みんなのアイドル、まこーらになってしまったようだ   作:やめちっち

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まこーら!! え?いない?

 

 高専の建物内の三階にある長い廊下で伏黒、加茂の両者は互いに向き合い、一切の隙を見せぬまま会話をしている。

 

「まさか、式神使いでここまで…それも私がこんなに近接戦で追い詰められるとは思ってなかった。でも嬉しいよ、成長してくれて」

「ちょいちょい出してくる仲間意識なんなんですか?」

共感(シンパシー)さ。君はゆくゆく御三家を支える人間になる」

 

 伏黒の横には顔のみを影から出している魔虚羅がキョロキョロ辺りを見回す。

 

「私は虎杖悠仁を殺すつもりだ」

 

『マコッ!』

 

 何故か魔虚羅は突如、大声を発して影から魅惑のボディーを曝け出し、後方へと走り出した。伏黒はそんな魔虚羅に驚きの声を上げる。

 

「は? どこ行くんだよ、魔虚羅!!」

 

 伏黒は去っていく魔虚羅の背を見て理解する。奴にはやらなければならないことがあるのだと。彼はここ最近、魔虚羅と日常生活を共にする。普段はふざけたマネしかしない。しかし先程、一瞬見えた魔虚羅の横顔はいつものおちゃらけた様子ではない、何か差し迫った状況を打破しようと奔走する時の顔。だから、構うのはやめた。これも魔虚羅と共に過ごした日々の賜物だろう。

 

「虎杖を殺すってのは楽巌寺学長の指示ですか?」

 

 先程の伏黒の焦りから一転、冷静になり聞いてきた。そのことに加茂は、自らの情緒を不安定にすることで私を混乱させようとしている? と、全くの検討はずれの思考を巡らせる。

 

「いや、私個人の判断だ」

 

 彼はいつ先程走り出した式神が襲いかかってくるかを警戒しながら話を進める。

 

「それが御三家…加茂家の人間としての正しい判断だと思っている」

 

 加茂憲紀は加茂家相伝の術式を継ぎ、嫡男として偽り、本家へ迎えられた。そして母親は爛れた側妻と虐げられて家を追われた。そんな辛い境遇の中、母親は最後まで己を案じてきた。そんな母親のためにも加茂憲紀という男は次代当主として自覚と責任感を持ち、呪術師として全うしている。

 

「君にも理解できるはずだ。君と私は同類だ」

「違います」

 

 伏黒は急に怖いこと言い出した加茂の発言を即座に否定する。

 

「…違くない」

「違います」

 

 伏黒は否定して、俯いて話し始める。

 

「そういう話は真希さんにしてください。俺には禪院家との繋がりはありませんよ」

 

 自分には関係ないと…

 

「それに俺は自分のこと『正しい』なんて思ってないです。

 いや、スミマセン。違いますね。俺は自分が正しいとか間違ってるとかどうでもいいんです。ただ俺は自分の良心を信じてる」

 

 伏黒はそう言って加茂の目を見て、構えを取る。

 

「それを否定されたら、後は呪い合うしかないですよね」

 

 突如、加茂の背後から大量の脱兎が押し寄せてくる。それに気づき振り向くが、もう遅かった。瞬く間に脱兎に覆われて視界が塞がる。そんな状況を打破しようと拳に呪力を乗せて殴ろうとするその時、脱兎は消えた。加茂は消えてすぐに振り返るとそこには掌印を結んだ伏黒がいた。

 

「この前調伏したばっかりの奴です。注意してください。魔虚羅から気絶する程の打撃を何発もくらってなかったら調伏を諦めたくなるくらい重い一撃を与えてくるので」

 

――『貫牛』

 

 そう言うと巨大な黒い牛の式神が影から顕現した。

 

 伏黒が貫牛に突進するように命令すると、加茂へ一直線へ突進する。その素早い動きに対応出来ず、攻撃をくらう。そして貫牛の頭に体を乗せられ、壁に向かって身を投げられる。

 

「――ッ」

 

 声にならない声が漏れる。加茂は壁に叩きつけられた際に左腕を強打し、骨が折れた。しかし、貫牛は攻撃をやめない。向きを変えて再び突進する。一発目と違い、貫牛と加茂との距離があまり無いため、威力が落ちる。だが、それでも十分な威力があり、壁をぶち破り、破片と共に加茂は外へ投げ出される。

 

 貫牛は役割を終えて影へと戻る。

 

「マズイ……ッ!!」

 

 加茂は今までにない焦りを感じていた。一発目に折られた左腕、二発目に外へ投げ出され、地面に衝突した際に折られた右脚。それでも加茂は諦めなかった。大切な母親のためにも。

 

「私は、負ける、わけには、いかないのだ!!」

 

 加茂は開けてるのか閉じてるのか分からない糸目を大きく開き、ボロボロの体に鞭を打って立ちあがろうとする。そこに伏黒が鵺の足を掴み、地上へと降りてきた。

 

「加茂さん――」

 

 降参してくれませんか? と声をかけようとしたその直後、大きな影を作り出し、伏黒と加茂を覆った。両者は不自然にできた影に違和感を抱き、上を見ると大きく、太い根が何本もコチラに迫ってくるのが分かった。

 

「なっ!?」

 

 伏黒はすぐに加茂を抱きかかえる。が、加茂を抱えている関係ですぐに行動へ移せず、根が彼らへと差し迫っていた。しかしそこで根の上を走っていた狗巻が彼らを見て術式を発動する。

 

『逃げろ』

 

 呪言により伏黒の体が動き出す。そのおかげであと少しのところで回避することに成功した。

 

「狗巻先輩!!」

「高菜」

「どうなってるんですか?」

「おかか」

 

 伏黒の問いに首を横に振って答える狗巻。情報を少しでも手に入れようと根をよく見る。するとそこには目から枝のようなものが上に伸びている筋肉質の呪霊がいた。

 

「クソッ! 全然気づかなかった!! しかも特級かよ!!」

 

 伏黒は以前に五条から見せてもらった下手くそな絵にそっくりな呪霊に遭遇して悪態を吐いた。そして逃げられないことを悟り、抱えている加茂をそっと地面に置く。

 

「すまない。足手まといになってしまって」

「今はそんなこと気にしてる場合じゃありません」

 

 伏黒は掌印を結ぶ。

 

――『円鹿』

 

 影から人の数倍近い体躯と四つ目が特徴の鹿の式神が顕現する。その円鹿は加茂の腕に顔を近づける。すると、その部位は白く光り始めた。

 

「これは……」

「反転のアウトプットです」

 

 この式神、円鹿は反転術式のアウトプットが可能。なので加茂の骨の折れた腕と脚の治癒を施す。

 

「明太子」

「アイツは俺と狗巻先輩でやります。加茂さんは治ったら応援を呼んでください」

「分かった」

 

 伏黒は呪霊に目をやる。

 

「すみません、狗巻先輩。結構呪力を使ってて足を引っ張るかも知れません」

「高菜」

 

 不安そうに告白する伏黒に笑顔でサムズアップする狗巻。

 

「明太子!」

「はい」

 

 二人は目の前の呪霊――花御を祓うために動き出した。

 

 

 

 

 

 




式神、例えば円鹿が反転使ったら、術者の呪力から引かれる?それとも術者とは別々?原作の見落としがあるかも知れないので少し不安。軽く調べたけど出てこなかったし。
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