と雷撃を撒き散らし、空間さえも歪ませるほどのイかれた衝撃波。

 

 

 ……そして。

 

 

 

「リル・ラファーガ!!」

 

 

「!?」

 

 

 それに追い討ちをかける、アイズの一撃。

 ただでさえ吹き飛んでいた女の身体が、更に速度を増して岩壁を突き破る。何度も何度も岩壁に叩き付けられ、跳ねて打ち付け、最後には無様にも突き刺さる。

 

 

 そんな姿。

 

 

 

 

「へぇ?すごいですわね、まだ生きているみたいですわ」

 

「うん……一応、加減はしたんだけど」

 

 

 頭から岩壁に突き刺さり、そのまま力尽きて項垂れるのかと思っていれば、そこから自分の身体を引き抜き、一度は床に落ちたものの、更にそこから立ち上がるという現実離れしたタフネス。

 アイズに抱えられながらその女の前へと再び移動したグラナは、しかしそれほど気味悪がることもなく、ただ冷ややかな目を向けるだけ。……明らかに人間ではないその女を見ながら。特に驚くこともなく、呆れるように。

 

 

「……まさか、一度に2つも探し物が見つかるとはな」

 

「随分と余裕ですのね」

 

「貴様の手札も知れた。先程までの溜めも無い。貴様は既に脅威ではない」

 

「そう信じたいだけでしょう?貴女に相手の手札を見抜けるほどの頭があるようには見えませんし、今の貴女がアイズさまに勝てるとでも?」

 

「チッ……」

 

「ですがまあ、そこまで言うのであれば……もう一度溜めておきましょうか」

 

「っ」

 

 

 再びグラナの右手に集まり始める紅の光。

 しかし今の女ではそれを止めに行くことさえも難しい。それは彼女の隣にアイズがいるからだ。……そして、受けたダメージも甚大。何事もなく立ってはいるものの、腹部には大きく抉り取られるような傷が2つ出来ており、片方は殆ど貫通しかかっていた。それでも立ち上がることが出来るのは、単に人外故だろう。

 

 …‥とは言え、こうなれば仕方がない。これ以上の戦闘に特段の意味もなく、これ以上のリスクを負う必要もない。

 

 何せ目的の代物も。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!!

 

 

 

 

「「っ!?」」

 

 

 今正にこうして、アイズの風に反応して起きてしまったのだから。台無しになってしまった以上、諦めも肝心だ。

 

 

「あのモンスター……」

 

「なるほど、アレがあなた方の持っていたブツの正体ですか」

 

 

「……チッ、まあいい。ここでアレとお前を持って帰れないのは残念だが、次の機会がある」

 

「私を、連れて帰る……?」

 

「ああ、そうだ」

 

「どうして……?」

 

「何を言う」

 

 

 

 

「お前が『アリア』だからだろう」

 

 

 

 

「!?」

 

 

「……?」

 

 

 

 

『アリア』

 

 その言葉に妙に過剰な反応を示したアイズに、グラナは目を細める。

 最大チャージまではもう少し時間がかかる。今アイズに揺れて貰っては困るのだが、それでもその様子は尋常ではない。薄めの過呼吸、剣だけでなく身体さえも震えている。彼女にとってその名前は、それほど衝撃的なものだったというのか。

 

 …‥とは言え、どちらにしても。

 

 

 

「で?まだやりますの?わたくし、もう疲れたのですが」

 

「言われずとも、ここは退く。……アリアはともかく、貴様のような人間は関わるだけ無駄になる」

 

「お褒めに預かり光栄ですわ」

 

「ま、待って!!……どうして!どうして『アリア』を知ってるの!?その名前をどこで!?」

 

「さあな」

 

「っ!!」

 

 

 アイズの問い掛け虚しく、女は背後の崖下に身を投げる。慌てて追い掛けるアイズであったが、女はそのまま着水すると、まるで錘のように、一切浮き上がることなく沈んでいく。

 

 ……それきりだった。

 

 どれだけアイズが求めるように手を伸ばしたとしても、その女は2度と浮き上がって来ることはなかった。

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