【完結】殺帝の子   作:ねをんゆう

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20.深層調査

 ガネーシャ・ファミリアに滞在している間でも、常にシャクティが隣に居られる訳でもない。仮にも彼女は1つのファミリアの団長であり、忙しい身だ。

 そんな彼女のためにグラナもいくつかの案件について提案を行うなどの手伝いくらいはしているが、そうでもなければ部屋に篭っている。……そして、正にその時こそがグラナが唯一自由になれる時間であるということは言うまでもない。

 

 

「ふふ、これは都合が良い。フェルズ様がアイズ様に渡した魔道具と、わたくしがレフィーヤ様に仕込んだ魔道具。丁度二手に分かれたそれぞれの状況を映し出しているとは」

 

『……グラナ・アリスフィア、何をイライラとしている』

 

「それはもう、レフィーヤ様が死に掛けましたので。あの糞勇者、帰って来たらどうしてやりましょうか」

 

『なんでもいいが、出来れば殺気を抑えて欲しい。君のそれは健康に関わる』

 

 

 58階層を目指して深層へと突入したロキ・ファミリアの様子を、グラナとフェルズの魔道具が映し出す。この2つとリンクさせた映像がウラノスの元にある水晶にも映し出されており、フェルズはその映像を彼女に見せると共に、その意見を聞きに来ていた。

 

 ……まあその過程でヴァルガング・ドラゴンの作り出した大穴にレフィーヤが落とされてしまい、灼熱の砲撃に晒されかけたり、落下の最中に複数の小竜に襲われたりして、そんな様子を見ていたグラナがイライラハラハラしたりしたのだが。今はさておき。

 

 

『……グラナ・アリスフィア!出たぞ!敵の調教師だ!』

 

「!」

 

 

 アイズとフィン達が走る本隊、そちらに現れた大量の緑色モンスターと、それを率いる仮面の調教師。綺麗な隊列を作りながらフィン達を追いはじめたモンスター達は、大量の溶解液を吐き出しながら彼等を襲う。

 

 

「18階層と27階層で見た人外は違いますわね……彼等にはこのモンスター達を操る共通能力があるということでしょう」

 

『新種の魔石、君はあれを人工のモンスターと考えてはいたが……』

 

「あの人外達もモンスター達と同じ過程で生まれた副産物なのでは?モンスター達を従えるのも、役割として上位存在であるのなら納得出来るでしょう」

 

『……人とモンスターを混ぜたというのか』

 

「レフィーヤ様が27階層で聞いて来た話を踏まえるに、それが一番納得出来る解釈ですわね」

 

 

 これほど深い階層にも当然のように現れたことについては、もう言及するつもりもない。ただ今は情報を頭の中に叩き込んでいく。その過程で生じた思い付きについては、頭に残さず手元の紙に書いて捨てて行く。

 

 

『っ、今のは!!』

 

「ええ、見ていました。……剣姫が確認出来たかは分かりませんが、良い位置に魔道具がありましたね」

 

 

 それはフィン達の連携によりモンスター群を突破し、仮面の人外に向けてリヴェリアが攻撃魔法を放った直後のこと。非常に見え難い状態ではあったものの、それでもフェルズとグラナは視認していた。

 

 

『……単に離脱した、訳ではない』

 

「瞬間移動、若しくは消失。27階層の人外とは異なり戦闘力自体は然程ではありませんでしたが、この能力は厄介極まりないですわね」

 

 

 ローブを残して、その人外は場から消失した。仮に速度を生かした撤退であれば、アイズやフィンの目を盗んで消えることなど出来る筈もない。そもそも位置関係的にも、どうやっても攻撃魔法に晒されていた筈だ。それでも事実としてローブ以外そこに残っていなかったのなら、やはり敵は消えたのだろう。

 

 

『……君ならどう見る?今のを』

 

「瞬間移動、の線は微妙ですわね。それなら確かに50階層以降にこれほど容易く姿を現した理由にはなります。ただし、戦闘中に使わなかった事から、それほど便利な手段ではないでしょう」

 

『他の可能性はあるか?』

 

「あれが分身体、写身であるという可能性」

 

『分身体……なるほど、倒したから消えたという訳か』

 

「倒す前に消えた、という感じもしますが。そういう意味では瞬間移動の可能性が高い?……いえ、倒されると何かしらの不利益のある身体という可能性もありますわね」

 

『……分身体だからこそ、それほど強くはなかった?』

 

「十分にあり得る話ですわ、フェルズ様。……まあこの件については後で考えるとしましょう」

 

 

 そもそも、どうしてこのタイミングで現れたのかなど、考えるべきことはいくらでもある。フィンも気付いていた事であろうが、敵は何かを探しているように顔を動かしていた節もあった。

 

 ……これだけの情報が揃っている今、少しの想像というピースを嵌め込むだけで、繋げられる箇所はいくらでもある。故に今は必要になる可能性のある情報をとにかく頭に入れていくことに専念する。

 

 

「それにしても……本当にモンスター同士で殺し合っていますのね。こうして目で見るまで信じられませんでした」

 

『ああ……通常のモンスター達の中でも殺し合いが発生することは稀にある。魔石を取り込んで力を増した強化種などは、そういった末に生まれるものだ。……しかしあのモンスター達は、共通してその性質を持っている」

 

「ついでにロキ・ファミリアの戦力を確認出来るのも良いのですが、敵も味方も怪物ばかり。最早災害が起きているようにしか見えませんわね」

 

『レフィーヤ・ウィリディスの魔法も大概だ。Lv.3であの威力とは恐れ入る』

 

「死ぬのなら、あの魔法で華々しく散りたいですわね」

 

『……』

 

「……流石に冗談です。そのような彼女を汚す真似、するはずもありません」

 

『ならいいが……』

 

「ふむ……58階層の方も苦戦しているようですが、勇者様達も既に56階層。これなら問題はないでしょう。まあこんなところで躓かれても困りますが、一先ず安心致しましたわ」

 

『ああ、私達も少し休憩としよう』

 

「は?何を怠けたことを言っているのです、フェルズ様は引き続き水晶を見ていて下さいな。わたくしはその間に情報の整理を行いますので」

 

『……ああ、すまない』

 

 

 そう言うや否や、またいつものように大きめの紙を机いっぱいに広げる彼女。時間が惜しいとばかりに情報を書き込んでいき、更にその横にも以前に書き込んだ別の紙を広げる。そうして一先ず既知の情報を全て書き込んだ後、彼女はその2枚の紙を見比べるようにして立ち上がり、再びペンを走らせた。

 

 …‥こんなことを、何度も何度も繰り返す。いくつもの仮定を思い付く限りに書き込み、それを情報を得る度に精査し直し、消したり増やしたり。

 

 

『……君の頭脳でそこまでされては、敵もたまったものではないだろうな』

 

「ちゃんと水晶見てます?」

 

『ああ、問題ない』

 

「……わたくしの頭は勇者様ほど秀でてはおりませんので、出来る全てを費やさなければ役割を果たせません。遠征に行かなくて済むのは、正直助かってはいるのです。彼と対等に"見えるように"立ち振る舞うには、相応の準備が必要ですから」

 

『私からすれば対等に見えているが……』

 

「わたくしはそれほどバケモノではありません。時間さえかければ、情報さえあれば、そこまでの前提条件を究極まで揃えたところで、あの勇者には敵いませんわ」

 

『……正直、我々のような一般人には怪物達が謙遜し合っているようにしか見えないな』

 

「ふふ、その形で一般人などと。……まあそう見えているのでしたら、わたくしのハッタリも最低限の役割は果たせているのでしょう。英雄の器を持つ彼とわたくしが同等などと、片腹痛い」

 

『意外だ、君は英雄などというものを信じているのか』

 

「英雄は居るでしょうとも、それが自分を助けてくれるかどうかは別の話ですが。故に凡人は足掻くのみ」

 

『それに勇者のことも評価しているのだな』

 

「嫌でも目に付きますもの、面倒臭い」

 

 

 その上で、相容れない。

 それは自分の中に流れる血のせいなのか、それとも単純に性格が合わないのか。彼の方はそうでもないのかもしれないが、むしろ同類と会えて嬉しく思っているのか知らないが、グラナからしたら本当に面倒臭い。レフィーヤと出会っていなければ関わりは最低限で済ませていたし、敵対していたのなら尚更関わることなく、周到な根回しの末に言葉さえ交わさず一撃で終わらせている。

 

 故にグラナからすると、今の闇派閥のやり方はより下策にみえる。何かしらの理由はあるのかもしれないが、少なくとも人前に姿を現すどころか、他ならぬロキ・ファミリアの前にこうして出て来るのは愚か過ぎる。

 

 これほどに頭の回り指揮官としても優秀なフィン・ディムナへの対処法など、彼の気付かうちに用意を終わらせ引鉄を引くこと。これ以外に無いだろう。そうでなくともフレイヤ・ファミリアという最大戦力は、危機的状況にならなければ動くことのない集団なのだから。

 地下の通路に爆弾を仕掛けているにせよ、この先の階層でとんでもないバケモノを育てているにせよ、変にチラつかせる事こそが1番のリスクだというのに。

 

 

 (まあ……それが神の良いところとも、悪いところとも言えるかもしれませんが)

 

 

 そうこう考えているうちに、ロキ・ファミリアが休息と補給を終える。それに気付いたフェルズに手を招かれると、グラナは再び彼の横に座り目を向けた。

 

 ……今回の本題はここからなのだ。

 

 ゼウスとヘラのファミリアが辿り着いたのが最後に、それ以降は誰もその地を踏んでなどいない筈。けれどこうして何らかの者達が深層に現れた事で、彼等がそこで何かしらを企んでいることが事実となった。

 そしてそんな場所で、果たして誰が何をどんな計画を立てているのか。間違いなくこの場所にはその核心を掴むものがあり、情報がある。

 

 

『どう思う、グラナ・アリスフィア』

 

「59階層から続くのは極寒地帯、第一級冒険者でさえも凍死しかねないような世界と資料にはありました。……ですが勇者様達は防寒対策をなされないようです」

 

『……寒くない、ということか』

 

「まあ、ここから先は見た方が早いでしょう。無駄な憶測を立てる意味もありません」

 

 

 そのまま、静かに彼等の歩みを待つ。

 深層特有の巨大な階段を降りて行き、迎える光とその世界。寒さどころか暑ささえ感じている彼等の様子からしても、明らかに階層構造そのものが変化しているのが想像出来る。……そしてグラナの予想していたそれは、ある意味最も実現して欲しくない形で現れてしまった。

 

 

『………なんだ……これは……』

 

「……そういうことですか」

 

 

 氷河地帯ではなく、密林地帯。

 しかしその光景は、それこそ天井を埋めるように存在する緑のカーテンは、27階層でも見たものだ。27階層の一部を埋めるようにして存在した緑色の世界、つまり59階層ではそれが階層ごと埋め尽くしていたという話。

 

 

「ここが本拠地……?いえ、深層ほど繁殖力が強まるのか、それとも単に時間をかけた結果なのか」

 

『ど、どういうことだ?』

 

「少なくとも、ここに何かしら巨大な存在が眠っているということです。それこそ27階層に巨大な人喰花が存在していたように」

 

『っ』

 

 

 そして恐らく、それをフィンも同じように察している。顔が明らかに強張っているのがその証拠だ。しかしこれほど戦力を残した状態で58階層に辿り着くことが出来た、ならば進まない選択肢というものもない。

 

 ……レフィーヤに危険が迫る、しかしそれを止めることは出来ない。魔道具を使って声を届けることは出来るが、それは本当に最終手段だ。それこそフィンが死ぬようなことがあった時でもなければ意味がない。

 

 グラナもまた顔が強張る。

 

 ゼウスとヘラが最後に訪れてから何年経っているのか。その間にここで育て続けたモンスター。切札となり得る存在。……そして恐らくは、その一端でしかない兵器。

 

 

『あれは……』

 

「18階層で見た親玉………つまりは母体への魔石の供給、それこそがあの緑色のモンスター達の担う役割?」

 

『っ!各階層を巡り、数多のモンスター達の魔石を喰らい、そうして帰ってきた者達が、今度は母体に自身の魔石を捧げる!そういうことか!』

 

「ええ、非常に効率的ですわ。特にこの階層であれば"カドモス"や"ヴァルガング・ドラゴン"クラスの魔石を安定供給出来ます」

 

『そんなものが何年あの場所に居た!?』

 

「……1つ光明を考えるとするのであれば、1の力を使って生み出したモンスターが殺されて魔石になり、それを共喰らったとしても、得られる魔力は0.5にも満たないであろうということ。殺したモンスターの魔石分の魔力と、殺された仲間のロス、そして移動や戦闘に使用する魔力の総計が、必ずしもプラスになるとは限りません」

 

『……とは言え』

 

「ええ、それを補うほどの数量と稼働時間。一体どれほどの魔力が注ぎ込まれているのか……っ」

 

 

 27階層で、敵は宝玉を育てていたという証言があった。そして18階層では宝玉によってモンスターが巨大な親玉に成長し、今この59階層ではその親玉が育てられている。

 

 ……では、その果てにアレは何になる?

 

 宝玉の中には小さな生物のようなものが眠っていた。18階層ではその生物が他のモンスターに寄生し、親玉へと成った。つまり最初に眠っていた、あの小さな生物。もしこれから生まれるのが、アレの成体だとすれば……

 

 

 

 

 

【精、霊……?】

 

 

 

 

『「!?」』

 

 

 水晶の中のアイズが呟く。

 悲鳴のような甲高い声と共に生まれ変わり、美しい人間の少女の姿を宿したその異形の生物の正体を、彼女はそのたった一言で言い表してくれた。

 

 

 

「敵の目的は……精霊の地上召喚?」

 

 

『なっ!?』

 

 

 

 そしてグラナ・グレーデも辿り着いた。

 

 僅かこの一瞬で、敵のその目的に。

 

 

 

「いや、違う……もっと先に、その先に何かある」

 

 

『ま、待て!流石に話が飛び過ぎて私には分からない!』

 

 

「精霊の地上での同時召喚を狙うのであれば、益々ここで披露する意味がない。何かしら59階層以降で育てられない条件がある?いや、それなら複数同時召喚なんて出来ない。あれは宝玉ではないから複数のストックは出来ない筈。であれば、わざわざロキ・ファミリアの未到達階層ギリギリに陣取ったと考えるべき……ああ、それなら精霊の育成に数年単位の時間はかからないと考えるべきか。59階層に配置した理由は?ロキ・ファミリアが見つける可能性の高いここにわざわざ配置した理由……そんなもの、見つけて欲しかったからに決まっている。何故見つけて欲しかった?不意の召喚を行えば、それだけでオラリオを壊滅することが出来る。それでも足りないなんてことは絶対にない。最終的に討伐される可能性はあっても、少なくともバベルを破壊する程度なら…………………………………」

 

 

『グ、グラナ・アリスフィア……?』

 

 

 

「…………………………ああ、相手には神が居るのでしたね。そういえば」

 

 

 それまで新たに机に広げて書き込み続けていた紙を、彼女はぐちゃぐちゃに丸めて引き裂く。まるでそれまでの考えと仮定を否定するように。まるでそれまでの全てをひっくり返すように。

 生まれた思考も思い付きも、全て丸ごと投げ捨てた。

 

 

「フェルズ様、ウラノス様とお話しできます?」

 

『な、なに?それはまあ、可能だが……』

 

「しのごの言わずに繋いで下さいませ。拒否したら殴りますわ」

 

『わ、分かった!分かったから構えるな!!』

 

 

 そのあまりの圧力に、普段ならば絶対に許されないようなことであるが、フェルズも渋々と許可する。それにそもそも、彼女については必要ならば連絡を取れるようにとウラノスからも事前の許可は出ていた。もちろん積極的にそんなことをされては困るが、今回の件については特例……

 

 

「ご機嫌よう、ウラノス様。このような急なご連絡をしてしまい、誠に申し訳ありません」

 

 

【構わない。要件はなんだ】

 

 

「大神である貴方様に1つだけ。……精霊が複数集まることによって実現可能な魔法、若しくは複数の精霊を犠牲にすることで生じる超常現象などはありますでしょうか」

 

 

『っ』

 

 

【……幾つか存在する。だが、何が分かった?】

 

 

「より単純な話、闇派閥には神が居るということです」

 

 

『……?』

 

 

「つまり、精霊などという神時代の伝説の存在を、地上に複数同時召喚する。それは確かに壮観な光景ではあるでしょうけれど……それだけの精霊が支配下に居るのであれば、より大きなことが出来るのでは?と思ったのです」

 

 

【敵の狙いは地上召喚ではないと?今のオラリオであれば塔を破壊するにそれだけで十分だろう】

 

 

「ええ、わたくしも一度はそう思いました。……ですが、敵は闇派閥を率いるような趣味の悪い神々。同じ破壊をするのであれば、より壮大で馬鹿げた計画を取るのでは?」

 

 

『っ、暇を持て余した神々……』

 

 

【……経験があるか】

 

 

「ふふ。貴方様のクソみたいな同胞達が、下界の子供達の人生を暇潰しで滅茶苦茶にしていることなど、周知の事実でしょう?」

 

 

【………】

 

 

「そのクソに巻き込まれたことが一度や二度あったとしても、然程不思議な話ではありませんとも」

 

 

『ふ、不敬が過ぎないか……?』

 

 

「そうかもしれませんわね」

 

 

 この女には神に対する敬意というものが無いのかと、そう思ってしまうような言動。……しかし恐らく、今の彼女はそれどころではない。彼女は神々の悍ましさなど良く知っている。それ故に予測を外す経験など何度もした。

 

 この共通する違和感、そしてわざと仮想のゴールを用意する嫌らしさ。グラナやフィンのように目的のために最短距離を突っ走るのではなく、その過程にさえも美学や余興を取り入れ、結果をより華々しいものにするためならば、どのような労力さえも惜しまないやり口。

 ……暇潰しにやって来た神々特有の、そのどこか真剣味の抜けた感覚を、他でもないグラナが忘れるはずがない。

 

 

【……精霊を複数用意することで可能となる手段は多くある。膨大な魔力を利用することで、単体では行使不可能な大魔法さえも実現可能となるからだ。しかし現段階でそれを詳細に特定することは難しい】

 

「そうですか、そこはまた別で情報収集が必要ですわね」

 

『だ、だがウラノス……精霊1体でさえも、先程からロキ・ファミリアが苦戦しているのだが……』

 

「【………】」

 

 

『本当に、どうにかなるのか……?』

 

 

 勝てるのか、勝てないのか。

 そもそもそれ以前に、ここでロキ・ファミリアが全滅すればオラリオは終わる。最悪でもレフィーヤだけは逃すようにとフィンには釘を刺しているが、それもこの状況でどこまで遂行されるのか怪しい。

 

 

「フェルズ様、"彼等"の協力を得て深層へ臨むことは?」

 

『っ、本気か?』

 

「もしここでロキ・ファミリアが壊滅するようなことになれば、やむを得ません。生き残りだけでも救出しなければ。しかし59階層まで降りるには、50階層で待機している団員達では足りない。……ここで彼等が全滅すれば、オラリオは本当に終わりますわ。それに今こそ、ロキ・ファミリアを味方に付ける良い機会でしょう」

 

『……ウラノス』

 

【彼女に任せる】

 

『……分かった、そういうことならば準備をさせよう』

 

 

 ガリガリガリガリと、水晶の先に映る景色から目を背けられないまま、そこに広がる凄惨な有様に明らかに冷静さを失い掛けながらも、それでも冷静でいなければならない自分を自覚して、自制して……

 

 

『……いや、今直ぐに準備させよう』

 

「ええ、お願いいたしますわ。フェルズさま」

 

 

 あれではもし彼等が無事に帰って来たとしても、勢いそのままにフィンを殴り付けに行くのではないかと。そう思ってフェルズは彼女に全力で協力することにした。

 レフィーヤ・ウィリディスを危険に晒せば否が応でも彼女の協力を得られるとは言え、このままでは何れ爆発してしまうのではないだろうか。勇者の今後の行動についても、そしてそれに対する彼女の対応についても、目は離せない。

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