とある護符の四大使い(エレメンツクァルテット)   作:はらさきりいあ

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第五編 後日談

*土御門サイド*

 

 

 

 …アンデリカの赤いリボン。

 

 土御門は上条を見送った後それを拾い上げた。どうやらまだ霊装として使えるようだ。

 ややノイズ交じりだったが音声が聞こえる。

 

『な、んだ?……学、え、ん都市の人間、か……?』

 

 聞こえてきた声は教会の人間にしては若い部類に入るであることが予想できる声だ。

 

「あぁ、一応学園都市の人間だけどにゃー。まぁ、イギリス清教のスパイ・土御門元春ってもんだけど」

 

 淡々と土御門はリボンの声の主に声をかける。それに対しリボンの声の主は、

 

「そうか。じゃあ俺も名乗ろうか。俺はヘドヴィッヒ=メンゲルベルクって者だ。役職としてはドイツ福音詩宗派(ふくいんしそうは)大監督(だいかんとく)さ」

 

 気楽そうにリボンの声の主――ヘドヴィッヒは応答する。「大監督」というワードに土御門はピクンと眉を動かす。なぜならドイツ福音詩宗派における大監督という役職は至極司徒(ダスベスツパースター)に次いで高位な役職だからだ。

 

「まぁ、本題に入らせてもらうぜよ。…なんで学園都市に刺客を差し向けた?」

 

「はは。それは簡単なこと。『俺は至極司徒になりたい』からだ」

 

 あっさりとヘドヴィッヒは答えた。全ては自分のためであると。それならばアンデリカという犠牲を払ってでも平気だと。

 

「……そうか。なら俺はここで通話を切るとするかにゃー」

 

 沈黙を置いて土御門は一方的に通話を切った。そしてリボンをアスファルトの地面に叩きつけ、(ふみにじ)る。そこから携帯を取り出しとある番号に連絡する。

相手はイギリス清教のとある幹部だ。

 

「……あぁ、つまりそういうことだ。………そうか、了解。任せる」

 

 要件を軽く説明して通話を切る。そのあと土御門は携帯を片付けて夜の闇へと消えていった…。

 

 

*ドイツ福音詩宗派*

 

「なっ、なんだっ?!!」

 

 荘厳な趣《おもむき》の礼拝堂でヘドヴィッヒは慌てていた。イギリス清教・必要悪の教会(ネセサリウス)の一部が攻め入ったからだ。チラリと窓から様子を窺う。黒をバックにし白い十字線を入れた修道服に身をつつんだ修道士や修道女が近づいている。ふざけるな、という感情がよぎる。ここで終わらせるわけにはいかないのだ。

「(至極司徒になって、自分を見下した野郎をッ…!)」

心に憎悪の念を蠢かせながら長机にもたれ掛けさせていた司教杖を手に取り入口へと向かう。

入口から出ると数人の信徒らが居る。口元をゆるめさせ、聖職者に似つかわしくない笑みを浮かべて司教杖を修道士らに向ける。

 

「さぁさ、集まりやがれ信徒ども。このバカでアホで無知な異教徒らに神の教えを伝えろッ!」

 

司教杖の先端の飾りが詠唱と共に開く。

 

「そう、神に並びし者らが殉ずる時は、幾数多の行者と共にッ!!」

 

信徒が十字の光と化す。その光は修道士らへと容赦なく差し込んだ。前列の修道士がバタバタと倒れる。

ヘドヴィッヒは口角だけを上げて笑った。

 

──『栄えなる光』。

司教杖の先端に付いた十字架を囲む三つの天使、ミカエル・ガブリエル・ラファエルへと天使の力(テレズマ)を注ぎ込み力を使う魔術。

単体では小さめな威力なものの、三つの天使の三位一体などによる相乗効果により威力を増している。そして最も大きな威力を増しているのはヘドヴィッヒの体質……

 

つまり、ヘドヴィッヒ=メンゲルベルクは聖人だ。

 

 

 

 

その体質ゆえヘドヴィッヒは大監督へと昇格した。ただの修道士にしておけば反逆する可能性や、ドイツ福音詩宗派からの脱退もありえるからだ。

しかし、祈りを籠めることや懺悔を聞くことを行わなかった。それからヘドヴィッヒは見下された。「名ばかりの大監督」と。

高いプライドを持ったヘドヴィッヒは怒りがたまっていた。復讐の方法を常日頃考えていた。そして思いついたのだ。

 

「学園都市を制圧する」

 

科学サイドの(おさ)を制圧すれば無能で無知な総司教ではなく、有能で有知な総司教であると認めさせることが可能であると、ヘドヴィッヒなりの考え…であったはずだ。

 

だが、返り討ちに遭った。それが意味する事は失敗、有能有知であることの証明ではなく無能無知である事をさらに証明しただけだった…。

 

 

 

 

 

 

勝てる、そう実感した。その様子は、誰が見てもそう分かる表情だった。ヘドヴィッヒは、歩みを進めつつ……そして、倒れ伏した。

 

「同じ聖人として呆れますね、ヘドヴィッヒ=メンゲルベルク、あなたの行動すべてが。」

 

凛とした女性の声が響き渡った。倒れ伏したヘドッヴィッヒからは10メートルほど離れた所にその声の主は立っていた。

そう、立っていたのは神裂火織だった。

ふらり、とヘドヴィッヒは立ち上がり、また笑い声をあげた。

 

「か、ん、(ざき)……()(おり)……?イギリス清教の聖人じゃないか……!復讐できる、これで復讐できる……!!」

 

歓喜に震える声でそう言うヘドヴィッヒは、司教杖を神裂へ向ける。それに対し、神裂は凛とした表情でその場に立っていた。まるで、速く攻撃しろとでも言うかのように。

 

 

 

ひとつの呼吸音が、ひっそりと静まり返った礼拝堂に木霊し。

ひとつの金属音が、礼拝堂の中央より発せられ、響き渡った。

 

 

 

もう決着は着いていた。

 

「は、はは………」

 

最後に響いたのは、むなしい笑い声だった。

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