【完結】殺帝の子   作:ねをんゆう

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29.勧誘合戦

「命に別状はない。……が、左腕の状態がかなり酷い。こればかりは地上に戻って治療院に任せた方がいいだろうな」

 

「はぁ……少しは私の胃を休ませてくれないか、グラナ」

 

「わたくしも別に好きでこんなことになっている訳ではありませんわ」

 

「なんというか、闇派閥との遭遇率が高過ぎないか……?」

 

「今更その辺りを疑い始めるようなら、流石のわたくしも殴りますが」

 

「い、いや!別に疑っている訳ではなくてだな……!」

 

「ええい、話が纏まらん。少し黙らんか、お前等」

 

「「「……」」」

 

 

 その日の深夜。

 治療を終え、目を覚ました彼女の元に、フィン達は集まっていた。もちろんそれは、聞きたいことがあったから。今回の経緯について、彼女の視点から知りたいことがたくさんあったから。治療中の身であっても、こればかりは仕方がない。

 

 ……怪我をした彼女の元からどうしても離れようとしない小さな2人の番犬は、まあ無理矢理に引き剥がしてしまったけれど。そちらのフォローも必要だ。彼等も彼等で相当に取り乱していた。まさか自分達は服が溶けた程度で殆ど怪我などしていなかったのに、一方の彼女が本気で死にかけていたのだから。ショックも大きかったろう。

 

 

「それで?どうしてあんな無茶をした?別に私達を呼べば良かったろう、急ぐ必要があったのか?」

 

「それはもちろん。……これが欲しかったのです、どうしても」

 

「……?なんだこれは?」

 

「地下通路の鍵ですわ」

 

「「「!!」」」

 

 

 上着のポケットから取り出した、眼球のような形をした丸い魔道具。

 しかしそう、これこそがグラナが今回これほどの無茶をしてでも、どうしても手に入れたかったものである。レフィーヤにも危険なことをさせてしまったが、それを承知でもこれだけは絶対に確保したかった。

 

 

「耳飾りの映像を見ていた際に、彼等の1人が妙にその魔道具を映してくれていたのです。そしてその魔道具が地下通路内の扉を開けるために使用されていることに気付くまで、それほど長い時間は掛かりませんでしたわ」

 

「……つまり、これがあれば」

 

「ええ、基本的に地下通路内は自由に動くことができる」

 

「っ、なるほどな……」

 

「どう使うのかは考えているのかい?」

 

「いえ、具体的なところまではまだ。ただ複製が出来ないか"神秘"持ちの方々に意見をお聞きしたいところではありますわね。その辺りの報告はまた致しますし、作戦の際には勇者様にお預けいたしますわ」

 

「分かった」

 

 

 たった1つ、しかしそれだけでも有るのと無いのとでは雲泥の差がある。敵は基本的にこれを持っていないと判断して襲って来るであろうが、その認識を利用することが出来るのだから。敵はこちらがこれほどに準備が出来ているとは想像もしていない。

 

 グラナがこれを欲しがったのは当然だ。これ1つの存在で、一体どれほどの敵の主戦力を削れると思っているのか。そうでなくとも……

 

 

「グラナ、僕からも1つ報告がある」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「君から渡された水晶を見ていて、偶然見つけたんだが……なにやら武具に対して付与(エンチャント)をしていた人物がいた」

 

「付与?」

 

「それもいくつもの同じ武器にね」

 

「武器に付与となると……まさか、呪道具(カース・ウェポン)か?確かに闇派閥おあつらえの武具にはなるかもしれないが」

 

「ああ、その可能性が高い。そしてもし本当に呪道具であった場合、かなり厄介だ。対抗策は必要だろう」

 

「……地下迷宮に、怪人に、呪道具、おまけに精霊か。厄介どころの話ではないぞ。次は何が出て来る?」

 

「とは言え、対抗策があるだけマシですわ。神タナトスとやらの性格も、神々に聞けば分かるでしょう。そこから具体的な策を練って、1度目の侵攻で攻略してしまいましょう。……まあ、今のままでは人手も戦力も確実に足りない訳ですが」

 

「「「「………」」」」

 

 

 もうここまで来たら、敵から何が飛んできても驚きはしない。それほどに敵は策を練っているし手札を用意して来ている。裏の裏、そのもっと先まで見ているだろう。

 

 

「ただ、だからこそ脆い」

 

「……?」

 

「手札を多く持っている時、人は気が抜けてしまうものです。札遊びでよくある話ですが、手札が多いことは決して喜ばしいだけではないのです」

 

「そう、なのか……?」

 

「分かりません?手札は使わなければ意味がない。しかし手札の枚数だけ思考もしなければならない。この2つの要素がぶつかり合った時、結果は当人の処理能力によって大きく変わります。……端的に言えば、ミスを起こす可能性が高くなる」

 

「ああ、なるほど」

 

「今は最も敵の手札が多い時期でもありますが、逆に言えば最も致命的なミスを引き起こしやすい時期でもあります」

 

「じゃが、敵には神もおる。そう簡単にミスをしてくれるのか?」

 

「確かに神は全知、盤上遊戯のような場で人間は敵いませんわ。しかしそれは、規則で固まった小さな世界の中だけの話。神々にも未知はあり、全知を自称してはいるものの、それは決して真の意味での全知ではない」

 

「ああ、そうだね。それにそもそも、神にも得意分野というものがある。そして物事は決して論理だけで進む訳ではない。……一見すれば最善手に見える一手も、経験のない付け焼き刃ならば意味も変わって来る」

 

「相手が全知の神だからこそ使える手法もあるということです。……あの論理もへったくれもない軍神アレスと闘り合っていた時の方がよっぽど辟易としましたわ。あの頭狂乱に何度煮湯を飲まされたことか……」

 

「あ、あはは……」

 

 

 

 さて、そんなことはさておき。

 

 

 

「取り敢えずグラナ、ファミリアから失踪するという話は無しだからね」

 

「……は?」

 

 

 フィンは改めて、自分がここに来たもう一つの目的について話し始める。それはフィン達がシャクティ経由で聞いていた、これからの彼女に関する諸々。

 

 

「それだけの怪我をしたんだ、暫くは静養するように」

 

「いえ、あの……別に治療くらい治療院で無くとも。そもそも"戦場の聖女"の力があれば怪我は直ぐに治ると聞きましたが」

 

「彼女とてそれほど万能じゃない、と言っておくよ。それと、ダンジョンに潜ること、他の団員達と交流することについても許可する。なるべく単独行動は避けて欲しいけど、自由にしてくれていい」

 

「………は???」

 

「帰ったら恩恵もしっかり更新しておくように。レベルも上がるだろうし、新しいステイタスに慣れる必要もあるだろう。どうせ暫くは準備ばかりだ、今のうちに……」

 

「ま、待ってください。少し待ちなさいな」

 

「うん……?」

 

「……ご自分が何を仰っているのか、理解しています?」

 

「ああ、理解しているつもりだよ。その上での判断だ」

 

「……???」

 

 

 まるで理解の出来ない言葉を次々と浴びせられて困惑するグラナ。そんな彼女の様子を見て、少し楽しそうな顔さえしているフィン。

 けれどその場にフィンのことを訝しげに見る人間はグラナ1人だけであり、しかし事前にそれを聞かされていたのかと思えば、ガレスの反応からしても恐らくそうではない。

 

 

「……理由を、お聞かせくださいな」

 

「そう大した理由はないよ。ただ強いて言うのなら、僕も本気を出すことにした」

 

「本気……?へぇ、わたくしが何を企んでも意味がないと?」

 

「いや、本気で君を囲い込むことにした」

 

「………は???」

 

「ほら、前に君に言われただろう?流石に自分の願いを蔑ろにし過ぎていると」

 

「それは……まあ、言いましたが」

 

「あの時は流したけれど、確かにその通りだと思ってね。僕は君の願いを蔑ろにし過ぎていた。それなのに君の力だけは利用しようとして……これは公平ではない」

 

「……自分で言っておいてなんですが、そう簡単に叶えられる願いでもないでしょう」

 

 

 一体どういう気の変わりなのか。

 突然そんなことを言い出したフィンに対して正気を疑うのは彼女にしてみれば当然だし、囲い込むなどといわれても『脳にヒビでも入ったのか?』としか思えない。だが、それでもフィンの表情は崩れない。

 

 

「君を止めたりはしない。暗躍も根回しも好きなだけすればいい。……ただ、ファミリアを抜けるというのは駄目だ。ありもしない冤罪を背負い込んでまで姿を消す必要なんて許さない」

 

「……この行動の趣旨を分かっています?わたくしの存在を消す、つまりは闇派閥側に混乱を引き起こすための一手なのです。ファミリアを抜けることに意味があるのであって、別に暗躍し易い環境を作ることに大した価値は」

 

「別にファミリアを抜ける必要はない、どうとでもなる」

 

「っ」

 

「例えば君が先程の戦闘で大怪我を負い、そのまま意識が戻らない。治療院で長く暮らすことになる。……この程度の噂話であっても、同様の効果は認められるだろう。君は魔道具で髪色を変えられるとアキからは聞いているし、そうでなくとも18階層では常に顔を隠して行動していた。噂を流すだけでも意味はある」

 

「……」

 

「君は確かに最短の道を選んではいるけれど、道は決して1つじゃない。多少効果は落ちるにせよ、これはそこまでするほどの意味のある事ではない」

 

「……さあ、それはどうでしょう」

 

「そうでなくとも、この選択を君にさせる訳にはいかない」

 

「?」

 

「言ったはずだよ、君を囲い込むことに本気を出すと」

 

 

 

「ゴルゼに返すつもりもない。君にはこれから先もずっとロキ・ファミリアで活躍して貰う」

 

 

「っ」

 

「同じ道を歩く仲間に、作戦のためと言えど冤罪を着せる訳にはいかない。だからこれは却下だ。……本当に必要なら、いくらでも別の策を立てる。いいね?」

 

「……」

 

 

 フィンのその真剣な顔に、グラナは自然と目を逸らしてしまう。

 反論なら、まあいくらでも出来る。そんな風に思考すべきことを増やすのならば、自分の案が最も簡単に出来ることではないかと今でも思っている。

 

 ……ただ、今はそれ以上に困惑している。

 

 

「まあその様子では、何を言っても無駄なのでしょうね」

 

「君が欲しいからね」

 

「……寒気がするようなことを言わないでくれます?貴女に熱を上げている女性達を敵に回すつもりはないのですが」

 

「実際、君が小人族だったら間違いなく求婚していたと思うよ」

 

「……あの、何歳年下だと思っているんです?」

 

「そこは関係ないかな。20下でも30下でも、相手が受け入れてくれるのなら問題ないだろう?」

 

「うわ……」

 

「うん、本気で引かないで欲しい。君だってそれなりに好意は受けて来ている方だろう」

 

「それはまあ多少はありましたが……世の中、物好きな方が多いものですわね。世界に名を轟かせる"勇者"様も変態野郎ですし、世も末ですわ」

 

「変態野郎は言い過ぎじゃないかな……」

 

 

 まあフィンにそんなつもりがないのは分かっているし、仮にそんなつもりがあっても普通に断る。ただ問題なのは、少なくともこんなことを言ってくるくらいには彼が自分のことを気に入っているということ。

 

 それが分かってしまうのだから、本当に厄介だ。他者から好意を向けられるというのは執着されるということであり、それはつまり動き難くなることと同義。それこそ自分が今レフィーヤに対してしているのと同じように。

 

 

「……とは言え、君に対しては言葉で何を言ってもあまり意味がないだろう。行動で示すことにするよ。君がそうして来たように」

 

「まあ、是非そうしていただきたいですわね」

 

「取り敢えずは手始めに……次の侵攻作戦、レフィーヤに関しては君の裁量に任せる」

 

「「「!?」」」

 

「っ……よろしいのです?」

 

「ああ、参加させるもさせないも、全て君に任せる」

 

「フィン!?流石にそれは……!!」

 

「リヴェリア、これは絶対だ」

 

「っ」

 

「君をどう動かすのかについては議論の必要があるが、その上でのレフィーヤの動かし方は全て君に任せる。報告はして貰いたいが、それについて僕が口を挟むことはないと誓おう」

 

「……まあ勇者様が何を考えていようと、わたくしにとっては好都合。遠征なりなんなりと、不満が溜まっていたのも正直なところですし。喜んでその権利は行使させていただきますわ」

 

「ああ、構わない」

 

 

 話はそれで終わりだと、フィンは立ち上がる。

 リヴェリアはまだ納得出来ていないようだったが、しかしここまでフィンが強く言い切ったのだ。ならばもう仕方がないと、『勝手にしてくれ』と言わんばかりに疲れた顔をしたガレスと共にテントから出て行く。

 

 ……残されたのはシャクティとグラナだけ。

 殆どお目付役となってしまった彼女は、まだ少し心配そうにグラナの怪我の具合を見る。もうそれなりに付き合いは長いが、この女がここまで手酷い傷を受けたところは初めて見たからだ。よくもまあ本当に生きて帰って来たものだと、そう思うような戦果を手に入れながら。

 

 

「……良かったな」

 

「?怪我をしたことについてです?」

 

「そんな訳がないだろう、お前は私をなんだと思っている……フィンから信頼され始めていることについてだ。お前の努力が報われた」

 

「いえ別に、それは本当に全然嬉しくないのですが……むしろ当初の計画を崩されて非常に厄介というか」

 

「良かったな」

 

「いえ、ですから何も良くないんです」

 

 

 妙に優しい顔をしてそう言って来る彼女に、グラナは調子を崩される。これに関しては本当に何にも嬉しくないし、なんなら『これどうすっかな……』と途方に暮れているレベルの話だ。

 それはまあ次の作戦でレフィーヤの立ち回りについて自由に出来る権利を手に入れられたのは非常に喜ばしいが、より将来的なことを考えると、あまり執着されるのも困る。

 それどころかロキ・ファミリアから離してやらないからな、とまで宣言されてしまった。もう本当に面倒臭い。流石にこれは想定していなかった。計画が崩れまくっている。……そもそも今回の探索で彼女を殺せるとは思ってもいなかったのだから。また暫く思考を回さないといけないし、ほんと少し1人にさせて欲しいというのが正直なところ。

 

 

「フィンはああ言ったが、私もまだ諦めたつもりはないからな」

 

「はい……?なんの話です?」

 

「お前をガネーシャ・ファミリアに引き入れる話だ」

 

「……まだ諦めていなかったんです?」

 

「当たり前だ、お前が居るだけでウチの団員達をどれほど効率的に動かせると思っている。お前さえ手に入れば、ガネーシャ・ファミリアは都市最強の一角に潜り込めると私は確信している」

 

「本気で言っているのなら再考することを強くお勧めしますが……それにシャクティさま、そのような野心を持っているような方でした?」

 

「……野心と言うよりは、名前による抑止力が欲しいというだけだ。どうも今のガネーシャ・ファミリアは闇派閥然り少し舐められている気がしてな」

 

「まあ、それは……」

 

「それに、力に任せて好き勝手するような奴等も、お前が居れば取り締まれるようになるだろう」

 

「……フレイヤ・ファミリアでも取り締まるおつもりで?」

 

「そうだ」

 

「!」

 

 

 身を起こしていたグラナを押し倒して、布団を掛ける。未だ完治はしていない怪我、本当なら直ぐにでも地上まで運んで行ってやりたい。しかし今は17階層にゴライアスが居る、明日のロキ・ファミリアと一緒に出発するのが一番安全。歯痒い状況だが、仕方がない。

 

 

「フレイヤ・ファミリアの眷属達は基本的に自分達の判断で動くことはないが、神フレイヤからの指示には忠実に従う。何が面倒かと言えば、奴等を止められる者が居ないということと、ギルドでさえもその戦力故に強くは言えないということだ。……つまり、通常なら捕縛するような行為でさえも、力の強さという一点で見逃されている」

 

「……シャクティさまはそれが気に食わないと」

 

「……奴らが戦力として重要なのは分かっている。だがそれとこれとは話が別だ。力が強いというだけで我儘が許されている現状は、あまりにも歪だ」

 

「同意見ですわ」

 

「先日の怪物祭とてそうだ。状況証拠からしても確実に主犯は女神フレイヤだというのに、ギルドは殆ど罰を与えなかったどころか、こちらに秘匿を命じて来た。……幸いにも怪我人が出なかったとは言え、民衆の心に傷が無かった訳ではない。あんなことが許されている現在のオラリオに、正直眉を顰めている」

 

「なるほど」

 

 

 シャクティの言うことはもっともだ。

 戦力という面ではフレイヤ・ファミリアには敵わない。そもそもの幹部陣の突出した戦力だけでなく、下位の団員達でさえ日々戦い続けることで、相応の力を有している。武力による強引な抑止はほぼ不可能と言っていい。

 

 ……だが、シャクティは知っている。

 目の前の女はそのような武力の差を覆せる頭を持っているし、実際に彼女は故郷のゴルゼで圧倒的な戦力差を覆して立て直した。そうでなくとも普段から仕事を手伝って貰っている際に、その優秀さを何度も目で見て来た。

 

 彼女なら今のオラリオを変えられる。

 

 シャクティは本気でそう思っている。

 

 

 

「……正直、わたくしがロキ・ファミリアに拘っている理由はレフィーヤさましか無いのです」

 

「!」

 

「レフィーヤさまの安全を確保出来、あわよくば近くに居られる。そんな環境だからこそ、今の場所を選んだというだけ。ロキ・ファミリアそのものには、それほど思い入れはありません」

 

「……ふふ、それはそれで酷い気もするが」

 

「まあ精々がアキ様に多少の期待をしている程度です。……ですので、ガネーシャ・ファミリアに協力するのはやぶさかではありませんわ」

 

「!」

 

「なんなら、団員達の印象としても好感を抱いているくらい。……問題点と言えば、主神が異常に喧しいことくらいでしょうか」

 

「……それについては本当にすまない」

 

 

 ガネーシャ・ファミリアには何故かグラナのための部屋が既に1つ用意されているし、他派閥の人間だというのに、団員達も既に彼女の指示にはキビキビと従うようになっている。副団長のイルタも最近では『難しい話はあいつに投げておけ!』などと開き直る始末。

 受け入れる姿勢を作るどころか、最早馴染んでいると言ってしまってもいいだろう。

 

 

「協力いたしますよ」

 

「……いいのか?」

 

「既に微妙な立ち位置のわたくしが今更ガネーシャ・ファミリアに協力したところで、何を言われることもないでしょう。そもそもロキ・ファミリアでわたくしが必要な仕事など、それほどないのですし。諸々が終われば暇になることは間違いなし」

 

「……ファミリアの役割故に話せないことも多くある。鞍替えしてくれた方が助かるのだが、そこまでは我儘か」

 

「"異端児(ゼノス)"のことでしょう?」

 

「っ!?何故知っている!?」

 

「神ウラノスと話しましたので。……ああ、もちろんこの事はロキ・ファミリアには話していませんわ。あまりに繊細な話ですから」

 

「……本当に凄いなお前は」

 

「それはどうも。……まあそういうことですから、今後も変わらず仕事の協力はします。相応の報酬は頂いていますし、レフィーヤ様を守るためにも便利な立ち位置ですから」

 

「そうか……そういうことなら、今はそれに甘えるか」

 

「それに……」

 

「ん?」

 

 

 また、彼女の雰囲気が変わる。シャクティは知っている、それは彼女が悪巧みをし始めた時のものだ。目を細め、口元が弧を描き、何か黒いオーラを出している時の雰囲気。

 

 

「正直、Lv.5以上の戦力無しでも"猛者"単独程度なら捕縛出来る策はあります」

 

「……は?」

 

「そういう策を片っ端から試すことが出来るというのも、協力する利点の1つですわね。……ふふ、これはこれで楽しみなものです。さあ、どんな風に調理してしまいましょうか。考え始めると楽しくて眠れなくなってしまいそうです」

 

「……寝ろ。それはまた今度でいい」

 

「ふふ、意地悪ですわね」

 

 

 ガネーシャ・ファミリア。

 闇派閥等から舐められがちであると言いつつも、しかしファミリア内にはLv.6以上こそ居ないが、Lv.5が11人も存在するという等級Sに恥じない実力派集団。

 そんなものを自由に使っていいと言うのなら、悪巧みなどいくらでも出来るというもの。Lv.7だろうとなんだろうと、やりようはある。

 

 シャクティの願いはきっと叶うだろう。

 それはもう、本当に、酷い形で。

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